転生者の打算的日常   作:名無しの読み専

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外伝アンケートへの投票、ありがとうございました。予想より遥かに多く投票して頂けた事に、小生驚愕と感動を隠せませんでした、はい。

という訳で、最も得票数の多かった日常短編集をお送りします。

それでは、肩の力を抜いてお楽しみ下さい。




#EX 短編集 日常5

EP−01 渾名の理由

 

 あの日の昼休憩。ふと気になったのか、一夏がこんな事を訊いてきた。

「のほほんさんさ、以前九十九の事を『つくもん』って呼んでただろ?」

「ああ、呼んでたな」

「今でも2人っきりの時とか、たま〜に呼ぶよ〜」

「「で、それがどうした(の)?」」

「いや、そんな可愛い系のあだ名で呼ぶのを、よく九十九が受け入れたなって思ってさ」

「ああ……それには丘程には高く、池程には深い理由があってな」

「低いし浅い!?でも気になるから聞いていいか!?」

「では話そう。あれはそう、私が本音と同室だった頃まで遡る……」

 

 当時、私と本音は同居するにあたってのハウスルールの制定を行っていた。

「シャワールームの使用順はどうする?私が先でいいかね?」

「それじゃ〜後で使うわたしがどう使っていいのか困るよ〜」

「その言葉、そのまま返すよ本音さん」

 結果、シャワールームは主に私が使い、本音は大浴場を主に使う事になった。

「まあ、ここが落とし所であろうよ」

「そだね〜」

 他にも、冷蔵庫の使用区分(向かって右が本音、左が私の使用範囲)や寝床の位置(扉側が本音、窓側が私)、着替え場所(私がシャワールームを使う)等を話し合いを重ねて決定して行った。

「ふむ、大まかこんなものか。何か異議は?」

「ないよ〜。じゃあ、つくもん。ご飯いこ〜」

「了解だ。と言いたい所だが、1つ意義ありだ本音さん」

「ほえ?な〜に?」

 コテンと首を傾げる本音。今見たら(くっそ可愛い!)と思うだろうが、当時の私は(うん、和む)位にしか思っていなかった。

 

 閑話休題(それはいいとして)

 

「その、なんだ。私を『つくもん』と呼ぶのは……ちょっと遠慮して欲しいんだが」

「え〜?かわいいじゃん、つくもん」

「いや、私にどこぞのゆるキャラの様な可愛さを求められても困る。もうちょっと何か無いか?」

 私がそう言うと、本音は「ん〜……」と思案顔を浮かべた。それから暫し本音は考え込み、何かを思いついたような顔で「あっ!」と声を上げた。

「おっ、何か良いのが浮かんだかね?」

「うん。つくもんは『村雲九十九』がお名前だよね」

「そうだな」

「だからね、名字の方から取って『むらむ−−」

「あっ、『つくもん』でお願いします」

 私の呼び方に関する交渉で私が折れたのは、これが最初で最後だった。

 

「と、まあ。そんな感じで『つくもん』に決まったんだ」

「ああ……うん。確かにそのあだ名は拙いよな……」

 何とも言い難い顔で頷く一夏。そりゃあ、誰だって年中発情してそうな渾名なんて勘弁願いたいだろう。

 一夏も名字に『(むら)』が入っているのだ。下手したら本音にそう呼ばれていたかも知れんのだしな。

 

 翌日−−

「やっほー、むらむら……プッ」

「おはようございます、むらむらさん……ふふっ」

「調子はどうだ?むらむら……くくくっ」

「今日の模擬戦は私の相手をしてもらうぞ、むらむら……ふ、ふふふ」

「これ、お姉ちゃんに渡しておいてください、むらむらさん……クスクス」

「一夏あああっ!貴様、話したな!話したなあああっ!?」

「ご、ごめんって!なんかいい話のネタ無いかって探してたらつい喋っちまって……」

「その舌引っこ抜くぞ貴様あっ!」

 結局その日一日、私はラヴァーズ達に『むらむら』と呼ばれ続ける事になった。二度と一夏にこの手の話はしないぞ、くそっ!

 

 

EP−02 本音、デートの待ち合わせにて

 

 布仏本音。狐ともクズリとも取れるチャームの付いたヘアゴムで小さく纏めた薄紅の長い髪。どこか眠たげに半分閉じられた可愛らしい目。

 150cm程の小柄な体躯ながら、非常にメリハリの効いたボディ。のほほんとした雰囲気はまさに癒し系美少女と言っていいだろう。

 そんな彼女がフンフンと鼻歌を歌いながら立っているのはJR新世紀町駅北口。今、彼女はデートの待ち合わせ中なのだ。

「ん〜……まだかな〜。そろそろ来ると思うんだけど……」

 言いながら駅のホームに目を向けるが、待ち人が来る気配はまだ無い。『今どこ?』とLINEを送ると、即座に『今平成町駅(1つ前の駅)を出た。もう少し待ってくれ』と返信が来た。

 まあ良い、待つのもデートの醍醐味だ。とスマホをバッグに入れ直す。と、後ろから人が近づいてくる気配がした。

(あ~、またナンパかな〜?いい加減にして欲しいな〜)

 九十九直伝ナンパ回避術(一言で相手の心を折れ)を披露すべく振り返ったその先に居たのは−−

「あら?布仏さんじゃない。お久しぶりねぇ」

 『悪役令嬢』そのものの雰囲気を纏った、かつての級友だった。

「あ、蔵江洲(くらえす)さん……」

 

 蔵江洲里奈(くらえす りな)。日本有数の運送会社『蔵江洲通運』社長令嬢。

 本音とは中学3年間を同じクラスで過ごしたが、人を嫌う事が滅多にない本音をして『無理』と言わしめる程の、我儘で高慢チキな少女だ。

 気に入らない相手が居れば、取り巻き達と徒党を組んで犯罪紛いの嫌がらせを行い、中には自主退学に追い込まれた者もいる程である。そして、それらの悪事の証拠は自分で、もしくは親の力で揉み消していたため、問題にならなかった。

 まさしく『悪役令嬢』と言っていいだろう最低女。それが彼女、蔵江洲里奈である。

(もし、当時の学校につくもが通っていたら、悪事の証拠を大量に叩きつけられて破滅してただろうなぁ……)

 ボーッとそんな事を考えていたら、里奈が怒鳴りつけてきた。

「ちょっと!聞いてるの!?」

「ふえっ!?ごめん、ちょっとボーッとしてた〜」

「まったく……相変わらず鈍臭いんだから……。ここで何してんのって訊いたのよ」

「あ、うん。ちょっと待ち合わせしてるの〜」

「そう。私もなの。これから彼とデートに行くのよ。医大生の彼と、ね」

 自慢げにフンと胸を反らす里奈。本音はそう言えば彼女には何かとマウントを取りに行く悪癖があったなぁ。と思い出していた。

 案の定「で、あなたは?」と訊いてきた里奈に「同級生の男の子」とだけ答えた。

(つくも曰く、『マウント取る系の相手には、相手の都合良く解釈できる言い回しで伝えろ。それで満足するから』だっけ〜)

 アドバイス通りに言ってみただけだが、里奈は大層満足げに「へー、そう」とだけ言った。鼻で笑われたのが気に食わないが、表情には出していない。

 と、そこへ駅のホームから一人の男性が駆け寄ってきた。

「おーい、里奈!」

 手を振りながら里奈を呼ぶ様子から、この男性が里奈の言う『医大生の彼』なのだろう。

「遅い!何してたのよ!」

「ごめんごめん。ちょっとそこで超有名人に会ってさ。サイン貰って来てたんだよ」

「ほら」と彼がスマホケースの裏を見せる。そこには、昨日までは無かった誰かのサインがあった。

「で、誰のサインよコレ?」

「『二人目(ザ・セカンド)』村雲九十九だよ!こんな所で会えるとか、超運良いぜ!」

「あ、そう」

 興奮している彼と違い、里奈は心底どうでもよさそうだ。

(彼が来たって事は、多分同じ電車に布仏さんの彼氏も乗ってたはず……どんなショボ男か見てあげるわ!)

「本音」

 里奈が黒い感情に浸っていると、そこに本音を呼ぶ男の声が届いた。里奈は声のした方に目をやり……絶句した。

「え?」

 そこに現れたのは、ニュースに疎い里奈ですら、ここ数日テレビで顔を見ない事がない程の有名人。

 先日、フランスで起きたテロ事件を解決し、お茶の間の話題を独占している少年。村雲九十九その人だったからだ。

「すまない、遅れた」

「え?え?」

「大丈夫、気にしてないよ〜。ジュース1本分くらいしか」

「……OK、奢ろう。ん?貴方は先程の……」

「は、はい!さっきはどうも、ありがとうございました!」

「はい、どうも。さ、行こうか本音」

「うん!」

 呆然とする里奈を他所に、九十九と本音は腕を組みながら駅を出て行った。

(あの子、待ち合わせ相手は『同級生の男の子』って言ったわよね?それで現れたのがあの村雲九十九……。村雲九十九はIS学園に通ってる……って事は、あの子もIS学園生!?何も言わないから私と同じで落ちたものと……!)

 里奈は知らない事だが、IS学園の合否は合格者のみに書類にて通知される。そして、その書類にはこの一文が書かれている。

『入学式まで自分がIS学園に合格した事を両親、担任教諭以外に漏らさない事。これは、貴女の身を守るために必要な事です』

 つまり、本音は何も言わなかったのではなく、何も言えなかったのだ。

(ま、まあ?どうせあの男が持て囃されるのも今の内だし?いいのは顔くらいで他はパッとしなさそうだし?私は医大生の彼氏捕まえてるし?結局勝ち組は私って事よね!)

 そう考えた里奈だったが、その考えは隣の彼に打ち砕かれた。

「凄いんだぜ、村雲九十九は。あの年でラグナロク・コーポレーションIS開発部パイロット課の主任なんだ!」

「……はい?」

 目を輝かせながら彼は続けた。彼の伯父(ラグナロク総務課長)によると、九十九は齢16にしてラグナロクIS開発部パイロット課のNo.2に就いていて、IS学園卒業から一年以内に課長(No.1)に昇進するのはほぼ確実。

 現時点で年収は『国産車が新車で毎年買える』位あり、大きな失敗さえしなければ、30代での社長就任も夢物語ではないらしい。

「そうなれば、年収1億超え間違いないってさ。それに比べて、俺は行けて年収2000万、それも50過ぎてやっと。だからなぁ」

「え、は?」

「他にも、ラグナロクの企業代表としてモンド・グロッソにも出るだろうし、自社製品のプレゼンターとして世界中飛び回って活動するのは確実だって伯父さん言ってたよ。分かるか里奈?彼、あの年でもう『成功者』なんだぜ?もう嫉妬の念も浮かばねえよ」

(そ、そんな……!)

 里奈は膝から崩れ落ちた。胸くらいしか取り柄のない脳味噌お花畑ののほほん娘だと思っていた相手が、その実あらゆる面で自分など歯牙にもかけない遥かな高みに居る事に、プライドを打ち砕かれたからだ。

「り、里奈?」

「……ゴメン、私帰るね。デートって気分じゃなくなっちゃった」

「お、おう……」

 ふらりと立ち上がった里奈はそのまま駅へ入っていった。眼に、暗い情念の炎を宿して。

 

 一月後−−

 私は、新聞に少々信じられない記事を見つけた。日本有数の運送会社『蔵江洲通運』がラグナロクに敵対的買収を仕掛け、結果大敗。経営赤字が膨れ上がって倒産したというものだ。

 しかも、敵対的買収を仕掛けた理由が社長の娘の「あの会社が気に入らないから潰して」の一言らしい。

「そんな事を言う娘も娘だが、それでうちに仕掛けてくる社長も社長だな……」

 結果、社長一族は多額の借金を背負って破滅。娘は借金返済のために望まぬ結婚を強いられ、社長夫妻は行方不明らしい。

「まあ、自業自得の結末だな。……ん?この娘の顔、何処かで……?いや、気のせいだな」

「つくも、朝ご飯できたよ〜」

「早く食べないと冷めちゃうよー」

「ああ、今行く」

 今見たニュースを私に関係ない事と頭から追い出し、私は二人のお手製朝食を取りにテーブルへ向かった。

 その後蔵江洲一家がどうなったかって?さあ?知らないし、知った事ではないよ。

 

 

EP−03 大変化!劇的ビフォーアフター

 

 IS学園一年一組女子生徒の多くは、現在困惑の極みにあった。というのも、イギリスから帰ってきてからの一夏とラヴァーズの様子が明らかに変わったからだ。

 例えば、今目の前で一夏が箒と鈴に腕を組まれて食堂に向かっているのだが、以前なら他のメンバーが「協定違反だ」と詰め寄っていた筈だが、それが−−

「帰りはお前たちに譲るさ」

「今はアタシ達のターンってことで」

「では、次の二人は残りのわたくし達で今の内に決めておきましょう」

「どうする?無論、譲る気はないぞ」

「……ここは、ジャンケンで」

 と、まあこんな感じに、一斉告白事件以降薄れて来ていた刺々しい雰囲気が完全に消え、今や九十九トリオに匹敵せんばかりの仲の良さを見せているのだ。

(((一体、イギリスに行ってる間に何が!?)))

 彼女達は、事情を知っているだろう九十九達に話を聞く事にした。

 

 IS学園一年生寮、大食堂。

「と、いう訳で!」

「「「教えて!村雲くん!」」」

「残念だが、箝口令が敷かれている。イギリスの事件に関しては何も−−「そっちじゃなくて!」ん?」

 相川さんを始めとした一組女子数名が私の所に来て「イギリスで何があったか言え」と言うので上のように返したら、どうも彼女達が聞きたいのはそこではないらしい。

「イギリスから帰ってきてからの篠ノ之さん達の事よ!何あれ!?」

「あれ……とは?」

「なんか篠ノ之さんから色気を感じるようになったし!」

「鈴ちゃんからバブみが漏れてるし!」

「セシリアのエロさが急上昇したし!」

「ラウラさんの険が薄れて話しかけやすくなったし!何なら話しかけてくるし!」

「簪さんの根暗オーラがなりを潜めて可愛くなったし!」

「「「教えて!何があったの!?」」」

「あ~……」

 そっちか〜。まあ気になるよな、ほんの2週間程見なかっただけでここまでの劇的ビフォーアフターに遭遇したら。

 ただ、『何があった?』と訊かれても『ナニがあった』としか言いようが無いし、彼女達の名誉を思えば私から軽々に話すという訳にもいかんし……。どうすればいい?

 

 案1.「本人に訊け」……却下。ほんの数日前の事を赤裸々カミングアウト出来る程、まだあいつ等に余裕はない。

 案2.「シャルか本音に訊け」……却下。彼女達に任せるのは私の気が引ける。

 案3.「想像に任せる」……採用。これならあいつ等の名誉を守りつつ、私に累が及ばないように出来る!……筈だ。

(この間0.25秒)

 

「何があったのかは……君達の想像に任せる」

 そう言った途端、周りにいた女子達から黄色い悲鳴が上がる。

「そうなのね!?やっぱりそうなのね!?」

「あの子達ついに……()()()()()()のね!?」

「何があったっていうかナニがあったのね!そうなのね!?」

 どうもある程度予想はしていたようだが、それが答えだという事に気づいて荒ぶる女子数名。……って、ちょっと待て!そんなに騒いだら一夏ラヴァーズに聞こえて−−

「「「…………(ピキピキ)」」」

 た。ここから見て分かる程に青筋を立てている。

(アチャー……)

 顔を手で覆い、天を仰ぐ。これ絶対文句言いに来る奴だよ、何ならもうこっち来てるし。

 

 九十九が何を言ったのかは聞こえなかったが、周りにいた女子数名が「ヤッた」だの「ナニがあった」だのと言っている事から、箒達は九十九があの夜の事を端的に語ったのだ、と結論づけた。

 これは文句の一つも言わねばならぬ。そう思って、箒達は九十九の座るテーブルに近付いた……のがいけなかった。

「ちょっと九十九!アンタ「あ!鈴ちゃん!皆も!丁度良い所に来たわ!」−−って、へ?」

 相川さんに肩をガシッと掴まれ、目を白黒させる鈴。他のラヴァーズもそれぞれ肩を組まれたり手を握られたり、あるいは抱きつかれたりしてその動きを封じられている。

「まあ?村雲くんの発言でおおよそ予測はついてるけどさ?」

「こういう話はやっぱり本人に聞かないとねー。という訳で、ちょっとあっちのテーブル、行こっか」

「へ?いや、ちょ、ちょっと!?」

「大丈夫、大丈夫。すこーしだけ、体験談をしてくれれば良いってだけだから!」

「ま、待て!いくらなんでもそれは……!」

「「「いいからいいから。ほら、行くよ」」」

「「「つ、九十九(さん)!助け「無理」−−即答!?って、あーー……」」」

 九十九に助けを求めるも、素気ない返事を返されてそのままズルズルと引き摺られていく箒達。九十九にできるのは彼女達に合掌し、無事切り抜ける事を祈る位だった。

 その後、彼女達が一体何を白状させられたかは……本人達の名誉の為に敢えて語らない。

 

 

EP−04 ひらがなポーカー

 

 特に何か用がある訳でもない昼下がり。本音からまた変わった遊びの提案があった。

「ひらがなポーカー?」

「うん!もう買ってあるんだ〜」

 そう言って本音が取り出したのはトランプサイズのカードセット。カードは全部で70枚。

 あ〜んのカード、特によく使うひらがなは2枚あるようだ。それから小文字と長音記号に、トランプでいうジョーカーの『◯』と笑いを意味する『w』、濁点と半濁点は透明のフィルムで追加する仕様のようだ。

 遊び方はポーカーとほぼ同じ。ルールもかなり緩く、言葉の文字数が多いほど得点が上がる得点制(最高50点)、それぞれが出したワードの中で好きだと思った物に投票する得票制、勝ち負けを設けずにただ面白い言葉を作って遊ぶフリープレイも可能らしい。

「へー、楽しそうだね」

「何かやらないといけない事もないし、やってみようか」

 という訳で、プレイ開始だ。

 

「できた〜!」

「僕も」

「よし、これで行こう。では……」

「「「オープン!」」」

 第一戦、それぞれが作った単語は−−

 

 本音『おとうそん』

 シャル『なんでさw』

 私『かっぱむし』

 

「お、おとうそん……おとうそんって……!」

「なんでさが出来た事になんでさと言いたい」

「かっぱむしってなに〜?かっぱっぽい見た目の虫?」

「いや、漢字で書くと『河童無視(こう)』だ」

「「河童さん無視されちゃった!?」」

 勝者、私。

 

 第二戦は、ちょっとした奇跡が起きた。

 

 本音『つなほしい』

 シャル『あとまよも』

 私『おっけーだ』

 

「「「なんか会話が成立した!?」」」

 勝者、全員。

 

 第三戦は、とんでもないカオスになった。

 

 本音『わぬょっひ』

 シャル『ふむうんけ』

 私『ありせーき』

 

「「「……ナニコレ」」」

「揃いも揃って意味不明だな。わぬょっひって何だ?」

「テニスラケットで粘土を叩いた時の擬音だよ〜」

「そんな音するか!?……ふむうんけは?」

「フムウン一家の事……だよ?」

「こじつけ感が凄いな」

「九十九のだってそうじゃない」

「ありせーきってなに〜?」

「……オーストラリアに生息する、ミツツボアリの腹の蜜(甘くて美味しい)を使ったミルクセーキだ」

「明らかにこじつけなのにそれっぽいのがなんとも……」

 勝者、本音。

 

 最終戦。

 

(こ、これは!?)

 今、私の手元で今日最高の奇跡が起きていた。

「僕は3枚チェンジで」

「わたしは2枚チェンジ〜」

「九十九はどうするの?」

「ノーチェンジだ」

「おっけ〜。じゃあ、せーの!」

「「「オープン!」」」

 

 本音『しまめいん』

 シャル『はなとれる』

 私『わだあきこ』

 

「どうだ!見たか、この奇跡の手札を!」

「ウソ!?ホントにこれを一回で!?」

「まさかの『ゴッドねーちゃん』降臨!?もう優勝だよこれ〜」

 勝者、私。(本日の最優秀単語(MVW)は『わだあきこ』に決定)

 

「いやー、結構楽しいなこれ。もっと流行ればいいのに、実に勿体無い」

「じゃ〜、手始めに一組の皆に流行らせよ〜」

 という本音の一言で、ひらがなポーカーは一年一組に紹介され急速に浸透。そこから学年全体、学園全体へと広がりを見せ、最終的には『あの村雲九十九も大絶賛の脳トレゲーム』として日本全国にブームの波が広がっていく事となるのだが−−

「いいな。皆でやるともっと楽しいだろうし」

 そんな事になるとは露知らず、私は軽い気持ちで本音に同意するのだった。




本編の方はちょっとプロットが纏りきらずに難儀しておりますが、エタるつもりは欠片もありませんので、どうか長い目で見て下さい。

それでは、今回はこの辺で。

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