バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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真約六問改

週末の日、ワシは姉上に手伝わされておる。

 

「うーん・・・・・やっぱり、さっきの方がピッタリかしらね」

 

「姉上・・・・・ワシは着せ替え人形ではないのじゃが」

 

「誰が喋っていいと言ったかしら?」

 

姉上の服を強引に着せられ、まるで鏡に映る自分が来ている服装に悩んでおる姉上に

朝早くからワシを姉上に例えられておる。今日、ハーデスとデートする為じゃ。

 

「のう、ハーデスは姉上の服装を見て笑ったりしないと思うのじゃが」

 

「変に思われたくないだけよ。・・・・・うん、これとこれにしましょう」

 

青いスカートに白いブラウスを手にする姉上。どうやら決まったようじゃな。

 

「姉上、ワシの部屋で着替えておれ」

 

「秀吉?」

 

「そろそろ待ち合わせの時間じゃぞ。片付けはワシがやっておくから」

 

姉上の部屋にある時計に指差しながら告げると、慌てだす姉上は自分の部屋から出て行った。

 

「やれやれ、ハーデスと言う恋人ができてから姉上は変わったの」

 

いい意味でも悪い意味でも。じゃが・・・・・ワシはどうすればよいかの・・・・・。

付き合い始めたと事実に何故か心が酷く痛んだ。

その理由は・・・・・分かっておるが、分からないフリをしている自分がおる。

 

「・・・・・まだ時間はある。じっくりとこの気持ちと向かい合い決めよう」

 

『秀吉ぃーっ!ちゃんとアタシの服を片付けておいてねっ!』

 

階下から姉上の声が聞こえた。

 

「分かっておる!姉上も初めてのデートで恥を掻かぬようにしっかりするんじゃぞぉ!」

 

『うっさいっ!』

 

 

 

「・・・・・翔花、これでいいと思う・・・・・?」

 

「姉さん・・・・・羨ましい」

 

「・・・・・翔花も雄二と結ばれる。自分を信じて雄二に告白し続けていけばきっと。

・・・・・これでいいと思う?」

 

「姉さん・・・・・死神から結ばれる方法を聞いてきて」

 

「・・・・・翔花の為になるような話を聞いてくる・・・・・。

これでいいと思う・・・・・?」

 

「姉さん・・・・・時間が迫っている」

 

「・・・・・これにしよう」

 

 

 

「あれ、ボクが一番みたいだねー?」

 

デニムジャケットにクリーム色のロングスカート姿の僕は川神駅に辿り着いた。

優子と代表の姿が見当たらない。

 

「イッセー君、どんな変装をしてくるんだろう」

 

腰まで伸びた真紅の髪、垂直のスリット状の金色の双眸。帽子で髪を隠し、

目をサングラスでも隠してくるのかな?目を下に落とし、

腕に装着した腕時計の時間を確認するとまだ待ち合わせの時間は10分もある。

駅前で立って待っていると、切羽詰まった表情で駆ける見知った友達の姿が見えてきた。

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・な、何とか間に合った」

 

「おはよう優子。ちゃんと時間通りに来たね」

 

「と、当然じゃない。遅刻は絶対にしないわ」

 

「あの人と初めてのデートだもんね。遅刻したら罪悪感を感じてしょうがないよ」

 

「・・・・・そういう愛子だって、今日は珍しくスカートを穿いているのね。

プライベートはいつもズボンを穿いているからスカートなんてあまり見ないし」

 

「た、たまにはいいじゃないかっ」

 

しかも、いつかこうなることを予想して内緒で買った物。

無駄にならずに済んで良かったのは内緒だよ?

優子と合流して直ぐにもう一人の友達がゆっくりと近づいてきた。

 

「・・・・・おまたせ」

 

霧島翔子、ボクらAクラスの代表だ。ボクと同じロングスカートに

黒い長髪をポニーテールに結いでいた。

 

「髪型変えたんだね?」

 

「・・・・・雑誌に載っている女性の髪形が目に入ってこれにしようと決めた」

 

ボクは短髪だから変えようがないや。

 

「優子も後の髪を結えばいいんじゃない?」

 

「考えておくわ。それより、アイツはまだ来ていないの?」

 

「・・・・・いないの?」

 

「ボクが最初に来た時はまだね」

 

あの目立つ髪を巧く隠して変装していると思うからボク達が気付いていないだけかもしれない。

 

「まったく、アタシ達より遅いなんていくらなんでもマナーがなってないわないわよ」

 

「・・・・・まだ時間はある」

 

「もうちょっとしたら来るかもしれないから待とうよ」

 

「はぁ・・・・・できれば一番最初にアイツがいて欲しいわ」

 

「なんで?」

 

「こうしてアタシ達が待つと・・・・・」

 

「へーい、彼女達。どこかにお出かけ?」

 

「暇なら俺達と一緒に遊ぼうぜ!」

 

「カモンベイビー!」

 

「―――こんなナンパが声を掛けて来る可能性があるからよ」

 

ああ・・・・・デジャブ。

 

「お断りします。他を当たってください」

 

「開口一番に否定された!?」

 

「ボク達、彼氏を待っているんで」

 

「いやいや、彼氏より楽しい思いをさせてやるよ。カラオケとかどーぉー?」

 

「・・・・・遠慮します」

 

「キミ、お人形見たいで可愛いね・・・・・俺だけの人形になってくれない?」

 

うわっ、変態がいる!

 

「そう言うわけでぇ、俺達とお付き合いしてください!」

 

「「お願いしますっ!」」

 

「「「ごめんなさい」」」

 

何このコントみたいな会話のやり取り。

というか、早くどっかに行って欲しいんだけどなぁ・・・・・。

 

「よし、コミュニケーション成功と言うことで一緒に遊ぼうぜ、な?」

 

「嫌です。どこかに行ってください」

 

「あんまり否定されちゃうと、担いででも連れて行っちゃうよー?」

 

ま、また・・・・・人身売買の人達・・・・・?

ナンパの一人の言葉にボク達はどうしようと緊迫した雰囲気に包まれていると、

 

「さっきから傍にいたんだけど・・・・・誰一人も気付いてくれないとは泣けるじゃないか」

 

聞き慣れた声が聞こえた。その声の方へ振り向くと・・・・・。

 

「あぁん?誰だよ、テメェ」

 

「まあいいや。竜兵、そいつらとよろしくな」

 

「おうよ。待たされた甲斐があったってもんだぜぇ・・・・・」

 

何時ぞやの不良が狂喜の笑みを浮かべてナンパに近づいた!

 

「テ、テメェ誰だよ!?」

 

「俺が誰だろうと関係ない。ただ、俺から逃げようなんて思うなよ?

逃げてもお前らを捕まえる。こんな風になっ!」

 

ドスッ!

 

「うごっ!?」

 

ナンパの一人のお腹に不良の拳が突き刺さった。

さらに他の二人のナンパにも蹴りと拳だけで倒した後に襟を力強く掴んだ。

 

「んじゃ、俺は楽しませてもらうぜ」

 

「いってらっしゃーい」

 

不良は三人のナンパを川神駅の裏―――親不孝通りへと引き摺っていなくなった。

そして、残ったのはボク達と・・・・・。

 

「えっと・・・・・誰?」

 

黒い髪に黒の瞳の少年。なんとなくイッセー君に似ているけれど・・・・・雰囲気が

全然違う。

 

「・・・・・まさか、本当に分からない?」

 

「・・・・・イッセー・・・・・なの?」

 

「ああ、これが証拠だ」

 

どこからともなく取り出したのは、骸骨の仮面だった。

うん、その仮面を見て納得したよ?納得したけれど―――。

 

「ええええええええっ!?」

 

「ぜ、全然違う・・・・・」

 

「・・・・・びっくりした」

 

三者三様、ボク達は唖然とイッセー君を見つめる。

対して彼は「しょうがないか」と嘆息と苦笑いをした。

 

「今の俺は俺が人間だった頃の姿で、あの髪の色と瞳の色はドラゴンの肉体の一部を

人間のベースにした結果でなったんだ」

 

「・・・・・髪が短い」

 

「魔法でまた伸ばせばいい。林冲達も驚いていたよ俺の姿を見てさ」

 

「えっと、何時からいたの?」

 

「愛子が来る前からずっと。普通に目の前に立っていたんだけどな」

 

た、確かに・・・・・いたような気がする。

でも、だからってそれがイッセー君だとは思わないよ!

 

「もしもの為に竜兵と待っていたけど案の定、またナンパされた三人を見て動いたんだ」

 

「だったらもっと早く声を掛けてくれたっても・・・・・」

 

「や、気付いてくれると思ったんだぞ?でも、全然気付いてくれやしなかった」

 

落ち込んだイッセー君。だけど変装どころかビフォーアフターした

イッセー君を気付く訳がない!これ、断言するからね!

 

「ま、それよりも早く七浜に行こう。可愛い服と髪型の三人を見て楽しくなってきた」

 

「「「・・・・・っ」」」

 

髪型と髪や瞳の色が違っても、ボク達に向けるその笑みはなんにも変っていない

暖かくて優しい笑み。うん・・・・・ボク、イッセー君の笑みをもっと見たい。

だからこそ、代表や優子よりも早くイッセー君の腕に飛び掛かって抱き付いた。

 

「行こう!イッ―――」

 

「普通に学校と同じ呼び名で言ってくれ。その名前はバレる恐れがあるから」

 

と、人差し指で僕の唇を軽く押しつけられた。そ、そうだったね・・・・・。

コクリと首を縦に振って改めて呼んだ。

 

「分かったよ、ハーデス君」

 

「・・・・・行く」

 

「そうね、ほら行きましょう?時間は有限ですもの」

 

 

 

 

「・・・・・あの男は一体・・・・・」

 

「ん?どうしたムッツリーニ」

 

「誰か知り合いいたの?」

 

「(・・・・・不味いの)三人とも、早くカラオケに行こうなのじゃ」

 

「・・・・・見知らぬ男と工藤愛子、木下、霧島が見掛けた」

 

「なんだと?」

 

「霧島さん達が一緒にいる男って・・・・・ハーデスしか思い浮かばないんだけど?」

 

「俺もそう思う・・・・・うし、後を付けてみるか。ハーデスかもしれない男を確認しにな」

 

「秀吉、お姉さんがどこに行くか知っているよね?」

 

「いや、ワシは知らん」

 

「そうか、ならしょうがないな」

 

「申し訳ない―――」

 

「学校中に秀吉が彼氏募集中だと校内放送をするしかない」

 

「七浜コスモワールドに行こうとしておる!(すまん、姉上とハーデス・・・・・!)」

 

 

 

 

電車に乗って隣町まで移動し、七浜に辿り着いた。人が大勢闊歩し賑やかな七浜に

紛れて遊園地に赴く。

 

「最初はどんなアトラクションに乗ろうかなー?」

 

「・・・・・お化け屋敷」

 

「代表は全然怖がらないから言っても意味がないと思うわよ」

 

「・・・・・きゃー、怖い・・・・・?」

 

「全然、怖がっている表情と気持ちじゃないぞそれ」

 

「あの召喚獣を使った肝試しでも代表は怖がっていなかったよね」

 

「代表って怖いと言うより怖がる理由が分からないから悲鳴や恐怖心が抱かないでしょうね」

 

「だろうな。ところで優子と愛子、プライベートなのにどうして代表って呼ぶんだ?

仲良いんだから名前で呼び合えばいいのに」

 

と、イッセーがアタシと愛子にそんな指摘をした。

 

「・・・・・二人とも、ハーデスの言う通りにして」

 

「え、いいの?」

 

「・・・・・構わない」

 

「なら、翔子ちゃんって呼ぶね?学校は代表って言うけどいい?」

 

「アタシも愛子同様にそう言わせてもらうわ」

 

「俺は翔子お姉ちゃんと呼ばせてもらおうかな(スパン)いてっ」

 

何ふざけている・・・・・か、彼氏に叩いた。

 

「・・・・・翔子お姉ちゃん・・・・・悪くないかも」

 

代表・・・・・いえ、翔子が両手を頬に添えて嬉しそうに目を細める。

 

「アンタ、年上なのに何言ってんのよ」

 

「魔法で身体を小さくすることができるんだ。嘘じゃないぞ」

 

身体を小さく・・・・・つまり、イッセーが美少年になれるって

こと・・・・・?・・・・・ごくりっ。

 

「優子、何考えているのか分からないけど顔が赤いよ?」

 

「・・・・・小さくなったハーデスに興味があるの?」

 

「俺の作品にも美青年と美少年絡みもあったからそのせいじゃないか?」

 

「「なるほど」」

 

って、愛子達が何か納得しちゃっているけれどそれは酷い誤解かもしれないっ。

 

「ち、違うわよ!アタシは小さくなったハーデス―――」

 

「みたいのか?」

 

「う・・・・・うん・・・・・」

 

―――――アタシは一体何を反射的に言っているのかしら。

これじゃ美少年=ショタコンの趣味があるようじゃないのよ。跪いて頭を抱えていると、

 

「・・・・・大丈夫、美少年でショタコンが好きな優子を心から応援する」

 

「そんな応援はいらないぃーっ!」

 

七浜のど真ん中でアタシは叫んだのだった。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

・・・・・遊園地へ無事に入園を果たした私達は最初に遊園地を見回ることにした。

 

「色んな乗り物があるねー。どれにしよっか?」

 

「・・・・・全部は無理かも」

 

「お昼もどこで食べようか見当もしないとね」

 

・・・・・アトラクション、絶叫、お店と色々な施設や乗り物を見ながら一周した。

ハーデスはパンフレットに視線を落として何から楽しもうかと悩む仕草をしている。

・・・・・すると、そんな私達にヒョコヒョコと着ぐるみが近づいてきた。

 

『お兄さん達、私が面白いアトラクションを紹介して―――って、どうして逃げるっ!?』

 

・・・・・ハーデスが私達を抱えて着ぐるみから逃走した。

 

「ちょ、ちょっとハーデス!?」

 

「いきなりどうしたんだい!?」

 

「最悪だっ!気配を隠していたから気付かなかったぞこんちくしょうっ!」

 

・・・・・どういうこと?視線で疑問をぶつけるとハーデスが

苦虫を噛み潰したかのような表情をし出した。

 

「あの着ぐるみの中身は川神百代だ!」

 

「「えっ!?」」

 

『待てっ!私の親切な好意を無化にするな!』

 

・・・・・本当だ。着ぐるみが物凄い勢いで追いかけてくる。

幻覚かもしれないけれど目が得物を狙う鷹のように鋭く光っている。

 

「な、何であの先輩がこのタイミングで現れるのよ・・・・・」

 

「こっちが聞きたいっ。・・・・・よし、尋問する」

 

・・・・・ハーデスはとある建物に立ち止まった。

着ぐるみも私達に追い付いてあからさまな態度をする。

 

『ここが私のお勧めのお化け屋敷だ。さあ、入ってくれ』

 

「・・・・・そうか、ここがお勧めか」

 

・・・・・聞き慣れない声を発するハーデス。声音を変えている様子。

 

「じゃあ、お化け屋敷の中も詳しく教えて欲しいな♪」

 

『・・・・・え?』

 

ガシッ!

 

「翔子達、この着ぐるみが親切に怖いアトラクションの中まで案内してくれるそうだ。

その好意を無化にできないよな」

 

『ちょ、ちょっと待て!私はそこまで案内をする気はないっ!手を放せ!』

 

「お客さんに対してそんな言い方は失礼だと思うぞ?

―――中で小一時間ぐらいはじっくりと詳しく教えてもらわないと」

 

『い、一時間・・・・・だと・・・・・!?』

 

「それじゃ、怖ろしく楽しくお勧めのお化け屋敷にGO!」

 

『や、大和!話が違うじゃないかっ!?って、そんな力強く引っ張らないでくれ!

い、嫌だっ!お化け屋敷は嫌だっ!誰か、誰か助けてくれぇえええええええええっ!』

 

・・・・・着ぐるみまでお化け屋敷の中へ連れてくるハーデス。その表情は笑っているけど目が笑っていない。

 

 

 

「・・・・・すまん、姉さん。今度何か奢るよ」

 

合掌する大和。他にも風間ファミリーと僕、雄二、ムッツリーニ、

秀吉がスタッフに成りすましてお化け屋敷に連れて行かれた川神先輩を見送っていた。

 

「というか・・・・・あれがハーデスの素顔だったんだな」

 

「意外と普通な男の子ね?」

 

「モモ先輩が逃げれなかった時点でハーデスに間違いないだろう」

 

「ああ・・・・・お化け屋敷からモモ先輩の悲鳴が聞こえてきたよ」

 

「んで、間違いないんだな?あの男がハーデスだと」

 

「十中八九、間違いない。これからどうするんだ?お前らからハーデスかもしれない

男が七浜に向かっていると情報をくれたから協力しているが」

 

「もう少し観察をしよう。あんな真正面から近づいたらああなると川神先輩が教えてくれたしな」

 

「じゃあ、観察する班と偶然を装ってハーデス達と接する組みに分けるとしようか」

 

雄二と大和の作戦はその後、盗聴器を身に付けてハーデスと霧島さん達の会話を

盗み聞きし、真相を明らかにすることとなった。

 

 

「事の発端は坂本雄二、吉井明久、土屋康太か。秀吉は免罪だろうな」

 

「直江君達までアタシ達を付ける側になるなんてね」

 

川神先輩を自白させたハーデス君は嘆息しつつ遊園地を後にした。

 

「きっと今の俺の姿を見られたな。たくっ、やってくれたよ」

 

遊園地でのデートは中止となった。知り合いが監視している中をデートしても

良い気分にはならないからとハーデス君がお化け屋敷に川神先輩を縛って放置、

裏からコッソリと坂本君達の目を盗んで遊園地から抜け出たその技量は感嘆の一声。

 

「ハーデス、これからどうする?」

 

「ああ。主犯の三人を処刑にする」

 

「・・・・・違う、デートの続きをどうするのか優子が聞いている」

 

「主犯の三人を処刑する」

 

「ハーデス?アンタ、Fクラスの思考になっているわよ?」

 

「はっ!?」

 

何時も何かハーデス君もFクラスに染まっているのかもしれない。

 

「・・・・・俺がバカ共の思考と同じになりつつあるというのか・・・・・」

 

あ、凄く落ち込んでいる。大丈夫だよ、どんなハーデス君は好きだよ?

 

「・・・・・今頃、俺達が遊園地からいなくなっていることに気付いている頃だろう」

 

「それで?」

 

「ここじゃないところに移動するしかないだろう?」

 

あっけらかんと述べるハーデス君だけど、どこに移動しようとしているのかな?

 

「三人共、ちょいと固まってくれ」

 

「・・・・・こう?」

 

「そうそう・・・・・それじゃ落ちるぞ」

 

「・・・・・はい?」

 

落ちるって・・・・・あれ、急に足場の感覚が無くなったような・・・・・視線を下に

落とすと・・・・・足場がない。常闇のように暗い空間が目の前に飛び込んできた。

一拍遅れてボク達はその暗い空間に落ちた。

 

「「きゃああああああああああああああああああっ!?」」

 

「・・・・・っ!?」

 

突然のことで愛子と一緒に悲鳴を上げた。翔子ちゃんはハーデス君の腕にしがみ付いて

目を見張っていた。

 

「直ぐに辿り着く」

 

そう言いつつハーデス君の背中から金色の翼が出てきた僕と愛子を包んだ。

そしてその通り、直ぐに暗い空間から光りある場所に落ちた。

 

「あそこって・・・・・!」

 

「ここなら、あいつらでも来れないだろう?」

 

傍には巨大で塔のような建物。その建物を沿うようにボク達は落下している。

 

「蒼天でデートだ。翔子、優子、愛子」

 

イッセー君・・・・・!

 

「まぁ・・・・・俺を心から受け入れてくれたお前らに喜んで欲しいからな」

 

頬を掻いてボク達から視線を逸らす彼は、自分で言って照れているのが分かった。

イッセー君は翼を羽ばたかせ、西に向かっていく。

そこは蒼天の西区、自然が豊かな場所だ。そこでのんびりとボク達と過ごしたいんだね。

 

 

―――翌日―――

 

―――2-F―――

 

 

『・・・・・坂本雄二、吉井明久、土屋康太・・・・・最期に遺言はあるか?』

 

「ちょっと待て!?いきなり物騒なことを言うな!」

 

「僕達が何をしたって言うのさ!?」

 

「・・・・・弁解を求める・・・・・!」

 

HRは終了して鉄人がいなくなった瞬間に突如視界が反転した。唖然と理解が処理できなく

少しずつ整理していると黒いマントから二つのガドリングガンを突きつけるハーデスを

見て危機的立場にいることを僕はようやく把握した時だった。

 

『・・・・・七浜の遊園地、川神百代がいた』

 

―――そ、それは・・・・・っ!

 

『・・・・・尋問すれば、お前ら三人が直江大和達に教えたそうだな?』

 

「な、なんのことだ?俺達にはさっぱり分からねぇ・・・・・」

 

『・・・・・知らないならそれでいい、お前らには相応の処刑を実行するまでだ』

 

しょ、処刑ってあのハーデスさん・・・・・?

いったい僕達に何をしようとしているんでしょうか?

 

『・・・・・坂本雄二の処刑・・・・・霧島翔花の部屋で一週間全裸で過ごす』

 

「な、なんだとっ・・・・・!?」

 

『・・・・・吉井明久の処刑・・・・・吉井玲にお婿にできないほどの行為をしてもらう』

 

「えええええええええええっ!?」

 

『・・・・・土屋康太の処刑・・・・・ゲイの男に穴を掘られる』

 

「・・・・・っ!?(ブンブンブンッ)」

 

な、なんて僕達に対する究極の処刑を考案するんだ!そ、そんなことすれば本当に

僕達の社会的信用どころか尊厳が崩壊してしまうじゃないか!

 

「か、勘弁してくれ!そんな処刑をされたら俺は翔花に何されるか分かったもんじゃない!」

 

「お願い!どうか許して!神様死神様!」

 

「・・・・・一生のお願い・・・・・・!・・・・・それだけは勘弁・・・・・!」

 

『・・・・・なら、認めるんだな?』

 

「「「み、認める!認めるから許してくれっ!」」」

 

必死に懇願する僕ら。ダメだ、圧倒的にハーデスが有利な立場だ。

ゴツゴツとガドリングガンの銃口が額にぶつけられて地味に痛いっ。

 

「な、なぁハーデス。そろそろそのへんで許してやってもらえないか?」

 

「や、大和・・・・・!」

 

『・・・・・そう言えば、直江大和達もあの遊園地にいたそうだな?』

 

「うっ、そ、それは・・・・・」

 

『・・・・・俺の顔を見た時点でお前らも吉井明久達と同罪。

友を見捨て罪を免れるか?それともこの三人の罪をお前一人で背負うか?』

 

「・・・・・すまん、明久」

 

「「「ちょっと待てぇっ!?」」」

 

酷い、酷いよ大和!友達を見捨てるなんてゲスな雄二ぐらいだと思っていたのに!

そう思っていると、ハーデスのマントから複数の鎖が飛び出してきて

大和と翔一、ガクトに卓也の身体を拘束した。

 

「え、何この鎖!?」

 

「ちょっと待て!ハーデス何の真似だ!?」

 

「俺達まで処刑する気なのか!?」

 

『・・・・・旅は道連れ世は情け。怨むなら吉井明久達を怨め』

 

吊るされた僕らは床に頭から落とされ、痛みで悶えている余所にズルズルと引き摺られ始めた。

 

「ハ、ハーデス?僕達をどこに連れて行く気?」

 

『・・・・・処刑場』

 

 

 

ハーデスが明久達を引き摺って教室からいなくなった。ワシはどうやら免罪らしいが、

家に帰って来た姉上に折檻された痛みがまだ地味に響いてしょうがない。

 

「木下、ハーデスの素顔ってどういうことなの?」

 

「はい、ちょっと気になります」

 

何も知らない島田と姫路がワシに尋ねてきた。

 

「むぅ・・・・・あまりこの話は広めたくないんじゃが、

ワシらはハーデスの姿を見かけたんじゃ。その場に工藤とワシの姉上、霧島(姉)も

おっての。どうやらデートをしていたようじゃ」

 

「デ、デートですって・・・・・?」

 

「んむ。姉上達が何時もハーデスと共におるからもしかしてと思い、直江達も呼んで

一緒に確かめたんじゃ。武神である川神先輩を赤子如く無力化させたその様子を見て

間違いないとワシらは決断したが、川神先輩を尋問してワシらの犯行であることを

知って今に至るのじゃ」

 

「そ、そうだったんですか・・・・・あの、ハーデス君の素顔ってどんな風でした?」

 

・・・・・あの時の姿はまるで別人じゃった。大丈夫だろう・・・・・。

 

「特に変わった特徴ではないのじゃ。黒い髪に黒い瞳の男じゃったぞ」

 

「なんだ、普通の容姿なのね」

 

「初めて会った時に自己紹介された時に全身が火傷だらけと言うのは嘘だったんですね」

 

姫路は未だにその事実を真に受けておったのか・・・・・どこまでも純粋なんじゃが、

どうしてあの殺人料理を作ってしまうのか理解に苦しむ。

 

「って、ことは工藤と木下(姉)と霧島(姉)はハーデスと付き合い始めたってことになるの?」

 

「・・・・・それは」

 

 

『『『隊長、死神の処刑所を完了しました』』』

 

『うむ、奴が戻ってきた瞬間に実行をする』

 

『『『『『はっ!』』』』』

 

 

須川達が意気揚々とハーデスを処刑に意気込んでおる。

お主らが反応せんでよいものを・・・・・。

 

 

ガラッ

 

 

扉が開いた。ハーデス達が戻って来たのじゃろうと視線を扉に送ると、

 

 

『『『死神ぃっ!覚悟ぉ・・・・・?』』』

 

須川達も一斉に扉へ飛び掛かる途中でその勢いが無くなる。―――その理由は。

 

「「「「「「「・・・・・(泣き)」」」」」」」

 

見知らぬ女子制服を身に包んだ女子が七人も泣きながら入って来たのじゃ。

その後にハーデスが現れた。

 

「えっと・・・・・ハーデス君?そちらの女の子達は誰なんですか?」

 

戸惑いの色を隠さず尋ねる姫路の問いかけにハーデスはスケッチブックにこう意思表示をした。

 

『・・・・・吉井秋、坂本雌麗、土屋康美、直江耶麻、風間空子、島津美人、師岡太玖美です』

 

ま、まさか・・・・・。

 

「明久達・・・・・なのかの?」

 

信じられぬ気持でハーデスに質問すると。

 

『・・・・・吉井明久、坂本雄二、土屋康太、直江大和、風間翔一、島津岳人、師岡卓也を

女にした姿だ』

 

なっ・・・・・!

 

『『『『『なにぃぃぃぃっ!?』』』』』

 

須川達も驚きのあまり絶叫。目が大きく見開き、開いた口が塞がらん。

これが、これが明久達がもしも女だったらの姿・・・・・。

 

「よ、吉井君・・・・・ですよね?」

 

「お願い!今の僕を見ないで!」

 

「か、可愛い・・・・・」

 

「えっと、直江耶麻って人は・・・・・この人よね絶対」

 

「その名前で俺を呼ぶな!」

 

「ふふっ。大和が女の子になるなんて弄り甲斐があるね」

 

「ガクトが女になった姿か・・・・・」

 

「見るな!そんな好奇心が籠った眼差しで俺様を見るな!」

 

「は、恥ずかしいよ・・・・・」

 

「男に戻りてぇ・・・・・」

 

「・・・・・なんという屈辱的な・・・・・!」

 

「・・・・・全裸より最悪だ・・・・・」

 

誰もが立ち上がって女バージョンの明久達に群がる。

 

 

『死神!俺達アンタに心から感激と感動した!』

 

『『『一生ついて行きます!死神様!』』』

 

『・・・・・我を称えるがいい部下供』

 

『『『『『ははぁーっ!(土下座)』』』』』

 

 

久し振りにハーデスを称える須川達。そしてハーデスがワシに、

 

『吉井秋達に更なる女らしさを成ってもらう為に施してくれ。演劇のホープ』

 

「うむ、分かったのじゃ。全力で施そうではないか」

 

「「「秀吉っ!?」」」

 

「「「「木下ぁっ!?」」」」

 

すまぬ。じゃが、ハーデスにそう言われては演劇のホープとしても腕の見せ所なのじゃ。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「これはあんまりだよ・・・・・」

 

「くそ・・・・・男としての威厳が完全に無くなっちまったじゃないか」

 

「・・・・・一生の無念・・・・・」

 

女の子にされ、さらに女子の制服を着せられ、さらにさらに本気で化粧を施す秀吉に

よって僕達は完全に女の子になってしまった。

 

「お、女の子なら・・・・・吉井君・・・・・いえ、アキちゃんに抱きあったり

手を握ったりしても良いですよね?」

 

「お、男じゃないし・・・・・女の子同士だから・・・・・ね?」

 

島田さんと姫路さんが顔を真っ赤にして僕に近づいてくる。

 

「そ、その胸って・・・・・パットとか詰め物じゃないのよね?」

 

「下に穿いている・・・・・その、下着も確認したいです・・・・・」

 

「ひっ!?」

 

ヤバい、今のこの二人は何かヤバい!

 

『・・・・・上下女の下着だ。確認するなら巧妙にしろよ』

 

「ハーデス、貴様!この恨みは忘れないからね!?」

 

『・・・・・』

 

バッ!

 

「きゃっ!?」

 

いきなりハーデスの手によってスカートがめくられた!今の僕の下着はトランクスじゃなくて

本当に女の下着だ。こんなものを誰かに見られたくない為に慌てて両手でスカートを押さえた瞬間、

 

「・・・・・!(ブシャァァァァッ!)」

 

「ムッツリーニが盛大に鼻血を噴きだしたぞ!?」

 

「しっかりするんじゃムッツリーニ!」

 

一人の悪友が床に倒れた。

 

「きゃっ!ですって瑞希・・・・・」

 

「か、可愛いです・・・・・っ!お持ち帰りしたいほどに・・・・・」

 

く・・・・・!つい、変な声を出してしまった・・・・・!

 

 

『ねね耶麻。その胸って本物?ちょっと触らしなさいよ』

 

『さ、触るなワン子!―――んんっ』

 

『うわ、暖かくて何とも言えない弾力に―――憎たらしいほど大きくて触り心地がいいなんて』

 

『や、止めろワン子・・・・・!』

 

『なら、私はどんな下着を穿かされているのかチェック』

 

『京っ!?』

 

 

大和が他の女子の餌食にされ掛けている。

 

 

『雄二・・・・・』

 

『げ、翔花・・・・・!』

 

『本当に・・・・・女の子になっている』

 

『おい、何だそのカメラは・・・・・』

 

『記念に百枚』

 

『やめろぉっ!?』

 

 

雄二も霧島(妹)さんに捕まっちゃっているみたいだ。

 

 

『死神くーん、面白いものって・・・・・おや?女の子が何だかいっぱいいるね?』

 

『ほほう・・・・・なるほど、これは確かに面白そうだな』

 

『『『『うげっ!?』』』』

 

『あ、お姉様!見て見て、大和達が女の子になったの!』

 

『よし、最初に確かめることができた。その胸を思う存分に堪能しようじゃないか!』

 

『『『『い、いやああああああああああっ!?』』』』

 

武神の登場に更にカオスな状況に・・・・・。大和達、ドンマイ・・・・・。

 

「ねえ、アキちゃん?なんか他人事に思っているでしょうけど人事じゃないってこと

忘れていないかしら?」

 

「はっ!?」

 

「アキちゃん・・・・・ちょっとこっちに来てくれます?」

 

肩を掴まれて島田さんと姫路さんにどこかへ連れて行かれる!

ちょ、何で女の子なのに島田さんはともかく姫路さんはこんなに強いの!?

 

「ええい!ここは逃げるのみだよ雄二!」

 

「その言葉を待っていたぞ明久ぁっ!」

 

「俺も加わるぞ!」

 

雄二と大和も脱兎の如くこの魔の巣窟から逃走した。

 

『あっ、逃げるんじゃないわよ!―――アキ!』

 

『逃げないでくださいアキちゃん!』

 

『雌麗・・・・・逃がさない』

 

『大和が逃げちゃったか、まあいい。追いかけるだけだ』

 

くそぉっ!絶対に次の授業まで逃げきってやる!

 

「屋上に籠城するぞ!あそこは扉一枚しかないからな!」

 

「ナイスな考えだよ!」

 

「同感だ!」

 

僕ら三人は屋上へ駆ける。背後に迫る恐怖の魔の手から逃れるために・・・・・!

 

「貴様らぁっ!何を騒いで・・・・・」

 

げっ、ここに来て鉄人!?―――と思ったけれど、顔に戸惑いの色が浮かんでいる。

 

「吉井と坂本に直江・・・・・?

いや、あのバカ三人は男だったはずだが・・・・・俺の人違い―――」

 

「「「誰がバカだ!こいつらより俺(僕)は賢いぞこの鉄くず鉄人!」」」

 

「・・・・・どうやらバカ三人のようだな。理由がどうであれ貴様らを捕まえて

補習室で尋問もとい事情を聞いてやる!」

 

一瞬で僕らの懐に潜り込んで丸太のような野太く剛腕のエルボーによってかなり

吹っ飛ばされた。

 

「む?本気でしたわけではないが・・・・・・まあいい」

 

ほ、本気じゃないエルボーでも痛みが凄まじいって・・・・・!

さっきの動きも人間離れしているっ!

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「ひ、酷い目に遭った・・・・・」

 

「何も知らないとはいえ、普通エルボーをかますかよ・・・・・」

 

「まだ痛みが・・・・・」

 

鉄人に事情を説明した後に元凶であるハーデスを問い詰め僕らを元の性別に

戻してくれたのは感謝するけれど、

 

「「「やっぱり納得いかない」」」

 

『・・・・・もう少し楽しみたかったのに』

 

「「「この外道が!」」」

 

一発殴りたいところだけどハーデスに打撃は一切通用しない。

この恨み晴らすべきなのに・・・・・!

 

「うーん、ボクも女の子になったムッツリーニ君を見たかったなー?」

 

「・・・・・いい迷惑だ・・・・・!」

 

「ハーデスもあまり度が過ぎる処刑をしないの」

 

『・・・・・坂本雄二の処刑、霧島翔花の部屋で一週間全裸で過ごす。

吉井明久の処刑、吉井玲にお婿にできないほどの行為をしてもらう。土屋康太の処刑、

ゲイの男に穴を掘られる予定のところ性別を転換させたぐらいで済んだのに?』

 

「・・・・・そうね、最初の予定の処刑より段違いのレベルね。

そのぐらいだったらまだマシかしら?」

 

何故か納得された。

 

「でもでも、楽しかったわね!」

 

「うむ、男が女になる瞬間を立ち会うなんて人生に一度はあるかないかの確率だ」

 

「くくく・・・・・色々と楽しかった」

 

「「「「何て屈辱的・・・・・!」」」」

 

屋上で輪になって昼食をする僕ら。

 

「ハーデス、男を女にできるならその逆もできるはずだよな?」

 

『・・・・・可能だ。だけどその考えはあまり良くない』

 

「なんでだ?」

 

『・・・・・普段逆らえない女子に男の力が加わるとさらに抵抗ができなくなる。

それでもいい?』

 

「うっ・・・・・」

 

それは確かに止めた方がいいかも・・・・・特に雄二は霧島(妹)さんに抵抗できない

から口も手も絶対に負けるに違いない。

 

「私は体験してみたいな。そしたら男の力でイッセーと勝負したい」

 

『・・・・・どうせ負ける』

 

「ははっ、やってみないと・・・・・いや、何でもない」

 

ハーデスの背後に浮かぶ何かを見て川神先輩が話を打ち切った。

 

「・・・・・というかだなハーデス。お前・・・・・三人と付き合うことにしたのか?」

 

大和が神妙そうな顔つきでハーデスに問うた。

 

『・・・・・俺達はただ遊園地に遊びに来ただけだ』

 

それだけしか言わず、霧島さんからあーんされるハーデス。

 

「本当に遊びに行っただけなの?」

 

『・・・・・そうだが?』

 

「おい翔子。お前達もそうなのか?」

 

「・・・・・死神の言う通り」

 

「そうだね、一緒に遊園地に行ったことは事実だよ?」

 

「―――坂本君と翔花のために下見したって意味も捉えるけどね?」

 

「優子・・・・・嬉しい」

 

「ばっ、なっ、何言ってんだ木下!誰が翔花と遊園地なんて―――!」

 

『・・・・・坂本雄二、それ以上言うと「雄二・・・・・絶対に行く」

「アイアンクローは止めろぉーっ!」・・・・・遅かったか』

 

だね、雄二も余計なこと言わなければいいのに。

 

「んまぁ、四人がそう言うんなら別にいいんじゃね?

俺達が横から口を挟むようなことでもないし」

 

うーん、気になるけど当人達のことだから仕方がないね。あんまり追及すると、

ハーデスに何されるか分かったもんじゃないしこの辺でお開きだ。

 

「(モグモグ)にしても、ハーデスの作る料理は旨いな」

 

「(モグモグ)そうだね。自分の作った弁当だとなんか意外性とかがなくて寂しいからね」

 

「・・・・・昼休みの楽しみの一つ・・・・・」

 

「じゃな。ハーデスと結婚するだろう姉上達には羨ましいことじゃ」

 

こんな美味しい料理を作ってくれる旦那さんは女の人にとって理想的な要素の一つのはずだ。

 

「・・・・・うん、凄く楽しみ」

 

「けど、女のプライドを何度も砕かれるわけにはいかないわ」

 

「ボクも料理を勉強しないとね。だからハーデス君、もしよかったら料理を教えてくれない?」

 

『・・・・・いいぞ、楊志にも教えているから何人増えようが問題ない』

 

ん?楊志さん?

 

「本当なの?」

 

「手先が器用なのは戦いにも役立つって言われてコピーしているんだよねー」

 

「梁山泊の中で楊志が一番料理上手になってるけどなー?」

 

「わ、私もそれなりに頑張っているが・・・・・料理とは奥が深い」

 

「うん?じゃあ、ハーデスの家に同棲しているお前達の弁当は誰が作っているんだ?」

 

「「「「「「死神」」」」」」

 

ああ、そう言えば皆の弁当はハーデスの重箱の中身と同じ食材があるね。どの弁当も殆ど無くなっている。

 

「朝食と夕食は?」

 

「基本的死神だが私達も手伝っている」

 

『・・・・・働かざるものは食うべからず』

 

そう言うハーデス。ハーデスが朝昼晩も料理を担当するのか。上達するのも頷ける。


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