僕の心が染まる時   作:トマトしるこ

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二ヶ月ぶりくらいになるのでしょうか? 

お久しぶりです、トマトしるこです。

後書きから本を読む方がいらっしゃるそうですが、ハーメルンで後書きから読む方ははたしていらっしゃるのか……。今回は、読まないでくださいね。

この作品終わらせたくないですけど、頑張ります。


024 M

ぱたり。震える手で日記を閉じた。読み返しながら、入学してからをずっと思い返して、今に帰ってくる。

 

場所は私と彼の部屋だった場所。その原型は、私が臨海学校で部屋を出た時を留めていない。

 

お互いの私物、教材、据え置きの家具、銀の家族の形見。部屋にあるありとあらゆるものが破壊されつくしている。もはやそれが何だったのか思い出せないくらいには粉々で、ボロボロで、バラバラで……部屋を空け過ぎた。惨状を先生から聞いてはいたが、ここまでとは思っていなかった。ここで何があったのか、銀に何が起きたのか、想像もつかない。

 

その中で奇跡的に無事だったものが幾つかある。戸棚の奥にしまわれていた互いに愛用していたマグカップと、引き出しの一番下に隠されていた銀の数冊もある日記だ。他の物が悲惨な目にあっているお陰で、この二つは埃をかぶっている程度で傷は無い。探せば他にも出てきそうだが、むせかえる様なこの部屋で長時間の作業は身体と心に毒だろう。

 

だが読まずにはいられなかった。持ちかえるのではなく、今、ここで、銀が最後まで過ごしていたこの部屋で、私達の居場所で読まなければいけない気がした。

 

なんてことなかった、ただの日記。特別文才があるわけでもないし、絵が書いてあるわけでもなく、ノートも至って普通の市販品で、ごくありふれたただの日常が綴ってあるだけ。彼らしい事が書いてあって、時にそんなことを考えてたんだってビックリして、意外な一面が垣間見えた、ただの日記。

 

そうだ、普通だ。普通の人間だ。彼も、私だって、ちょっと人と違うだけで何も変わらない。クラスメイトも、織斑一夏だってちょっと特殊なただの高校生だ。できることなんてタカが知れている。

 

なのに、どうして? どうしてこうなるの?

 

「何を、したって言うの?」

「……」

 

部屋まで案内してくれた織斑先生とお姉ちゃんは、ただじっと悲しそうに部屋を眺めている。言葉が帰ってくることはない。私も何か返してほしいとは思ってない。

 

ただ、口に出さなきゃ落ちつかなかった。

 

「なにしたって、いうの………」

「簪ちゃん…」

 

喚いてやりたい、こんなことを仕組んだ張本人をぶん殴ってやりたい、薙刀で髪を全部剃って荷電粒子砲で身体の端から少しずつ焦がしてやりたい。

 

殺してやりたい。殺したい。殺す。絶対に殺してやる。死んでも殺す。両親も兄妹も親戚も友人も家も物も全部全部根絶やしにしてやる。

 

『でもあなたの一言がきっかけかもしれないのよ?』

 

うるさい。

 

『聞いたんでしょ? 留守にしている間、学園であってたこと。さぞ苦しかったでしょうねぇ。自分さえいれば、あの時ちゃんと携帯の画面を見て電話に出てさえいれば…』

 

五月蠅い。

 

『彼は何とか正気を保ったままで、学園にいる先生に頼んで主犯の女学生は適切に処罰されて、帰ってからは二人の世界は完成されていたのに。銀には私だけだって、教えてあげられたのに。私だけの銀に出来たのに。それこそ妄想していたようなお仕置きだってできたのにね』

 

喧しい!

 

ああそうだよそうですよ、私が間違ってさえいなければ今頃は完成してた! 依存しあう様な私が望んだ世界が手に入ってた! 友達だってできた! これからだった!!

 

なのに……。

 

心を傷つけて、それどころか脚までも奪ってしまった。

 

わからない。苦しい。助けて。

 

もういっそのこと狂ってしまいたい。

 

スカスカの心は存外に重たく、ひざから崩れ落ちる。

 

その時、軽快な音が部屋中に響いた。考えなくても分かる。教職員に支給されている業務用の携帯、その着信音。ばつが悪そうな表情で織斑先生は電話に出た。

 

「はい、織斑です。はい、はい……そうですか、分かりました」

 

「更識簪」

「はい」

「名無水が目を覚ましたそうだ。お前に会いたいと、言っている」

「……」

「行けるか?」

「……はい」

 

久しぶりに話せると言うのに、私の心は沈んだままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園からモノレールで本土に渡ってタクシーを使い、政府指定の病院へ到着。設備の関係で今回ばかりはあらかじめ緊急搬送先として決まっていた病院へ入院している。手続きを受付で済ませ、医者の案内でセキュリティゲートをくぐり立ち入り禁止区域へと入っていく。警備員と何人もすれ違い、最奥へと歩を進め、頑丈な扉の前で止まった。

 

「緊急時の為に監視カメラと録音設備が部屋に幾つも仕掛けられている、こればかりは私でもどうすることもできなかった。すまないが承知の上で面会をしてくれ。私達は後から入る」

「……はい」

 

異論はなかった。むしろ当然だ。あれだけの専用機を単独で圧倒し続けたのだから。それどころか足りないくらいである。

 

何かあれば、最悪殺されるかもしれない、のかな。

 

分からない。

 

でも、それもいいかもしれない。もしもそうなるのなら、最後に抱き締めさせてほしいな。

 

「……銀」

「やぁ、簪」

 

意を決して、ドアをノック。ガチャリと開けて挨拶をした。

 

リクライニングベッドで身体を起こした銀は、いつものように右手をあげて、頬笑みながら挨拶をしてくれた。

 

普段通りのやさしい銀。でもどこかさびしいというか、悲しい雰囲気を感じた。

 

用意されていたベッドのわきにあるパイプ椅子に腰かける。

 

ベッドにあるはずの膨らみは無い。私が切り落としたから。

 

それでも……

 

「……ぃ」

「ん?」

「ごべ、なぁさい」

 

銀は優しく、私を受け入れてくれた。

 

「また、私の、わた、しがぁ‥…!」

「うん」

「わたしが斬ったの! 斬り落として、大事にしてた簪も! わた…し、がああぁぁぁぁぁぁ……!」

「……そっか」

 

俯きながらスカートの裾を握りしめる。受け入れてくれたとはいえ、許されてはいない。何より今の私には触れる資格すらない。涙も鼻水も止まらないけれど、判決を待つ被告人の様に次の言葉を待った。

 

「一つ、教えてほしいことがあるんだ」

「ぅ"ん」

「あの時の電話。覚えてるかな、もうかけてこないでって言われたやつ」

「あれは……ぐしゅ」

 

ひとまず備え付けのティッシュで涙と鼻水を何とかする。……年頃の女の子が好きな人の前でやることじゃないけど。

 

「あれは、あの日の朝に政府と倉持から電話が来たの。その、銀と関わり合いになるのは止めろって。彼は暴力的な人間だからって。他にもお姉ちゃんからは、束博士と繋がっている可能性があって危険だからって。それで凄くイライラしてて。心配されてるのはちゃんと分かってたんだよ? でも、私は銀と一緒にいたから分かるけど絶対に喜んで手をあげる様な人じゃないの知ってたし、むしろ少しくらいはそうなっても良いんじゃないかなって思ってたぐらいで。あと、銀の家族や親代わりの人がどんな人でも銀は銀のまんまで変わったりしないんだから。束博士って聞いた時は流石にびっくりしたけど、むしろあんなにISに詳しいことに逆に納得したって言うか……。とにかくね、銀に対して言ったわけじゃないの信じて、信じて」

「そ、そうだったんだ。あはは……」

 

喋り倒してしまった。そんなつもりはなかったんだけど、言い訳じみた言い方をするつもりも無かったんだけど、口が開いたら止まらなくて。途中で気付いたから切ったものの。ほら、銀が引いてるじゃない、私の大馬鹿。

 

「えっと……」

「信じるよ」

「え?」

 

耳を疑った。信じてもらえることは凄くうれしい。よかったとホッとしている自分がいる。ただ即答した事が信じられなかった。

 

以前、左腕を失った時とはまた違うのだ。むしろ今回の方が酷い。そして原因はどちらも私にある。私が銀の身体をどんどん不自由にしていっている。私の不注意で左腕は握りつぶされて、気付くヒントがあったにもかかわらず両足を切り落とした。

 

全部私のせい、なのに。

 

「なんだろう。なんとなくそうかもしれないとは思ってたんだ。何回もって、言ってたからね。でも凄く迷惑ばかりかけてたし、その前に束さんも出てくれなかったし、参ってたんだよ。そしたらどんどん気持ちが沈んでさ、嫌なことばっかり考え始めて……気付いたらこうなってた」

 

点滴の繋がった右腕で、中途半端な長さの太ももをさする。

 

「記憶が無いわけじゃないよ、全部確かに覚えてる。それから自分が何をしたのかも、全部ね。簪はきっと僕に責められるかもしれないって思ってるんだろうけど、僕にはその資格なんて無いんだよ」

「どういう、こと」

「人を殺した。復讐で、むごたらしく殺してやった」

「……」

 

衝撃的なことを口にしても、銀は表情を変えなかった。病室に入った時の違和感はコレが正体だったんだ。

 

銀も同じだったんだ。取り返しのつかないことをしてしまったって後悔してる。それは超えちゃいけない一線で、およそ人から外れる行為。銀に比べれば私なんてちっぽけなものかもしれないけど、きっと今の気持ちは似通ってる。

 

「まぁ、そういうわけで、僕にはあれこれ言う資格は無いって事。それを抜きにしても、僕は簪のことを信じてる。こうやって来てくれてるわけだしさ。なにより……君だからってのは駄目かな」

「……ありがとう」

「ううん、こちらこそ」

 

無条件で、私だから信じる。そう言ってくれた。信頼があることが嬉しい反面ですこし悲しかった。

 

やっぱり罰は必要だ。お互いに後ろめたいことがあるから両成敗なんてのは理屈にならない。でもきっと銀はこれ以上何も言わないのだろう。追求したところで喜ぶことを罰と称して実行させるだけだ。だから自分に自分で罰を与えよう。とびきりに重たくて苦しくて、銀に還元できるような、そんな罰。

 

だけど今は……

 

「義手もだけど、義足も作らなくちゃ」

 

ひとまずこの二つだろう。

 

「あ、義足は気持ちだけ受け取っておくよ」

「え?」

「束さんが今回は譲らなくてさ。電話にでていればーって凄く後悔してたんだよ、だからお願いしたんだ。ほら、前は簪にお願いしたから」

「……うん、そうだね。ねぇ、お願いがあるの」

「何?」

「抱きしめても良い?」

「…うん」

 

そっと優しく、ぎゅっと抱き合う。

 

「顔赤いよ、大丈夫?」

「いや、ちょっと……良い香りがするなぁって」

「それだけ?」

「………やわらかい、です」

「えっち」

「なぁっ!?」

「ふふっ」

 

真横にある照れた顔が容易に想像できる。可愛いなぁ。欲しければ……欲しくなくても、身も心も銀のモノだよ。今は言えないけど、何時かちゃんと全部あげるから、ね?

 

そう惚気る頭の中で、身体は正直だ。

 

銀の身体は、入学した時よりも少しやせ細っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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わずか三日で届いたハイスペック義足にもようやく慣れたのが、病院で目を覚ました一ヶ月後。晴れて退院となった僕は学園に戻ってくることが出来た。といってもまたしばらくは医務室暮らしなので、簪と元の部屋で生活するのはまだ先になりそうだけど。

 

部屋は綺麗に片付いたそうだ。調度品や家具も元通りらしい。ただ、当然と言うか個人の所有物だったものはどうしようもないので瓦礫と一緒に使えないと判断された物は捨てられた。僕の私物で唯一残ったものと言えば、かろうじて残っていた愛用のマグカップと、読まれてしまった日記のみ。教材はまた支給してもらえるらしいので、他の物は追々揃えていこう。幸いにも、束さんに貰った黒いカードもあることだし。

 

本当に大切なものはもう残っていない。

 

時刻はもうすぐ四時を指そうとしている。今日の自習を終わらせてのんびりと本を読んでいた僕はそわそわと彼女を待っていた。

 

「銀」

 

来た来た。

 

「やぁ、簪」

「おまたせ、持ってきたよ。何ヶ月もかかってごめんね。束博士なら直ぐに出来ていたのに」

「ううん。君のが欲しいんだ」

「……ありがと」

 

春先に失った左腕の義手。それがようやく完成したので持ってくると言われたのが二日前のこと。採寸や採血、義手の接続端子を肩に取り付けたりなんかもあったっけ。あれは麻酔が効いてても痛いとかいう地獄だった。三か所一気にだったからに違いない。

 

バッグから取り出されたのは無骨ながらも洗練された義手。耐久性もそこそこに芸術性を重視したタイプに仕上げたらしい。スイッチを入れれば電磁迷彩が働いて生身の腕の色彩を忠実に再現してくれるんだとか。左腕のデータを元にしてうんぬんかんぬん。

 

簪の左手が僕の左肩を掴んで固定し、右腕で抱えるように持った義手がガチャリと音を立てて肩と接触し、九十度時計回りに回転されて接続された。肩に繋がれていたプラグからPCにデータが送信されていく。診断プログラムは問題なしと判断し、レディとだけディスプレイに表示される。

 

「神経繋げるよ、違和感があったら直ぐに言ってね」

「うん」

 

簪が一度だけ深呼吸してエンターキーをカチリと押す。

 

「ア"ァッ!」

 

脚の時にも感じた様な全身が硬直する様な電気が全身を駆けめぐる。痛みは一瞬だけで違和感も特にない。敢えて言うなら、久しぶりの左腕の感覚に戸惑っているぐらいだ。それを伝えると簪は「時間をかけて慣れていこうね」と優しく返してくれた。

 

大きな問題は無さそうなので、これでひとまず五体満足な身体に戻ったわけだ。

 

いやぁ、不便だった。役得も多かったけどさ。

 

「よし、大丈夫」

「ほっ」

「じゃあ行こうか」

「え?」

「行きたい所があるんだ。学外じゃないし、どうかな」

「まぁ、それなら」

 

渋々と言った様子で簪は承諾してくれた。病み上がりに何だかんだでベッドにとんぼ返りしてるから心配されるのもなんとなく分かるんだけど、今が一番いいんだよね。

 

医務室には書き置きを残して後にする。放課後の学内には人があまり残っておらず、部活に行くかアリーナに自主連に行っているので静かだ。カツカツと音を響かせながら校舎の外の出て、舗装されていない草原を歩いて行く。

 

「わぁ」

「なんだかんだで、この時間には来たこと無かったからさ」

 

そこはベンチがぽつりとあるだけの場所。海がぱあっと広がって、夕日が沈むのが綺麗に見れるだけの、それだけの。

 

「懐かしいよね」

「うん。早起きして整備室に行った日、だよね」

「そうそう。学校が始まって二日目なのに全部サボって籠りきりだったよね」

「ふふっ。レーションとかでご飯も済ませてたっけ」

 

あの日。夕食だけを食べに食堂に行って、食べてたら織斑君が挨拶に来てくれて、でも簪は彼の事がまだ嫌いな時期で、僕はそのこと知らなくて……それでここに走って来たんだ。あの時はもう日が暮れて夜だった。星が綺麗だった様な記憶はあるけど、夕日が綺麗な名所だって聞いた時からまた行きたいなってずっと思ってたんだ。

 

並んでベンチに腰掛けて、ぼうっと黄昏を眺める。

 

「明日ってラウラさんとシャルロットさんと出かけるんだっけ?」

「うん。そろそろ肌寒くなってくる季節だから、新しい服を買いたいってラウラが」

「へぇ。彼女、そういうのに無頓着っていうか、実用性重視で新しいものを買うイメージが無いんだけど」

「最近そうでもないよ? シャルロットが着せ替えにしてるから興味持ち始めたって言ってたし、織斑君の気を引くなら服選びも大事だよってアドバイスしたら急に乗り気になって」

「あはは。彼の好みはうなじや太ももとかのチラリズムだって教えてあげてよ」

「そうなの?」

「見てたらそんな感じかなって。彼って日本人気質強いから。肌色面積が広いのも効くけど、どっちかって言うとチラリズムとギャップがこうかばつぐんだよ」

「じゃあ言っておく。銀の情報は確かだってラウラが褒めてたよ」

「大佐殿にそう言われると悪い気はしないかな」

 

簪は相変わらずの引っ込み思案だけど少しずつ友達を増やしているみたいだ。臨海学校で二人と仲良くなったのがきっかけらしい。シャルロットさんは社交的だし、ラウラさんはカリスマを感じるから人が集まるんだろうね。勿論自分のクラスメイトとも遊んだりしている。

 

僕はと言うと、話相手はほぼ決まった様なもので。簪、更識さん、織斑君は頻繁に足を運んでくれる。そんな彼と一緒に皆曰く織斑ガールズが見舞いに来てくれていた。あの一件では敵対してたこともあって顔が引きつってるんだけど、織斑君が足しげく通うもんだから最近は慣れた様子だ。

 

「銀は織斑先生と外出だよね?」

「うん。委員会のお偉いさんと面会だって。何するのかは聞いてないなぁ」

「なんだろうね、危なくないことだと良いけど……」

「ね。織斑先生が一緒に来てくれるから滅多なことは起きないと思うから大丈夫じゃないかな」

「うん。あ、そう言えば本音がね――――」

 

それからは火が暮れるまで駄弁ってた。適当に、どうでもいい様な世間話。

 

でもそれがすごく楽しくて、普通だけど幸せで。

 

色々とあったけど僕が望んでいたゆっくりな時間が戻って来た。簪がいて、友達がいて、束さんも前より連絡を取ってくれるようになったし、くーちゃんの成長もちょっと楽しみだったりする。

 

願わくば、ずっと、続きますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、では行くか」

「はい」

 

いつも通りスーツをびしっと着こなす織斑先生の後をついて行く。義手と義足は今日も快調だ。

 

モノレールに乗り込み今日の話について質問してみた。

 

「今日はお前のISについて、と私は聞いている」

「僕の?」

「右腕のソレだ。束謹製とだけは伝えてあるが、詳しく聞かせろとおおせだ」

「はぁ」

「名無水、どれだけその機体を把握している?」

「ある程度は……束さんが調べてくれましたし安全とは思ってますけど」

「まぁ、そうだな」

 

幾つか予想はしていたけどその内の一つが見事に的中した。

 

このIS、束さんが調べてもすべて解明できなかった。自分も知らない、理解が及ばない技術が使われているとショックを受けてたし燃えてたのは記憶に新しい。武装欄や計器類も一部が文字化けしていて全く読めない。ただしISとしての機能はしっかり持っているし、ボロボロのくせして正常に動くという完全なブラックボックスだ。

 

危険だから生命維持装置のみの腕輪を作ると束さんに言われたけど、断ってコレをつけさせてもらっている。機能に問題はないし、こうなってしまったのは多分僕の絶望が原因にあるから。孵った雛を守るのは親鳥の役目だ。

 

そんなことがあったので、一応気にかけてもらっている。

 

それからは雑談を交えつつ真面目な話も少しして、時折束さんのことも聞かせて貰ったりしながら、移動時間を過ごした。

 

モノレールを降りてからは山田先生が運転する車で目的の委員会があるビルまで運んでもらい、中には織斑先生と二人で入る。受付には話が通してあるのか、それとも織斑先生の顔パスか、ゲートの警備に声をかけることなく素通りしてエレベーターに乗る。

 

「あぁ、一つ言っておく」

「はい?」

「これから会うIS委員会の連中はどれも狸と思っておけ」

「狸?」

「化かし合いの末に権力を手に入れた老害共だ。マトモに話を聞くな、流されずに自分を持て。あの手この手でお前の守りを剥がしにかかるぞ」

「き、気をつけます」

 

簪に聞いた通り、厄介な人達らしい。

 

エレベーターを降りて少し歩き、目的の部屋の前で立ち止まる。生唾を飲み込んでどうぞと織斑先生に合図して開けてもらった。

 

中には茶色のスーツを着たどこにでもいそうな初老の男性が一人だけ。座ってコーヒーを啜りながら本を読んでいた。こちらに気づくと本を閉じてにこりとほほ笑んで声をかけてきた。

 

連中って言われたから、てっきり数人いるものだと思ってたけど、そうじゃないらしい。

 

「ようこそ。久しぶりですな、織斑千冬殿。はじめまして、名無水銀君」

「お久しぶりです、委員長」

「はじめまして」

「まずはかけたまえ」

 

中は至って普通の会議室、といった内装。大きな楕円のテーブルがあって、囲むように高級そうな椅子が並んでいるだけの部屋。テーブルの真中には空間投影型のディスプレイがあるので、あれを使って普段は話を進めているんだろう。

 

言われた通りに入り口側の二席に腰掛ける。わぁ、お尻が沈む沈む。凄いね。

 

「聞いている通り、君のISについて教えてほしいと思ってね、今日は来てもらった」

「はぁ」

「それを持つにいたった経緯を聞いても? 我々からは君に与える様な指示を出した覚えは無いが、聞いた通り篠ノ之束から直接受け取ったと言う事かね?」

「ええ、まぁそうです。僕は病弱だったので、自分の手伝いをする代わりに貸し与える、と」

「最初からそうだったのかい?」

「いえ、何と言いますか…変身? 進化とは違うんですけど」

「ほうほう、興味深い。聞いたことはありますかな?」

「いえ。セカンドシフトならば聞いたことはありますが、本人の証言からしてまた別の現象と考える方が正しいかと思います」

「同意見じゃな」

 

ふむ、と顎に手を当てて考える初老の男性。先生も敬語だし、この人が委員会のお偉いさんなんだろう、さっきも委員長って言ってたし。あんまりそんなふうには見えないけど、面と向かって感じる圧力や雰囲気は普通じゃないって事だけ分かる。

 

「まぁ盛り上がる話題は後にして、まずは諸々の面倒な所から片付けて行こうかの」

「所属ですか?」

「そんなところですな。国家所属ではなく束博士自作の機体ということで、委員会及び全機には無所属として扱う、これでいいですかな?」

「ええ」

「では―――」

 

なんか、置いてきぼりなんですけど。僕が所持してるのに、話がポンポン進んでるんですけど。子供だから? でも聞いててもさっぱり分からないので先生に任せよう、うん。

 

ぼーっと聞き逃さない程度に話を聞いていると、先生の携帯が鳴りだした。

 

「済みません、学園からなのですが……」

「いいとも。ただ、外でお願いします」

「……」

「ここのルールと言うことは承知でしょうな?」

「……はい」

 

僕の傍を離れることに反応した先生だけども、無視できない電話なのか、一旦退室して行った。外で会話する音は全く聞こえない。

 

「……」

「ふむ。先生無しでは話が進められんな。しばらく雑談でもして待っていようか」

「はぁ」

 

これで僕と委員長の一対一になってしまった。どうしよう、何か話さないといけないのかな。好きそうな話題のタネなんて持って無いんだけど。適当に話を合わせていればいいか。狸って言うから、こんな場面でも気は抜けないけど。

 

「学園生活はどうだね? 聞けば、あまり外出しない暮らしをしていたと言うじゃないか」

「そうですね……楽しいです。毎日が発見ばっかりで飽きないですし」

「ほぉ~。学校が楽しいとは、ウチの孫にも聞かせてやりたいわ。あいつらちーーっとも勉強せん」

「あ、あはは……」

「秘訣なんかはあるのかね?」

「えっと……どうでしょう。でも友達がいて、仲間がいるから楽しいんじゃないかなって思います。自分一人だったり、嫌いな人がいっぱいいても楽しくないですから……」

「ふぅむ、なるほどのぉ。やはり彼氏でも見つけて謳歌させるべきなんかの。そう言えば更識のお嬢さんと仲が良いそうじゃな?」

「え? はいまぁ。ルームメイトですし」

「どうじゃ、どこまでいった? もう美味しく頂いたんか? それとも好みの味付けでもしとるんか?」

「はい? 頂く?」

「ううん眩しい」

 

額に手を当ててのけぞる委員長。どうやら期待した返しが出来なかったらしい。いや、頂くってなんですか?

 

「まぁ、楽しめているなら何より。病弱でも元気に生きているなら尚のことよ」

 

気を取り直したのか、委員長はうんうんと腕を組んで頷いている。なんか勝手に変なこと考えられてそうな怪しい顔してるけど……ホントに大丈夫だよねこの人。いや、怪しいおじさんだった。

 

「とすると、申し訳ないことをしてしまうな」

「は?」

 

脈絡のない言葉にぽかんとしていると、上から人が三人ほど振って来た。かなり高い天井からいきなり現れて、音も無く僕を囲むように着地すると、一斉にISを展開して僕に武器を向けてくる。

 

嵌められた。そう判断した僕は迷わずISを展開する。身体がどうとか言ってられない。いつも思うけど緊急事態起き過ぎじゃない?

 

「投降しろ」

「……エム?」

「そうだ」

「それに、オータムさんと、スコールさんまで…」

 

知識として聞かされている。僕が臨海学校中について行った先は、世界的に活動しているテロリストの亡国機業という組織だったらしい。彼女達はその中でも上の人間で、僕と姉さんを巡り合わせてくれた人達。

 

悪い人達じゃない。むしろ凄くよくしてもらった。特に、エムには。強気な性格で、口調もとげがあるけどどこか簪と似ていて話相手になってくれていたっけ。

 

いやまておかしい。ここは国際委員会の本拠地と言っても良い場所だったはず。先生がいたから間違いない。

 

どうしてテロリストがこんなところまで忍び込んでいる?

 

「そういう作戦ですか?」

「そういうことじゃ」

 

つまりはグルだったのか。汚い、大人は汚い。

 

「そんなに、この機体が欲しいんですか?」

「わしはな。別にお前さんが協力してくれる形でもかまわんのじゃけど」

「お断りします」

「じゃろうな。彼女らはお前さんが欲しいそうだぞ? モテモテは辛いの」

 

それは、分かった。両親がそのテロ組織の構成員だったことを聞かせてもらったからね。

 

「僕は、どちらもお断りです。こんな手段をとるあなたに預けるものは何もありません。皆さんには良くしてもらったけど、今選んでしまっては裏切ることになる」

「ほらな、言った通りじゃろ?」

「喧しいわよクソ狸。さっさとしなさい。ブリュンヒルデが扉一枚向こうにいるんでしょう?」

「呼んだか?」

「……あぁもう、言わんこっちゃない」

 

待っていた声がしたと思えば、スコールさんと千冬さんが切り結んでいた。サソリの様な黄金の機体は自身を包む様な球状のバリアを展開してブレードを弾く。千冬さんが不利に見えるが、執拗に一点を狙い続けてバリアにヒビが入り始めた。一挙手一投足、全てが洗練されたプロの動きだ。

 

いや、見とれてる場合じゃないだろ。

 

ビットを展開して二人に威嚇射撃。当然のようにそれを避けて十字砲火が僕を狙うが、空間圧縮で実弾エネルギー弾ともにひねりつぶす。

 

「ほおぉ」

 

委員長の感嘆が聞こえるが無視だ。てか逃げなくていいの?

 

ワイヤーブレードを多方に散らして動きを封じ、ワイヤーから直接発射できるビームスプレーで確実にダメージを与え装甲を溶かす。

 

「この!」

 

僕自身はガラ空きなのでエムは僕狙って突貫してきた。銃剣に速度を乗せた突進なんてくらったら身体がバラバラになる、たまったもんじゃない。

 

ビットが吐き出す散弾で速度を削り、空間操作で圧縮した弾丸を正面からぶつける。あらかじめ察していたのか、銃剣とビットを重ねてそれを防ぐ。が、勢いまでは殺しきれず壁際まで押しやった。立ち位置は初期に戻ったと言える。

 

(わかっていたけど、気が抜けない…)

 

バイザーのせいで表情までは分からないが、かなりやりづらそうに口元を歪めている。オータムさんもどう攻めるべきかとあぐねているようだ。ここは狭い上に向こうはそんな空間をフルに使ってドンパチやってるから自由に動けない。それに狙いは無事な僕とこの機体だ、思ったように戦えないんだろう。

 

そこをついて何とか逃げるしか……。

 

「ええのぉ、ますます欲しくなるわ」

「誰が…!」

「いやいや、譲ってもらおうなんて思うとらん。欲しいなら、奪うまで」

 

目を向けなくても分かる。センサーは机に隠れていた委員長が発光する箱を取り出したのをしっかりととらえていた。

 

あれは、ヤバい。そんな気がする。見ただけでも分かる。

 

ワイヤーを引きぬいてバーニアを吹かす―――ことは叶わなかった。親しみすら覚える、あのこみ上げる感覚。

 

「ごふ」

「ううん、すまんの」

 

吐血して動けない所へ、委員長の投げた箱が僕の機体にカンと良い音を立てて命中する。

 

箱が開いたと思えば、全身を電流が支配していた。

 

「ぎっ、が、あが…!」

「名無水!」

「あなたはこっちでしょ!?」

「ぐっ…!」

 

義足と義手の接続時に感じたやつの倍はある痛みと熱が身体を焼く。強すぎるソレらが回路を焼いていく感覚が神経を伝わってくるから性質が悪い。

 

それも一瞬だけで、気付いたらその痛みから解放されていた。が、電気で焼かれた義手と義足は反応が無く、仕方なく右腕で近くのテーブルをつかみ、椅子を支えにしながら床に倒れる事だけは無いように力を込めた。そして流木に捕まるように、テーブルにしがみつく。

 

そこでやっと気付いた。右腕にあるはずのものが、無い。そもそも機体が無い。

 

「ほほー。シンプルな黒い腕輪が待機形態か。しかしどす黒い色をしとるのぉ、美しさを感じんわい」

「まさか……!」

「ん、頂いたよ。ありがたぁく使わせてもらうぞ」

「返せ…それは、あの人のものだ!」

 

動かない身体を右腕一本で支えて、テーブルを伝い必死に近づく。が、それを見逃してくれるはずも無く、僕はエムの腕に抱かれた。抵抗らしい抵抗もできず、大人しくつままれる。

 

「はなして、くれ! あれは、大切な人から預かったものなんだ…!」

「分からなくもないが、今は諦めてくれ(機会があれば取り返してやれる、今は大人しくしていろ)」

「……君は」

 

もう何が何だか分からなくなってきた。誰か説明してほしい。というか助けて。

 

「スコール、ずらかるぞ!」

「先に行ってなさい!」

「させん!」

「こっちの台詞よ!」

 

激闘を繰り広げる赤と金を避けて、入り口とは反対の壁側まで移動するエムとオータムさん。大事に扱ってくれるのは分かるんだけど僕の意志をどうか尊重してください。

 

「離して! 僕は!」

「駄目だ、お前は連れて帰る! わた、し……?」

 

面と向かってエムに噛みつくが、徐々に彼女の言葉に力が無くなっていく。普段は絶対に外さないというバイザーまで外して、呆然とした表情で僕を見つめてくる。なんだよいきなり、拍子抜けするじゃないか。僕まで力が抜けてきたぞ。

 

「ふぅむ、加減が難しい……」

 

がちがちと泣きそうな表情で歯を鳴らすエム。ついで僕と目が会ったオータムさんは、一瞬で沸点に達したように怒りへと表情を変えて叫んだ。

 

「おい、どういうことだクソ狸ジジイ!!」

「どう、いう、ことだ? 話が、違う。その機体があればいいと言ったのは貴様だ、名無水は私達が連れて帰ると、そういう内容だったはずだ……!」

 

なんだいきなり仲間割れ? 雰囲気からして利害の一致って感じだけど、なんか取り決めでも破ったの?

 

「勿論。連れて帰ってもらってかまわんぞ? ほれ、はよう行かんか」

「てっめぇええええぇえ!」

 

挑発するようにしっしっと追い払うように手を振る委員長に飛びかかるオータムさん。蜘蛛のようなISの四本のブレードが一斉に斬りかかる。

 

が。防がれた。

 

「こうか? 若い時とは違って、身体が思い通りに動かんわ」

 

僕の機体を、委員長が操っていた。どういうこと? 奪うまではわかったけど、どうして操れる?

 

なんか、もう、わけわかんないよ。ホント、誰か説明してくれない? 展開速すぎて頭追いつかないよ、ぼーっとしてきたし。

 

「おい、寝るな! 起きろ! 今寝たら死ぬぞ!」

「だぁ、れが。しぬもん、か…‥げぇ」

「っ! そうだ、そのま でいろ、今  場所を す!」

「どけ! 応 処置が先……貴様、何者……えぇい後だ !  コール、心拍が浅い、人工呼 を!」

「ええ。エム、あな  呼びか 続けて!」

「わ、わかった!」

 

あれ、なんか集まってない? どうしたのさいきなり僕の周りに集まって。さっきまで戦ってなかったっけ? え、なに、ちゅーするの? やだなぁスコールさん、幾らなんでもからかい過ぎですよああああああああ。すごいナにコレあったかいね。さよなら僕のファーストキス。

 

……いやいや、そうじゃなくて、下ろしてくださいってば。僕は行きませんよ。待ってるんですから、友達が、彼女が。お世話になりましたし、良い人達だってちゃんと分かってますから。会いに行くとか考えますから、とりあえず帰してください。

 

足掻くように右腕を伸ばす。左腕と脚は未だに反応が無いので、一度外してメンテして貰わないと動かないかもしれない。あとでお願いしなきゃ。今は這ってでも逃げて、連絡とって拾ってもらって、学園に。

 

身体が動かない、おかしい。いやいや右腕は動くはず。さっきまで動いてたじゃん。意外と根性あるって知ってるんだからな、僕の身体。

 

「ぁぇ?」

 

無い。

 

右の肩から下が、無い。ごっそりと欠けている。噴水のように血が撒かれている。だらりとホースの様な大きめの管が僕の中から零れ落ちている。

 

死。

 

たった一単語が頭をよぎる。普段から僕の隣を歩いていて、気まぐれに肩を掴んでは連れて行こうとする悪友。その彼が、身動きできない僕を肩に担いで、来た道を戻っていく。

 

やめろ。いやだ、駄目なんだ。僕は……。

 

「 ぎ、だぃ」

「ッ! 当たり前のことを言うな!  きるに決まっている。お前が ぬわけあるか! 帰って   に会うんだろう? 友達が待っているんだろう!?」

「ぅ"n」

「いいか、寝るな。起きろ。起き続けろ。今寝たら会えなくなると思え!」

「ね、nあi」

「そうだ! 私との約束だってあるんだぞ! 駅前の雰囲気の良い喫茶店に連れていくと言ったのはお前だからな! 自分で決めた約束を破る様な奴じゃないだろう!」

「ぁ   ぁ」

 

あと一分だ。

 

え?

 

一分だけ。くれてやるぜ。俺達の仲だしな。それ以上は無理だ。

 

そんな、嫌だよ。僕まだ何も出来てないんだ。だから……

 

………。

 

……そっか。ありがとう。

 

「ぇ、m」

「な、なんだ? どうした?」

「たの、み   ある 」

「たのみ? 馬鹿を言うな! まるで、もう、諦めたような―――」

 

自分の視界がだんだんと滲んでいく。赤く、あと、うるうると。それで、エムの涙が頬を叩く感覚が、どんどん鈍くなっていく。

 

「エム。聞いて、あげて」

「スコール! おま「エム!」 ………ッ! ど、どうした?」

 

なんか、喧嘩させてごめん。

 

「髪、 り」

「髪? 髪飾りか? これか?」

 

するり、と髪がほどけていく感触。そう、それ。姉さんが残してくれた、雪模様の髪飾り。色々あって、色んなものが無くなっていったけど。それは最後まで残ってくれた、家族の形見。それを、どうか……

 

「か、ん‥…」

「更識簪か?」

 

そう、簪。

 

「彼女に、渡せばいいんだな?」

 

うん。汚くて、受け取ってもらえないかもしれないけど。僕のこと、忘れてほしくないから。

 

「分かった。私が、責任を持って、届ける」

 

ありがとう。千冬さんとか、束さんは、ちゃんと渡してくれなさそうだから。頼んだよ。

 

「げぇ」

「「「「名無水っ!」」」」

 

口から最後の血が全部溢れていった。もう、あと、最後に……

 

「ぁりか " tぅ」

 

にこりと涙ながらに微笑むエム。やっぱり簪に似てる気がするなぁ。だからかな、簪に看取られている気分だ。わるくない。

 

 

 

 

 

もういいかい?

 

良くないよ。僕はまだ きていたい。

 

無理。

 

わかってるさ。良いよ、ありがとう、君も。

 

いくぞー。

 

うん。

 

 

さよなら。




次回、最終話です。

二人はマグカップ数セット持ってるので、前割れたじゃんって思ってもそれは別のです。



すこしだけ、舞台裏のお話をさせてください。

出だしと、これまでの話しの中で数話だけ日記の様な部分を描いてきました。名無水の日記と、誰かの所作。まぁ簪ですね。

時間軸? って言うんですかね。時系列を書くなら

今作23話まで

冒頭直前

簪が銀の日記を見つける。最初の一冊から、過去や知らない一面をひも解いていく。

冒頭

というイメージで書き続けてきました。時折見せた簪の反応は、日記を読む中で彼女が反応した場面のほんの一部になりますね。

実際のところ、二人が部屋で過ごしたのはたったの一ヶ月ちょっと。それ以外は全部学園の医務室や打鉄弐式の整備室だったり。意外な感じもしましたが、病弱な銀が生きやすい環境と言えば医務室が一番だったのでしょうね。

こんな構成にチャレンジしてみたのは単純な興味です。タイムタイムリープなんて話はまだ難しいけどなんかやりたいというのがきっかけでした。結果的に上手い具合に物語りを引きたてるスパイスになったんじゃないかなって思ってます(まだ完結してないけど)

さて、では次を楽しみにお待ちいただければと思います。近日中に投稿(予定)です。

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