バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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騒々しい清涼祭
第一問!


 

Aクラスとの試召戦争(一騎討ち)からしばらくし経った。

三ヶ月間も試召戦争ができなくなったけど、僕らは学校生活を満喫している。

 

「おはよー」

 

最低な学力な奴らの溜まり場。それがFクラス。そんなクラスに僕の友達もいる。

ちょっとだけ教えよう。

 

「よう、今日は遅めの登校だな」

 

最初に声を駆けてきたのは筋骨隆々、このクラスの中で一番の巨躯の男子である島津岳人。

鍛え上げられた肉体は男子制服からでも分かり、僕の悪友と同じぐらい喧嘩慣れしているから

並みの不良じゃ歯が立たない。性格は優しい面が裏腹に女に飢えている為、エロい。

趣味は筋トレとナンパ。

 

「おーっす、明久」

 

「おはよう翔一」

 

赤いバンダナを頭に巻いた長身の男子、風間翔一。翔一の容姿は神月学園の女子生徒から

モテる程のイケメン。けど、本人は異性には興味が無く、噂では男にしか興味がないのでは?

とちらほらと聞く。エレガンテ・クワットロという神月学園の中で格好良い称号を持つ一人。

性格は子供がそのまま大人にしたような感じで、悪友より幾分か頼りになる友達。

皆からリーダー的な渾名の意味で『キャップ』と呼ばれている。

趣味は冒険と探検、バイト。風のように動くその脚力で色んな場所に一っ走りして、

色んなバイトをすることからバイトに関する情報はピカイチ。

 

「明久おはよう!」

 

元気溌剌に挨拶をしてきた赤毛よりの茶髪のポニーテールの女子の川神一子。

大きな瞳でいつも元気な女の子。誰にも親しく接して懐く為か、

『ワン子』という渾名があるんだ。

性格は優しく、明るくて僕が男友達みたいに接することができる女の子の一人。

趣味は筋トレ。でも僕と同じ勉強ができない。なので、テストの際には。

 

「大和ー!京ー!テストを写させてー!」

 

こう言った感じで頭の良い友人に涙目で頼み込む。

 

「あはは、ワン子は相変わらずだね」

 

苦笑いを浮かべる根暗そうな男子生徒は師岡卓也。渾名は『モロ』。

性格は少し暗く、これと言って特徴的な例を挙げるものはないけど機械、

PCに関する情報は凄まじくもう一人の悪友がたまにモロから聞くこともある。

 

「ワン子。たまには自分で頑張れ」

 

一子が懇願した一人の男子生徒はバッサリと切り捨てた。名前は直江大和。

作戦を考える事が上手で『軍師大和』とたまに言われる男子。知的で相手の裏を掻くことが得意。

趣味はヤドカリの育成。一度、大和が住んでいる寮の部屋に上がってヤドカリの事を聞いた途端に

軽く一時間は熱弁をされた。しかも、エロの参考書や美術品もあって大和もムッツリな奴だった。

 

「しょーもない」

 

呆れで溜息を吐きながらも一子に復習して書き連ねたノートを渡した女子生徒は椎名京。

姫路さんに次ぐプロポーションが良いスタイルの持ち主。弓道部の幽霊部員でたまに部活に

顔を出す程度。弓の腕は世界一で天下五弓と世界で一番上手い人の一人。

性格は大人しく、親しい友人以外自分から挨拶をしないほどだ。

 

「あ、おはよう明久」

 

「うん、おはよう。それでそれは何の本?」

 

「男と女の愛の話」

 

それは所謂エロの参考書ではないだろうか?女の子がそれを読むなんて僕は信じがたい。

度肝を抜かれたよ。

 

「・・・・・これを読んであの人とあんなことやこんなみたいな展開を実現したい」

 

どうやら京には想いを寄せている人がいるようだ。

さて、今まで説明した皆をひっくるめて風間ファミリー。翔一をリーダーに大和達が集う

集団の名前だ。他にも上級生が一人いるんだけどそれはまた何時か教えよう。

 

―――☆☆☆―――

 

「やっとお昼だー」

 

昼食タイム!今日は贅沢にソルトウォーター辺りで済ませようかな?

 

『・・・・・』

 

ふと、なんとなく背後にいるハーデスに目が留まった。

ハーデスは徐に鞄を開いて手を突っ込んだ時、

ズボッっと五重箱を包んだ風呂敷を掴んで取り出したぁっ!?

ちょっと待て、あの鞄は四次元でも繋がっているのか!丸い猫型の機械のポケットのようにさ!

 

『・・・・・なんだ?』

 

スケッチブックで話しかけてきた。

 

「えっと・・・・・それ、どうやって入れ出ししているの?」

 

『・・・・・普通に入れ出ししているだけだが?』

 

「具体的に説明して!お願いだから!」

 

本人にとってはそうだろうけど、僕にとっては未知な光景だ!

 

『・・・・断わる』

 

それだけ言い残してハーデスは五重箱を片手に教室からいなくなった。

 

「ねぇねぇ、大和。ハーデスも一緒に加えて食べないの?」

 

「いや、あいつが一緒に食べようという気が無い限り、

俺達から誘っても断われるのが目に見えているからな」

 

「同じクラスメートで仲間なのに、それじゃ寂しいわよ」

 

一子が立ち上がった。

 

「アタシ、今日はハーデスと一緒に食べるわ!」

 

「お、おいワン子?・・・・・行ってしまった」

 

「いや、あいつの判断は間違っちゃいねぇぜ」

 

「坂本、どういうことだ?」

 

「俺はハーデスと親睦を深めたいと思ってな。風間ファミリーも全員だ」

 

ああ、そう言うことなんだね。それだったらハーデスも断わることはできないかも。

同時に親睦を深める、一石二鳥だね!僕と雄二、それから友達の秀吉とムッツリーニ、

姫路さんに美波、風間ファミリーと屋上に移動した。屋上の扉を開け放つと、

狙っていたのかハーデスと一子がシートの上で弁当を食べていた。

 

「よう、ハーデス。一緒に混ぜさせてもらうぜ」

 

雄二がそう言って堂々とシートの上に乗った。

このシート、かなり大きいから皆が乗ってもまだ少しは余裕がある。

 

「おっ、美味そうな弁当じゃないか。一つもらって―――」

 

ドスドスッ!

 

「あっぶねぇっ!?」

 

ハーデスの弁当に伸ばした手に二つの箸が飛んできた!咄嗟に雄二が手を引っ込んで

無事だったものの、箸が完全にコンクリートの床に突き刺さっているよ!

 

『・・・・・タダでは食わさん』

 

「分かった、するからそれで文句はないな?」

 

冷や汗を流す雄二。ハーデス、もしかして意外と強かったりする?

 

「アタシも箸を投げられたわ。

改めて交換して食べたけどハーデスの弁当って物凄く美味しかったわ!」

 

「へぇ、そうなんだ?んじゃ、ハーデス。俺のプロテインと―――」

 

『いらない』

 

「最後まで言えない上に拒否されただと!?」

 

「いや、それと相応するご飯って精々白飯しかないかと思うよ」

 

うん、僕も同感だよ。雄二が唐揚げ×3、ハーデスは大きい骨付き肉と交換し合った。

 

「どれどれ・・・・・おお・・・・・こりゃ、確かに美味いな!」

 

「本当か?ハーデス、俺のと交換してくれ」

 

「じゃあ、僕も」

 

雄二が太鼓判を押した結果、ハーデスの弁当の料理を食べようと交換し始めた。

 

『・・・・・』

 

するとハーデスがこっちに顔を向けてきた。

 

『・・・・・食べないのか?』

 

と、スケッチブックを見せてきた。

 

「明久の昼飯は食うよりも飲むって感じだ」

 

「明久って親からの仕送りの殆どをゲームに注ぎ込むから、

ちゃんとした食生活がなっていないの」

 

「島津寮に住めば食生活に困ることには無いのにな」

 

うう、言い返せれないよ・・・・・。そんな僕にハーデスはあからさまに煙を出した。

すると、食べかけの白いご飯の上に野菜、骨付き肉を持ったかと思えば僕に突き出してきた。

 

「え?」

 

暗に、食えってことなのだろうか・・・・・?

 

「いいの・・・・・?」

 

『・・・・・今度の仕送りの時、俺用に何か作って来い。等価交換だ』

 

片手で素早く書いて、僕に伝えるハーデスに感謝した。久々のカロリーだ!やったっ!

 

「うん、絶対に作ってくるね!ありがとう!」

 

ハーデスの弁当箱を受け取り、久々のカロリーを摂取して胃も大満足だった!

 

「・・・・・吉井、男の弁当に喜んじゃって・・・・・!」

 

「私も、吉井君のために作ってきたのに・・・・・」

 

なんだか、どこからか異様なオーラを感じるのは気のせいだと思いたい。

 

「んー、お茶が欲しくなってきたな。ちょいっと買ってくるわ」

 

「あ、ウチも」

 

雄二と島田さんがいなくなった。

 

「ん?なんだ、姫路も明久に弁当を作ってきたのか?」

 

ガクトがそんな事を姫路さんに言った。その指摘に姫路さんは顔を真っ赤に染めた。

 

「えっ、は、はい・・・・・」

 

「んじゃ、その弁当を一口だけ俺様に食わせてくれ」

 

「え、ええ、いいですよ」

 

「・・・・・俺も」

 

可愛い布に包まれたピンクの弁当箱を開けて、

ムッツリーニとガクトは姫路さんが作ってきただろう

焼き卵をヒョイっと口の中に放り込んだ―――。

 

 

バタン     ガタガタガタガタガタガタガタ

 

 

豪快に顔から倒れ、小刻みに震えだした。

 

『・・・・・』

 

僕達は思わず、顔を見合わせる。

 

「わわっ、島津君!?」

 

姫路さんが慌てて、配ろうとしていた割り箸を取り落とす。

 

「「・・・・・(ムクリ)」」

 

二人が起き上がった。

 

「「・・・・・(グッ)」」

 

そして、姫路さんに向けて親指を立てる。多分、『凄く美味しいぞ』と伝えたいんだろう。

 

「あ、お口に合いましたか?良かったですっ」

 

ムッツリーニとガクトの言いたいことが伝わったのか、姫路さんは喜ぶ。

でも二人とも、それならなぜ足が未だにガクガクと震えているんだい?

僕にはKO寸前のボクサーにしか見えないよ。

 

「良かったらどんどん食べてくださいね」

 

姫路さんは笑顔で勧めてくる。そんなに嬉しそうに勧めてくれると断われない。

むしろ、どんなに不味かろうとも残さず食べる、という気にさえなってくる。

―――でも、僕には目を虚ろにして身体を震わす二人が忘れない。

 

「(・・・・・秀吉。あれ、どう思う?)」

 

姫路さんに聞こえないくらいの小さな声で秀吉に話しかける。

 

「(・・・・・どう考えても演技には見えん)」

 

「(だよね。ヤバいよね)」

 

「(明久。お主、身体は丈夫か?)」

 

「(正直胃袋に自信はないよ。食事の回数が少な過ぎて退化してるから)」

 

表情は当然笑顔のままだ。姫路さんにこの会話と僕らの驚愕を気取らせるわけにはいかない。

すると、ハーデスが箸を姫路さんの弁当に伸びた。

箸は卵焼きを摘まんで、ハーデスの口の中に入った。

 

『・・・・・』

 

僕達は固唾を飲んで見守る。まさかと思うけど、

ハーデスまでもがムッツリーニとガクトのようになるんじゃ・・・・・。

 

『・・・・・姫路』

 

「はい?」

 

『・・・・・何か隠し味入れたのか?』

 

スケッチブックでそう訊ねたハーデス。まさか、ハーデスには効かないのか・・・・・!?

怖ろしい舌と胃袋だ・・・・・っ!

 

「隠し味ですか?はい、少々入れました」

 

どんな隠し味でムッツリーニはともかく、あのガクトが痙攣を起こすんだろうか・・・・・。

ヤバい、冷や汗が止まらない。

 

『・・・・・どんな?』

 

「えーとより焼き卵に甘みが出るように―――クロロホルムを少々」

 

そ、それって・・・・・化学薬品じゃないか!しかも劇薬だよそれ!

どうして成績優秀な姫路さんがそんな薬品を用いて料理を作るんだよ!?絶対にあり得ないって!

 

『・・・・・そうか』

 

 

バタリ。

 

 

ハーデスが姫路さんの返ってきた言葉を聞いた直後。倒れた。

 

「(・・・・・ヤバい、ヤバいよ!?あのハーデスが倒れるほど不味いんだ!

というか料理に劇薬を入れる思考がおかしい!)」

 

「(・・・・・食べようとする決意が鈍ったのじゃ)」

 

「・・・・・なあ、物事に対して見た目で判断しちゃいけないって

旅人さんの言葉が今思い出したんだけど」

 

「・・・・・俺もだ」

 

「いくらなんでも、料理に薬品を入れるなんてないよ」

 

大和と翔一が冷や汗を流して、京が物凄く警戒した目で姫路さんを見ている。

どれだけ体を鍛えても、内臓を鍛えることは不可能だってことを僕は改めて思い知ったところで。

 

「おう、待たせたな。へー、こりゃ旨そうじゃないか。どれどれ?」

 

「あっ、雄二」

 

止める間もなく素手で海老フライを口に放り込み、

 

 

 

パク     バタン―――ガシャンガシャン、ガタガタガタガタガタガタ

 

 

 

ジュースの缶をぶちまけて倒れた。

 

「さ、坂本!?ちょっと、どうしたの!?」

 

遅れてやってきた島田さんが雄二に駆け寄る。・・・・・間違いない。コイツは―――!

 

 

―――ゾクッ!

 

 

その時、物凄く悪寒を感じた。背筋が凍るような感覚を覚えた方へ反射的に振り返った。

 

『・・・・・』

 

赤い目が爛々と怪しく強く輝いていた。その目は真っ直ぐ姫路さんに向けている。

 

『・・・・・食材を、料理を冒涜・・・・・したな?』

 

と、書かれたスケッチブックを突き出しながら生まれたての

小鹿が足を震わせて立っていたハーデス。

 

「ハ、ハーデスさん・・・・・?」

 

ガチャ・・・・・ッ。

 

誰もが信じがたいものを見る目でハーデスを見る。マントから二つの大鎌を取り出して

攻撃態勢に構え出したハーデスを。

 

「ちょっ、待て待て待て!いきなり何キレやがっているんだ!?」

 

「落ち付け!ハーデス!」

 

『・・・・・放せ、あいつの首、切る』

 

「姫路を殺すな!俺達からちゃんと言い聞かせるから!なっ!?」

 

あんなに怒るハーデスを見たのは初めてかも。

周りの皆も翔一と大和に取り押さえられているハーデスにポカンと呆然としていた。

 

「ねえ、姫路?弁当を作る時に試食とかしたの?」

 

「えっと、太ってしまうので試食はしませんよ?」

 

『殺すッッッ!』

 

「ワン子ォオオオオオッ!余計なことを言うなよっ!意外とこいつ力あるんだぞ!?」

 

「明久!鉄人を呼んで来い!こいつ、俺達だけじゃ抑えきるにも限界だ!」

 

「う、うんっ。分かった!」

 

「秀吉、ワン子、モロも手伝え!」

 

あんな必死になる大和は初めてだ。僕達は慌てて行動をして、

なんとかハーデスを抑えることに成功した。その後、僕達は誓った。何がなんでも

姫路さんの料理は食べない、料理を作らせてはならないと

 

 


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