転生者の打算的日常   作:名無しの読み専

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#14 襲撃

 クラス対抗戦の日程が張り出されてから2週間弱が経過。暦は5月に入った。

 先月末の『おりむー約束勘違い事件(By本音さん)』以来、鈴の機嫌は直るどころか連日ストップ安だ。

 鈴が一夏に会いに来る事はまずなく、廊下や学食で会っても露骨に顔を背ける。さらに、全方位に向け『あたし怒ってます』的なオーラ力……もとい、雰囲気を放っている。

 一夏も何度か話し掛けようとしたが、その度に鈴が「フシャー!」という感じに威嚇するため、そのうち諦めた。

 やはりこうなったか……。原作通りだが、当事者になると辛いな。

 

 

「一夏、来週からいよいよクラス対抗戦が始まるぞ。アリーナは試合用の設定に調整されるから、実質特訓は今日で最後だな」

 放課後、茜色に染まる空を眺めつつ、今日も訓練のため第三アリーナへ向かう。面子は一夏、箒、セシリア、私だ。

 入学から1月半が経ち、クラスメイトの興奮も収まってきたのか、最近は質問の絨毯爆撃も視線の面制圧攻撃も減少してきた。

 しかし、未だ私達が学園内において話題の対象である事に変わりはなく、訓練を行うアリーナの観客席は今日も満員御礼だろう。

 ちなみに、その席を『指定席』として販売していた二年生が先日千冬さんの制裁を受けた。レヴェッカさんによると、首謀者グループは3日間寮の自室から出てこられなかったとか。……一体何をされたのだろうか?

「IS操縦もようやく様になってきたな。今度こそ−−」

「まあ、わたくしが訓練に付き合っているんですもの。このくらいはできて当然、できない方が不自然というものですわ」

「ふん、中距離射撃型の戦闘法(メソッド)が役に立つものか。だいいち、一夏のISには射撃装備がないだろう」

 言葉を遮られた為か、棘のある言葉で箒が告げる。実際、一夏のIS『白式』には射撃装備がない。あるのは雪片弐型一本のみだ。だがそれでも−−

「そうとも限らんさ。射撃型の戦闘法を知っていれば、それに対処する方法も分かる。近接格闘型ISの使い手は、誰よりも間合いの把握と制圧に優れていなければならないと、レヴェッカさん……二年のリー先輩が言っていたよ」

「その通りです。大体、わたくしの訓練が役に立たないと言うなら、篠ノ之さんの剣術訓練なんてもっと役に立ちません。ISを使用しない訓練なんて、時間の無駄ですわ」

 我が意を得たりとばかりに箒にダメ出しするセシリア。確かにISを使わない訓練は傍から見れば無意味に映るだろう。とは言え−−

「そうとも限らない。ISとは言わばパワードスーツ。自分の体の延長線上にある物だ。生身の自分に出来ない動きがISで出来るはずがない。セシリア、君は生身で狙撃は出来ないがISを装着すれば出来る。とは言うまいね?」

「そ、それは……」

 とは言え『空を飛ぶ』という生身の人間には不可能の動きが、ISを装着すれば出来るという例外があるぞ。とは言わないが。

「うむ。その通りだ」

 言って自信満々に胸を張る箒。ちなみにこの間、一夏はほぼ空気だった。

「九十九さん!あなたはどちらの味方ですの!?」

 自分のダメ出しが論破されたセシリアが私に詰め寄る。そうだな……。

「私は基本的に中立だ。だが今は……」

 言いながらAピットのドアセンサーに触れる。指紋・静脈認証によって開放許可が下り、圧縮空気が抜けるバシュッという音と共にドアが開く。

「心情的にこいつの味方だな」

 開いたドアの先、ピットに居たのは……。

「待ってたわよ、一夏!」

 一年二組クラス代表にして中国代表候補生、鈴こと凰鈴音その人だった。

 

「貴様、どうやってここに−−」

「ここは関係者以外立入禁止ですわよ!」

 またも台詞を遮られた箒。どうやら今日はそういう日のようだ。鈴は「はっ」と挑発的な笑いを上げて自信満々に言い切る。

「あたしは関係者よ。一夏関係者。だから問題なしね」

「それを言い出すと、一組の人間全員が一夏関係者になるのだが……」

 私の呟きは届かなかったらしく、箒とセシリアから怒りのオーラが立ち昇る。

「ほほう、どういう関係かじっくり聞きたいものだな……」

「盗っ人猛々しいとはまさにこの事ですわね!」

 いつだったか言った気がするが、美人の怒り顔は実に恐い。特に静かに怒る箒の姿は、私が悪いわけではないのに思わず平身低頭してしまいそうだ。

「……おかしなことを考えているだろう、一夏」

 一夏から何か感じとったのか、箒が一夏に詰め寄る。

「いえ、何も。人斬り包丁に対する警告を発令しただけです」

「お、お前というやつはっ−−!」

 一夏に掴みかかる箒を、鈴が間に入って邪魔をする。

「今はあたしの出番。あたしが主役なの。脇役はすっこんでてよ」

「わ、脇やっ−−」

「箒、話が進まんから後にしろ。それで鈴。一夏に何の話だ」

「あ、うん。……で、一夏。反省した?」

「へ?なにが?」

 やっぱり分かっていなかった一夏。仕方なく助け舟を出す。

「いや、鈴を怒らせた事に対して申し訳無いとか、仲直りしたいとかあるだろう?」

「そう!それよ!」

「いや、そうは言ってもな九十九。鈴が避けてたんじゃねえか」

「……まあ、確かに。一夏が何度か対話を試みたが、その度に思い切り威嚇してたしな」

「あんた達ねえ……じゃあなに、一夏は女の子が放っておいてって言ったら放っておくわけ!?」

「おう」

 普通はそうだ。自分で「放っておいて」と言っておいて、本当に放っておかれたら「何で放っておくの!?」などと言う女は、男からすれば『面倒くさい奴』以外の何者でもない。

 逆に「放っておいて」と言った女を追いかけて「放っておけるかよ」と抱きしめる男など、古い恋愛映画やトレンディドラマ、あるいはラブコメアニメの中ぐらいにしか居ない。そもそも一夏に「放っておけるかよ」を求める方がおかしいのだ。

「なんか変か?」

「変かって……ああ、もうっ!」

 焦れたのか、声を荒げ頭をかく鈴。自慢の髪が台無しになるぞ?

 そこからは完全に水掛け論だった。

 「謝りなさい!」と強要する鈴に「約束は覚えてただろうが!」と一夏が反論。

 「約束の意味が違う」という鈴の言葉に、何かくだらない事を考えついたのか一夏の顔がニヤリと歪む。恐らく鈴も気づいている。

「くだらないこと考えてるでしょ!」

「一夏、それは沖縄の豚肉料理(ミミガー)だ。鈴の言ったのは『意味が』だ」

 ばれたという顔をする一夏。それに激怒した鈴が「どうあっても謝らないつもりね!?」と詰め寄る。

 「説明してくれれば謝る」と一夏が言えば、「説明したくないからここにいる」と鈴。

 だから言ったんだ。「本人目の前に『あれはプロポーズのつもりだった』と言えるのか?」と。やはり無理だったか。

 最終的に『クラス対抗戦の勝者が一つだけ何でも言う事を聞かせられる』事で双方が同意。

 最初からそうしろ、ド阿呆ども。とは口に出しては言わない。

「それで?お前が勝ったら鈴に何をさせるつもりだ?」

「決まってるだろ!約束の意味ってやつを説明してもらうぜ!」

「せ、説明は、その……」

 一夏の言葉に一瞬で顔を赤くする鈴。まあ無理もない。今の一夏の言葉は鈴からすれば『俺にプロポーズしろ』と言われているようなものだからな。

「なんだ?やめるならやめてもいいぞ?」

 一夏的には親切心だろうが、鈴にとっては逆効果だった。

「誰がやめるのよ!アンタこそ、あたしに謝る練習しておきなさいよ!」

「なんでだよ、馬鹿」

「馬鹿とは何よ馬鹿とは!この朴念仁!間抜け!アホ!馬鹿はアンタよ!」

 鈴の言葉に腹を立てたのか、一夏は言ってはいけない一言を−−

「うるさい、貧乳」

 口にした。……マズいな。

 

ドガァァンッ!!!

 

 突然の爆発音。衝撃で部屋が微かに揺れる。見れば鈴の右腕は、指先から肩までIS装甲化していた。

 全力で壁を殴り、しかし拳は壁に届いていない。そんな衝撃だ。なるほど、今のが……。

「い、言ったわね……。言ってはならないことを、言ったわね!」

 ISアーマーから紫電が走り、ぴじじっと音を立てる。やれやれ、本気で怒っているなこれは。

「い、いや、悪い。今のは俺が悪かった。すまん」

「今の『は』!?今の『も』よ!いつだってアンタが悪いのよ!」

 かなり無茶苦茶な理屈だが、今の一夏に反論の余地はない。

「ちょっとは手加減してあげようかと思ったけど、どうやら死にたいらしいわね……。いいわ、ご希望通り……全力で叩きのめしてあげる」

 最後に、今まで見た事のない鋭い視線を一夏に向け、鈴はピットから出ていった。閉まったドアのぱしゅん……という音に怯えを感じるほど、鈴の気配は鋭かった。

 壁に目をやると、特殊合金製の壁に直径30㎝はあるクレーターが出来ていた。つまり、それが出来るだけのパワーがあるという事だ。

「パワータイプですわね。それも一夏さんと同じ、近接格闘型……」

 真剣な眼差しで壁の破壊痕を見つめるセシリア。だが、一夏は別の事を考えているのか、反応がない。おそらく鈴の胸の事を言ってしまった事を後悔しているのだろう。

「中国製第三世代IS『甲龍(シェンロン)』……侮れないようだな」

「知っているのか!?九十九!」

 箒が久々に声を上げた。だが○樫・虎○なんてどこで知った?いや偶然か。

「ああ、すでに情報の収集と精査は終わっている。それを一夏に教えるつもりはないがな」

「なぜですの!?」

 納得いかないのか、私に詰め寄るセシリア。

「言ったはずだ。今の私は心情的に鈴の味方だと。あいつが不利になるような真似はせんよ」

 とは言え、やった事の責任は取らせなければな。携帯を取り出しつつ、ピットを出る。

「どこへ行く?九十九」

「なに、ここにいてはお前達が私から鈴のISの情報を聞き出そうとするだろうからな。そうなる前に退散させてもらう」

「ま、待て!つく−−」

「お待ちなさい!九十九さ−−」

 

ぱしゅん……

 

 引き留めようとする箒とセシリアを、ピットのドアがカット。ナイスプレイ、ドア。

 歩きながら、携帯の電話帳からある人物の番号を選び出して電話をかける。待つ事3コール。電話が繋がった。

『私だ』

「あ、織斑先生。村雲です。実は……」

 

 

 翌日。教室へ向かう途中、頭にコブを作った鈴が私に掴みかかってきた。

「九十九!アンタなんてことすんのよ!」

「何の事だ?ああ、お前がピットの壁を殴ってへこませた事を千冬さんに伝えたが、それか?」

「それよ!おかげで千冬さんに怒られて、反省文5枚書かされることになったじゃないの!」

「信賞必罰は世の常だ。やった事の責任は取ってこそだろう?むしろその程度で済んだ事を有難く思え。場合によっては停学もあり得たんだ」

「うっ……」

 私の言葉に二の句が継げなくなった鈴。

「代表候補生とは、いずれ国の顔になる可能性のある者達だ。自重しろ、鈴。肩書と国の名が泣くぞ」

 踵を返し教室へ向かう。鈴との会話で時間をくった。このままでは遅刻をしてしまう。

「あっ!こら、待ちなさい!」

 鈴が私を追おうとしたが、それに後ろから待ったがかかる。

「おい」

「なによ!?」

 

バシンッ!

 

 聞き返す鈴に痛恨の一撃(出席簿アタック)をしつつ、織斑先生登場である。数週間前にも見た事のある光景だ。

「もうショートホームルームの時間だ。教室に戻れ」

「ち、千冬さん……」

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ」

「は、はい!」

 千冬さんに言われ、慌てて二組の教室へ戻る鈴。やっぱり千冬さんが苦手なのだな。

「お前も早く教室へ行け、村雲」

「了解です。織斑先生」

 私も改めて教室へ歩を進める。さあ、今日も授業頑張ろう。

 

 

 試合当日、第二アリーナで行われる一年生クラス対抗戦第一試合。組合せは一夏に鈴だ。

 噂の新入生同士の戦いとあってアリーナは全席満員。通路は立見の生徒で満杯だ。入りきれなかった生徒、関係者はリアルタイムモニターで観戦すると言う。

「つくも〜ん。こっちだよ~」

 本音さんがこちらに手を振りながら私を呼んだ。でも袖が隣の娘に当たりそうになってるからやめなさい。

「すまない。待たせたかね?」

「ううん。そんなに待ってないよ~」

 席に座り、アリーナに目を向ける。そこには一夏の『白式』と鈴の『甲龍』が対峙していた。

 鈴の『甲龍』は、全体に濃桃色のアーマーと肩の横に浮く棘付き装甲(スパイク・アーマー)が特徴の機体だ。

「つくもん、つくもん」

「何かね?本音さん」

「鈴ちゃんのISって『甲龍(シェンロン)』って名前なんだよね~」

「ああ、そうだが。それがどうしたね?」

「何だか七つの珠を集めたら出てきそうだね~」

「……それは言ってはいけないよ。本音さん」

 だからあえて『こうりゅう』と呼ぶ事にする。漢字なのだし、構わないだろう。

『それでは両者、規定の位置まで移動して下さい』

 アナウンスに促され、一夏と鈴がアリーナ中央の空中で向かい合う。互いの距離は5m程。二人は開放回線(オープン・チャネル)で言葉を交わす。

「一夏、今謝るなら少しくらい痛めつけるレベルを下げてあげるわよ」

「雀の涙くらいだろ。そんなのいらねえよ。全力で来い」

「一応言っておくけど、ISの絶対防御も完璧じゃないのよ。シールドエネルギーを突破する攻撃力があれば、本体にダメージを貫通させられる」

 これは脅しでも何でもない、純然たる事実だ。情報によると、IS操縦者に直接ダメージを与えるため『だけ』の武装が存在するという。当然、競技規定違反な上、人命に危険が及ぶ。

 しかし『殺さない程度に甚振る事は可能』という現実は変わらない。そして、代表候補生クラスはそれが可能な者が殆どだ。

 一夏がセシリアを追い詰め、私が勝利を収めたのは奇跡としか言えない。そして奇跡とは、二度は続かないものだ。

『それでは両者、試合を開始してください』

 鳴り響くブザー。それが切れた瞬間、二人が動く。

 

ガギィンッ!!

 

 一夏の《雪片弐型》と鈴の両刃青龍刀《双天牙月》がぶつかり合い、一夏がその衝撃で弾き返される。

 態勢を崩した一夏がセシリア直伝の三次元躍動旋回(クロス・グリッド・ターン)で鈴を正面に捉える。

「ふうん。初撃を防ぐなんてやるじゃない。けど−−」

 鈴が《双天牙月》をバトンのように回しながら縦、横、斜めと一夏に斬り込む。

 高速回転している分遠心力で威力が上がっているため、同じ近接格闘型でもスピードタイプの白式では、捌くのも一苦労だろう。

 消耗戦になると判断したのか、一夏が一旦距離を取ろうとする。しかし……。

「それは悪手だ。一夏」

「ほえ?」

 

「−−甘いっ!」

 鈴の肩アーマーがパカッとスライドして開く。中心の球体が光った瞬間、一夏が『何か』に殴り飛ばされた。一瞬飛んだ意識を取り戻す一夏。しかし、鈴の攻勢は止まない。

「今のはジャブだからね」

 不敵な笑みを浮かべる鈴。牽制打(ジャブ)の後は、本命の一撃(ストレート)と相場が決まっている。

 

ドンッ!!

 

「ぐあっ!」

 見えない拳に殴られ、地表に叩きつけられる一夏。あれはかなり持っていかれたな。

「つくもん、今のなに〜?」

 本音さんが私の方を見ながら訊いてきた。

「あれは《衝撃砲》だよ。空間そのものに圧力をかけて砲身を生成し、余剰で発生する衝撃を砲弾として撃ち出す。私の《ヘカトンケイル》やセシリアの《ブルー・ティアーズ》と同じ第三世代兵装さ。最大の特徴は、砲身も砲弾も見えない事と、射角が事実上無制限な事だな」

「へ~。すごいんだね~」

「確かにな。だが、攻略法はある」

「たとえば〜?」

「そうだな、例えば……。む?試合が動くぞ」

 

「よくかわすじゃない。衝撃砲《龍砲》は砲身も砲弾も見えないのが特徴なのに」

「…………」

 一夏に声を掛ける鈴。実際、一夏は見えない砲身から撃ち出される見えない砲弾を、時折直撃を受けながらもかなりの回数躱していた。

 しかしそれは、空間の歪みと大気の流れをハイパーセンサーに探らせ、探知と同時に回避。という、撃たれて初めて分かる回避法だ。

 どこかで先手を打つ必要があるだろう。そしてその方法は、先週の訓練で身につけた『アレ』ぐらいしかない。

「鈴」

「なによ?」

「本気で行くからな」

 鈴を真剣な眼差しで見つめる一夏。気概に押されたか、表情にキュンと来たのか、鈴は曖昧な表情を浮かべていた。

「な、なによ……そんなこと、当たり前じゃない……。とっ、とにかくっ、格の違いってやつを見せてあげるわよ!」

 鈴が《双天牙月》を一回転させて構え直す。一夏が加速姿勢をとった。

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)。 後部スラスター翼からエネルギーを放出、それを一度内部に吸収し、圧縮して再度放出。その際の慣性エネルギーを利用し、爆発的な加速を得る高速機動戦術だ。

 現役時代の千冬さんが最も得意とし、これと『零落白夜』のコンボで一時代を築いた事は有名だ。

「うおおおおっ!」

「っ!?」

 一瞬で距離を詰め、《雪片弐型》の『零落白夜』を展開する一夏。その刃が鈴を捉えるかと思われたその時。

 

ズドオオンッ!!!

 

 突如、大きな衝撃がアリーナ全体に走る。ついに来たか。

「「「きゃああああっ!!」」」

 突然の爆発音と衝撃に、観客席はパニックに陥った。生徒達はアリーナから避難しようと我先に出口へと殺到する。しかし……。

「えっ!?うそ!?隔壁が閉じてる!」

「なんで!?」

「だめ!開かない!」

「助けて!ここから出してよ!」

 隔壁が閉じ、しかも開かないという非常事態に、生徒達は混乱の度合いを更に深める。蹲って泣き出す者、隔壁を叩いて必死に助けを呼ぶ者、友人と抱き合ってただ震えている者など反応は様々だ。

 一方アリーナでは、一夏と鈴が乱入者と戦っている。

 私の知る原作同様、やって来たのは『全身装甲(フル・スキン)』のIS。無人IS『ゴーレム』だ。だが……。

「馬鹿な……何故……」

 そこにいたのは『二機』の無人ISだった。

 

 

 こうして、無人ISによる襲撃が発生した。

 私は、この時初めて気が付いた。既に原作との乖離が始まっている事に。




次回予告

始まった乖離。
崩れた前提。
この先、私がとるべき道は……。

次回「転生者の打算的日常」
#15 選択

たとえ誤りだったとしても、私は……。

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