ハリーポッターと3人目の男の子   作:抹茶プリン

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映画の部分と小説の部分が混ざっています


ハリー・ポッターと賢者の石
ダイアゴン横丁


 「セルス!おい、セルス、早く起きろ!」

 

布団をはがされると同時に耳元で大声を出され、強制的に起床させられた。心地よく寝ていたところを起こされたので実に不快だ。

 

「なんだよ、ドラコ……。起こすにしてももっと優しく起こしてくれよ」

 

反動をつけベットから起き上がった俺はドラコに文句を言った。

 

「一度声をかけても起きなかったんだ!それより今日はダイアゴン横丁に行く日だろ。早く準備をしろよ。父上も母上も待っているぞ」

 

「ああ、わかったよ。すぐに用意するよ」

 

俺の返事を聞くとドラコはさっさと部屋を出て行った。

余程楽しみなんだろうな。だが、入学準備が楽しいのは理解できるんだが、いささかわくわくしすぎなんじゃないだろうか。

少し不満はあるが、待たせるのはいけない。タンスを開け寝着から外出用の服に急いで着替える。

 

着替え終わった俺は一階のリビングに向かった。

 

部屋から出て家族が居るであろうリビングに向かうまでの暇な時間、この10年間のことを振り返った。

ルシウスによってさらわれた日から数日たった日に、純血の家系や高位の方々を集めたお披露目会が行われた。俺のお披露目会である。

そしてそこでは、マルフォイ家の二男として紹介された。今まで知らせていなかったのは、病弱だったからだと説明されている。

自然に受け入れられたのは魔法省に根回しをしたからなんだろう。

後に分かったことであるが、フィリップ家の嫡男は亡くなったことにされていた。当時の闇の勢力の影響がどれだけ大きく、深いところまで影響力を持っていたことが簡単に予想することが出来る。

 

マルフォ家の二男になって二ヶ月ぐらい経った頃だろうか、闇の帝王が打ち倒された。原作通り打ち倒したのはハリーだった。

それからのマルフォイ家は忙しかった。

家にある様々な物が家の外へ運び出されたり、家の隠し部屋へと運ばれた。ルシウスが家にいるのは珍しく、忙しなく動き回っていた。各所に根回しをしていたんだと思う。

家へとやってくる役人が消え、落ち着ける状況になったのは、闇の帝王が打ち倒されたという話が広まってから一年ほどたったころだった。

 

闇の帝王が打ち倒されたことにより、闇の帝王の命令によって押し付けられたであろう俺は、ハリーのように惨めな暮らしをさせられるか、孤児院にでもほうりこまれると思っていたのだが、何年経ってもそのようなことは起きなかった。

むしろドラコと同じ量の愛情を受けながら育った。余所の子であると思わせる素振りは一切無かった。

つまり、この十年間はドラコと遊び回り、パーティーに出たり、貴族のマナーを学んだりする素晴らしい幼少期だったと言える。

だから、ルシウスは肉親を殺した相手でありつつも育ててくれた恩がある相手でもあるということになる。このことは未だに悩んでいる。

 

 

 

  階段を下りて一階の周りの扉と比べて一際大きい扉を開け、リビングに入る。

 

「父上、母上、おはようございます。お待たせしてしまって申し訳ありません」

 

部屋の真ん中のソファーに座り寛いでいた二人に挨拶をする。

 

「ああ、おはよう。なに、そんなに待っていない。ドラコが早すぎるんだ」

 

ルシウスはドラコを軽く睨む。

 

それを聞いたドラコは、壁にかけられた絵から目を離した。

 

「だって、ようやく杖を買ってもらえるんだ」

 

そして、ルシウスに拗ねた口調で文句を言った。

 

「セルス、おはよう。さっ、セルスも準備できたことだしダイアゴン横丁に行きましょう。あっそうだわ、セルスはお腹が空いているでしょう。軽く食べられる物を持って行きなさい。ドビー!」

 

ドラコと同じブロンドの髪の毛を持つナルシッサが、静かだが鋭い声で座敷しもべ妖精のドビーを呼ぶ。

 

パチッという音とともに目の前に古い枕カバーのようなものを着たドビーが現れた。

 

「奥様お呼びでしょうか?」

 

「セルスに食べ物を持たせなさい。急ぎよ!」

 

ナルシッサは蔑んだ目でドビーを見下ろしながら命令した。

 

「承知しました。ただちに!」

 

ドビーは慌てて頭を下げたあと、再びパチッと音をさせて姿を消した。

 

「では、行こうか」

 

ルシウスがソファーから立ち上がり、部屋から出て行く。その後を二人は着いて行った。

 

また、パチッと音がしてドビーが現れる。今度はその手に小さな箱を抱えていた。

 

「セルス御坊ちゃま、お待たせしました。サンドイッチをお持ちしました」

 

「ああ、ありがとう」

 

ドビーは大きなギョロ目を潤わせた。

 

「ドビーには勿体無きお言葉でございます」

 

声が少し震えている。

昔よりはマシになったが、こうなったドビーは大変面倒な存在になるので、みんなが待っている場所に早足で向かった。

 

 

 

俺が着たことを確認したルシウスは、ナルシッサを促した。

ナルシッサは暖炉の横に設置されていた鉢から煙突飛行粉(フルーパウダー)を掴んだ。そして、暖炉の中に入り、煙突飛行粉(フルーパウダー)を地面に叩き付けると同時に叫んだ。

 

「ランジワート!」

 

ナルシッサが消えたのを見届けると、ルシウスはドラコを促した。

ドラコはナルシッサと同じことをして消えた。

 

次に俺だ。

二人と同じことをして、ランジワートへと向かう。

巨大な穴に吸い込まれるような感覚と轟音が消えると、そこには綺麗な店内が広がっていた。

ここは限られた者だけが使用することが出来る暖炉を設置する為に建てられた店だ。高位な者は下々の者と一緒のものをつかうのが不快らしく用意されたらしい。

不思議なことに煤や塵が体につかないので便利だ。

 

すぐに暖炉を出た。ルシウスがくるからだ。

 

シュッという音とが聞こえルシウスが現れる。

 

「行くぞ」

 

ルシウスが店の扉を開け外に出た。

 

さあ、ダイアゴン横丁だ。

 

 

 

 小さな店が立ち並び、様々な物が売られている。フクロウや猫、大鍋、望遠鏡、様々な薬草、かぶ、お菓子……すべてを確認することなんて不可能だった。

ルシウスとナルシッサは学用品を買いに行っている。つまり我々には監視の目がないということだ。

ドラコは店で買ったお菓子を片手に店内を覗き込み、俺はサンドイッチを食べながら道を歩く人を眺めていた。二人が居たら怒られていただろう。

 

ある程度満足した俺たちはマダムマルキンの洋装店に向かった。元々ここに行くように言われていたのだ。

まあ、服を買うにしては高すぎるぐらいのお金をもらっていたから、遊ぶことは想定されていたのだろう。

 

『マダムマルキンの洋装店ー普段着から式服まで』という看板が掲げられている。

 

ここで、ハリーとドラコが初めて会うんだよな。原作にここから関わっていく訳だ。

堂々と店の中に入って行くドラコと対称的に俺はぎこちなく店へと入って行った。

 

店に入ると、藤色ずくめの服を着た、愛想の良さそうな、ずんぐりとした魔女が居た。

 

「坊ちゃんたち、ホグワーツなの?」

 

質問に答える前に彼女は口を開いた。

 

「全部ここでそろいますよ……。さぁ、奥に行って採寸しましょうね」

 

促された先には踏み台が三つ並んでいた。

ハリーと隣になるわけにはいかないので、ドラコよりも早く移動し、端の踏み台に乗る。

ハリーがドラコに嫌悪感を抱かなくてはならないのだ。

心配する必要は無いと思うが、ハリーの組み分けに万が一があってはならない。

 

「セルス、後で競技用の箒を見に行こうよ。一年生が箒を持っちゃいけないなんて納得出来ないね。僕たちは必ず寮の代表選手になれるはずなんだ。」

 

踏み台に登ったドラコが声をかけてきた。

 

「その話はもう何度も話しただろ……。父上の権力を使っても無理なんだ。それに一年生が出しゃばったら不満が出てくるだろ?」

 

「確かにそうなんだけどさ……」

 

ドラコは拗ねて口を閉じた。

 

 

 三分の一ほど終わった時、店のドアが開いた。

そちらを覗き込むと小柄でやせていて、長めの黒髪の少年が立っていた。よく見るとかけている眼鏡にはヒビが入っていた。

前髪が長いので額の傷は確認出来ないが、ハリーポッターだろう。

 

マダム・マルキンに連れられてハリーがやってきた。

 

「やあ、君もホグワーツかい?」

 

ドラコは気だるそうな、気取った喋り方で、ハリーに話しかけた。

 

「うん」とハリーが答える。

 

「隣に居るのが、僕の弟だ。「よろしく」似ていないのは、母上の家系の血が強く出たからだと思う。髪の色も漆黒だしね。父上は学用品を買いに行っているし、母上はどこかその先で杖を見ている。」

 

ドラコは自分勝手に話しかけていた。端から聞いているとハリーがこの時点で苦手意識のようなものを持つのは無理ないなーと理解出来た。

 

ドラコが純血主義の話にさしかかったとき、ハリーの服の調節が終わった。

 

「じゃ、ホグワーツでまた会おう。たぶんね」

 

ドラコが気取った口調で別れを告げた。

 

「じゃあな」

 

俺はそれだけだった。

 

 

 

 マダム・マルキンの店の外にはルシウスが待っていた。

 

「学用品は既に買った。もちろん最高級品のをな。あとは杖とフクロウだ。まずは杖だ」

 

 

店は狭くてみすぼらしかった。扉には剥がれかかった金色の文字で『オリバンダーの店ー紀元前三八二年創業 高級杖メーカー』と書かれてある。埃っぽいショーウィンドウには、色あせた紫のクッションに、一本の杖が置かれていた。

 

中に入るとチリンとベルが奥の方で鳴った。中ではナルシッサとオリバンダーが話していた。

 

「ようやく来たのね。二人に合いそうな杖を選んでおいたわよ」

 

「まずは、ドラコから選びましょうか」

 

ナルシッサは箱の一つを空けると杖を取り出した。そして、杖をドラコに手渡す。

 

「ザミアにドラゴンの心臓の琴線。二十三センチ、バネのよう。さあ、振ってみなされ」オリバンダーが補足した。

 

 

ドラコは杖を振るうが、起こった現象は花瓶が割れることだった。ドラコの顔に陰りが差し込んだ。

 

「次にいきましょう。」

 

ナルシッサは2つ目の箱を空け、杖を取り出した。

 

「サンザシに一角獣のたてがみ。二十五センチ、ある程度弾力性がある」

 

杖を受け取ったドラコはおもむろに杖を振った。

 

次の瞬間、杖の先から火花が飛び出し、空中で弾ける。

 

オリバンダーが「ブラボー!」と叫んだ。ナルシッサは拍手し、ルシウスはよくやったと肩を叩いた。

 

「やったな」

 

ドラコに声をかけ場所をかわる。ドラコははにかみながら、ありがとうと返した。

 

「次はセルスね」

 

一つの箱を隅に移動させ、箱が三つになる。それぞれ三つずつ用意していたようだ。

ナルシッサから杖を渡される。

 

「シナノミザクラにドラゴンの琴線。二十四センチ。軽い」

 

杖を軽く振るうと、棚から杖の箱が飛び出した。

 

「いかん、いかん。合わぬようじゃ」

 

ナルシッサから二つ目の杖用意する。

 

「イチイの木にアオバネトリバナの琴線、28センチ。良質で振りやすい」

 

杖を握ると体の中心が温かくなるのを感じた。先程よりも大きく、そして素早く杖を振り下ろした。

すると、杖の先からいく筋もの光が飛び出し、光りの川を作り出した。

 

ルシウスによくやったと肩を叩かれ、ナルシッサとドラコからは大きな拍手をもらった。

 

「いやー素晴らしい!お二人は良き母を持ちましたな。杖を選ぶにはその者との相性を考えなくてはならない。様々な杖がある中からこうしてお二方の杖を選ぶことが出来るのは、子供のことをよく見て理解しているからなんでしょうな」

 

オリバンダーが大きくうなずきながら話す。

 

オリバンダーに言われて気がついた。ルシウスは肉親を殺したが、それは闇の帝王の命令だったからだ。本当は殺したくはなかったんじゃないだろうか。だから、こうして二人は本当の子供のように俺を育て、愛してくれたんじゃないだろうか。

いずれにしろ俺は彼らから、マルフォイ家から大きな愛を受け取っているのだ。大きな恩がある。

原作でのマルフォイ家の最後は軽めのバットエンドだ。ルシウスはアズカバンに収容されるし、ナルシッサは子供を憶うあまり、やつれてしまう。書かれてはいなかったが、地位と財産を多少なれとも損なったであろう。

自業自得と言われればそれまでだ。だけどマルフォイ家は俺の”家族”だ。

救えるかもしれない手だてを持っているなら助けてやらなければならない。

 

お金を払うルシウスの背中を見つめながら、そう決意した。

 

 

 

 イーロップふくろう百貨店にやってきた。店に入るさいに店からでるハグリットと遭遇した。両親は仲がよろしいようで同じタイミングで大きく舌打ちした。

一方、俺とドラコは身近で見たときのハグリットのあまりの大きさに驚愕し、口を大きく開けてつったっていた。自分の身長が小さい分、より巨大に見えたのだ。

ハグリットの手には白く美しいメンフクロウが入った籠が握られていて安心した。ヘドウィグという優秀で忠誠心が高く、優しいふくろうがいなければ、ハリーは殺されていたのだ。

 

イローップふくろう百貨店は暗く、ふくろうがバタバタとはばたかせる音がし、いくつもの輝く目がこちらを見つめてくるという楽しい場所であった。

まあ、動物がたくさんいるということは、自然と動物の体臭や糞や尿の匂いが店内にこもり少し臭かった。少しで済んだのは。店員が一生懸命掃除をしている成果だろう。魔法でやっているのだとすればもう少し頑張れよと言いたいところであるが。

 

ルシウスとナルシッサはその少しの匂いも駄目なようで、店に入ってすぐに、買うふくろうを決めたら呼びにきなさいと言った後、さっさと店を出て行った。

ドラコも同じように匂いを嫌がると思っていたのだが、自分のペットを選ぶという夢中になれることがある今はそんなことは気にならないらしく、店にいるふくろうを見定めていた。

 

一方、俺はなかなか欲しいふくろうを選べずにいた。

荷物や手紙を遠くに運べる大型のふくろうにするか、見た目を重視して、かっこいいミミズク系のふくろうにするか、愛らしいふくろうにするか。

長い間一緒に暮らして行く訳だから簡単には選べない。

 

長い時間悩み、二羽までしぼった。モリフクロウか、メガネフクロウである。賢そうなので選んだ。どちらもまだ子供である。

 

ドラコは飼うフクロウはワシミミズクに決めたらしく、二羽のワシミミズクのどちらが強いか比べている。

 

ここは潔く決めようと思った俺は、それぞれのふくろうの目をじっと覗き込んだ。すると、メガネフクロウの方が二回目を閉じたのだろう。

それを見た俺は不思議なことに意気投合した気分になり、このメガネフクロウを買うことにした。

 

店の外で待つルシウスを呼び、メガネフクロウと成長を見越して大きな籠、その他必要なものを購入してもらった。

 

やることが終わった俺は、ナルシッサと二人で店の外にいた。

暫くすると、ドラコがルシウスに続いて出てきた。その腕の中には大きなワシミミズクの入った籠が収まっていた。

 

太陽は既に真上から少し西に傾いていた。

俺たちは昼飯をダイアゴン横丁でとること無く、家へとそのまま帰った。

 

 

 

 自分の家族の存在と新しい家族を迎えた今、入学準備はとても楽しいものなんだな、そう思えた。

 




メガネフクロウの画像見てたら、厨二心をくすぐられた...。

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