バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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戦五問

「―――王様ゲエエエエエエエム!」

 

『いぇえええええええええええいっ!』

 

二つの学園が試験召喚戦争をしている頃、監視役のハーデスは―――暗殺者だらけの巣窟で王様ゲームを発展させた。

 

「って、ちょっと待て。そもそも王様ゲームとはなんだ」

 

「簡単に言えば王様のくじを引いた奴がくじの数字を引いた相手に絶対的な命令権を発動する事ができるお茶の間の間ではポピュラーなゲームだ」

 

「な、何でも・・・・・?」

 

「ただし、相手に精神と肉体的ダメージを与える命令は絶対禁止だからな。

これはあくまでもゲーム。もしもそれでも実行しようとした奴には罰ゲームをしてやる」

 

「私は構わないんだけどなぁ・・・・・ねぇ、もっかいあの時みたいに雷で私をぉ・・・・・」

 

「こいつ、ドMか・・・・・後でな」

 

やるのかよと何人かが内心ツッコンだ。

 

「さて、参加者は十二人。参加者の皆には自己紹介をして貰おうか」

 

「なんで?」

 

「そういう決まりなの(※嘘)。それじゃ、ドMさんから順に」

 

さっさと進行するハーデスの指示に鼻に傷跡がある女性が口を開く。

 

「スズカだよ。よろしく、ハイ次」

 

軽く名乗って隣にいる白衣を着ている中年男性の番に回った。

 

「アタシはDr.スタイリッシュ!好きなことはスタイリッシュなこと!

あと人体実験・兵器・毒薬の研究開発よ♪」

 

「・・・・・こいつ、殺しても良い?」

 

「きちんと見張っておりますから大丈夫です。ああ、私はランです。よろしくお願いします」

 

金髪の美形青年が苦笑を浮かべながら自己紹介をすれば、

 

「リヴァだ」

 

短く名乗った長い銀髪を一つに結い上げた中年男性、

 

「グリーンだ、よろしく」

 

「俺はガイだ。好きな女はコルネリア!」

 

「はいはい、しつこい男は嫌われるわよ」

 

眼鏡を掛けた知的な少年、顔や体中に生々しい傷跡がある少年の言葉に外野からの

突き放された言葉が送られた。

 

「アカメだ」

 

「えーと、タツミだ」

 

赤い目、長い黒髪の少女と茶髪の少年が名乗った。

 

「シュテンだ」

 

筋肉隆起の身体に長い黒ひげを伸ばす中年男性も短く無感情に名乗り、

 

「シュラ様だ。覚えておきな」

 

顔に大きな☓の傷跡がある褐色肌の男が名乗り、

 

「男前のブラートってんだ。よろしくな」

 

がたいの良い身体の持ち主であるリーゼントの男性が名乗り挙げれば最後の一人が名乗る。

 

「ポニィだよ。よろしく!」

 

茶髪のポニーテールの少女が名乗ったことでゲームは始まった。十二人が一斉に籠の中に入っている王様のくじも含んだ1~11のくじを手にした。

 

 

―――王様はだーれだっ!―――

 

 

高らかにそう叫び、全員はくじを開いた。・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

「よし、俺だぁっ!」

 

ブラートが王様のくじを見せ付け、確認をするためハーデスに視線を向けた。

 

「聞くけどよ。指定する数字は一つまでしか言えないのか?」

 

「王以外のなら全員指定しても構わない。また複数でもいいぞ」

 

「そうか・・・・・なら、9番は11番、2番は8番に抱き絞められろ!」

 

「「「「っ!」」」」

 

王様の命令に指定された人物は―――。

 

「俺が抱き締める側とは・・・・・(8番・シュテン)」

 

「・・・・・(2番・ガイ)」

 

「あら、ランに抱き締められるなんてアタシ感激♪(9番・スタイリッシュ)」

 

「ははは・・・・・(11番・ラン)」

 

こんな結果となった。片方は青ざめ、片方は何とも言えない面持ちで実行したのであった。

 

「・・・・・お、男に抱き絞められた。男に抱き絞められた・・・・・」

 

「ガイ、しっかりしなさいよだらしないわね」

 

「っざけんな!誰が好きこのんで男に抱き締められたいと思う!?」

 

「はいはい、愚痴は自分の部屋で良いな。それじゃ、続きをするぞー」

 

 

―――王様はだーれだ!―――

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

 

「む、私か・・・・・」

 

王様のくじを引いたのはリヴァ。顎に手をやり、どんな命令をしようか悩んだ末にハーデスへ顔を向けた。

 

「精神と肉体的なダメージを与える命令は厳禁なのだな?」

 

「健全なゲームをする為だ。しかもお前らは殺しに長けているからどんな命令をするか

分かったもんじゃない」

 

「では、誰か私の代わりをして貰うのはダメか?」

 

「どうしてだ?」

 

「この世界に来てから私はより美味しい料理を作ることに集中できているのでな。

今晩の夕飯の一品に私の手料理を食べてもらいたいのだ」

 

と、得意げな顔で自信満々に言うリヴァに感心したハーデス。

しかし、一部の外部者が顔を真っ青に染まった。

 

「んー?まぁ、そういうことならいいか。んじゃ、リヴァの代わりにラバックと

 入れ代ってもらおうか」

 

「俺かよ。ま・・・・・いいけどさ」

 

「では、完成するまでの間楽しんでいてくれ」

 

リヴァはラバックと入れ代り退場。ゲームは続行した。

 

 

―――王様はだーれだ!―――

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

 

「あっ、私だね」

 

スズカが王様のくじを引いたのだった。そして、熱くハーデスに視線を送る。

 

「それじゃあ・・・・・3番が私の望みを叶えて欲しいな」

 

「はい?(3番・タツミ)」

 

「こういう命令も有りだよね?」

 

「まぁ・・・・・そうだろうけど、お前の望みってなに?」

 

純粋に尋ねるタツミの前にスズカはぴょんと近づき、

 

「私を考えつく限りの痛みを与えて欲しいなぁ」

 

「はい、ダメだからな?」

 

ハーデスが割って入り、スズカにダメだしするもスズカはニヤリと笑みを浮かべハーデスに食って掛かる。

 

「王様の命令だよ?絶対的な命令権で従わせるんでしょう?」

 

「それ以前に俺は精神と肉体的なダメージを与えることは禁ずると言ったよな?

そして―――いや、お前・・・・・狙っているのか?」

 

「ふふふ・・・・・バレた?」

 

意味深な笑みと共にハーデスの顔へ詰めた。

 

「罰ゲーム、実行して欲しいんだよ。ほら、やってやって?」

 

「・・・・・ここまで罰ゲームをして欲しい奴は初めてだよ。しょうがないな」

 

どこからともなく縄を取り出して瞬く間にスズカの全身を亀の甲羅のような縛り方をして宙吊りにした。

そして、身動きが取れないスズカに目掛けて雷を放った。

 

「あああああああああああああああんっ!いい、いいぃぃのぉおおおおおおおおっ!

 もっと、もっとしてぇっ!」

 

この光景を見て誰もが引いたのは当然であろう。ドM、ここまで極まると声を失う。

 

「・・・・・実行する俺も俺だけど、こいつには引くわぁ・・・・・」

 

「お前にやられてからスズカ、こうされたいっていつも呟いていたけどね」

 

「そいつはそういう奴だからな」

 

「気に入られて嬉しいかぁ?」

 

スズカの仲間、イバラの言葉に嬉しくないと断言して罰ゲームを終わらした。見ているこっちまでおかしくなりそうなのだから。

 

 

―――王様はだーれだ!―――

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

 

「よぅし、俺だな王様は」

 

不気味な笑みを浮かべるシュラの手に王様のくじが持っていた。

 

「んじゃ、命令だ。全員、俺の下僕と成りやがれ」

 

王として当然の指示だとシュラは深い笑みを浮かべながら命令したが、

ハーデスが待ったを掛けた。

 

「はい、ダメだからな」

 

「あぁ?」

 

「健全なゲームをするって言っただろう。そういう相手を問答無用に強引で従わせるのも禁止」

 

「おい、テメェは参加していねぇのに横から口出すんじゃねぇよ」

 

「じゃ、こいつの言う事を聞きたい奴は手を挙げてみな」

 

ハーデスはシュラ(王)意外のタツミ達に尋ねると、

反応は様々だが誰一人手を挙げる者はいなかった。

 

「納得のいく命令をしない限りゲームは続行しない。

こういうゲームなんだよ王様ゲームってのは」

 

「ちっ、くだらねぇなおい!王様のくじを引いたんだから俺は絶対的な命令権を

得られたんだろうが!」

 

「自分だけ楽しいゲームをしても周りは良い感情でいるわけがないことを知らないのかなぁ」

 

「知るかよ他の奴らなんざ。俺は好きなように生きるんだよ!女を俺の快楽を満たす為の娯楽!

弱い奴は俺に蹂躙され、この世界は全て俺のおも―――!」

 

「―――ちゃと言い続けたらお前・・・・・この場で殺すぞ」

 

シュラの狂った発言を遮り、全身から禍々しいオーラと敵意に殺意が籠った金色の双眸が爛々と

煌めき睨みつけているハーデス。彼から発するプレッシャーですら、

この場にいる全員の身体を強張らせ、冷や汗を流させる程だった。

 

「俺も含めお前らはこの世界にとって招かざる客だ。

それを俺達がこの世界に住む人間を理由もなく雑な扱いをしちゃならない。それが自分の快楽、

欲求、欲望の為に人の人生を最悪にする奴は俺が許さない」

 

「・・・・・っ!」

 

「お前らがこの世界に来たのは俺を殺す為だろうが。それ以外のことを一切するなよ。

したら、問答無用に殺す。お前らの命は俺が握っていると過言じゃないからな?

そこんところ頭に叩き込んでおけ」

 

重々しい空気がなくなり、ようやく軽くなったことで心中、安堵で溜息を吐いた暗殺者達。

そしてシュラは罰ゲームを実行され、堪え切れず気絶して。

 

「さて、ゲームの続きをしようか」

 

楽しい、とは言えなくなったがゲームを再開したのであった。

だがしかし、しばらく経った頃に現れたリヴァの手料理が―――だとハーデスは思いもしなかった。

 

―――☆☆☆―――

 

「なにを入れたら・・・・・あんな味になると言うんだ・・・・・」

 

「だ、大丈夫・・・・・?」

 

「なんとか・・・・・だけど、一部を除いて皆グロッキー状態だ。

何とかしてやりたいが、俺はオリジナルじゃないから本来の力を使えない」

 

床やテーブル、椅子にぐったりとしている面々を見てリヴァの手料理は命の危険に

晒されると、ハーデスは青ざめる。

 

「キミは本物じゃないのに、本物みたいに言動するね」

 

「魔法はそういうこともできるってことだ」

 

「魔法・・・・・私達がいた世界じゃなかった力だね」

 

覆面で顔を隠す巨躯の身体な男性は興味深そうに話しかける。

この男、ボルスは出掛けていて難を逃れていた。

 

「異世界から来た俺が言うのもなんだけど。お前らの世界の国は酷かったらしいな」

 

「う、うん・・・・・だからアカメちゃん達と敵対して殺し合うほどだったし、

私自身も殺されちゃったの」

 

「自分を殺した相手と一緒に暮らして良い思いをしていないだろうに」

 

「あの時はあの時。でも、今は一応味方の関係だから何とも思っていないよ」

 

ふーん・・・・・とハーデスはボルスを見詰める。

 

「ボルスって優しいんだな」

 

「別に優しくなんてないよ。私はこの手で色々な人達を焼き殺したんだから。

誰かがやらないといけないことを私はただしてきた。帝国側の人間として・・・・・」

 

自分の手の平を見詰め遠い目で視線を落とすボルスの手を見ながらハーデスは言った。

 

「それでも、お前を支えてくれる人はいたんじゃないか?」

 

「っ!?」

 

自分と自分の仲間しか知らない事実をハーデスの発言にボルスは目を張り、

ハーデスに目を向けた。

 

「俺も、そういう奴らがいると心が救われる」

 

「キミも・・・・・大切な人がいるの?」

 

「この世界に居着いて数十年。必然的にかけがえのない仲間や友達、民ができてしまうものさ」

 

「・・・・・」

 

邪のない笑みを浮かべ、ハーデスはボルスに言う。

 

「だから、お前らも俺の命を狙いながら生きてみな。きっと幸せになる」

 

「キミはそれでいいの?キミの命を狙っているのに」

 

「俺、負けないからな。寧ろ、お前らみたいな強い奴らがこの世界に来てくれた嬉しい

と思っている方だ。この世界じゃ最強の存在を倒してしまったからそれ以上の戦いの

楽しみが感じなくなったんだよ」

 

あっけらかんと命を狙って来いと言うハーデスとその理由にボルスは何も言えなくなった。

ハーデスの強さはこの中で一番だし、今話しかけている殺しの標的は偽物。ここで仮に

殺しても本物には何の影響もないから、殺しようもない。

 

「ちょっといいですか?」

 

「ん?」

 

「ランくん?」

 

二人の会話にランが少し青ざめた顔でフラフラと近づいてきた。

まだリヴァの手料理の後遺症が残っている様子だ。

 

「この世界にも学校があるそうですね」

 

「それが?」

 

「私、教師をしていた時期がありましてね。家で何時までも籠るわけにも、

外に出歩くだけではなく仕事もしてみたいと思いまして」

 

ランの思いをハーデスはうーんと唸り首を捻った。

 

「仕事をしたいのは構わないけど、何がしたいんだ?」

 

「子供達と触れ合う施設で働く仕事を望みます」

 

「・・・・・」

 

仕事の内容にハーデスは沈黙し、しばらくしてランに問うた。

 

「どちらにしろ、働きたいならそれ相応の知識と試験に合格しないとダメだ。

それでもしたいか?」

 

「ええ、お願いします。―――それと、一つ注意して欲しいことが」

 

ランの目つきが変わり、声を殺してハーデスに告げた。

 

「ピエロみたいな太った男を幼い子供達に近づけないでください」

 

「・・・・・なんか、身近にいる男の趣味と好みが

脳裏に浮かんだが・・・・・そいつ、ロリコンなのか?」

 

「いえ、理不尽な理由で子供を襲って殺すのです。私達がいた世界で大勢の子供を襲っては

殺していました。ですから、シュラとエンシンも同様に厳重に見張っていてください」

 

そう言われ嘆息するハーデス。

 

「シュラはともかく、他の二人も問題ありか。

分かった。見張っているが―――そのピエロのやつ、チャンプと言ったか」

 

「はい」

 

「最近だが、俺の友人と意気投合してな。今でもその様子を見ているぞ」

 

 

 

 

「よーう、チャンプ。待たせて悪かったな!」

 

「遅せぇぞ。やっと来たか」

 

「そう怒るなって。ほら、俺の秘蔵のコレクションを見せてやっから」

 

「・・・・・うおぉおおおおっ!超可愛いじゃねぇかっ!」

 

スキンヘッドの男子生徒と肥えたピエロみたいな化粧と恰好をした男が多馬川の草原で

幼い幼女しかない写真集を見て興奮していた。傍から見ればあまりにも不気味で近寄りがたい。

息を熱く何度も吐き続けるその姿はまさしく変質者その者。

 

「はぁ・・・・・マジ天使だな・・・・・子供って」

 

「そうだ。全ての幼女は天使なんだ。そんな幼女を穢す愚かな輩も存在する」

 

「んだとぉっ!?どこのどいつだ、俺が殺してやる!」

 

ピエロみたいな超えた男、チャンプは怒りの炎を滾らせて吠えた。

しかし、スキンヘッドの少年に窘められた。

 

「待て待て、人を殺すなって。落ち着け同志よ。

その為には俺達が天使を守らないといけないんだ」

 

「守るだと?天使のまま子供を殺した方がいいだろうが」

 

「―――バカ野郎がぁっ!」

 

バキッ!

 

「ぶほっ!」

 

チャンプを何かが籠った拳の一撃で殴った。

 

「お前の考えはこの写真に写っている天使に対する冒涜に等しい!

殺したらお前、一生天使の笑顔を見られなくなるだろうが!」

 

「っ!」

 

「天使を生むご両親にも感謝の念を抱きつつ天使の笑顔を見ることで癒しを与えてくれる!

その恩恵を棒に振ってどうする!?お前は天使の羽をもぎ取ろうとしていることを

なぜ気付かない!」

 

スキンヘッドの必死な言葉にチャンプは静かに耳を傾けている。

何故だろうか、この男の言葉を聞くたびに心が変わっていく・・・・・と。

 

 

キャッキャッキャッ!

 

 

「「っ!」」

 

遠くから子供の笑い声が聞こえてきた。女の子である、幼女である。

二人の耳はそれを聞き逃さず、血走る目で子供がいる方へ向けた。

 

「・・・・・見ろ、あそこに天使達のお遊戯が見えるだろう」

 

「ああ・・・・・天使達が笑って川遊びをしている」

 

「お前は天使のままにしたいから殺したいとあの時も言っていたな。だが、もう一度言うぞ」

 

スキンヘッドの少年は慈しみが籠った目でチャンプに語りかけた。

 

「お前・・・・・世界中に存在する全ての天使の笑顔を・・・・・・見たくないのか?」

 

「・・・・・っ!?」

 

「世界中の子供を殺してまで子供達は本当に天使のままでいられるとは限らない。

だったらどうする?―――自分の心の中にいる絶えず笑っている天使を

大事にするべきだろうが!」

 

色々と第三者から聞けば怪しい会話だが、チャンプの心に衝撃を与えるのに十分過ぎた。そしてスキンヘッドの少年が牧師のように尋ねた。

 

「同志チャンプ。幼い子供とは、幼女とはなんだ」

 

「・・・・・俺達のような人間に癒しを与えてくれる唯一の光と希望・・・・・」

 

「同志チャンプ。穢れた俺達に与えてくれる最初で最後の希望とはなんだ」

 

「・・・・・天使の笑顔、笑い声・・・・・」

 

「同志チャンプ。俺達の光とはなんだ」

 

「・・・・・幼い子供・・・・・」

 

「同志チャンプ・・・・・」

 

スキンヘッドの少年はチャンプの肩に手を置き、もう片方の手の中に

『ドキドキッ!幼女だらけのエデンの園!』と書かれたゲーム(※18禁)があり、

 

「俺の家で静かに幼女達と戯れようぜ」

 

「・・・・・!!!!!」

 

スキンヘッドの少年の言葉にチャンプの心は何かが変わった。

涙を流し、スキンヘッドの少年を抱きしめた。

 

「俺は・・・・・お前という男と出会って・・・・・心の底から良かったと

思っているっ・・・・・!」

 

「俺も新たな同士が増えたことにあの幼女達に感謝するぜ」

 

「行こう。そして、幼女達の笑顔と声を聞きに・・・・・!」

 

「歓迎するぜ、同志チャンプよ!」

 

二人は手を繋ぎ、スキップをしながらどこかへと行ってしまった。

―――その光景を監視していたハーデスが、

 

「・・・・・複雑すぎて、あいつらの考えにはついていけない」

 

額に手を当てて溜息を吐いた。

 

 

 

 

「・・・・・と、まぁ・・・・・こんな感じで意気投合しちゃってるわけなんだ」

 

「・・・・・あの男があの少年と付き合うことで改心したと言うんですか・・・・・」

 

信じられないと展開した魔方陣に映る映像を見てランは漏らした。

 

「取り敢えず、心配だが一応・・・・・問題はないだろう。今でも見張ってるけど、

お前が言った通りには起きていない」

 

「そう、ですか・・・・・私としてもかつての教え子の仇ですが・・・・・とても複雑で

これ以上何とも言えません」

 

「その気持ちは俺も分かる。だけど、お前もお前で何かを見つけて楽しめ。

そうしないとこの先やってられないぞ」

 

「ええ・・・・・そうさせてもらいます」

 

苦笑を浮かべるラン。心配の種は一先ず安心して良いようだと気持ちを切り替える。

 

「働く場所は蒼天でな。今住んでいるこの国より働きやすくできる。

知識を蓄えて試験を合格すれば晴れてお前が望んでいる仕事をできるようになる」

 

「はい、なにからなにまでお願いして申し訳ございません。頼みますね」

 

「任せろ、お前らの人生の先輩として色々と助けてやるさ」

 

ニッと小さく笑みを浮かべ、ランの為に準備をし始めるハーデス。


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