#EX 短編集 日常2
EP−01 特訓の日々
二人の転入生がやって来る少し前、寮食堂で一夏ラヴァーズ+本音さんとの食事中、ふと思い出したという感じで鈴が訊いてきた。
「そういえば、九十九が専用機を受け取ったのっていつ?」
「IS学園入学の一月前だが、それがどうした?」
「受け取った後は何してたの?」
ちらりと見渡すと、他のメンバーも聞きたそうにしていた。
「入学前日までラグナロクで特訓していた」
「どんな特訓だったの〜?」
「そうだな……」
私はラグナロク・コーポレーションでの特訓の日々を思い返した。
♢
「うん、だいぶ良くなってきたわね。じゃあ今日はこれまで。お疲れさま!」
「はい。ありがとうございました」
『フェンリル』を受領してから一週間。私はラグナロクに泊まり込みでISの訓練をしていた。
特訓終了を宣言した教師役のルイズさんに頭を下げて、私はラグナロク・コーポレーション専用のアリーナを後にする。
ルイズ・ヴァリエール・平賀。元フランス代表候補生にしてラグナロク・コーポレーション所属のテストパイロット。そして私のISの師匠である。
高い技術と豊富な知識を併せ持ち、パイロットとしても指導教官としても非常に優秀な人だ。
その美貌と凛とした佇まいに、社内外を問わずファンは多い。
が、旦那さんが絡むと途端に残念な感じになる。例えばこんな風に……。
♢
ズドォンッ!ズドォンッ!
「「ぎいやあぁぁっ!」」
爆炎が支配するアリーナを全力疾走する二人の男。一人は私こと村雲九十九、もう一人は。
「今度は何やらかしたんですか!?才人さん!」
「ちっ、違う!オレは無実だ!」
平賀才人。ルイズ・ヴァリエール・平賀の夫であり、ルイズ専用『ラファール・リヴァイブ』の主任整備士。
同姓同名の『神の左手』同様何かとToLOVEるを巻き起こしては、ルイズさんにグレネードを撃ち込まれながら追い掛け回される日々を過ごす、うらやまけしからん苦労人だ。
「なにが無実よ!?寝子の胸を思いっきり触っといて!」
「だからあれは彼女がこけそうになってたから「言い訳無用!」って聞けよ!」
ズドォンッ!ズドォンッ!
こうして言い合っている間も当然全力疾走の最中だし、ルイズさんからのグレネード乱射はやむ気配を見せない。
走りながら話を聞くと、才人さんの同僚で同じ整備士の
「有罪とは言い難いですが100%悪くないとも言い難いですね!と言うか、私完全にとばっちりじゃないですか!体力作りのランニングが気づけば強制全力疾走とか何の冗談ですか!?」
ズドォンッ!ズドォンッ!
「ごめん!それについてはホントごめん!」
全力疾走しながら全力の謝罪をする才人さん。その後方上空でルイズさんが吼える。
「寝子も寝子よ!まんざらでもなさそうな顔して!そんなに大きい方がいいのかぁぁっ!」
「ルイズさん!?ひょっとして単に羨ましいだけでしょ!?『触った事に気づける位ある』寝子さんが!」
「あああっ!うるさいうるさいうるさぁぁぁいっ!!」
ズドォンッ!ズドォンッ!ズドォンッ!
更に激しくなる砲火。完全に見境をなくしたルイズさんの砲撃が至近距離に迫る。
「ちょっと九十九君んんん!火に油注いでどうすんのぉぉぉっ!?」
「すみません!それについてはホントすみま……(ズドォンッ!)どわあっ!?」
「逃げるな!」
「「逃げるわ!(ズドォンッ!)ってぎゃあぁぁっ!!」」
結局この日、強制全力疾走から解放されたのはルイズ専用『ラファール』の弾薬が切れた開始30分後だった。
♢
「とまあこんな感じで、訓練と痴話喧嘩のとばっちりが7:3の毎日だったよ」
「「うわぁ……」」
私の話を聞いて、顔を引きつらせる一夏ラヴァーズ。
「他にも『秘書課の娘に色目を使った』とかで、乗馬鞭持ったルイズさんが才人さんを追いかけ回してる所に出くわして、何故か私がぶたれたり」
「いたそ〜」
「あと、専用『ラファール』の整備中に高い所にある物を取ろうとしてバランスを崩したルイズさんを才人さんが助けた事があったんだが、『胸を触ったのに全く気づかなかったから』と言って才人さんに手近にあった空き缶を投げて……」
「あ、なんか展開読めたわ」
「それを躱した才人さんの後ろのドアから整備室に入った私に当たったり」
「やっぱり……」
「昼食時に不機嫌そうな顔をしていたので何かあったのか訊いたら……」
「どうなりましたの?」
「『フェンリル』の調整が終わったと整備課の人が報告に来るまでの3時間、延々才人さんに関する愚痴と惚気に付き合わされた」
「た、大変ですわね……」
私の話を聞いた面々がセシリアの相槌に頷く。
「まあ、あの人もそれさえなければ極めて優秀なんだが……」
ラグナロク・コーポレーションの社員はほぼ全員『性格に難はあるが腕は超一流』というどこかで聞いた事のあるような人選で集められた人達だから、今さら何を言っても遅いだろう。
私に出来る事は、そっと溜息をつく以外になかった。
その夜、私の前に一人の青年が現れた。
フード付きパーカーにデニム地のズボン、背に細身の大剣を背負った同年代に見える男だ。と言うか、なんだかよく知った顔なんだが……。
その男が私に近づき、肩を叩いてポツリと一言。
「お前も大変だな」
「あ……」
ガバアッ!
「アンタが言うな!」
シーン……
「ああ、そうだった。本音さんは相川さんの所にお泊りだったな」
ルームメイトの驚きの声が上がらなかった理由を思い出し、同時に気恥ずかしくなった。
時計は午前2時を回った所。もうひと眠りはできるな。
私はもう一度ベッドに倒れ込んだ。あの「見知った顔に似た青年」がまた出てこないように祈りながら。
EP−02 IS学園男子生徒の憂鬱
多くの学校では6月に入ると衣替えを行う。それはIS学園でも例外ではない。
「とは言え、男の夏服などこんな物か」
支給された開襟シャツに袖を通し、夏用スラックスをはく。仕立てが高級である事以外はどこにでもありそうな組合せだ。
姿見でおかしな所がないかチェックし、本音さんに声をかける。
「そろそろ行こうか、本音さん」
「うん!準備万端だよ~!」
と言って脱衣所から現れた本音さんの格好は、一見いつもと変わらないダル袖スタイル。
だが本人曰く「ちゃんと夏仕様だよ~」らしい。どこがどう違うのかと良く見てみると、袖の中ほどにファスナーが。これは一体?
「暑い時は袖が取れるようになってるんだ〜♪」
「……最初から半袖を着るという選択肢は?」
「ない(キリッ)」
カッコよく決めたつもりなのだろうが、いかんせん小柄なので可愛さの方が立っていた。
「まあ、君がそれでいいならいいか。さあ、行こうか」
「うん!」
部屋を出て食堂へ向かう途中、鈴と出会った。夜更かしでもしたのか、半分瞼の閉じたその顔はいかにも眠たそうだ。
「あ、九十九。おふぁよー」
「おはよう、鈴。ところで、何故お前は冬服を着てるんだ?」
「え?」
私に言われて自分の姿を見る鈴。そして自分の着ている制服が冬服だと気づいて慌てる。
「や、やあね!わざとよ!キャラを衣替えしたのよ!ドジっ娘に!」
「上手い事言ったつもりか?いいから早く着替えて来い」
結局、夏服への衣替えに時間のかかった鈴は朝食を摂りそこねた。ご愁傷様。
♢
知っているとは思うが、IS学園は女子校だ。なぜなら『ISを動かせるのは(基本的に)女だけ』だからだ。
そして、IS学園に入学して来る女子の多くはIS教育の充実した私立の女子中出身者である。
また、出身校が共学校だったとしても、多くの共学校にはIS学園進学希望者のみを集めたクラスが必ず各学年に1クラスはあり、IS学園に入学してくるのはそこに在席していた子がほとんどだ。
そういう女子だけの空間で育ち、同年代の男の好奇や邪念に満ちた視線を受けた事が極端に少ない女子が集まるとどうなるかと言うと……。
「はー、今日はあっついねー」
ブラウスの胸元を大きく開け、下敷きを団扇代わりに風を送り込む子。谷間が見えそうになっている。
「もうスカートの中蒸れちゃって仕方ないよ」
スカートの裾を掴み、バサバサと上下させる子。さっきから下着がちらちら見えている。
「汗がベタベタして気持ち悪い……」
ブラウスの中に手を入れて制汗スプレーを使う子。腕でブラウスが捲れ上がり、お腹がほぼ丸出しだ。
はっきり言おう。目の毒だ。
「九十九……」
「言うな一夏。私も困っている」
同年代女子のあられもない姿に辟易する私と一夏。せめてもう少し人目を憚ってくれないだろうか。こちらは健全な思春期男子なのだ。興味がないと言ったら嘘になる。
そのくせこちらが僅かでも彼女達に目を向けると、彼女達は慌てて胸元を閉じ、スカートを押さえ、お腹を隠す。顔を真っ赤にしてだ。
「恥ずかしがるくらいなら最初からするな。と言いたいが……」
「何でチラッと見ただけで気付くんだろうな?」
「『男のチラ見は女のガン見』なんだよ~。つくもん、おりむー」
隣の本音さんがジト目で言ってきた。心なしか不機嫌そうだ。
「不埒だぞ。お前たち」
箒が私達に非難の声を浴びせる。視線は一夏にしか行ってないが。
「と、言われてもなぁ」
困ったように一夏が呟く。それに私が頷いて答える。
「どこを向いてもいるのは女子。どこに視線を固定しろと?」
重ねて言うがIS学園は女子校だ。私達という
前世での学生時代、衣替えの季節になると女子の夏服から透ける下着の色とラインに興奮した覚えが少なからずある。が、あくまでそれは男女比が半々程度だからこそだ。周り全部が薄着の女子など却って拷問だ。何処にも目のやり場がないのだから。
「下を向いておけばいいだろう」
『何を馬鹿な事を』と言わんばかりに鼻を鳴らす箒。
「授業中、黒板を見るなって言うのかよ」
「うっ……な、なら−−」
「上を向けと言うなら却下だ。下を向くのと同じで黒板が見えんし、何より首を痛める」
「てか、そんなことしてたら千冬姉に殺されるじゃねえか」
「じゃあど~するの~?」
「ふむ……」
他の女子生徒に不快感を与えず、かつきちんと授業が受けられる顔の向けどころと言うと……。
「村雲」
「何でしょう?織斑先生」
授業中、千冬さんが私に近づき声をかけてきた。その声には僅かに不審感がにじんでいる。
「授業中、私の顔と黒板を交互に見ていたな。何か質問か?」
「いえ、他の女子生徒に不快感を与えず授業を受けられる顔の向けどころを探した結果……」
ズゴン!ガンッ!
私の後ろ頭に千冬さんが拳骨を入れた。その衝撃で、私は前に勢い良く倒れ込んで机に顔面を強打する。
「グハアッ!?の、脳が揺れる……顔痛い……」
「私をセーフティゾーンにするな、馬鹿者」
「つくもん、無茶しやがって……」
私の考えた方法は、どうやら『たった一つの冴えたやり方』では無かったようだ。
♢
夕食時の寮の廊下を歩いていると、食堂に向かう女子から声をかけられる時があるのだが、その時もその時で困った事態になる。特に女子が何人かで集まった時などは。
「あっ、村雲君。いま帰り?一緒に夕ごはん食べない?」
「え~?桜花って村雲くん派?意外だなー」
「村雲君おかえりなさい。織斑君は?」
「一緒じゃないの?」
私を見かけた途端、ゾロゾロと集まってくる部屋着の女子。
Tシャツにズボンならまだ良い方で、タンクトップにホットパンツだのサイズ大きめのパーカー一枚だのキャミソールワンピースだのと、教室とは別の意味で目のやり場に困る。ここは逃げの一手だな。
「いや、まず着替えたいのだが……」
「そんなの後でいいじゃん。ほら、行こ!」
言うが早いか、私の腕に組みつく女子。腕に当たる感触が理性を削る。
「ワァオ、桜花ってば大胆」
「あ!じゃあ私も一緒に行く!村雲君に聞きたい事あったんだー♪」
「私も聞きたい事あるんだ。織斑君の事で!」
「本人に「聞けない事だから村雲君に聞くの!」……」
気付けば両腕に一人づつ女子が組み付いていて身動きが取れなくなっていた。
「じゃあ、レッツゴー!」
「「「おー!」」」
そのまま引きずられるように食堂へ向かう私。このままではまずい。何処かに救いの使徒はいないかと視線を彷徨わせると、こちらにやって来る本音さんと目があった。
『助けてくれないか?』という思いを込めた視線を本音さんへ向ける。届けこの想い!
「……フンッ(むっす~)」
私の視線を受けた本音さんは、不機嫌そうなふくれっ面をプイッと背けた。どうやらこの世界に神はいないらしい。
結局私は大勢の女子から質問攻めに会い、私自身の事から一夏との面白エピソードまで根掘り葉掘り聞かれる事になった。
部屋に帰る頃にはクタクタに疲れ果て、何をするのも億劫だった。シャワーと着替えを手早く終わらせて、ベッドに倒れ込む。今日はよく眠れそうだ。
ふと気付くと、私の前に二人組の男がいた。
ギターを携えた長身の男と、黒いハットを被ってマイクを持った小太りの男だ。はて?この二人どこかで……。
と、おもむろに長身の男がギターをかき鳴らし始め、小太りの男がマイクを構える。
「♪もしかしてだけど〜もしかしてだけど〜」
「♪結構いろいろ我慢してんじゃないの〜?」
「「♪そういうことだろ」」
「お……」
ガバアッ!
「大きなお世話だ!」
「ひゃあっ!つ、つくもん?ど~したの?」
ツッコミを入れながら飛び起きる。本音さんが驚いてこちらに振り向く。ある意味いつもの光景だ。
「いや、またへんてこな夢を見てね」
「最近あんまり驚けなくなってきたよ~」
「人間は慣れる生き物だからね。ところで、今何時かね?」
「3時だよ〜」
「ふむ……」
夢のインパクトが強すぎて眠気が吹き飛んでしまったようだ。もう眠れそうに無い。ん?そういえば……。
「君も随分と早起きだね。珍しい事も−−」
「私はこれから寝るの〜♪」
「前言撤回。いつもの君だ」
本音さんの睡眠を邪魔しないよう、静かに読書をしながらふと考える。
『♪結構いろいろ我慢してんじゃないの?』
夢の中の二人組に言われた一言は、ある意味で的を射ていた。
女同士のエロトークを聞かされるのはいたたまれない気分になるし、何かというとスキンシップ過剰な子がいるし、だと言うのに欲に任せて彼女達に手を出せば、社会的に死ぬ事になるのは確実に私の方。
いろいろ我慢してんじゃないの?と言われれば。
「そういう事だよ」
としか言えなかった。
EP−03 九十九厳選面白映像
一夏と九十九に自身の境遇を語った翌日、シャルロットは暇を持て余していた。
と言うのも、セシリアに女バレしないように九十九が「軽い風邪だ。一日安静にしていれば治る」と言ったため、気軽に部屋から出られないのだ。
「あ、そういえば」
ふと思い出し、シャルロットはテーブルの上に置いてあるパソコンに手を伸ばす。
これは、九十九が「面白映像が入っている。暇潰しに使え」と言って置いて行った物だ。パソコンを立ち上げてみると、一般的なソフトに混じって『面白映像』というフォルダがあった。
「これかな……?」
フォルダを開いてみると、映像はジャンルごとにかなり細かく分類されていた。『動物』『子供』『衝撃』『凄技』など、ざっと数えて10以上に分かれている。
どれにしようか少し迷った後、シャルロットが選んだのは『動物』だった。ハズレはないだろうと思ったからだ。
果たしてそこに入っていた映像は確かに面白い物ばかりだった。
『子パンダの大きなくしゃみに驚く母パンダ』や『雪に足を取られてジャンプに失敗した猫』はクスリとさせられたし、『レーザーポインターの光を追いかけて壁登りした猫』には驚かされた。ただ、映像を見ていてふと気付く。やけに猫関係の映像が多いのだ。
「九十九って猫派?」
九十九にも意外な一面がある事を知ったシャルロットであった。
続いて選んだのは『衝撃』。怖い物見たさという奴だ。その中に入っていた映像は、確かに衝撃的だった。色々な意味で。
『手抜き工事のマンション崩壊の瞬間』と『曲芸飛行中のIS同士の衝突事故』には息を飲んだ。
『交差点で「早く渡れ」とばかりにクラクションを鳴らす車に持っていた鞄で一撃入れてエアバッグで黙らせたお婆さん』には思わず拍手していた。中でも信じられなかったのは最後の映像だ。
『強引な車線変更を行った車に後ろから猛スピードでバイクが衝突。衝撃で投げ出されたバイクの運転手が空中で前方一回転、衝突した車の屋根に見事に着地する』なんて、どこのアクション映画だろうと思った。
「凄かったなぁ……。次はどれにしよう」
シャルロットは時の経つのも忘れて九十九厳選面白映像を観続けた。
♢
「なるほど。その結果がバッテリーの完全に切れた私のパソコンと……」
「真っ赤なお目目のしゃるるんなんだ〜」
「うう……」
夕食時、食堂に現れないデュノアが気になって彼女の部屋へ行ってみたらこれである。
なお、事前に
「暇潰しに使えとは言ったが、一日潰してしまってどうする」
「九十九の選んだ映像が面白すぎるのがいけないんだよ」
「見続ける判断をしたのは君だろうに。ほら、これを使いたまえ」
そう言ってデュノアに手渡したのはラグナロク・コーポレーション製目薬『バロール』だ。
「うん、ありがとう」
目薬を受け取ったデュノアがそれを目にさすと、あっという間に充血していた目が元に戻る。
「うわぁ〜。すごい効き目だね~」
「ラグナロクのパイロットと整備士、研究者の御用達だ。効きの良さは保証する」
「ありがとう九十九。それでその……」
何かを言い淀むデュノア。その視線は私のパソコンに向いている。
「……また見たかったら言うと良い。今度はアダプタも貸そう」
「……!うん!」
余程気に入ったのか喜色満面で返事をするデュノア。目を悪くしなければいいんだが。
♢
ふと気付くと、真っ白な空間にいた。目の前に金髪碧眼に二対四枚の羽根を背負う男。
−−貴方か、ロキ。また何か用ですか?
「うむ。実はな−−」
−−実は……?
「お主の集めた猫の映像、我も観たいんだが」
−−あ……
ガタンッ!
「貴方猫派だったの!?」
「いいや、犬派だ」
「え?」
ツッコミに帰ってきた返答に一瞬ポカンとした後ハッとする。
ここは教室で今は授業中。つまり、
「私の授業で居眠りとはいい度胸だ。まずその眠気をブチ殺そう」
右手に出席簿を持ち、左手にぱしんぱしんと叩きつける千冬さん。
「慈悲は……?」
「ない」
「ですよ(バシンッ!)ネッツ!?」
炸裂する
「授業を再開する。今度は起きておけよ、村雲」
「はい、先生……」
あの阿呆のおかげで受けなくていいダメージを受けた。また出てきたら今度は腿にローキック入れてやる。そう思いながら千冬さんの授業を受けた。