ハリーポッターと3人目の男の子   作:抹茶プリン

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初めまして、抹茶プリンです。少しでも楽しんでもらえれば幸いです。
#ルシウスとベラが話す時の態度を変更しました


1980年〜1981年

温かくて居心地が良い空間から少し寒くて眩しい場所へ出されたとき、自分が赤ん坊であり、異質な存在であることを自覚した。

赤ん坊であるのにも関わらず、しっかりとした自我を持ち、様々な知識を持っているのである。輪廻転生というものだろうか。輪廻転生したら、前世の知識を引き継げるのかは知らないが。

あぁ、言い忘れていたが、恐らく前世で培った知識が自分の中にあるが、どのような人間だったか、何をしてきたかとかそういった記憶は引き継がれていない。だから、前世の自分について知ることは出来なさそうだ。英語で思考しているから英語圏の人間だったことは分かるが。

 

まともな人間ならそのことを恐ろしく感じるだろうが、俺にとって記憶が無いのが当たり前のこととして認識されているようで不安を感じることは無い。

 

自己整理していた俺の身体が突如持ち上げられ、尻を叩かれる。突然の出来事に驚いた俺はうぎゃーと泣き叫んでしまった。どうやら俺はまだ自分の力で呼吸をしていなかったようで、肺呼吸をさせる為に叩かれたようだ。

 

何はともあれ再び命を頂いたのだ。一生懸命に生きて行こう。

 

1980年6月7日、フィリップ家の嫡男が大きな産声をあげた。

 

 

 

 

 視力が上がったことにより、ようやく周りの状況が把握出来るようになった頃、この世界が自分が生きていた世界とは大きく異なる世界だということに気がついた。

家族は棒のようなものを振って現実ではおこりえない事象を起こすし、時折、ゴブリンとはちょっと違う小人が家政婦のようなことをしているのだ。

 

どうやら俺は”ファンタジー”の世界に生まれてきたらしい。

 

このことは驚きはしたがすぐに受け入れることが出来た。

これについては、知識はあっても昔の自分の記憶が無いおかげで柔軟に受け止められているからだと考えている。輪廻転生したことに対する受け止め方と同じだ。

 

今回はそれに加えて、生活していくことが恐らく心配する必要がないことも関係している。

フィリップ家は地位の高い家系だ。ヨーロッパの貴族が住んでいるようなお屋敷に住み、フィリップ家に子供が生まれたと聞けば多くの人が集まり、集まった人の多くは父に畏まった態度をすることから相当な地位と名誉を持つ家だと分かる。

父と母の様子だけ見るとそこまででは?と思ってしまうのだが……。気品は感じるのだが、そこまで地位のある人かと疑問に感じる時があるのだ。

 

 

 

 最近、家に訪ねてくる人が増えてきた。それも様々な種類の人達が。

ある日は、どこか落ち着かない様子の男性が訪れ、ある日は、高級そうなローブを来た上品な男性が訪れ、ある日は、煤だらけで見窄らしい格好の男性が訪れ、ある日は、厳つい顔をした男性が訪れる、このような感じなのだ。

この人達は大きく分けて二つのカテゴリーに分けることが出来る。

忙しなく時間的に余裕が無い人と、落ち着いており余裕がある人だ。

 

父に抱っこされ甲斐甲斐しく世話されていたとき、呼び鈴を鳴った。今日も人が訪れてきたようだ。今日こそは何故この家に人が来るのか知りたいものだ。

 

屋敷しもべ妖精のプーワに連れられ男女2人組が入ってくる。どうやら今日は慌てている方の人達のようだ。

 

お客様が来たら俺はすぐに隣の部屋に移される。このせいで声が聞こえなくなり、何故くるのかが分からないのだ。

父にそっと乳母車に戻される。

それを確認したプーワが隣の部屋へと乳母車を押し始めた。

 

今日も謎は解けなさそうだ。

 

しかし、幸運なことに諦め落胆する俺の耳に男性の声が飛び込んできた。男性は少しでも時間が惜しいらしく、矢継ぎ早に喋り始めたのだ。

 

「フィリップさん!いい加減に決断してください!こうして悩んでいる間にも”闇の帝王”の力は日に日に強くなっています!あなたがこちら側についていただければ、仕方なく死喰い人(デスイーター)に従っている人も決断することが出来るんです。ホグワーツであなたのことを慕っていた人達のことを思い出してください……。これ以上被害を大きくしてはならないんだ……。」

 

男性の最後の声は絞り出すような声で、聞いた人を心配させるようなものであったが、今の俺には気遣えるような余裕は無かった。

 

男性の話から聞こえた聞き覚えのある単語から連想されるものが驚愕的なものであったからだ。

 

闇の帝王、死喰い人(デスイーター)、極めつけに”ホグワーツ”。

 

これはあれじゃないだろうか。もしかして、この世界は「ハリー・ポッター」の世界何じゃないだろうか。

今思えば、大きいな屋敷などで働く小人を屋敷しのべ妖精と呼ぶのも一致している。

 

本当に「ハリー・ポッター」の世界なのかは分からない。だが、もしも「ハリー・ポッター」の世界だとすれば大変なことになる。

 

プーワがドアを閉める音は、やけに重く大きく聞こえ、耳にいつまでもこびりついた……。

 

 

 

 本当にこの世界が「ハリー・ポッター」の世界なのか、もしそうであるならばどこらへんの時期なのか知る必要がある、そう思った俺は情報を集めることにした。

ハイハイをしてもおかしくない時期であるし、危険があると魔法が助けてくれる便利機能もあるらしいので、そこらへんを歩いていてもにこやかな顔を向けられるだけであった。プーワはヒステリックに叫んでいたが。

 

今日もハイハイという意外にも体力を使う移動手段で冒険をしていた俺は、机の上に新聞紙が置いてあるのを発見した。

机の足にしがみつき、徐々に体を持ち上げて行き、寄りかかってはいるものの2本の足で立つことに成功した。妙に感慨深く感じた。

左手で机の足をつかみ体を支えながら、机に載っている新聞紙を地面に落とした。

 

『日刊予言者新聞』

 

新聞には大きく会社名が書かれていた。「ハリー・ポッター」で登場する新聞社だ。

ここまでくると受け入れざるを得ない。俺は「ハリー・ポッター」の世界に転生してしまったようだ。

 

少なからず衝撃を受けた。

本来、小説の世界でフィクションであるものの中に来てしまったのだ。常識を覆された。

それに「ハリー・ポッター」は友情とか恋愛とかどこかほっこりする部分があるものも基本ダークファンタジーな部分がちらほら見える。原作の後半では、名前も気配も感じなかった人達が拷問されたり、殺されたりとひどい目に合っているはすだ。

正直言って、これからの人生がかなり不安である。

 

そうだ、年月を調べなくては!闇の帝王ことヴォルデモートが力を付ける機会は二回ある。

一回目はハリーが生まれる前。二回目は体を取り戻した後。一体どちらの時期なのか。

新聞に目を戻す。

 

『1981年4月23日』

 

これは原作前ってことか?確か原作の最後の方が2000年近くであった気がする。つまり波瀾万丈の年代に生まれてきた訳か。大変だ...。

 

 

 

 

 悲鳴が聞こえる。今日はカラっとした暑い日でなかなか寝付けなかった。ようやく寝れたと思っていたのに悲鳴のせいで飛び起きてしまった。

 

ガラスが割れる音や怒鳴り声、物を打ち付けるような音が聞こえる。

 

なんだか様子がおかしい。一体何が起こっているんだ?

 

しばらくすると音が止んだ。

 

またしばらくすると、俺のいる部屋に向かって複数の足跡が聞こえ始めた。

 

これはマズくないか?何者かによって襲われ、父と母は敗れたと考えるのが自然じゃないだろうか。

この時勢で敗者が生き残っている可能性は低いだろう。だから父と母は死んだと思う。

二人が亡くなったことが悲しいし、襲撃してきた人物達が憎いが、正直に言えば約1年しか一緒に暮らしてこなかったのだから、そこまで気持ちに揺れが無い。俺は冷めているのだろうか。

 

徐々に足音が大きくなっている。

 

とにかく逃げなくては。乳母車のふちにふとももをのせ、乳母車を乗り越えた。

そしてなるべくゆっくりと降りようとする。

しかし、足が届かず転げ落ちてしまい、大きな音を立ててしまった。

 

その音が聞こえたのだろう。足音が歩く音から走る音に切替る。

 

なんとかしなくては!移動するにしても既に遅すぎる。こういったときにこそ魔法が発動すれば!必死にこの状況を逃れられることを祈った。

 

だが、どの世界も共通らしく、どんなに強く願ったことであっても運という要素が加わると、その願いが叶うことは難しくなるらしい。

 

状況は変化すること無く、部屋の扉が勢いよく開き、ドタドタと杖から光を出す4人の男女が入ってきた。

 

「見てごらんよ!こいつったらいっちょまえに逃げようとしているよ。この優秀そうな子供がルシウス、あんたの子供になるなんて羨ましい限りだね!」

 

四人の中で唯一女性である女が鋭い声で叫んだ。

 

ルシウスだって!?まさか、ルシウス・マルフォイなのか!?それに子供にするってどういうことだ?

四人の顔を覗き込もうとするが、光が眩しく覗き込むことが出来ない。

 

「大きな声を出すな、ベラトリックス。そのことについては既に話し合っただろう。それに闇の帝王のご指示だ」

 

ルシウスがどこか憮然とした口調で話すと、ベラトリックスは舌打ちをして黙った。

 

「早めに済ませよう。俺たちはこれから色々な処理をしなきゃならないんだ」

 

ルシウスとベラトリックスの後ろに居る二人のどちらかがいらただしげにしゃべる。

 

「私はこの子を連れて帰る。後の処理は頼んだぞ。くれぐれも慎重にな」

 

三人はうなずいた後、部屋から出て行く。

 

ルシウスはそれを確認すると再び俺の方を向いた。そして静かにこちらに歩き、大事そうに俺を持ち上げ抱っこした。

ルシウスは俺の顔を数秒見つめた後、何かを呟いたが、それは本当に小さな声で聞き取ることは出来なかった。

 

 

 

 玄関を開け、家の敷地へと歩き出す。全く状況が把握出来ない俺は既に考えることをやめ、初めて見る家の敷地にある数々のオブジェをボーと眺めていた。

 

無駄に広い土地を暫く歩き、門から敷地外へと出た。

ルシウスは立ち止まり、マントから杖を取り出した。

次の瞬間、周りが回転しているのか、自分が回転しているのか、はたまた両方が回転しているのか分からないが、すごい勢いで回転し始めた。さらには四方八方からぎゅうぎゅう押さえつけられている気がした。

 

始まりと同じように終わりも突然やってきた。ピタッと回転が止まり、重圧も無くなった。そして、先程居た場所ではなく、月明かりに照らされた細い道に移動していた。

周りを見ようとしたが、酷い倦怠感(けんたいかん)と気持ち悪さが押し寄せ、ルシウスの中で吐き出してしまった。胃の中の物を全て出したんじゃ無いかと思うほどの量を吐き出した俺は、ふわりとした感覚が体を襲い、気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公の前世の自分の記憶を無くした理由は、主人公の人格は完成してなく、これからの経験によって成長したり捻くれてしまったりする可能性があって欲しかったからです。分かりづらかったらすみませんorz

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