「幽々子様?」
「よ、う夢…私は大丈夫よ…この幻想郷、もう大分大変な事になってるわ…」
「今すぐ永遠亭へ連れて行きます!」
「あぁ、ありがとう…」
「じゃあ妖夢は一度抜けるのか」
「はい…異変の事、頑張ってください」
「あぁ」
確かにこの幻想郷、幽々子の言う通り大分大変な事になっているようだ。一刻も早く、悪霊を封印しなければ、悪霊が取り憑いている人の体が、悪霊の物となってしまう!
「じゃあ、達者でな、私達は咲夜らしき人影が見えたから紅魔館に行くぜ」
と話していたら、もう見えないところまで行ってしまったようだ。妖夢はそれほど幽々子を大切にしているのだろう。
「紅魔館ね、ちょうどいいわ、前に紫が白玉楼と紅魔館を繋ぐスキマを作ってたそうだから」
「なんでだ?」
「人の住処への行き来が楽になるように、らしいわ」
「ほー、紫もたまにはいい事するな」
と話しながら歩いていると、スキマを見つけた。恐らくこれが、白玉楼と紅魔館を繋ぐスキマだろう。
「これだわ、早く入るわよ」
「あぁ」
「目玉みたいなのがたくさんあって、気持ち悪いですね…」
「きにするな」
そしてスキマを抜け、紅魔館についた。魔理沙は八卦炉を持ってないことを思い出し、魔法の森へ流岢と向かった
「…遅いわね」
「おおすまんすまん、遅くなったぜ」
「はぁ、はぁ」
ふと、紅魔館の問が前触れもなしに開いた。いや、開かれたのかもしれない。その前に、門番が居ても眠ってもいないというのが疑問だった。
まあ恐らく咲夜だろう。時でも止めて、門を開けたんだろう。
「お邪魔するぜー」
「咲夜ーさっきから見てたのは、わかってるのよー」
「流石ね…ばれてたなんて」
どうやら門を開けたのも、博麗神社で見てたのも、やはり咲夜だったようだ。幻想郷がおかしいと思い、様子を見ていたそうだ。すると、咲夜が出てきた高い階段の後ろから、紅いカーペットの上を歩いてくる、幼き紅魔館の主人のようだ。
「あら咲夜、おびき出してきたのかしら?」
「いえ、私は様子を見ていただけです。」
「そうなの…」
「ようレミリア、もしかして、お前らのところの奴らも悪霊に憑依されてるのか?」
「えぇ、パチェが…」
「急がなければ、あの図書館、大変なことになるぞ?」
「そ、そうね!いそぐわよ!」
「お嬢様、私もいきます。」
「うん、任せるわ咲夜」
どうやらパチュリーが、悪霊に乗っ取られているようだ。パチュリーだったら、アグニシャインとかシルフィホルンとかを使って、図書館が大変な事になるだろう。魔理沙は本が盗めなくなるというのが嫌だという理屈だった。
そして、暗い通路を通り、あの図書館特有の巨大な扉が現れた。
魔理沙は慣れた手つきで開けようとするが…
「うわッ⁉︎冷てッ‼︎」
「えっ?なんでかしら…」
「このドア、凍ってるわね…」
「凍る…チルノか?」
「いえ、私が門番やってる時は来ていませんでしたよ」
「あら美鈴、そういえば貴方にもパチュリーの件を任せた気がするわ」
「いや、ドアが開かなくちゃどうにもなりませんし…」
「…私がやります!」
「り、流岢⁉︎おまえ、岩の技でやる気か⁉︎」
「いえ、岩と岩の摩擦により生じる、私の火で対応します!」
そういうと、たくさんの岩が出てきて、ぶつかり合い、燃え出してきた。するとそれがマグネットのようにその巨大な扉にぶつかり、扉の氷は溶けていった。
「や、やった!」
「貴方、火使えたのね」
「まあ、原始的な事ですが…」
「とりあえず、突入だッ‼︎」
すると目の前の光景には、パチュリーだけがいるはずだったのだが…
…チルノもいたのだ…
門番が来ていないと言っていないのに、どうやって入ってきたのか…
「チルノ、なんでお前がここにいんだ?」
「あたいはこの世の中を自分のものにするの」
「お前みたいな⑨には無理だよw」
「うるせぇ、バカとか言うな」
…⁉︎完全におかしい。こんなに口調は悪くないし、普通は「バカと言った方がバカなんだよ!」という、見事なお子様の理屈で返してくるのだが…
「パ、パチェ、落ち着いてちょうだい」
「いやよ」
「なら…仕方ないわ」
「パチェ…ごめんね…レッドマジック‼︎」
「あら、レミィ、私に攻撃をするのね。ということは邪魔をするということ…私も邪魔をされるのはやだわ、だから貴方を邪魔してあげるわ」
「火符‼︎「アグニシャイン」!」
「うぐッ…つ、強い…」
いつものパチュリーより一味も二味も違う。そういえば、あのときの霊夢もいつもよりちょっと強かった気がする…もしかしたら、悪霊の効力だろうか?
「私に任せろ!星符ッ‼︎「メテオニックシャワーァァ!」
魔理沙の魔法は凄いのである。主に星とかレーザー系の技が多い。威力も絶大なのだ。
「…アら…まリさも邪魔をスるのネ?」
「おっと。あたいを差し置くなんていい度胸よね。」
「氷符…「アイシクルマシンガン」…」
なんと、図書館はいつの間に氷に包まれており、恐らく温度は-10、いや-30℃くらいはいっていただろう。
寒くて体が動かない…前にもチルノに出くわし、寒くなったときもあったが、ここまで寒くなったことはなかった。
「うぅ、寒いぜ…」
「しょうがないわ…まずはチルノを倒すわよ。」
「えぇ」
「氷には、石や炎、ですよね。ならそれらを組み合わせた岩で対応します!」
「頼むぞ!今の所炎を使えそうなのはお前しかいない!」
「はい!任せてください!」
「焔石ッ‼︎「ボルカニックグラニット」ッ‼︎溶けてしまいなさい!」
「がはぁッ…あたいに弱点など、ない、はずなのに…」
魔理沙は分かるのだ、あの素早い岩といい、あの見た目…魔理沙は確信した。
「こいつは強い。」
「はい?」
「あぁ、なんでもないぜ?」
「見事にチルノは溶けて流れ落ちたわね。」
「あとは…あの魔女だけね。」
なんだか、いつもと違う雰囲気しかない。周りにあった本も落ちている。この本はなんだろう?
「…魔法の本か。」
でも、ただの魔法の本ではない。魔理沙でも使える、パチュリーの魔法だった。
「…トリリトンシェイクとラーヴァクロムレクか」
「また盗ませてもらうぜ、パチュリー」
「パチュリー!これでもくらえ!
土符「トリリトンシェイク」!」
「私の前で私の技を使うなんて、避けられるのも同然よ」
「そうかな、そこにマスタースパークの陣がある事を分からないのか?」
「あッ…!私としたことが…‼︎」
「略して!「シェイキングスパーク」だッ‼︎」
「キャァァァァ‼︎」
パチュリーの本がここまで役に立ち、まさか自分で使えるとは。そう思った魔理沙。それにしても、地面を揺らしたせいか、さらに本が飛び出てしまった。まるで本のピラミッドだ。
「やったわね…魔理沙」
「あぁ、やれやれだ」
「すごいですね…その本、他にもありますか?」
「あるぜ、ホラッ」
流岢が手にとって貰った本は、ラーヴァクロムレクとエメラルドメガリス、エメラルドメガロポリス、ズバリ言うと、石系の本である。
「あ、ありがとうございます」
「あっ、もしかしたらこれ、お前なら使えるかもしんないぞ」
「あっ、はい?」
そしてまた受け取ったのは、賢者の石の本だった。魔理沙は、多分石って名前が付いてるし、こいつなら出来るだろうと、半分ふざけた気持ちで与えた。
「…賢者の石ですか」
「お前なら使えるよ。きっと。」
「はい、使えるように頑張ります。」
「あのさぁ、あまり人の家の本持ってかないでくれる?」
「まあ今回だけは必ず返すから。な?いいだろ?」
「しょうがないわね…」
と話していると、本の墓場の様なところから、パチュリーが出てきた。
「あ…れ…?私は…本を読んでたはずじゃ…」
「パチュリー、お前は操られてたんだよ。悪い悪霊にな」
「えっ?魔理沙、それは本当?」
かしこまったような態度をとり、何かを考え出した。
「あっ、悪霊っていえば、そのさっきの悪霊はどこへ行ったんですか?」
「そういえば、いないな…」
「そういえば神奈子様が言っていました。伝説の悪霊は、やられても現像した状態のままだが、普通の悪霊は現像されなくなり、成仏するって」
「悪霊に普通なんぞないと思うがな」
「まあ、そうですけど」
そして何かを思いつき、何かが閃いたようなポーズをとったパチュリー
「悪霊といえば…」
「たしか永遠亭の姫と、妖怪の山の巫女と神、唐傘妖怪、輝針城の近くの雷神、地底の八咫烏、神霊廟の尸解仙、有頂天の人、四天王の鬼二人が乗っ取られていると風の噂で聞いたわ…」
「多いな!えっと、10人か…まてよ、悪霊は恐らく全員で12人か?」
「そうですね。私も全員にあったことがあるのですが、実際は10人でした。」
「となると、一人は分裂出来るのかしらね」
「まずは永遠亭に行ってみるか?」
「そうね」
永遠亭、そういえば誰かが向かってった気がする…確か幽々子と妖夢だ。あの人達は大丈夫なのだろうか、幽々子は恐らくまだ戦えない状態にあるはず。その事を思い出し、皆に伝えると「早く永遠亭にいこう」という声があがる。
「そうね、私も付いて行くわ」
「レミリア!本当か?助かるぜ」
「レミィ、気をつけてね」
「お嬢様、私はどうします?」
「咲夜、貴方は私達に付いてこないで、妖怪の山とかを調べてきなさい。」
「わかりました」
「咲夜は付いてこないのか」
「まあ念のためにどういうことが起きてるのか見てきてもらおうと思ってね」
「永遠亭の姫、輝夜か…あいつは確か、様々な難題を出してくるが、あれは厄介だったな…」
「魔理沙、それは多分悪霊によって強化されてるんじゃないかしら」
「ッア〜!大丈夫かね〜…」
「多分大丈夫ですよ!」
流岢は励まそうと思ったが、魔理沙は聞いておらず、流岢は話すのをやめた。
今回はどうやら、伝説の悪霊の仕業ではなかったそうだった。流岢によれば、伝説の悪霊はやられても現像したままだそうだし、パチュリーの場合、悪霊はやられたら現像しなくなっていた。でも、伝説の悪霊があと、10匹、聞くだけで意識が遠のきそうだ。だが、やるしかない。彼女達なら、悪霊を倒して早く異変を終わらしてみせるであろう。
第3章 東洋の館への人影 〈完〉
「第4章 半霊の剣士と幽霊の危機」へと続く