「…さっそく迷ったのかしら?」
「そのようだな…」
ここは迷いの竹林、ここに来たら必ず迷うと言うほど迷いやすいところである。だが、ある人物はここの竹林を案内しているそうな。そのある人物は…
「暇だな〜、誰か迷ってる人居ないかな…それなら案内してあげるんだけど」
だが一人。誰も返事はしてくれない。だが、魔理沙達の影が、その近くに近づいてきたようだ。
「ん〜?誰かいるのか〜?」
「何かしらね…」
「…まさか、あの蓬莱人かしら?」
あの蓬莱人とは、その竹林を案内してるある人である。そのある人は、その声に反応し、その白い髪を靡かせながら振り向き、隠れる。
「あれは…魔理沙と霊夢とレミリアと…あれッ?誰だっけ?あんな人居たかしら?」
「おっ、妹紅か丁度いい、竹林を案内してくれ…永遠亭まで」
「永遠亭?行くのはやめた方がいいわよ」
「なんでだ?」
何故駄目なのか魔理沙は単純に聞いた。まあ大体分かっている、輝夜のことだろう。悪霊に取り憑かれて、暴走しているからだろう。
「…言わせないでよ、輝夜が暴れてるんだよ」
「やはりそうか…」
「でも、私達、悪霊を解き放たなければいけないんです!」
「ところで、貴方誰?」
そういえばまだ名乗っていなかった。流岢は自分の名と、何故悪霊を倒さなくちゃいけない目的を話した。
「ふぅん…そういうことなら私も手伝うわ」
「ほ、本当ですか⁉︎ありがとうございます」
「おまえがいると、心強いぜ」
「じゃあ付いてきてちょうだい」
そういうとそそくさと永遠亭がある方向を向き、歩き出す妹紅。だが、なんだかいつもと雰囲気がちがう気がする。悪霊はここまで嫌な雰囲気を醸し出すものと思うと、一向に早く、消し去りたい思えてくるのだ。まあ、悪霊と聞いただけでも、消し去りたいと思うだろう。と心の中で皆が思っていると、いつの間にか目の前に巨大な屋敷があった。…永遠亭だった。
「さあついたわね…」
「あぁ、輝夜の奴ぶっ飛ばして、目を覚まさせてあげるわ!」
「はい!妹紅さん、お願いします!」
と、突然屋敷から人影が見えた。
「おう、鈴仙か」
「あっ…魔理沙と霊夢とレミリア、妹紅と、誰かしら?」
「あっ、白石流岢です。」
さっき妹紅に話したように、単純に自分のことを話した。
「そうなの…今こちらでも姫様がその悪霊?に取り憑かれているみたいでさ…」
「だから私達はそれを成仏いや、封印させに来たんだぜ!」
「魔理沙、貴方が格好つけるところじゃないわよ。ここは流岢でしょ」
「きにするな!」
流岢は本当に気にしていない ようだが、雰囲気作りの為に苦笑いをしておいた。
「あは、あははは」
「で、輝夜は今どこにいるのぜ?」
「多分この中の奥の奥の方にいると思うわ」
「まあそんなもんだよな」
「輝夜のことだ、途中に罠が仕掛けられてるかもしれないわ」
「だな」
もしかしたら、妹紅は輝夜のことを心配してるのかもしれない。いつもは殺し合いなど、えげつないことをしているようだが。まあ、喧嘩する程仲が良いということわざもある。その通りなのかもしれない。
「じゃあ、お邪魔するぜ〜」
「って、靴とかは脱がないんですか?」
「おまえ、それを紅魔館で何故言わないでここで言った?」
「ハッ…」
いう言葉が思いつく言葉がなくなってしまったせいか、黙ってしまった。だが気にせず進んでいったのだった。
「そういえば、罠とかまだみかけてないよな?」
「罠は忘れた頃にやってくるんじゃないかしら」
「じゃあ忘れないようにしておくか」
「いや、そういう問題じゃないでしょ」
もはや魔理沙と霊夢が、お笑い芸人とボケ役とツッコミ役のように見えてきた。こんな雰囲気のところで、よくボケたりできるなーと思った流岢であった。だが、もう入り口から1.5㎞は歩いたと思えるであろうところ、そこから突如、何かあらわれたのだ。
「な、なんだァ⁉︎」
「罠?なのかしら…」
「おまえは…」
「永琳…!」
「あら、いらっしゃい。姫様なら後ろの方にいるわよ」
「あ、ああそうか、ありがとう。」
「あの、その輝夜って人、暴れてるって聞いたんですが」
「いや暴れてないわよ」
「えっ、嘘だろ?暴れてるって聞いたぞ?」
おかしい。妹紅がおかしいのか、それとも永琳がおかしいのか。…もしかしたら、悪霊と関わり、または輝夜の悪霊が意志により永琳にも分割して乗り移った可能性も考えられる。
「永琳、あんたもか…」
「どうやら輝夜の悪霊が永琳にも憑いてるようね」
「永琳ちょっとおでこをいいかしら?」
「えっ?」
ペタッ
「悪霊退散!」
そして永琳は目を覚ましたようで、突然落ち着いた。目をまん丸にしていて、自分がなにをしていたか分からないようだ。だが、ひとつわかったことがある。悪霊自身はお札で成仏させることはできないが、悪霊の破片というのか、さっきの永琳に入っていた悪霊のような物は、お札で、成仏させられるようだ。
「あら?私は何を?」
「おい永琳、輝夜が暴れてるんだって?」
「えぇ、暴れるというか、ずっと眠ってるはずなのに、起きっぱなしなのよ、珍しいわ」
「輝夜はどこにいる?」
「案内するわ」
そして、永遠亭の奥の奥の方まで歩いて行った。途中途中に、うさぎの絵とかが飾られており、月と関連があるという雰囲気が醸し出される。
それにしても、なんて長いんだろう。前も来た事があるが恐らく、2.5kmくらいの長さなのだろう。
そういえば、歩いている途中に思い出したことがある。
「なあ永琳、ここに妖夢と幽々子がこなかったか?」
「うん、きたわよ」
「今どこにいるんだ?」
「今ちょっとね、入院出来るところが姫様の部屋の隣しかないから、そこにいるわよ」
「って、待ちなさいよ、急がなくちゃ妖夢達危ないわよ?」
「だな」
「私の岩が黙ってません!」
「私は炎を消されるから岩は少し苦手でね」
「あ、でも私も炎起こせますよ?」
「摩擦でしょ?私だって炎使えるし、炎の起こし方くらい知ってるわ」
「こ、この私だってそれくらい知ってるわよ」
「流石です!レミリアさん」
レミリアは嬉しかった、咲夜以外に、褒めてもらえることなど殆ど無かったから。だが、今は輝夜のことが先だ、早く行かなければならない。
「ここね」
永琳は輝夜がいると思われる部屋の襖の前で言った。
「妖夢ー!幽々子ー!大丈夫かー!」
「そ、その声は…魔理沙ね!た、助けて頂戴!輝夜が襲ってくるのよ!」
「わかった!今すぐ行くぞ!」
「…妖夢と幽々子、可哀想だわ」
「ちっくしょーぉぉぉぉ!輝夜ァァァァァァァア!人をいじめテンジャネェェェエエ!(人じゃないが)」
妹紅は突然キチガイの様に叫びだし、一瞬で襖を開け、輝夜に滅罪寺院傷を放った。
「あら妹紅、何しにきたの?」
「何しにって、おまえを殺しに来たんだよ!」
「あらそう…なら殺して見なさい」
「(おかしいな…いつもなら私にすぐ攻撃してくるが…)」
「ほら、早く来なさいよ」
「…あぁ殺してやる。覚悟しなッ‼︎」
なんと妹紅は興奮のあまり、輝夜が悪霊に取り憑かれているということを忘れかけているようだ。だが1人で戦うのは余りにも危険過ぎる。恐らく悪霊はそれを誘っているのだろう。
「おい妹紅!1人は危険だッ!私達もやるぞ!」
「…うん、任せるわ」
「ふふ、私の弾幕を避けれるかしら…」
「まあ弾幕は避けるもんだ!避けてやるぜ!」
「私の岩…貴女にぶちかましてあげます!」
すると輝夜は突然狂った様に笑い出す。皆、輝夜を大きく開いた目で、驚いているようだった。
「気持ち悪いやつだ…」
「早く悪霊を抜いてあげましょう」
「あぁ、新必殺シェイキングスパークをまた使わせていただくぜ」
「ところでそのネーミングどうにかしなさいよ」
「作者に言えよw私に言ってもどうしようもねぇぜ」
輝夜は五色の玉を準備していた。攻撃するためだろう。全てをすれすれ避けるのは、かなり難しいと言えるだろう。だが、避けれない可能性はないとは言えない。今の妹紅なら精神力は乱れているものの、暴走状態に近い。暴走状態だからこそ避けられるはず、況してや妹紅だから避けなくちゃ、我のプライドが乱れるだろう。
「五色の弾丸!避けて見なさいッ!」
「難題!「龍の顎の玉」!」
「ふん、てめぇの玉なんぞにあたらねーよ」
「あら…あたらなかったのね」
「今度はこっちだ!」
「不死ッ!「火の鳥 -鳳翼天翔-」ッ!」
「あァァァァァァ!」
すると輝夜の姿はみるみる溶けていき、やがて骨も見え出した。その光景はまるで、蝋燭のようだった。だが、彼女は蓬莱人、生き返るのだ。
「妹紅…やってくれたわね?」
「あぁやったよ」
「こんなことをしたのを後悔するがいいわ!」
「…⁉︎なにを⁉︎」
「悪霊だよ!私の本体の悪霊と戦ってもらおうということさ!」
恐らく妹紅以外の全員は輝夜が悪霊に取り憑かれていることを覚えていたと思うが、妹紅は興奮しすぎて忘れてしまっていたのかもしれない。そのせいか、目を真ん丸にし、「そうだった…」と言うような顔をしていた。
「さあ妹紅!攻撃してみなさい!」
その喋り方は輝夜であったが、声は呪われた様な声。姿は黒い切り株の様な胴体、下から生えた、4本の足、胴体の側面から生えた、悪魔の手。実に奇妙だった。輝夜にこんなやつが取り憑かれていたと思うと、宿敵であっても可哀想に思えてくる。
「お、お前は何者だッ!」
「私は悪霊・ルペルドだ」
「ふーん、悪霊って名前あるものなのね」
「くそっ、悪霊!お前を早く倒してやる!」
「落ち着けって、妹紅…」
「落ち着いてられるわけないじゃない!我が宿敵がこんな様にされてるのよ⁉︎」
「それも…そうだが…」
もう妹紅は誰にも止めることはできなかった。恐らく魔理沙が妹紅に向かってマスパを放っても、相手に向かっていっただろう。
「燃やしてくれる!藤原!「滅罪寺院傷」‼︎」
「ぐぁッ!熱い!」
「よし!私の深恋「シェイキングスパーク」をくらえ!」
「天罰‼︎「スターオブダビデ」‼︎」
「夢符!「封魔陣」‼︎」
「石符「ストーンエッジ」‼︎
「ギャァァァァァァ‼︎」
それは、その悪霊の断末魔の叫びだった。その光景は醜く、気持ち悪いものだった、この光景をあと何回見れば異変が済むのか…これは地獄だ。
「悪霊を封印します!」
「というか悪霊ってどこに封印してんだ?」
「私の頭の上に石が14個ありますよね?そこに封印してるんです」
「そういえば最初は何も模様無かったのに模様があるな」
「それはリピトスのマーク、それはゴートスのマークです」
「じゃあルペルドにもマークがあるんだな?」
「はい、悪霊全員マークがあると思います」
どうやら魔理沙はてっきり体の中に封印しているのかと思っていたようで、驚いていた。
「ということはその石を割れば封印が解けちゃうんだな?」
「えぇ、でも割れませんよ」
「なんでだぜ?」
「石にみえますが、石の様なダイヤです」
「…すごいな」
「岩ってすごいわね、悪霊の封印にも使えるんだものね」
「私は羽があるから岩とか投げられたらやばいかも」
「誰もそんなことする奴いねぇよ」
そして、ルペルドを封印してかしばらく永遠亭に居た。すると、幽々子や妖夢、永琳とかがよってきた。
「魔理沙達、大丈夫だった?」
「あぁ、今この流岢が封印してくれたよ」
「えっへん!」
「やるわね〜流岢ちゃん」
「幽々子さん、もう怪我は大丈夫なんですか?」
「一応ね、でも私も旅についていきたいけど、妖夢が代わりに行ってくれるわよ」
「はい、流岢さん、私も行きますので安心してください。私には切れぬものなどあんまりないので」
「はい、またよろしくお願いします!」
「ところで流岢ちゃん、悪霊を封印できるってことは、私も封印できちゃうのかしら?」
「すみません、この石器は14体の悪霊用なんです」
「いや別に封印してほしい訳じゃないんだけど、できるのかなーって」
「まあ一応できますけど…」
そういえば輝夜はどうなったのか。
永琳は自分達と話さずに、輝夜の方へ向かっていった気がする。やはりお嬢様に慕える執事の様なもの、一番に心配するのはお嬢様だろう。
「姫様、大丈夫ですか⁉︎」
「うぅ、体中がいた〜い」
(ッ⁉︎今のは輝夜の声…)
「輝夜!貴様大丈夫か⁉︎」
「あら、もこたんじゃないの、何しに来たの?」
「何しに来たのって、悪霊に取り憑かれていたお前を倒してやったんだよ」
「じゃあ貴方が解放してくれたのね?」
「い、いやッ、そんな訳じゃ…ないんだけど…」
「ありがと〜感謝の気持ちよ」
「?」
何をもらったのかとおもうと、龍の顎の玉、仏の御石の鉢、火鼠の皮衣、燕の子安貝、蓬莱の弾の枝の、5つの難題の道具だった。
「い、良いのか?こんなもの」
「いいのよ、宿敵とはいえ、命の恩人だもの」
「べ、別にお前の為なんかに倒したわけじゃないんだぞ⁉︎私はただ宿敵があんな醜い化け物になるのが嫌だったから、自分の意志だ!」
「ふふっ、わかってるわよ」
妹紅は照れながらも、魔理沙達の所へ戻っていった。
「ねえ、輝夜からこれを貰ったよ」
「えっ⁉︎あんたが輝夜から⁉︎」
「珍しいわね」
「き、きにするな!持っていけ!」
「お、おう」
「5つの難題の道具ね?」
「わかるのか?レミリア」
「当然よ、貴方達とは、年が違うのよ」
「まあ私はその2倍以上は生きてるけどね」
「はははは」
「妖夢、頑張るのよ」
「はい!幽々子様!」
どうやら妖夢は、此処に来る前に、剣を強くしたようだ。そのおかげか、剣が輝いているようだった。
「次はどこに行く?」
「妖怪の山…かしら」
「よし、じゃあ妖怪の山に行くか」
「うん」
そして、魔理沙達は、永琳に礼をし、永遠亭を去っていった。途中に迷いの竹林と繋がった魔法の森と、妖怪の樹林、妖怪の山にいくにはそこを行くしか無かった。そして一方こちらは…
「姫様、あんなに沢山のものを渡してしまって、大丈夫だったのですか?」
「うん、いいのよ、きにしないで」
「…妹紅、頑張るのよ」
第4章 半霊の剣士と幽霊の危機〈完〉
「第5章 神々に憑依した悪霊」へと続く