バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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日常と異世界人と神!
騒一問


無重力の空間が広がる宇宙に巨大な宇宙船が月面に着陸に成功してから数日が経ち、

イッセーの力で創られた最初の一つ、人が住めるコロニーを拠点として

他の月面にコロニーを作り始める蒼天の工作員、作業員達の様子を

カメラマン達が撮影している中で着々と行われていく。その様子は地球に報道され、

全世界の人類は期待に胸を膨らませて歓声の日を待ち望んでいた。

 

 

 

 

ピンポーン・・・・・ガチャ。

 

 

『・・・・・おはよう、無事に来られたようだな』

 

「あなたの存在のおかげで最近はナンパされなくもなくなったから安心して

ここまで来れるようになったわよ」

 

「・・・・・親不孝通りの死神ってちょっと噂にもなってるから」

 

「そうだね」

 

「それで、ワシらに連絡して頼みたいこととは何なのじゃ?」

 

『・・・・・取り敢えず中に入る』

 

アタシ達はハーデス・・・・・いえ、今はアタシ達以外

誰もいないから・・・・・イッセーに家へ招き入れられて中に入る。

久し振りに訪れるイッセーの家に何故か緊張してしまう自分がいる。

前は緊張すらしていなかったのにいざ、イッセーの彼女だと改めて認識すれば・・・・・。

心臓の鼓動が少しうるさいほどドキドキと脈を打つ。

大丈夫・・・・・イッセーは直ぐに襲いかかるような獣じゃないわ。

いえ・・・・・ドラゴンだったわね。

 

『・・・・・一つ訊いて良いか?』

 

イッセーがアタシ達に声を掛けてきた。髑髏の仮面を外して、

フードを取り払い金色の瞳と共に顔は下に向いた。

 

「その荷物はなんだ?」

 

ああ、これね。

 

「今日、泊まろうかと思って持ってきたの」

 

「ね、泊まって良いでしょう?」

 

「・・・・・お願い」

 

愛子と翔子が懇願したところで、彼が否定することもできないでしょう。

案の定、溜息を吐いて了承してくれた。

可愛い彼女のお願いなんだからこれぐらい許してもらわないとね。

 

「荷物をリビングキッチンに置いたら俺のところに来てくれ。ここにいる」

 

噴水の縁に座りこむイッセーにアタシ達はリビングキッチンに荷物を置いてまた玄関にいる

イッセーのところに戻ると、アタシ達を引き連れて奥へと足を運んだ。

どこに行くのかと思えば、二階に上がる階段の裏にある通路に

突き進んで行く。そして数々の扉を素通りして

ついにイッセーはとある扉の前に停まって開け放った。

 

「まだ、色々と調整の段階だがある程度は完成している」

 

「何の話?」

 

「ちょっとしたゲームを体験してもらいたくてね」

 

「ゲーム?」

 

ゲームは得意じゃないけどイッセーはどんなゲームをアタシ達にさせるのだろうか。

イッセーが部屋に入って行き、アタシ達も続いていると不思議な光景を目の当たりにした。

何かが入っている巨大な球状が浮かんでいた光景を。

 

「これ・・・・・イッセーが作ったの?」

 

「そうだ、傑作の一つだ。この中でゲームをするんだ。その前に四人にはこれを持ってもらう」

 

「なんじゃ?」

 

イッセーから渡される黒い物体。受け取って感触を確認すると硬くて温度が感じないし、

まるでバットやラケット、ゴルフのクラブを握る部分・・・・・グリップみたいな

感覚で握れる。

 

「それを握ったままゲームスタートって言ってみろ」

 

催促されてアタシ達は一度顔を見合わせてから怪訝な気持ちで言った。

 

「「「「ゲームスタート」」」」

 

その時、手に持っていた黒い物体が光り輝き、アタシの身体を包みこんだ。

な、なにこれ・・・・・!?

目大きく見開いて自分の現状を絶句していると・・・・・服装が何か変わっていますけど!?

 

「ほい」

 

ドンといきなり大きな鏡をアタシ達の前に置き出したイッセー。その鏡に映るアタシの姿は・・・・・。

 

 

「なっ・・・・・!?」

 

頭に・・・・・獣耳に腰に・・・・・尻尾!?え、アタシ・・・・・どうなってんのぉっ!?

愛子達は?―――っ!

 

「うわ・・・・・耳がちょっと長いね。しかも服装も変わっちゃってるよ」

 

「・・・・・でも、なんだか可愛い」

 

「おお、ワシの髪の色が黒くなっておるのじゃ」

 

皆も色々と変わっちゃっている。こんな変化をもたらしたイッセーに追求しようとしたら、

 

「今その姿をしている皆はゲームのキャラクター、アバターだ」

 

「これが、ワシらのゲームのキャラクターじゃと?」

 

火妖精族(サラマンダー)水妖精族(ウンディーネ)風妖精族(シルフ)土妖精族(ノーム)闇妖精族(インプ)影妖精族(スプリガン)猫妖精族(ケットシー)工匠妖精族(レプラーコン)音楽妖精族(プーカ)光妖精族(アルフ)の10つの妖精族の妖精族のキャラクターを俺が勝手に決めさせてもらった。優子は猫妖精族(ケットシー)、秀吉は影妖精族(スプリガン)、翔子は闇妖精族(インプ)、愛子は風妖精族(シルフ)の妖精族のキャラクターだ」

 

ゲームのキャラクターになったってことは・・・・・。

 

「アタシ達、人間じゃなくなってるの?」

 

恐る恐るイッセーに尋ねた。人間を辞めてしまった実感が未だに湧いてこない。

もしも本当に人間を辞めたならば、この先アタシ達はどうなるんだろうかと

不安に思っているとイッセーは首を横に振った。

 

「演劇で言えばそれぞれの役になっただけだ。人間を辞めたわけじゃないから安心してくれ」

 

「じゃが、ワシらの姿形をここまで変わっておるがどういうことじゃ?」

 

「皆に渡したソレの中には俺が選んだ変身専用の道具アバターと実体と入れ代ったからだ」

 

「・・・・・実体?」

 

翔子がオウム返しで尋ねたところ、イッセーはアタシ達の手の中にある黒い物体に差した。

 

「ゲームをするんだからゲームのキャラクターとして遊ばないと、

とユウキと試行錯誤してついに完成したのがそれなんだ。四人の本当の身体は

そのトリガーの中に入っている」

 

「なんじゃとっ!?」

 

この道具の中にアタシ達の身体が入っているって・・・・・一体全体どんな方法で・・・・・。

 

「ねぇ、イッセーくん。元の身体に戻れるんだよね?」

 

「当然だ。じゃなきゃ、皆にこんなことさせない。起動キーは『スタート』で始まるが、

戦闘でダメージを受け過ぎると強制退場されて安全な場所で復活か終了するか頭の中で問われる。

それを選んでゲーム続行を望むならダメージを0に回復できるし、

終了したいなら元の身体と入れ代わって現実世界に戻される仕組みになっている」

 

「やはり、ダメージを受けた時は痛みを感じるじゃろうな」

 

「んや、痛覚はONやOFFと任意に俺が切り替えられる。

仮に首が胴体から離れても優子達の実態には一切影響は受けないから死にもしない。

故に今の四人はある意味不死身の状態だ。その姿はゲームのキャラクターと同時に魔力で

構成した肉体―――もっと砕いて言えば魔力の塊だから出血多量で死ぬこともまずは無い。」

 

―――アタシ達の今の身体は魔力の塊・・・・・?じゃあ、魔法を放つこともできるってこと?

 

「・・・・・今の私達、魔法を使うことができる?」

 

「できなくはないが、素人が扱うもんじゃない。それにそういうのはゲームの中でしてくれ」

 

・・・・・だったら、魔法をコントロールできるように特訓をしないとダメね。

イッセーには付き合って貰わないと。

 

「他に質問は?ないならこの球体に触れてくれ。既に他の皆はこの中で遊んでいる」

 

「そう言えば・・・・・林冲達の姿が見えんかったの」

 

「このゲームを気に入ってな、朝からこの中にいるんだ。まだまだ調整の段階だって言うのに」

 

苦笑を浮かべるイッセー。でも、何だか声が嬉しそうに聞こえる。

 

「ふむ・・・・・ワシらの身体は魔力の塊か・・・・・」

 

「実感しないだろう?」

 

「そうじゃな。じゃが、この体が魔力と言うなら減りはしないのかの?」

 

「当然減るさ。だからダメージを受け過ぎた際にも魔力は減って専用の施設に

送還されるシステムがあるんだ。そこで魔力を補充してゲームを続行することが可能だ」

 

「その魔力はもしかしなくてもお主の身体にある魔力なんじゃろう?

そんなことして大丈夫かの?いざという時に魔力がなくては戦えんじゃろうに」

 

「その心配は御無用だ。コツコツとこの中に魔力を溜めこんでいて、

例え一億人がこのゲームをして同時に何万回死んでも魔力は枯渇することはないんだ」

 

それは凄い・・・・・彼はどれだけの魔力を有しているんだろう。

 

「ところで、このトリガーって遊び終えたときはどうすればいいの?」

 

「俺に渡すか自分で持っていていいぞ。ただし、遊びには使うなよ」

 

「どうして?」

 

「人間じゃない姿を目撃した人間達が好奇心、

怪奇な言動で世界中のネットにアップされて、お前らの正体を突き止められたら

捕縛されるか最悪、実験体にされる」

 

それだけは絶対に避けたい現実だわ。だからこそイッセーだって

自分の正体を隠しているんだから、アタシ達も他の皆に告げずにこうして接している。

 

「じゃが、お主はこのゲームをいつか世界に発表するのじゃろう?

その時このトリガーをどうする気なのじゃ?」

 

「取り敢えず蒼天のゲームセンターを中心に行う予定だ。そのトリガーを作るのも中々

大変でな、一日に百本がやっとな現状なんだ。なんせ、俺一人で作っているからよ」

 

そっか・・・・・彼しかこれを作れないんだ・・・・・。

アタシも何か手伝えることがあればいいんだけど、

 

「・・・・・これ、悪用されない?」

 

「そうさせないようにロックシステムも施してあるから心配ないよ。

それに、この球体状のゲームもまだまだ完成じゃない・・・・・っと、話はとりあえず

ここまでだ。遊ぶ時間が無くなるから中に入ろう。この球体に触れてくれ」

 

先にイッセーが球体に触れた途端、光が彼を包んでアタシ達の前からいなくなった。

きっと、ゲームの中に入って行ったのだろう。アタシ達も手を挙げ球体に触れた―――。

 

―――☆☆☆―――

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

ここは・・・・・。

 

「・・・・・凄い・・・・・」

 

「ここがゲームの中だなんて想像できないよ!」

 

「別世界そのものじゃ・・・・・」

 

アタシ達が最初に目にしたのは、中央街と思しき街中で目の前に噴水が存在しているし、

大きな門も見える。辺りを見渡せば色々な建物も鎮座していて

アタシ達だけしかいない無人の世界・・・・・。

 

「ユウキと協力してここまで構築・設定できた」

 

「そのユウキちゃんはどこにいるの?」

 

「林冲達とどこかにいるはずだ。この近くのモンスターが出る場所に暇を潰しているかな?」

 

と、そう言ってどこかに行こうと歩き始めたイッセーを追いかける。その途中、立ち並んで構える建物や店を見渡しながらこの街を囲む城壁の門を潜って外に出た。

 

『はぁあああああああああああっ!』

 

どこからか気合の入った叫びが聞こえてきた。しかも今の声・・・・・。

 

「おっ、やってるな」

 

門から出て直ぐ、岩肌だらけの場所で大きなカマキリみたいなモンスターと

見知った顔の女の子達が武器を持って戦っていた。見ていてハラハラしたい気分だけど、

二人の女の子がモンスターの鎌を抑えた間にもう一人の女の子が剣でモンスターの首を

刎ねた結果、光の粒子と化と成ってモンスターは姿を消した。

 

「今の見たか?ああいう感じで俺達がモンスターを倒すんだ」

 

「ワシらでも勝てるのかの・・・・・?」

 

「このゲームはプレイヤー、つまり俺達の運動能力が自尊とする」

 

「ハ、ハードじゃな・・・・・ワシらの運動能力は知れたもんじゃろう」

 

「ちゃんと戦闘の際には各種の武器のスキルもあるから勝つのはそれほど難しくはない。

ゲームさながらの戦い方も考慮しているから勝てないモンスターは少なくはない」

 

彼の話を聞いていると、さっきまでモンスターと戦っていた女の子達がアタシ達に

気付いてこっちに来た。

 

「ハーデスッ!」

 

「どうだ、調子は」

 

紫の長髪に軽装の鎧を身に纏う女の子に手を挙げたイッセーに跳び付いた。

 

「凄いよ!本当にここまで再現するなんてハーデスは凄い!」

 

「やるからには徹底的に満足するまでやるんだ俺は。林冲達、お前らはどうだった?」

 

イッセーと同じクラスの女の子達は一斉に頷いた。

 

「世界観がひっくり返られた気分です」

 

「人じゃなくて相手はモンスター。どんな攻撃をしてくるか予測のつかないから驚くことが多いぜ」

 

「あなたが来るまで私達は様々なモンスターと戦っていたが、

いやはや中々どうして・・・・・」

 

「でも、コピーできないから残念」

 

「ここはゲームなんだ、コピーできるような動きをしないだろう」

 

「見ていただけだけど、迫力はあったよ」

 

反応は様々だけど高評価。イッセーの作ったゲームは徹底的に完成度が

高い体感ゲームを求めたからこそなのかな。

 

「空は飛んだか?」

 

「ううん、まだだよ。だって、ハーデスと一緒に飛ぼうと皆と決めたからね」

 

「可愛い奴め」

 

「わっぷ!?」

 

いきなり彼女に、紺野木綿季さんに抱きしめたイッセー。

な、彼女がいる手前で何しちゃっているのかしら!

 

「・・・・・浮気?」

 

「違う、友情愛の印だ」

 

と、そんなこといいながら紺野さんをギュッと抱きしめたまま言うのは説得力も

欠片もないわよ。

 

「・・・・・」

 

「分かったよ。ほら」

 

紺野さんから離れイッセーは翔子に近づく。そして両腕であっという間にお姫様抱っこをした。

 

「これでどうだ?」

 

「・・・・・このままお持ち帰りしてくれれば許してあげる」

 

「ゲームの中とは言え、ここは俺の家だからお持ち帰りはできているも当然だけど?」

 

翔子の額に唇を落とす彼に若干不機嫌ながらも顔に朱を散らして

「・・・・・誤魔化されてあげる」とか乙女チックな反応をする翔子だった。

 

「さて、皆で飛ぶ前に練習をしよう。飛行のな」

 

「どうやってするのですか?」

 

赤い長髪の女の子、武松さんが翔子を地面に降ろすイッセーに尋ねると、

彼は背中にドラゴンの翼を展開した。

 

「飛ぶ意識をすれば背中にそれぞれの種族の羽が生えてくるぞ」

 

「・・・・・こうかしら?」

 

頭の中で空を飛ぶと意識をしたら、

 

「わっ、優子の背中に黄色の羽が出てきたよ!」

 

愛子が驚いた声を出した。え、羽が出たの?そんな感覚ないんだけれども・・・・・と

首を後ろに向けようとしたら本当に黄色い羽根が生えていた!強化合宿の時に魔法を

掛けてもらった時とは違い、今度は本当に自分の羽を生やして・・・・・っ。

 

「うむ、ワシの羽も出たぞい」

 

「いいねこれ。本当に飛べそうな感じがするよ」

 

「後は飛べる練習をすればいいわけだな」

 

「楽しみだね」

 

何時しか他の皆もそれぞれの種族の色の羽を生やした。林冲さんは翔子と同じ妖精族のようね。

 

「しかし・・・・・今思うとじゃな」

 

「なんだ?」

 

本当に何かしらね。憂鬱そうに秀吉は息を一つ吐いた。

 

「ワシは男じゃと言うのに妖精のキャラクターでは、男らしくなれないのではないのかの?」

 

・・・・・ああ、妖精って可愛らしいイメージだしね。そう思うのも無理もないか。

さて、イッセーはどう反応をするか知ら?

 

「なに言ってんだよ秀吉。お前は俺と付き合っているんだ。俺にとって格好良いも

可愛いも関係なくお前自身が好きなんだぞ?特にお前の心がな」

 

「・・・・・」

 

ちょっと秀吉・・・・・なに顔を赤くしているのよ。本当にアンタはイッセーに

心を奪われたのね。今のアンタは女そのものの反応よ。

まったく・・・・・掘れた弱みってこんな感じなのかしら。

 

「・・・・・優子の弟とだけじゃない」

 

「分かってる。翔子も愛子も優子も、な?」

 

「後で絶対に甘えてやるんだからね?それで、羽を生やしたのは良いけど飛ぶときは?」

 

「それは人が呼吸をするように、飛行は空に向かって飛ぶ意識をするんだ。まぁ、習うより学べって感じで練習してみな。俺とユウキが手伝うからさ」

 

二人が手伝ってくれる。そういえば・・・・・。

 

「紺野さん。あなたって最初からこのゲームのキャラクターみたいな姿をしているわよね?」

 

「え、あ、ああ・・・・・ま、そうだね・・・・・うん」

 

曖昧な返答。うーん、何か怪しい・・・・・彼女ってイッセーとどんな関係なのかしら。

いきなり決闘を吹っかけては負けて・・・・・それ以降ずっと

イッセーと接しているし・・・・・まさか、蒼天の人ってわけじゃないわよね。

 

「優子」

 

「なに?」

 

「後で、ユウキの事を教えるとして今はゲームを楽しむことに意識を向けて欲しい」

 

真剣な顔で言われたら・・・・・そうしちゃうじゃないの・・・・・。

 

「分かったわ。なら早く飛ぶ練習をしましょうよ」

 

「そうこなくっちゃ。今日中に全員を飛べるようにしてやるからよ。―――いいな?」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

威勢よく返事をした林冲さん達。公孫勝さんは「えー」とやる気のない顔をしていたけど

イッセーは気にせず、アタシ達に飛ぶ練習を施してくれた。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

ハーデスは凄い。ボクの記憶から抽出しただけしか知識と情報を得ていないのに出来る

限りの完成度を再現してみせたんだから。

ボクがいた世界とは違う作り方で本当に・・・・・。

林沖さん達と一緒にモンスターを倒したあの時の感覚がかつての仲間達を

思い出しちゃうよ・・・・・!そしていまでも、

 

「はははッ!気持ちいいな、空を飛ぶというのも!」

 

「頑張った甲斐があったよ!」

 

「僕自身で空を飛んでる!風が気持ちいい!」

 

空を飛ぶ学習した皆と自由に空を飛んでいる。

皆、思い思いに楽しんでいてくれる。

それがとても嬉しくてしょうがないや。

そして、ボク達はあり場所へ向かっている。

ハーデスがその場所の地面に足を踏みしめて着地したらボク達も目的の場所に降り立った。

 

「よし、初めてなのに皆ここまで飛んでこられたな」

 

「特別、難しい動きをしておらんかったからの」

 

「それに疲れも一切溜まりませんからここまでこれましたよ」

 

飛行テストも問題ない。これだけなら体験ゲームとしても運営はできるはず。

 

「イッセー、ここまできたのはいいけどこれからどうするの?」

 

「ん、林冲達には説明したけど優子達はまだ説明をしていないな。今の身体のことについて」

 

「僕達の身体?」

 

「今の身体は魔力の塊だと説明したよな?だから、生身の状態より格段に戦闘能力が上がってんだ」

 

ボク自身はそうじゃないけどね。これは元々ボク自身の身体。

だから、ハーデス以外の皆の戦闘能力が上がっているんだ。

 

「というと?」

 

「片手でリンゴを握り潰せれる様になっていると言えば想像付くだろう?」

 

「なるほど、それは凄いね」

 

分かりやすい説明に感嘆を漏らす先輩達。だけど、扱い方を間違えればそれは危険な力になる。

ハーデスがこれからなにをしようとしているのか分かって来た。

 

「優子、翔子、秀吉、愛子。お前達に護身術を学んでもらう」

 

「へ?護身術って・・・・・」

 

「自分の身を守る為の力ぐらい付けないと危ない。特に優子と愛子と翔子、

お前らはそういう状況を何度も経験しているしな」

 

「「「・・・・・」」」

 

へぇ、そうなんだ?大変な目に遭っていたんだねあの先輩達は。

 

「俺が傍にいない時だってある。何時までもお前達の傍にいられるとは限られないから、不安要素を少しでもなくしたい。林冲」

 

「はい」

 

「俺がお前に軽く攻撃する。武器無しで自分ができる限りの護身術を披露してくれ」

 

「わかりました」

 

二人は対峙し合って佇んだ。それからハーデスがボクでも見えるぐらいの速さで腕を

林冲さんに伸ばした―――。

 

 

~~~しばらくして~~~

 

 

時間を掛けて戦いと無縁な先輩達に護身術をレクチャーしたハーデスと林冲さん。

実際に体験をして貰って覚えたら現実世界に戻った。誰かが家に訪れてきたからだ。

またあのゲームの中に戻るのは夜ぐらいかな?さて、誰が来たんだろう?

 

「ふははははっ!九鬼揚羽、降臨―――!」

 

 

バタンッ

 

 

「・・・・・」

 

『・・・・・』

 

えっと・・・・・今の人って、

 

「ハーデス、いいの?知り合いだったんじゃ」

 

「すまん、反射的に閉めてしまった」

 

ガチャリと扉を開けたら―――足が飛び出してハーデスを噴水にまで吹っ飛ばした。

 

「貴様、揚羽様に失礼千万であろうが」

 

入って来たのは金髪の眼光が鋭い執事服を身に包むお爺ちゃん。

って、蹴り飛ばされたハーデスは大丈夫!?彼の方へ振り返ると・・・・・。

 

「扉を開けた途端に蹴りとは・・・・・それが九鬼家の訪問のし方ならば、

俺は拳を突き出して訪問してやるよ」

 

噴水の中で目が笑っていない顔で真っ直ぐお爺ちゃんを睨んでいるハーデスがいた。・・・・・こわっ!

 

「で、何しにここに?揚羽にはこの場所を教えていないはずなんだがな。いや、お前も―――他の奴らもだ」

 

ハーデスがそう言うと、ぞろぞろと家の中に入って来た見覚えのある先輩達。

―――何でか荷物を持っているし。

 

「お、お久しぶりです・・・・・イッセーさん」

 

「ここがイッセーさんの家かぁ~」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

先輩達は家の中を見渡したり、ハーデスを心配したりとして近づいてくる。

でも、どうしてここが分かったのかな。ボクが知る限り、この家に来た先輩達は

今いるハーデスのクラスメートとそのお姉さんにお姉さんの友達だけだ。

 

「我らがどうしてお前の家を見つけたかと言うとだな。お前の情報を集めたからだ。

そしたら直ぐにこの場所だと分かったぞ」

 

「外にはマフィアとヤクザの手下がいたはずなんだが」

 

「俺達が軽く手ほどきしてやったぞ」

 

「・・・・・全員、後でそいつらに誠心誠意謝れや」

 

ハーデス、あのお爺さんだけ態度が違い過ぎる。仲が悪いのかな。

というか何時まで噴水の中にいるの?

 

「お前にとっては何なのだ?」

 

「友達の家族だ。今頃、大騒ぎしているぞ」

 

その時、開けっ放しの扉から氷の氷塊が金髪のお爺さんにクリーンヒットした!

 

「・・・・・特徴が一致した。貴様だな、私の家族を傷つけたのは」

 

「覚悟は良いでしょうか。勿論、棺桶に入る覚悟ですがね」

 

新たに入って来た怒気のオーラを纏いし二人の先輩。

怖い、あの先輩達は完全に怒っているんだってことが直ぐに分かったよ!

 

「エスデス、遼子。取り敢えず怒りを抑えろ。後で謝らせに行かせるから。

―――九鬼財閥の令嬢の九鬼揚羽がな」

 

「・・・・・部下が大変失礼した。後でお詫びの品を持って謝罪をしに行く」

 

物凄い睨みで銀の長髪に額に☓の傷跡がある女性を謝らせたハーデスは凄い。

怒っている先輩達もハーデスの言葉に渋々とだけど怒気のオーラが消えた。

 

「あなたがそう言うのであれば、しょうがないな」

 

「非はこちらもありますし、取り敢えずはこの場を退きます」

 

「ん、話の分かる女の子は好きだぞ」

 

「「・・・・・っ」」

 

「また来ます」と言い残して顔を赤くしたまま先輩達は扉を閉めて帰ってしまった。

 

「さてと」

 

ようやく噴水から出ようとしたハーデスの全身が炎に包まれた。噴水から完全に出たら

炎は一瞬で消失して、ずぶ濡れだった服や髪が乾いていた。

まさか今ので水を蒸発したっていうの・・・・・?

 

「んで、さっきの話の続きだが・・・・・」

 

「待て、今何をしたんだ。炎がお前を包んだぞ」

 

「服を乾かしただけだ」

 

いや、それだけ言われてもはいそうですかと納得ができないよ。

 

「この家に来た理由というか、俺に何か用か?」

 

「我は休暇でお前を会いに来たのだ。迷惑だったか?」

 

「だったら連絡しろよ。そうすれば、さっきの二人の家族に報告したものを」

 

「すまぬ、お前を驚かそうと思ってな」

 

「扉を開けた瞬間に蹴りが飛んできたのが一番の印象だ」

 

ボクもそうだと思わず頷いてしまった。

 

「・・・・・で、その荷物は何だと言うのは愚問か?」

 

「いや、よくぞ聞いてくれたと褒めてつかわす。

―――今日から明日の夜までお前と過ごす!決定事項だ、異論は認めん!」

 

・・・・・え?

 

『えええええええええええええっ!?』

 

ボク達は驚きのあまり大声で叫んでしまった。だって、だって・・・・・いきなり

この家に泊まりに来たんだもん!まだ知らない綺麗な女性と先輩達が!

ハーデスは冷静な態度で口を開いた。

 

「ヒュームはいらん」

 

酷くないっ!?

 

「元より、ヒュームはここまで護衛として付き沿ってくれただけだ。直ぐに紋の護衛に戻すさ」

 

「それなら大歓迎だ。そういや、英雄と与一はどうした」

 

「英雄は大阪に出張でいない。与一は何故か知らぬがボロぞうきんのようになっていたぞ?」

 

小首を傾げる九鬼さんの隣にいる先輩が漏らした。

 

「・・・・・与一は私達にある秘密を抱えていたからねぇ・・・・・ちょっとした

お仕置きをしただけだよ」

 

ある秘密ってなんだろう・・・・・?

ハーデスがうっすらと汗を浮かべているから何か関係があるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまん与一・・・・・埋め合わせと責任は必ず取る」


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