ゾンビものも書きたいが、ファンタジーものも書きたい。テンプレな転生ファンタジーものを書きたい。
でもこの小説書いてるからなぁ。
書きたいものがありすぎて手がつかないです。
皆さんはそんなこと、ありますか?
ということでやっとの更新です。最近はファンタジーものを見てて小説書く手が動かないです。はい。
「こあーっ!」
図書館中に悲鳴が響いた。直後に、底の横のいくつかの本棚向こうで、小悪魔がミスをして本が粗方崩れ落ちてしまった様子。その拍子に、自分も巻き込まれたらしい。
底は、隣へと歩先をかえた。
「な、なにがあったんだ……」
惨状を目にした。床に本が山のように散らばり、手や羽やらが出ている。
「こあー……誰かたすけてくださーい……」
山の中で小悪魔の声がする。だがこだまはしなかった。
この声と独特な悲鳴は聞いたことがあるな。と底は思い、記憶を探る。約三秒にして、思い出した。あのうるさい悪魔の女の子か。と。よくよく見てみると、彼女のワインレッドの髮が本の隙間から窺える。
仕方なく助けることにして、本を退かしていく。背中が見えるようになって、漸く小悪魔が雄叫びをあげて動き出す。
「うおぉん! 私はまるで魔界の神だー!」
「お前の中では魔界の神とやらの印象はどんなのだ」
「おっおっ? 誰かと思えば意外や意外な繰鍛 底さんではないですかー! いやーお久しぶりです、元気でしたー? んっ? んっ?」
「相変わらずよく動く口だなぁ」
感嘆した。呆れ多量ものせて。
「今日は一体全体どういう了見でやってきたんだーい? はっ、もしかして私に会いに来てくれたんですか!? きゃー!」
「そうだよ」
「えっ……。こ、困りますよ……えへへ」
急に言われたからか、小悪魔は頬を赤くそめた。
「とまあそんなことは置いといてだ。パチュリーはどこだ?」
「そっ、そんなこと……。パチュリー様ならいつもの場所に居ますよー……」
目に見えるほどにまで落ち込んだ様子を見せつける小悪魔に、底は罪悪感を抱いた。
「……すまん」
底が素直に、愚直にも腰を深く曲げて、謝罪した。向かいの小悪魔が吹き出す。底は理解した。これはいたずらなのだと。
「おまえ……!」
殴る気はないのだが、底は思わず腕を振り上げた。
「きゃー!」
甲高い声のあと、爆笑しながら片付けをせず、どこかへ飛んでいった。
仕方ない。と溜め息混じりに呟き、本を片付けていく……のだが、まず底はどの本をどこに入れればいいのかわからない。
適当でいいか。と怠そうに本を空いているスペースに仕舞っていった。
片付いた頃、狙ったかのように小悪魔が戻ってきた。
「あ、片付けてくれたんですか? ありがとうございます!」
「……うん」
礼儀正しく、小悪魔が頭を下げた。
釈然としないが、悪魔でもやっぱり礼儀は知ってるんだな。なんて妙なところに感心した。底の考える悪魔とは、ゲームや本などの娯楽でよく出てくる、悪逆非道の限りを尽くす。もしくは外見が違うだけ。つまり、中身は人間と同じ心をもつ。という二通りだけだった。小悪魔は後者のようだ。
ふと思う。ここには冥界だってあるんだ。地下都市や魔界があってもおかしくはない。もしかしたら、人造人間なんかもいたりして……。十分にありえるぞ――腕を組んで考えてはみたものの、幻想ともなると、多数思い付く。無限にも感じるそれに、いつまでも空想するわけにはいかない。
考え込むのをやめ、下がっていた視線を小悪魔に向けた。突っ立つ小悪魔の顔には、疑問符が浮かんでいた。
「すまん。考え事してたよ」
少々長く待たせたことについて謝った。
「いいえっ! 全く無問題ですっ!」
「そうか。そろそろいいか?」
「あ、はい。なにかあれば呼んでくださいねー!」
バサバサと飛び立った。その間も手を大きく振っていた。
振り返って、そのまま真っ直ぐ歩いた。
歩いて五分。五分といったら、数学的に三百三十メートルは歩いてるということになっている。
ここはどれだけ広いのか。小悪魔に案内を頼んだほうがよかったか? と今更ながらに後悔しはじめた。
やがて突き当たりになる。底は図書館の右側を歩いていたようで、突き当たりを方向転換して左に歩いた。
足を動かして更に三分程度。左を見ると、暗がりの中で微かな灯火が窺えた。底が目をこらすと、壁などに立て掛けられているものとは違う、テーブルに置かれている蝋燭があり、人らしき影も見えた。
底は足をはやめた。
ついに読書スペースまでたどり着く。ここは、入り口から突き進むと着けるようだ。
「パチュリー。久しぶりだな」
「貴方が来るとは珍しいわね」
読んでいた本を閉じて置いた。眼鏡が蝋燭の光に反射した。
「……皆から言われるけど、そんな珍しい?」
「明日は雨かしら」
冗談なのか、クスクスと笑っている。
「そんなにか」
顔をしかめた。紅魔館の皆にはひきこもりとして思われているようだ。
別に外に出てもいいが、出る理由がなければ、すぐ死んでしまう。それなら出ないのも納得できるだろう。
「で、今日はこんなところになんの用かしらね?」
「ああ、そうだ」
思い出したように手を叩き、空き椅子に座った。「今日は聞きたいことがあるんだ」
「そう。聞いてあげるわ」
眼鏡を外して置いた。
「俺、訳あって異変解決に行かなきゃならないんだけど、やっぱり敵が強いんだよ。勿論俺も弱いけどさ」
正確には、底が弱いわけではない。相手が強すぎるのだ。吸血鬼や妖怪。亡霊に半人半霊。妖精に魔法使いと魔女。
底はただの人間であるが、しかし、人間を超える強さを持っている。何度もやり直せるし、火、水、土、雷を出すことだってできる。だが、やはり相手が悪すぎるのだ。
「そこで、美鈴や知り合いに修行を頼んでるんだけど、時間があまりないんだ。時間が見つかる限り自己修行はしてるけど」
パチュリーが相槌を打つ。
「簡潔に言って。だらだらと聞くのは好きじゃないの」
「……そうだな。魔法、刀術、武術なんかを一緒に受けたほうがいいか、得意武器を練習したほうがいいか、武術で足や拳技を、刀の扱い方だけを知ったほうがいいか、どれがいいと思う? 参考にしたい」
聞いて、パチュリーは数十秒程考える。考えたあげくに、こう答えた。
「私は物心がついてから、今までずっと魔法についてのことや知識をたくわえてきたわ。魔法や色んなことを知りたかったから。私が言えるのはそれだけ」
口を閉ざし、本を開いてそれっきり喋らなくなった。頑張ってみるよ……。とパチュリーに言って、頭をひねりながらも退室した。
底が居なくなったあと、小悪魔が読書スペースにおり立ち、パチュリーに質問した。
「あんな答えでよかったんですか?」
「わからなければそれまで。自分で考えて、私の意図がわからないと、私の言葉なんて残らないわ」
読書スペースからは暗闇で見えない扉をちらりと一瞥して、静かに微笑んだ。
気分転換に、庭へやって来た底。未だにパチュリーがなにを言いたかったのかさっぱり掴めないでいた。
紅美鈴の育てている花を眺め、もう一度頭をひねる。
やはり解せない。わからない。言葉の通りの意味をとるならば、『一生魔法についてを学び、知識をたくわえろ』といっているようにも思える。が、パチュリーのことだ、なにか別の意味を秘めてるに違いない。と底は考えている。
よって、言葉の奥に、なにかがあるのだと。安易なものではないと確信している。だが、それだけはわかっても、やはりわからないのだ。どれだけ花を眺めて熟考したところで、時間の浪費に過ぎない。そう思えるようになってきた午後七時。底は一旦考えるのをやめて、食堂に行った。
食堂には既に、皆揃っていた。レミリア、フランドール、十六夜咲夜、紅美鈴、小悪魔、パチュリー。
十六夜咲夜と紅美鈴、小悪魔は立っていた。家族でもあるが、従者でもあるからだろうか。
レミリアが音頭をとった。
「いただきます」
座っている者が後に続く。底のかちゃかちゃと食器のふれ合う音以外はあまり聞こえない。しかし、それも多くはないので、ほぼほぼ無音といってもいいだろうか。発言が許されないような雰囲気のこの場では、さっさと食べ終わったほうがいいだろう。と率直に思い、ほんの気持ち程度に食べるスピードを上げた。
「ごちそうさまでした」
静かな食堂で、レミリアの声が響いた。従者を除く全員が、手を合わせている。それを見て、従者側が頭を下げた。
一瞬で食器は片付けられて、皆が椅子から立ち上がる。フランドールは一言、二言いって退出した。パチュリーと小悪魔も同じく。
底は、パチュリーの言ったことをレミリアに聞いてみるか、決めあぐねていた。なにか悩むような仕草をする底に、レミリアが頬杖して問う。
「なにか、考え事?」
「……まあなぁ」
多量の息をまぜて切り出した。「ちょっと悩んでてなぁ。パチュリーに相談してみたんだよ。ってかこういうのもなんだけどさ、よくわからない返事が来たんだよね」
「へぇ。どんなの?」
興味津々。といった風に聞いてきたので、底がパチュリーとの話を喋った。
今はまた、庭に来ている。花を眺める。
全て話終え、レミリアはこう言っていた。
「そうねぇ、私からも言えるのは一つかしらね。『パチェの好きなことは本を読んだり、魔法についてや、あらゆることを知る』ことよ。それ以外は言えない。貴方が考えること」
それを聞いて、底は引っ掛かるものを得た。パチュリーの言葉をそのまま受けとるならば、魔法を学べ。ともとれる。が、レミリアの言葉も考慮にいれるならば、『好きなことを学ぶのが良い』と言ってる風にも聞こえるのだ。勿論他も考えられると思う。
「あれ? 底さんじゃないですか」
庭にある、花を眺めていると、門番である、紅美鈴が底に話しかけた。