バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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騒七問

―――学園長室―――

 

 

「ほほう・・・・・アンタところの学園長は面白い提案を本格的にねぇ・・・・・」

 

「はい、そして私がその見届ける為にこの学校に来ました」

 

「そうさねぇ・・・・・ここ最近はあのバカ共の静けさにこっちとしては

万々歳な気持でいたが、そっちにそこまで提案をされちゃこっちも何もしないで

いるわけにはいかない。いいだろう、その提案を実際にしてやろうじゃないか。

本格的な試召戦争になりそうだしね」

 

「ありがとうございます。学園長もこの提案後の満足する報告書ができそうです」

 

「いいさ。アタシが生まれた故郷と母校からの頼みとあれば大抵のことを引き受けるさね。

特別にお前さんには自由な服装での登校を許可するよ」

 

「感謝します藤堂学園長!」

 

「さて、お前さんにはテストしてもらったんだが・・・・・これはどういうことさね?」

 

「故意でそのクラスになるよう細工しました」

 

「それはどういう理由で?」

 

「―――好きな人がそのクラスにいると情報が入りましたので、

私はそのクラスに入る事を心から望みます」

 

 

―――2-F―――

 

 

ブルッ!

 

 

『・・・・・?(キョロキョロ)』

 

「どうしたのハーデス?」

 

『・・・・・急に悪寒というか・・・・・なんだろう、俺自身も意味不明』

 

「・・・・・何かを感じた?」

 

「珍しいな、ハーデスが分からないなんてよ」

 

「じゃな」

 

何かを確認する為、辺りに忙しなく赤い目を向けるハーデス。

でも、何の異変もないことに『・・・・・気のせいか?』と小首を捻る。

 

「それより雄二、知ってた?今の梅屋、時間制で大盛りの豚丼を食べ切れば三回きり

50%OFFのチケットが手に入るって」

 

「そいつは知らなかったな。それに俺にとっては美味しい話しだがそれは何時までだ?」

 

「んーと、最近したばっかりだから・・・・・多分、今日までだと思うよ?」

 

「よし、だったら帰りに梅屋に寄るか」

 

雄二が野性味たっぷりな笑みを浮かべ、行く気満々だ。

既にこのことはガクト達にも伝わっている。

なんたってこの情報は大和から得た話だし。

この状況、雄二VSガクトの大食い大会!が見えるかもしれない。

 

『・・・・・大食い大会か』

 

「ハーデス、キミも参加する?」

 

『・・・・・(コクリ)』

 

「はっ、ハーデスもか?いいぜ、どっちが早いか勝負だ」

 

「なんじゃか面白そうじゃの、ワシもしてみようかの。ムッツリーニは?」

 

「・・・・・撮影が忙しくなりそうだからパス」

 

大食いに撮影なんて意味があるのか分からないけど、盛り上がる事だけは間違いない。

 

「なになに?アンタら、どこかに行くの?」

 

「ああ、島田。帰りに梅屋に寄るんだ」

 

「梅屋ですか?」

 

「うん、そうだよ姫路さん。時間制限の大食いをしにね」

 

「へー、ウチはしないけど見ているだけでも面白そうね。ウチらも行ってみようか瑞希?」

 

「はい、明久君達の応援をしましょう美波ちゃん」

 

美少女達の応援。これは頑張らないと失礼だよね。

 

 

ガラッ

 

 

「HRを始める。さっさと自分の席に座るか戻れ!」

 

開口一番に野太い声でこの教室に入りながら発するのは僕達の担任である

西村先生こと通称鉄人。

 

「吉井、俺に対して失礼なことを言わなかったか?」

 

鋭いっ。流石は人間離れをした鉄人。

 

「まあいい。今日はお前達に知らせることがあるから静かにするように」

 

「・・・・・知らせ?」

 

なんだろうね。僕達に知らせって。鉄人に逆らうと碌でもないから僕らは静かに耳を傾ける。

 

「この時期に何だが、このクラスに留学生がやってくる。皆、仲良くするように」

 

―――留学生?クリスさんみたいな人が来たんだこのクラスに?

 

『はい質問っ!その留学生は男ですか女ですか!』

 

クラスメートの一人が挙手をして質問した。鉄人は

「やはりこうなったか」とばかり呆れ顔で嘆息するほどでその問いの答えを言った。

 

「男だ」

 

『ケッ!』

 

『んじゃ、仲良くする理由なんてミジンコの大きさもないな』

 

『無視だ。存在すら無視だ』

 

酷い物言いだ。こんなクラスに溶け込めるだろうかその留学生は。

少し不安だったり心配だったりする。

 

「では、入りなさい」

 

廊下にいるであろう留学生に鉄人は呼び掛けた。催促された留学生は扉を開け放って

このボロ+カビ臭い廃屋の教室に入って来た。

 

 

『え?』

 

『は?』

 

 

前者は驚きの声、後者は信じられないという声。その理由は、留学生の容姿にある。

 

「初めまして、私は渡良瀬準です。皆、よろしくねー!」

 

元気溌剌、さらさらとした紫の髪を揺らし片手を大きく上げて振る女子制服を身に包む

美少女が僕らに挨拶をした。

 

『・・・・・鉄人』

 

「西村先生と呼ばんかバカ者」

 

『『『どこが男なんだ!?美少女だろうが!』』』

 

クラスメートの反応に僕はそうだとばかり頷く。だけど僕らは知っている。

彼女は―――男なんだ。

 

「・・・・・外見で判断をするなと言う言葉がある。それが今まさにこの留学生の為に

あるような言葉だ」

 

また嘆息を吐いて鉄人はハッキリと述べた。

 

「渡良瀬は自由な服装で学園に登校する。

よって、女子制服を着ているわけなんだが・・・・・渡良瀬は男だ」

 

「そうだよー。よろしくねー?」

 

・・・・・そんなこと、このクラスメートに通用するわけがないのに。

クラスメート達は唖然として渡良瀬を沈黙を保ちながら見ていた。そして・・・・・。

 

『『『『『第三の秀吉の再来だぁぁああああああああああっ!!!!!』』』』』

 

狂喜、歓喜、興奮、絶叫がこのクラスを轟かせる。

しかもクラスメートがウェーブをするほどだ。

 

「ま・・・・・まさか・・・・・あやつがこのクラスに来るなんて・・・・・」

 

「第三の秀吉・・・・・確実に実証されたな世間に」

 

「・・・・・ムッツリーニ商店の売り上げは鰻上り確定・・・・・っ!」

 

「留学生って蒼天の人だったなんて・・・・・」

 

この学園にさらなる混沌が訪れるかもしれない。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

『渡良瀬、俺と一緒に学校を回ろうぜ!』

 

『貴様!FFF団の掟を破る気か!』

 

『FFF団の掟により異端者を―――!』

 

『おい、渡良瀬。ちょっとこっちに』

 

『隊長ぉぉぉおおおおおっ!』

 

 

面白いぐらいに内乱が勃発している。全て渡良瀬の存在によってクラスメート達は

渡良瀬と手段を選ばずなんとしてでも接しようとする。あいつら、男だと言う事を

教えられたのにそこまで女に飢えているなんてな。

女みたいな男でも構わないってか。

 

「へぇー、なんか賑やかなクラスだね」

 

「いや、ただの男でも構わない性的な意味で興奮している野獣が醜い争いをしている

だけのバカ共だ」

 

あいつらの心情を知らないこの男の娘は、朗らかに笑みを浮かべてFFF団へ視線を

向けている。

笑っているだけで女みたいだ。木下はあまり笑っている顔は見たことないが。

 

「だが、どうして蒼天の学園の生徒だったお前がこのクラスに?」

 

「ふふっ。それは秘密だよ直江君」

 

「なんだ、ハーデスに会いに来たのかと思ったが違うのか」

 

「そうだね、それも確かに理由として含まれているね」

 

渡良瀬はハーデスの背中から抱き締めたまま言葉を交わしてくれる。

 

「ね、ハーデスくん。私にこの学校のこと教えてくれない?」

 

『・・・・・わかった』

 

「ワ、ワシも案内するのじゃ!」

 

噂じゃ、渡良瀬とも交際を始めたという。木下が焦心に駆られて同行する気持ちは

分からないわけじゃないが。

 

 

『『『『『死神ぃっ!お前だけはこれ以上良い思いを俺達はさせねぇっ!』』』』』

 

 

ドガガガガガガガガッ!!!!!

 

 

本当、あいつを中心に騒がしいことが欠かさないな。

 

 

―――秀吉side―――

 

 

な、なんたることじゃ・・・・・!まさか、まさか蒼天の学園におるはずの渡良瀬が

この学園にくるなんて予想外も良い所じゃ。なぜに渡良瀬はこの学園に?いや、こ奴も

ハーデスのことが好きな男。わざわざこの学園に来たということはハーデスを会いに

来たということなのじゃろう。そこまで好きとは・・・・・。

 

「ふふっ♪」

 

ハーデスの腕に自身の腕を絡め全身を密着するほどくっつきながら歩く渡良瀬は

ご満悦の様子。

 

 

『おい、誰だよあの子。メッチャ可愛いじゃねか』

 

『隣にいる奴は死神だから・・・・・Fクラスの生徒か』

 

『うわ・・・・・何あの子、凄い可愛いわね』

 

『タイプだ・・・・・くそ、どうしてFクラスの女子はレベルが高い奴らしかいないんだよっ』

 

 

一気に渡良瀬が注目されている。知らぬが仏、知らぬが吉とはまさにこの事かもしれんの。

 

「凄い視線を感じるねハーデス君」

 

『・・・・・お前の容姿が集めさせているんだ』

 

「私って綺麗?」

 

『・・・・・周りがそれを証明させている』

 

じゃな。ワシがこの学園に入学してもこの騒ぎはなかったほどじゃ。

・・・・・その点を言えば、ワシはそれほど女と認識されてはおらんかったかの?

 

「やっぱり、なんか騒がしいと思えばハーデス。あなたなのね」

 

『・・・・・ん、おはよう友香』

 

ハーデスに好意を抱いているCクラス代表の小山。渡良瀬を一瞥して、

 

「新しい彼女かしら?」

 

『・・・・・(フルフル)』

 

「じゃあ、どうしてひっついているのよ」

 

『・・・・・耳を貸せ』

 

彼女、女ではないとハーデスは言いたいのじゃろうが小山は渡良瀬と接点がない故に

何も知らぬ。小山の耳元でハーデスは仮面越しで呟いているはずじゃ。

じゃから小山の表情が目を丸くして

 

「冗談よね?」

 

『・・・・・俺が嘘を言うとでも?』

 

「・・・・・」

 

突然、明後日の方へ遠い目で呟いた。

 

「世界って・・・・・広いのね」

 

「「『・・・・・?』」」」

 

理解不明なことを申した小山は教室の中に戻ってしまった。

 

「どうしたの?」

 

『・・・・・そっとさせておこう。心の整理をしているんだろう』

 

「ふーん?」

 

人差し指を顎に当てて小首を傾げる渡良瀬。その仕草だけで既に女そのものじゃ。

女子制服を身に包んでいるからそう思わせるじゃろうし、本人の容姿が一番女の顔じゃから。

 

「・・・・・ハーデス」

 

「騒がしいと思えば・・・・・どうして渡良瀬がここにいるの!?」

 

「本当だね。しかもこの学園の制服を着ているってことは・・・・・」

 

ハーデスと交際しているワシの姉上と霧島(姉)、工藤が現れる。

 

「あっ、あの時の女の子達だね。久し振り、今日から私もこの学校に通うことにした

からよろしくね!」

 

「なっ・・・・・!」

 

「・・・・・ライバルがまた一人増えた・・・・・」

 

「アハハ、これはまた強敵だね。ねね、渡良瀬ちゃん」

 

「ん?」

 

工藤がコッソリと声を殺してある事を尋ねた。

 

「ハーデス君と付き合っているって本当?」

 

「うん、ハーデス君のことが大好きだよ♪もう子供の名前とか考えちゃうほどだから」

 

「・・・・・私は既に決めてある」

 

「代表、そこは張り合わなくても良いと思うの」

 

「・・・・・女の子だったら一子」

 

『・・・・・それ、川神一子と同じじゃ?』

 

「・・・・・男の子だったら翔一」

 

『・・・・・それ、風間翔一と同じ名前だからな』

 

「因みに私は男の子だったらしょうゆ、女の子だったらこしょう・・・・・」

 

どこから現れたんじゃ霧島(妹)!?しかもその名前は調味料じゃぞ!

 

『・・・・・翔花、それはダメだ』

 

「どうして・・・・・?」

 

む?ハーデス、霧島(妹)の名を呼ぶようになったのじゃな?姉上にそう視線を籠めて送ると、

 

「あの一件で翔花は恩人として読んでもらうように代表の携帯メールで頼んだらしいの」

 

「そうなのか、それは知らんかったの」

 

と、姉上が教えてくれた。なるほど、きっと雄二も心から許した者であれば認めるであろう。

 

「何がダメ・・・・・?」

 

『・・・・・俺だったら男は雄翔、女だったら優花と名付ける』

 

そうスケッチブックに雄二と霧島(妹)の間の子供の名前を命名する。

うむ、それじゃったらワシも安心じゃ。

未来の子供が調味料の名前にされるなぞ居た堪れない。

 

「・・・・・」

 

霧島(妹)はじっとハーデスのスケッチブックを見て・・・・・。ほんのりと顔を赤らめた。

 

「絶対に子供を生む・・・・・」

 

採用したようじゃな。

 

「それくれる・・・・・?」

 

『(ビリビリ)・・・・・ん』

 

「ありがとう・・・・・」

 

大事そうに子供の名前が書かれた紙を貰ってワシらが来た方へ向かった霧島(妹)。

雄二に見せ付けるのじゃろうか?その後の様子が難しくないほど脳裏に浮かぶ。

 

 

『『『『『坂本を捕縛して紐無しバンジーを体験させろぉっ!』』』』』

 

『ハーデス、余計なことをしてくれやがってぇええええええっ!』

 

 

そう、あんな感じでの。

 

 

―――☆☆☆―――

 

―――屋上―――

 

 

「改めて自己紹介をします。私は渡良瀬準。知っている人も知らない人もいるけど

私は男の子だからね♪」

 

昼食会を行うこの屋上で新たなメンバーの紹介が終わったことで僕達はハーデスの

お弁当も食べつつ雑談を繰り広げる。

 

「いやー、まさか渡良瀬ちゃんまでも来るとはびっくりしたよん」

 

「私だけ仲間外れみたいにハーデス君の隣に居られないから留学生と言う形で転校してきました」

 

「男の娘が増えたね」

 

「木下とモロ、それに渡良瀬とな」

 

「ちょっと待ってよガクト!?どうして僕まで男の娘にカウントするのさ!

二人だけでしょうどう考えても!」

 

「師岡よ、ワシは男じゃからな!?」

 

『・・・・・大丈夫、男は皆女になるから平等』

 

「「「「「もう勘弁してくださいっ!」」」」」

 

ハーデスの伝家宝刀が放たれる前に心から否定した僕ら(F男子陣)。

 

「あ、あのハーデス君。私的に・・・・・その、吉井君の女の子の姿が・・・・・」

 

「雄二の女の子姿・・・・・もう一度」

 

「「姫路さん(翔花)!何てことを言うんだっ!?」」

 

雄二と同時に叫ぶ。キミ達は僕らの男としての尊厳を奪う気か!

 

『・・・・・一回限り、使い捨て性転換銃。一つ500円』

 

「買います!」

 

「三個買う・・・・・」

 

『・・・・・毎度あり』

 

「「ハァアアアアアアデェエエエエエエスゥウウウウウウさぁあああああんんんんんんッ!?」」

 

伝家宝刀もとい伝家宝銃の物が姫路さんの手に渡らせる前にハーデスを抑えよう!

だが、何が僕達の行動を邪魔せるのだろうか。

 

『・・・・・土屋康太、島田美波。取り抑えろ。お前らの欲望が叶う時だ』

 

「ええっ!」

 

「・・・・・ムッツリーニ商店の礎となれ」

 

ハーデスの指示を従い、二人が僕らを捕まえようとする!

 

「明久!」

 

「雄二!」

 

一瞬のアイコンタクト。それは―――

 

「「(他の奴らを盾に!)」」

 

「吉井君、ごめんなさい!」

 

「雄二覚悟・・・・・」

 

あの銃を買った二人が僕らに目掛けて引き金を引いた瞬間に怪しい光が飛び出してくる!

僕らに当たる直前、雄二はムッツリーニ、僕は手が届くところにいた秀吉で!―――盾にした。

 

「な、なんじゃとっ!?」

 

「・・・・・バカなッ!?」

 

僕らの代わりに怪しい光に当たって見る見るうちに女の子になった。

 

「ああ、そんなっ」

 

「雄二・・・・・避けるなんて酷い」

 

「男の尊厳を奪うお前にだけは言われたくねぇっ!」

 

「姫路さんもそんな残念がらないのっ!」

 

尊い二人の友人が犠牲になったが仕方ないことだ。許して欲しい。

 

「お主らは鬼畜じゃ!」

 

「・・・・・この恨み晴らすべきっ」

 

秀吉とムッツリーニは起こるけど一定時間が経てば元に戻るからいいじゃないか。

 

「へぇ、それがムッツリーニ君の女の子の姿なんだね(ニヤニヤ)」

 

「・・・・・っ!み、見るな・・・・・!」

 

「・・・・・優子が二人」

 

「性別だけが見分けつく最終防壁でもあるのに、秀吉が女の子になったらアタシが

目の前にいる錯覚が起きるわね」

 

「ワシは男じゃというのに・・・・・」

 

すると、ハーデスが女の子になった秀吉を引き寄せて胡坐掻く自分の足の上に乗せた。

 

「な、なんじゃ・・・・・?」

 

『・・・・・女の秀吉だから』

 

「・・・・・っ」

 

ハーデスの行動の意図に気付いたのか秀吉の顔が真っ赤になった。

そして不思議そうに渡良瀬は秀吉の胸に触った。

 

 

「あんっ」

 

 

ブシャアアアッ!(鼻血)

 

 

「ってなにをするんじゃ!?」

 

「うわ、本当に女の子になってるんだ?胸があるから気になって。

―――しかも、「あんっ」て触っただけで・・・・・感じちゃった?」

 

「~~~~~っ!!!!!」

 

秀吉の顔がこれ以上にないと言うほど真っ赤になって羞恥心で一杯なのかハーデスの

マントの中に身体を隠して籠っちゃった。

 

「ふふっ、感度が高い女の子って意外とエッチなんだよねぇ?」

 

「ええ!?そ、そうなんですか・・・・・?」

 

「蒼天の雑誌じゃそう載っていたわよ?でも、本当にそうじゃない人もいるから

信憑性はないけど」

 

と、渡良瀬がそんなこと言っているけれど秀吉は出てくる気配はない。

そんなこんなで昼休みが終わる鐘が鳴りだす。

 

『・・・・・先に教室に戻ってくれ』

 

秀吉はまだ立ち直れない様子でハーデスから離れようとしない様子。

僕らは二人だけ屋上に残して教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・秀吉、皆行ったぞ』

 

「・・・・・すまぬ、ハーデス」

 

『・・・・・』

 

「のう・・・・・ハーデス。ワシは女になっていた方が付き合いやすいかの?」

 

『・・・・・急にどうした?』

 

「ワシはハーデスと付き合っておるが、ちゃんと付き合っていると言う事をしておらん。

それはワシが男子制服を着ておるし性別も男じゃ。ここは日本で同性愛の付き合いも

世間の目をある。じゃが渡良瀬は女子制服を着ておるからあんな言動もできる。

渡良瀬とワシは違いの差が歴然しておるのじゃ」

 

木下秀吉の告白を静かに訊くハーデスの包帯だらけの手に、

紫の宝玉がある黒い籠手を装着して木下秀吉の背中に触れた。

 

『関係ない』

 

「ハーデス・・・・・?」

 

『お前が自分にとって付き合いやすい言動をすればいい。世間の目が気になるなら

俺達が影に隠れて付き合えば良い。俺はそんなお前を尊重してお前に合わす。

それでいいだろう』

 

「・・・・・お主はそれでいいのかの?本当に男であるワシと」

 

『お前が良いんだ。男でも女でも関係ない。木下秀吉と言う一個人のお前に心から好きなんだ」

 

「ハ、ハーデス・・・・・ッ」

 

マントの中から顔を出した時、ハーデスの髑髏の仮面が外されていて木下秀吉の目を

覗きこんでいた。

 

『好きだよ、秀吉』

 

「うっ・・・・・」

 

告白され、羞恥心で身体と顔まで熱くなり視線を下に向けた木下秀吉は

 

「ワ、ワシもじゃハーデス・・・・・お主のことが好きじゃ」

 

と返した。そしたら木下秀吉の顎を摘まんでハーデスは自身の唇を木下秀吉の唇に押し付けた。

そんな行動をされて身体がビクリと震え目を丸くしたが、

次第に目を閉じでしばしハーデスに身を委ねた。

 

「・・・・・キス、してしまったの」

 

『いやだったか?』

 

「そんなわけがなかろう。今のワシは女じゃからハーデスも安心して

ワシとキスをしたのじゃろう?」

 

尋ねるように言う木下秀吉は首を横に振るハーデスにこう言われた。

 

『お前は男に戻っているぞ』

 

「・・・・・なんじゃと?」

 

ハーデスから離れ立ち上がって自分の身体を確認した。

女の象徴である膨らんでいるはずの胸の感触が感じず、制服を肌蹴させTシャツを

胸までめくり直で確認するとそこには痣やシミ一つない見慣れた平らな胸。

 

「い、何時の間に・・・・・」

 

『これで性別を戻した』

 

左手に紫の宝玉がある黒い籠手が何時の間にか装着していたハーデス。

木下秀吉はその籠手のことを気にする思考はなく、元の性別に戻して自分とキスをした

ハーデスと言う事実に頭がいっぱいで・・・・・。

 

「ワ、ワシは男としてハーデスと・・・・・っ!?」

 

衝撃的な事実に思考が真っ白になった。だが、この切っ掛けで木下秀吉の何かが吹っ飛んだ。

 

「のう、ハーデス」

 

『・・・・・?』

 

「今までできなかった分をするのじゃ」

 

今度はハーデスを襲うように木下秀吉が飛び掛かり、自分からキスをした。


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