転生者の打算的日常   作:名無しの読み専

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思い浮かばない、オリ主のイメージCV。
皆さんはどうですか?


#17 訓練

 教室のドアが開き、二人の転入生が入ってくる。その内の一人の姿にクラスの女子が沈黙する。何故か?それは……。

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 にこやかな笑顔で一礼する転校生の一人、シャルル・デュノア。そう、『シャルル』だ。つまり……。

「お、男?」

 誰かがそう呟いた。

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方達がいると聞いて本国より転校を−−」

 人懐こそうな顔。礼儀正しい立ち居振る舞い。ハニーブロンドの髪を首の後ろで纏めた中性的な顔立ち。スリムと言うより華奢といった方がいい体付き。見た目は確かに男だ。

 だが、私は目の前の人物が『自称』男であると知っている。

 

 シャルロット・デュノア。

 原作において『第二の男性操縦者』として転入。『白式』のデータを盗み出す事を目的に一夏に近づくも、実行に移す前に一夏の『ToLOVEる体質』が発動。女とバレてしまう。

 その後、境遇に共感を覚えた一夏の説得により学園に留まる事を決意。VTシステム事件終了後、詳しい経緯は不明だがデュノア社と決別し、女生徒として再転入。一夏ラヴァーズの一人となる『予定』の少女だ。

 『シャルル』とは『シャルロット』の男性形。本名を少し変えただけのお粗末な偽名だ。

 それに、注意深く見れば目の前の『彼』が『彼女』かも知れないと気づく者もいるのでは無いだろうか。

 男にしては声が高いし、男と言うには線が細すぎる。何かで強引に胸を押さえているせいで呼吸が不自由なのだろう。浅く短い呼吸をしている。これで「自分は男だ」などとよく言えるものだ。

 

「きゃ……」

「はい?」

 まずい!私は咄嗟に耳を塞ぐ。その一秒後。

「「「きゃああああっ!!」」」

「ぎゃああああっ!!」

 発生する歓喜の叫び。このクラスの大半の女子は彼女を『彼』と認識したようだ。一夏はこの大絶叫をまともに聞いて悶絶している。ご愁傷さんだ。

「男子!三人目の男子!」

「しかもうちのクラス!」

「美形!守ってあげたくなる系の!」

「地球に生まれて良かった〜〜〜!」

 元気に騒ぐクラスメイト達。ちなみに隣のクラスや他学年の生徒が覗きに来ないのは今がHR中であるからだ。暴走する10代女子を抑え込めるIS学園教師陣は凄いと思う。

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 いかにも面倒臭いというように、千冬さんがぼやく。仕事がというよりは、むしろ10代女子のこの手の反応が鬱陶しいのだろう。学生時代も一般女子とは付き合いがなかったからな。

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから〜!」

 山田先生の言葉に、私はもう一人の転校生に目を向ける。

 腰近くまで下ろした白に近い銀髪。しかし整えているのではなく、伸びるに任せているだけという印象。

 左目の眼帯は医療用ではなく服飾目的。右の赤い瞳に熱のない光をたたえた、まさに軍人の佇まい。

 身長は明らかに低いのだが、全身から放つ怜悧な気配が実際より大きく感じさせる。

 ちなみに、デュノアは男としてみればかなり小柄な方だ。

「…………」

 本人はいまだ口を開かず、腕を組み、クラスの女子を下らなそうに見ている。しかしそれも僅かな事で、今は視線をある一点……千冬さんに向けている。

 彼女がこの先起こる『はず』の事件の中心人物である……。

「挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

 居住まいを正し素直に返事をする転校生−−ラウラと呼ばれた少女に、クラス一同がポカンとする。

 一方、ドイツ軍式の敬礼を向けられた千冬さんは先程とは違う意味で面倒そうな顔をする。

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」

「了解しました」

 そう答える彼女は伸ばした手を身体の横につけ、足を踵で合わせて背筋を伸ばしている。

 その体勢のまま、こちらに向き直り一言「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」とだけ口にした。

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 ドイツ軍IS配備特殊部隊『シュバルツェア・ハーゼ』隊長。階級は少佐。

 『第二回モンド・グロッソ織斑千冬決勝辞退』の原因となった一夏に対して『織斑千冬の汚点である』と一方的な憎悪を向けていたが、学年別トーナメントのVTシステムからの救出と相互意識干渉(クロッシング・アクセス)での会話により一夏と和解。一転一夏ラヴァーズの一人となる『はず』の少女である。

 

「…………」

 沈黙するクラスメイト。言葉の続きを待っているのだが、ボーデヴィッヒは名前のみを口にして完全に沈黙。

「あ、あの、以上ですか?」

「以上だ」

 重い空気にいたたまれなくなったのか、山田先生が可能な限りの笑顔でボーデヴィッヒに訊くが、返ってきたのは無慈悲な即答。山田先生が泣きそうな顔になる。

 原作を読んでこのシーンを見た時「こいつヒデーな」と思ったが、実際に当事者になるとよりそう思えるな。と、そんな事を考えていたらボーデヴィッヒと目があった。

「っ!……貴様が−−」

 こちらに向かって歩を進めるボーデヴィッヒ。ああ、これは勘違いしているな。

 私の前に立ち右手を振り抜こうとするボーデヴィッヒを、彼女の顔の前に手を突き出す事で止める。

「……やるな。だが、私は貴様があの人の弟だなどとは「すまないが」っ!?」

 ボーデヴィッヒの台詞を遮り、言うべき事のみを言う。

「私は村雲九十九。君の言う『あの人の弟』は、あっちだ」

 私が指し示した先に目を向けるボーデヴィッヒ。そこには、展開について行けずにアホ面をさらす織斑一夏(あの人の弟)がいた。

「…………」

 改めてこちらに向き直るボーデヴィッヒ。バツの悪そうな顔をしている気がする。

「さて、どうする?ラウラ・ボーデヴィッヒ。一夏相手にテイク2と行くかね?」

「ふ、ふん……」

 来た時同様、足早に私の前から立ち去るボーデヴィッヒ。席について腕を組み、そのまま微動だにしなくなる。

 せめて勘違いに対する謝罪くらい欲しかったが、実害は無かったのでまあ良しとしよう。

 

「あーゴホン!ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二アリーナに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 ぱんぱんと手を叩き、行動を促す千冬さん。私はまず教室から出る事にした。

 いつまでもここにいると、女子達が揃って「きゃあーっ!!九十九さんのH!」とか言い出すのだ。私はどこぞの猫型ロボット頼みの駄眼鏡男子ではない。

「急げ、一夏。今日は第二アリーナの更衣室が空いている」

「お、おう」

 一夏を急かし、教室を出ようとすると千冬さんからお声が掛かる。

「おい織斑、村雲。デュノアの面倒を見てやれ。同じ『男子』だろう」

 男子の部分を僅かに強調した言い方。もしや千冬さん、気づいている!?

「君たちが織斑君と村雲君?初めまして。僕は−−」

「ああ、いいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから」

 言うが早いか、一夏はデュノアの手を取り教室を出る。デュノアの頬が少し赤らんでいた。

「どうした村雲。貴様も早く行け」

「……千冬さん。『彼』の事、気づいているんでしょう?」

「何の事だか分からんな。早く行け。それから、織斑先生だ」

「了解しました。……それで十分答えになってますよ」

 教室を出て、一夏を追う。果たして二人はすぐに見つかった。その理由は、HRが終わり各学年各クラスから情報収集のための尖兵が駆け出して来ていて、動けなくなっていたためだ。

 もしこの波に飲まれれば、女子達から質問攻めに会い確実に授業に遅刻、結果オニ斑先生監修の特別カリキュラム『マストダイ』を受けさせられるという未来が待っている。それだけは避けねば!

「織斑君の黒髪もいいけど、金髪っていうのもいいわね」

「しかも瞳はアメジスト!」

「きゃああっ!見て見て!ふたり!手!手繋いでる!」

「日本に生まれて良かった!ありがとうお母さん!今年の母の日は河原の花以外のをあげるね!」

 二人を見てキャイキャイ騒ぐ女子達。というか最後の一人、今年以外にもちゃんとした物を贈りなさい。お母さんが可哀想だぞ。

「な、なに?なんでみんな騒いでるの?」

 状況が飲み込めず困惑しながら訊いてくるデュノア。それに一夏が答える。

「そりゃ男子が俺達だけだからだろ」

「……?」

 「意味がわからない」という顔をするデュノア。まあ、本当は女子だからな。

「普通に珍しかろう。ISを操縦できる男は、現在私達だけなのだから」

「あっ−−ああ、うん。そうだね」

「それとアレだ。この学園の女子って男子と極端に接触が少ないから、ウーパールーパー状態なんだよ」

「ウー……何?」

「ウーパールーパー。和名でメキシコサンショウウオという、昔日本で流行した珍獣だ」

「ふうん」

 まあそれはどうでもいい。今はこの包囲網を突破せねば。群衆が少しづつこちらへ近づいてくる。……やむを得んか。私は一歩前へ出る。

「淑女諸君」

「「「はいっ!なんでしょう!?」」」

「我々はこの後織斑先生の実習授業でね。遅刻をするわけにはいかんのだ。質問は後ほど受け付ける。だから……」

「「「だから?」」」

 今こそ我が誠心誠意を見せる時!

「そこを通してくれんかね?(ニッコリ)」

 

ザザザッ!!ガバアッ!!

 

「「「ハイッ!ゴメンナサイ!」」」

 私の誠意が通じたのか、左右に分かれ90度に腰を折る女子達。でも、こころなしか震えてないか?

「分かってくれてありがとう。では行こうか一夏、デュノア」

「「お、おう(う、うん)」」

 この後道すがら自己紹介をし、互いに名前呼びでいいという事になった。私は呼ばないが。

「ね、ねえ一夏。さっきの人達、なんであんなに怯えてたの?」

「ああ、九十九の『怖い笑顔』を真正面から見たからだな。あいつの笑顔は本能的に『逆らうな』って感じるから」

 聞こえてるぞ、一夏。人の誠心誠意をあしざまに言うんじゃない。

 

 第二アリーナ更衣室に着くと、かなり時間が押していたので急いで着替える事にする。

 一夏が一息にTシャツまで脱ぎ捨てたのを見てシャルルが慌てる。男の裸など見た事がなかったのだろう、顔が赤い。

「一夏、私は先に行くぞ」

「おう。って、お前着替えるの早いな。コツでもあるのか?」

 既に着替えを終えた私を見て、一夏が驚きながら訊いてきた。

「コツなどない。強いて言えば『実習のある日には前もって着ておく』だな」

「そ……」

 一夏の「その手があったかー!」という叫びを背中に受けつつ、更衣室を後にする。

 叫んでいる暇があればさっさと着替えろ。どアホウ。

 

 

「村雲、残りの二人はどうした?」

「一夏が着替えに少々手間取っておりまして。なに、すぐに来るでしょう」

 言いながら一組の列の端へ並ぶ。隣は本音さんだ。

「つくもん、さっきは災難だったね~」

「ああ、全くだ。実害は無かったので良しとしようとは思うがね」

「え~?それでいいの〜?」

「いいのだよ。余計な波風は立てたくないのでね」

 本音さんと話していると一夏とデュノアがやって来た。

 千冬さんに教育的指導(出席簿アタック)をもらい、その後列に並ぶ。ちなみに隣はセシリアだ。

 一夏ではなく私がボーデヴィッヒにはたかれかけたためか、セシリアと鈴が千冬さんから教育的指導を受けるシーンは無くなった。さて、訓練開始だ。

 

 訓練開始前セシリア&鈴対山田先生の模擬戦が行われる事に。

 やる気のない二人に、千冬さんが「アイツにいい所を見せられるぞ?」と言った途端、二人はものすごいやる気を出した。

 しばらくして、上空から山田先生が現れる。ただし、一夏に向かって高速で。

「一夏、右斜め後方注意だ」

「へ?」

 一夏が私の示した方を向くが、時既に遅し。

「ああああっ!ど、どいてくださーいっ!」

「どわあああっ!?」

 一夏は山田先生の『ラファール』の突進をうけて数m吹き飛ばされた後、地面を転がった。グラウンドを土煙が覆う。

「「「お、織斑くーんっ!?」」」

「ギリギリでISの展開が間に合ったようだから、心配はないと思うが……」

 土煙が晴れた先にあったのは、山田先生を押し倒し、胸を揉みしだいている(ように見える)一夏の姿だった。

 何というラッキースケベ。これが主人公補正か?羨まけしからん!

 と、背後から強烈な殺気を感じた。このプレッシャー、シャ○……もとい、セシリアか!?

「−−ハッ!?」

 身の危険を感じたか、山田先生から体を離す一夏。直後、一夏の頭のあった位置をレーザー光が貫く。今のが当たっていたら、気絶で済めばいい方だったぞ。

「ホホホホホ……。残念です。外してしまいましたわ……」

 満面の笑みだが、額に浮いた血管が明らかな怒りを表しているセシリア。『怖い笑顔』とはこういうのを言うのではないか?

「……………」

 ガシーンと何かを組み合わせる音がした。今のは鈴の武器《双天牙月》の連結音だ。

 見ると鈴が両刃形態にした《双天牙月》を振りかぶり、一夏の首を狙って投げつけていた。

「うおおおっ!?」

 間一髪、のけ反って躱す一夏。しかし勢い余って仰向けに倒れてしまう。体勢を完全に崩した一夏に、ブーメランの如く戻ってきた《双天牙月》が襲いかかる。(私以外の)誰もが最悪の未来を予想した、次の瞬間。

「はっ!」

 

ドンッドンッ!

 

 短く二発、火薬銃の音が響く。弾丸は正確に《双天牙月》の両端に命中、その軌道を変えた。一夏の危機を救ったのは山田先生だった。

 両手でマウントしているのはアメリカ・クラウス社製.51口径アサルトライフル《レッドバレット》。実用性と信頼性の高さから、多くの国で制式採用されているメジャー・モデルである。

 しかし、真に驚くべきは山田先生の射撃姿勢だ。倒れたままの姿勢から上体をわずかに起こした姿勢であの精密射撃なのだ。

 雰囲気もいつもの慌てふためく子犬のようなそれと違い、落ち着き払っている。とても入学試験の時、一夏相手に勝手に壁に激突して動かなくなるという失態を犯した人物とは思えない。

「…………」

 皆驚いたのか、一夏はもとよりセシリアと鈴、他の女子達も唖然としている。

「山田先生はああ見えて元代表候補生だからな。今くらいの射撃は造作もない」

「む、昔の事ですよ。それに候補生どまりでしたし」

 雰囲気が元の山田先生に戻る。体を回して起き上がり、肩部武装コンテナへ銃を預けた後、ずれたメガネを直す。

 確かにあの仕草は山田先生だ。千冬さんの言葉に照れたのか、頬が赤かった。

「『狩猟女神(アルテミス)』の二つ名は伊達ではない……か」

 呟いた私の声に本音さんが興味津々に訊いてきた。

「ね~ね~つくもん、『アルテミス』って〜?」

「代表候補生時代に山田先生に付けられた二つ名さ。どんな体勢からでも正確に当てられる射撃技術から来ている」

「「「へーーっ!」」」

 いつの間にか周りの女子達も聞いていたようだ。そのテンションが一気に上がる。

「ちなみに当時のゲスな男共は、戦闘機動を行う度に躍動する体の一部を指してこう呼んだ。曰く『乳揺姫(プルンセス)』」

「「「へーー……」」」

 一部の女子達のテンションがだだ下がる。言わない方が良かったか?

「な、なんでそんな事知ってるんですか!?村雲君!」

 聞こえていたのか、山田先生がさっきとは別の意味で顔を赤くしながら叫ぶ。

「うんんっ!さて小娘ども、さっさと始めるぞ」

 咳払いをして緩みかけた空気を引き締めた後、千冬さんがセシリアと鈴に言った。

「あ、はい。って、え?あの、二対一で……?」

「いや、流石にそれは……」

「安心しろ。今のお前たちならすぐ負ける」

 負ける、と言われたのが気に障ったか、セシリアと鈴が瞳に再び闘志を宿らせる。

 特にセシリアは入試の際、一度勝っている相手であるのがポイントだったのだろう、先程より力が漲っている。

「では、はじめ!」

 号令と同時にセシリアと鈴が飛翔する。それを一度目で確認し、山田先生も空中へ躍り出る。

 

 結論から言えば、結果は原作通りだった。

 デュノアが『ラファール・リヴァイブ』の性能や特徴を解説する僅か90秒程で山田先生の射撃に誘導されたセシリアが鈴と激突、そこに山田先生がグレネードを投擲、セシリアと鈴が煙の中から地面に落下。文句のつけようもない完敗だ。

 敗北を喫した二人は、その理由を互いの戦い方が悪いからだとした。

 「無駄に衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」とセシリアが言えば、鈴が「何ですぐにビットを出すのよ!しかもエネルギー切れ早いし!」と返す。どちらの主張もそれなりに正しいため、かえってみっともない感じだ。

 二人の言い合いは、女子達が含み笑いを起こすまで続いた。

 

 

「これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

 ぱんぱんと手を叩き、千冬さんが皆の意識を切り替える。

「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、村雲、凰だな。では6グループに分かれて実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?では分かれろ」

 千冬さんがいい終えると同時、一夏とデュノアにほぼ二クラス分の女子が殺到した。

「織斑君、一緒にがんばろう!」

「わかんないとこ教えて〜」

「デュノア君の操縦技術みたいなぁ」

「ね、ね、私もいいよね?同じグループに入れて!」

 予想通り、かつそれ以上の大繁盛。一夏もデュノアもどうしていいやらと立ち尽くすだけだ。一方、私の所にはいつものメンバーがやって来ていた。

「がんばろ〜ね~、つくもん」

「よろしくね!村雲君!」

「大丈夫!需要はあるよ!」

「癒子、それ慰めてないよ?」

「谷本さん、君が私の事をどう思っているのかよくわかったよ」

 そんな状況を見かねたか、自らの浅慮に嫌気が差したか、千冬さんが面倒臭そうに額を指で押さえつつ低い声で告げる。

「この馬鹿者共が……出席番号順に一人づつ各グループに入れ!順番はさっき言った通り。次もたついたら今日はISを背負ってグラウンド百周させるからな!」

 まさに鶴の一声。それまで砂糖に群がるアリのようだった女子達が蜘蛛の子を散らすが如くに移動。それぞれの専用機持ちグループは2分とかからず完成した。

「最初からそうしろ。馬鹿者共が」

 ため息を漏らす千冬さん。とにかく、これで訓練が開始できそうだ。

 

 これから、最初の実機使用訓練が始まる。

 私はうまく人に教えられるか、少し不安だった。




次回予告

秘密というものは、いつか必ずバレるものだ。
それが大きければ大きいほど、衝撃も大きくなる。
たとえそれが、小さな親切の結果でも。

次回「転生者の打算的日常」
#18 露見

いくらなんでも早すぎないか……?

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