バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

50 / 84
夏十問

世界は蒼天の中央区の王の姿を目に焼き付けた。赤よりさらに鮮やかな腰まで伸びた真紅の髪。

その相貌は金色で猛禽類、垂直のスリット状だった。初めて中央区の姿を見た物は

印象が強くてしばらく見ない間でも覚えていそうな容姿。

身長は百八十㎝に近く威風堂々と真紅の髪を揺らしながら川神百代達がいるステージへと足を運ぶ。

そんな背中には大剣、腰には金色の軍杖を携えて。

 

「初めまして。俺は蒼天の中央区の王―――イッセー・D・スカーレットだ。

以御お見知りおきを」

 

初めて顔を合わせた者に対する礼儀正しい言動をする。

 

「俺が修行をつけた家族を倒すとは流石は武家の街に住む者達だな。その力は感服の一声だ」

 

「―――ふざけているのか貴様」

 

怒気が孕んだ声をヒューム・ヘルシングが発した。鋭い眼光はさらに鋭く中央区の王を睨んでいる。

それにはやれやれと首を横に振って肩を竦める。

 

「俺が中央区の王としてお前らと対峙している理由を分からない訳がないだろう。

少しは話を合わせてもいいんじゃないか?」

 

「貴様が中央区の王だとはな・・・・・・」

 

「これは驚きました。ですが、まず最初にお久しぶりですと言えばよろしいでしょうか?」

 

「まあ、久し振りと言えようか。十年振りだなお前ら。だが、感動の再会に浸っていられても困る。

俺が優勝しないと蒼天の名が落ちてしまうからな」

 

不敵の物言いと同時に滲む出るオーラが感じ始める。目の前の人物もまた怪物クラスの強者だった。

 

『では、準備よろしいですか?』

 

「おう、始めてくれ」

 

『かしこまりました。最終バトルロワイヤルの開始のゴングが今、鳴ったぁーっ!』

 

司会のアメリヤンの声が会場中に轟いた。最初に動きだしたのは九鬼揚羽。

 

「久し振りだ・・・・・我が愛しき旅人よ!」

 

「それは偽名だ。今の俺はイッセー・D・スカーレットだ。まあ、これも偽名みたいなもんだがな」

 

突き出された拳を難なく手の平で受け止めて会話する。

 

「なら、今日からお前のことをイッセーと呼ばせてもらうぞ我の未来の夫よ」

 

「その話、十年前にも断わったはずだが?」

 

「その断わりを我は断わる!我の隣に立つ男はお前しかいないのだからな!」

 

「やれやれ、俺に夢中になると火傷するぞ?」

 

イッセーの口から火が噴いた。九鬼揚羽は顔だけ動かして火炎をかわし足を振り上げて

回し蹴りをしたが、九鬼揚羽の手を掴んでいるもう一つの手で受け止めて横薙ぎに放り投げた瞬間、

 

「旅人ぉっ!」

 

川神百代が黒色の長髪を激しく揺らし拳と蹴りを繰り出す。

 

「今までここにいたのか!どうして私達の前に姿を現さなかったんだ!?」

 

「俺は王だから仕事が忙しいの。だから前のようには無理だって」

 

「私は、私はずっとお前を会いたかった。そして、こんな風に拳と拳を交えたかった!」

 

「それが今現在叶っている。だが―――攻撃が雑だぞ」

 

隙を突いて川神百代を拳で吹っ飛ばした刹那。イッセーが巨大な氷の中に閉じ込められた。

 

「・・・・・ま、この程度じゃあなたは死ぬどころか負けないだろう」

 

エスデスの一言に呼応し、巨大な氷が一気に崩壊してイッセーが平然とした様子で出てきた。

 

「なんてことをしてくれる・・・・・。

小さい頃、北極と南極で三日間過ごした記憶が甦っただろうが」

 

「それ・・・・・嘘だよな?」

 

「いや、マジで。―――しかしだ」

 

虚空から複数の氷の槍が出現してエスデスに向かって放たれた。

その氷の槍を同じ技で相殺したエスデス。

 

「老けたなーヒュームとクラウディオ。体力の方も十年分落ちたんじゃないか?」

 

「貴様にだけは言われたくない。なんだその姿は、十年前と何も変わっていないぞ」

 

「俺、そう言う体質なの。羨ましいか俺に百回以上も負けた不良爺」

 

「―――殺す!」

 

挑発されイッセーに突き進むヒューム。

 

「ははっ、変わっていないなー?それで、次は俺がどうするか覚えているか?」

 

「っ!」

 

手を突きだしたイッセーから無数の気の弾丸がマシンガンの如く放たれた。それにはヒュームが

跳躍して回避したところで気の弾丸は誘導性を備わっているのか、跳躍したヒュームを追い襲いかかる。

 

「舐めるなよ赤子が!」

 

手で弾き飛ばし、足で蹴り飛ばし防ぐ光景にイッセーは小さく笑んだ。

 

「その赤子にお前はやられるんだよ」

 

刹那。真上から轟音と共に落ちる雷がヒュームに直撃した。

イッセーの手には金色の軍上が握られている。

 

「次はこれだ」

 

軍杖を振るった仕草に呼応した自然現象=風。風は竜巻と成りヒュームに襲いかかって

リング外の水の中へと沈んだ。

 

「まずは一人だ。さあ・・・・・誰が俺を本気にさせてくれるかな?

俺はまだまだ本気じゃないぞ」

 

 

―――観客席―――

 

 

「旅人さん・・・・・!」

 

「マジかよ、あの人が中央区の王なんて信じらんねぇっ!」

 

「昔と全然変わっていない!懐かしい!ああ、近くで会いてぇっ!」

 

「旅人さぁーん!」

 

「死んでいなかったんだね・・・・・良かった・・・・・っ」

 

大和達が大はしゃぎをしていた。あの中央区の王の人が旅人さんなんだね・・・・・。

 

「直江達が子供のようにはしゃいでいるなんて、あの人とどういう関係だ?」

 

「ちょっとだけ聞いたことあるけど親しい関係だったようだよ?」

 

「・・・・・外見を判断すれば十代後半」

 

「ウチらと変わらない年齢って言うの?それにしては・・・・・若すぎじゃない?」

 

「そうですね。―――あっ、ハーデス君までリング外に」

 

「マジでか!?あいつが負けたってのかよ!?」

 

「あ、有り得ない。ね、秀・・・・・吉?」

 

僕の隣に座っている美少女にも話を振るうと呆然とステージの方へ熱心に見ていた。

 

「秀吉?」

 

「すまぬ、いまはこの戦いを集中したいのじゃ。少しの間話しかけないでくれんかの」

 

「そう・・・・・?分かったよ」

 

秀吉が誰かの戦いを注目しているのかな。でも、それが珍しい。

 

 

 

 

「そらそらどうしたどうした。避けてばかりだとリング外に落とすぞ」

 

金色の軍杖が一振りすれば風と炎、氷、雷が発生して川神百代達を襲う。

そんな自然現象、異常現象に川神百代達は悪戦苦闘する。

 

「くっ、近寄れないどころか近づけることすらできないってこんな戦い方は初めてだぞ!」

 

「まるで魔法みたいではないか。クラウディオ、なんとかならぬか?」

 

「申し訳ございません。あのような攻撃は私も初めて見ます。

対処方法を申し上げればあの杖を奪えば魔法のような攻撃はできなくなると思いますが」

 

「じゃあ、魔法を放てないぐらいの攻撃をするまでだな」

 

エスデスが指をパチンと弾いた瞬間。上空に十メートル級の氷塊が生まれてステージに落ちてくる。

 

「お前・・・・・えげつねぇことをしてくれる」

 

「ほら、これを砕かないと私達は潰れてしまうぞ?」

 

「その挑発・・・・・乗ってやろうじゃないか」

 

氷塊に向かって跳躍するイッセー。その氷塊に拳を強く突き出した瞬間。氷塊はあっという間に

砕け散り、ステージに雪の結晶と思わせ降り注ぐ。それと同時に川神百代、九鬼揚羽が近づいていた。

 

「その杖を奪ってやる!」

 

「いいぞ?ほれ」

 

「へ?」

 

軽く杖を放り投げられて反射的に受け止めてしまった川神百代に悪戯っ子みたいな笑みを浮かべるイッセー。

 

「―――別に杖がなくても魔法は使えるしな♪」

 

宙に留まるイッセーの前上に幾何学的な魔方陣が大きく出現して数多の氷の矢がステージに降り注ぐ。

 

「ちょっと待て!?」

 

「そんなことできるとは知らないぞ!」

 

「当然じゃん。教えていないし」

 

飄々とした態度で言われながら迫りくる氷の矢を弾き防御に徹する面々。

―――しばらくするとステージは氷の矢だらけの状態になった。

 

「あ、あの男・・・・・我らを殺す気か・・・・・?」

 

「失礼な。殺しても構わない契約書を書いたのはお前らだろうが」

 

「・・・・・そうだった。でも、私達を殺しはしないよな・・・・・?」

 

「弄ぶ程度ぐらいはする。このぐらいにな」

 

リング外の水が意思を持っているかのように動き始め、

次第に身体が長い竜へと変貌する。水はステージにいる川神百代達を襲いかかる。

 

「凍らせる!」

 

エスデスが水の龍を凍らせる。―――が、それでも襲いかかる。

 

「無理無理。凍らせたところで俺の支配下のままだ」

 

「ムリゲーに等しいな・・・・・っ」

 

「お前らと俺じゃあ格が違い過ぎるんだよ。はい、クラウディオ脱落と」

 

水と氷の竜に呑みこまれたクラウディオがリング外へと連れて行かれた。残り五人―――。

 

「我らでは・・・・・勝てないというのか」

 

「どう足掻いてもな」

 

水の龍を背後にステージへ降り立つイッセーは川神百代、九鬼揚羽、黛由紀江、

松永燕、エスデスを見渡す。五人の双眸にはまだ戦意が宿っていることに理解する。

 

「質問だイッセー。蒼天の幹部と王と鍛えているのはお前なのだな?」

 

「そうだぞ。戦いに不向きな家族もいるがな」

 

「蒼天を創設したのも?」

 

「ああ、俺だ。昔からずっと俺は蒼天をこの日の為に創造していた。月面にコロニーを

作る夢も昔から思い描いていた。それが後もう少しで叶う」

 

嬉しそうに微笑むイッセー。

 

「二つ目の質問だ。蒼天の上空にいるドラゴン達は誰が従わせている?」

 

「従わせているんじゃない。俺の家族だ」

 

「ではやはり・・・・・お前が・・・・・」

 

「ん、お前の考えている通りだぞ揚羽」

 

そう言った直後。大剣を手にして飛びだしたイッセーに黛由紀江が動き出す。

 

「お相手願います!」

 

「全力で来ないとその刀を圧し折るぞ」

 

「この大会が始まってから既に準備をしていました。私が全力で戦えるように」

 

大剣を上段から、刀を下段から振るイッセーと黛由紀江を中心に激しい衝撃波が会場を襲う。

審判のクロウ・クルワッハが全ての衝撃波を特殊な方法で抑え込み、

観客に被害をゼロにしてみせた。

 

「はぁああああああああっ!」

 

「ははは、強くなったな!だが―――俺の足元に及ばないことに残念だと思うよ」

 

鍔迫り合いをしていた黛由紀江の刀が宇宙にいると思わせる程の常闇に

星の輝きをする宝玉が柄から剣先まで埋め込まれてあり、刃の部分は白銀を輝かせ至る

所に不思議な文様が浮かんでいる金色の大剣に力を籠めたイッセーに折られ、

大剣の腹で思いっきりリング外へと吹き飛ばされた。

 

「修行が足りない、出直してこい」

 

「―――強い―――っ!?」

 

そう言ったエスデスに凄まじい衝撃波。イッセーが拳を突きだした状態を最後に見て

水に叩きつけられた。

 

「残り三人」

 

「川神流・星殺し!」

 

極太のエネルギー砲を放った川神百代。イッセーは避ける素振りすらせず、

エネルギー砲はイッセーにぶつかる直前に消失した。

 

「・・・・・なんだ、と?」

 

「気を放出するのは止めておけ。俺に放出系の技は一切効かない」

 

無表情で指摘するイッセーだった。ならば打撃だと誰もが思うが、川神百代達が

接近戦をしても勝ち目は零に等しいことを思い知らされている。

怪物クラスの強者がそこに立っているだけで既に詰んでいたのだ。

 

「だが、私にはこれがある!」

 

川神百代が飛びだす。それに迎撃するイッセーはあっさりと拳で殴り返して吹っ飛ばした。

 

「ぐっ・・・・・瞬間回復・・・・・・!」

 

ダメージを細胞を活性化させて回復する。

 

「その瞬間回復って芸がないぞ」

 

「なに・・・・・?」

 

「奥の手はそう何度も使っていいもんじゃないってことだ。

それにその回復技には限度と弱点がある」

 

「限度は分かるけど弱点だと?」

 

「ああ、それを今証明してやろうか」

 

その言葉に呼応して川神百代の真上に魔方陣が出現して雷光が落ちた。

 

「ぐぅっ・・・・・!」

 

「回復してみろ」

 

促されて、言われるまでもないと細胞を活性化させてダメージを回復―――。

 

「―――回復、しないっ!?」

 

自分の体の状態に動揺し目を大きく見開いた川神百代。

イッセーは川神百代の弱点をつまらなさそうに指摘する。

 

「お前の回復機能を麻痺させたんだ。散々凪から電撃技を食らっていたんだ。

さっきの瞬間回復も大して回復していなかっただろう」

 

「な―――」

 

 

―――観客席―――

 

 

「むぅ・・・・・あやつ、既に見抜いておったか」

 

「そのようですネ」

 

「あーあー、アイツは今日ここで負けんな」

 

「じゃが、それもよかろう。モモは一度ぐらい敗北を知るべきじゃ」

 

「それで俺みたいな戦闘狂が治るわけじゃないがな?」

 

「釈迦堂は守る気が無いだけじゃないかネ?」

 

「当然じゃねーか」

 

 

 

 

「モモ先輩が・・・・・負ける?」

 

「旅人さんに・・・・・そんな」

 

「やっぱ・・・・・あの人は凄いよな」

 

「うん、そうだね」

 

「でもでも!お姉様はこれからよ!」

 

「うむ、タダで負けるとは思えないな」

 

「だけど、結果は・・・・・」

 

 

 

「まったく、のんびりと遊んでいないでさっさと終わらせればいいのに」

 

「あの人も楽しみたいんですよきっと」

 

「戦う姿は何時見ても格好良いわね♪」

 

「はい・・・・・素敵です」

 

「今日はパーティをしましょう。華琳さん、雪蓮さん、月ちゃん」

 

「いいわね!」

 

「はい、全部終わったら準備をしましょう」

 

「あなた達。これから私達は忙しくなるって言うのにそんな時間は無いのよ?

 ―――パーティの後にきっちりと働いてもらうわよ」

 

「「「はーい」」」

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「さて、さっきから燕は攻撃をしてこないが・・・・・棄権か?」

 

「うーん、旅人さん・・・・・イッセーさんが許しを得てくれれば戦えるんだけど」

 

「なにをだ?」

 

「平蜘蛛の使用だよん」

 

平蜘蛛という単語にイッセーは「ああ」と納得の面持ちをした。

 

「あれか。完成したのか?」

 

「うん、だから・・・・・装着してもいいかな?用意された武器でしか

戦っちゃいけないって説明されちゃったしアレを使うに使えなかったよん」

 

「なるほどな。なら、久信さんと開発者たちが完成した平蜘蛛をとくと見せてもらおうじゃないか」

 

「あはっ。ありがとうございますイッセーさん」

 

装備品から機械的なベルトを装着して、

 

「―――IS、平蜘蛛装着!」

 

松永燕を中心に眩い閃光が生じた。腕で目を覆い、光を遮ると

 

「おまたせ。んじゃ、始めましょうか」

 

体のラインを浮き彫りさせる黒いスーツを身に包み、

体の各部分に装甲を装着した姿の松永燕がステージにいた。

右肩を覆うような蜘蛛の顔を模した巨大な手甲に『智』と言う文字がある機械を装着して

いて背中に大きな燕のような翼と蜘蛛の脚のような八本の機械が生やしていた。

「それが平蜘蛛か」

 

「ええ、少なくともこれを装着した私はいい勝負ができそうですよ?」

 

「なら、試そうか」

 

「いきます!」

 

松永燕は空を飛び、イッセーも空へ跳躍して追う。

二人が空中戦を初めて観戦客もカメラも上に視線を向けざるを得なくなった。

 

「機械に俺の動きをついて行けれないだろう」

 

「ですが、まだまだ!」

 

「強気だな。これはどうだ」

 

光の軌道を残すぐらいの速度で松永燕の前に移動したイッセー。

 

「ほら、ついてこれない」

 

「―――でも、近づいてくれたよん」

 

ガッシリと両腕でイッセーの胸倉を掴んだ瞬間、八本の機械的な足が砲門を覗かせて白い物を吐きだした。

 

「なんだこれ、粘り・・・・・?」

 

粘りある白い物はイッセーの全身に付着して次第に高度を増していく。

 

「イッセーさん、松永納豆の糸と蜘蛛の糸、どっちが好きですか?」

 

「食べられるなら納豆の方が・・・・・ってなんでそれを聞くんだ?」

 

「お買い上げありがとうございます!」

 

イッセーをステージに向かって振り投げた後、右肩を覆うような蜘蛛のの顔を模した

巨大な手甲から銃身が生えて、左手で右腕を押さえて銃口に黒いエネルギーを集束しだし―――。

「いっけぇぇぇえええええええええええええ!」

―――放った。それは真っ直ぐステージに叩きつけられたイッセーに向かって直撃する。

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

ステージ全体が大質量の爆発が巻き起こる。

「(・・・・・倒れたとは思えない。もういっちょ!)」

 

これだけではきっと致命傷にも与えていないだろうと何度もエネルギー砲を

ステージに放って大質量の大爆発を幾重にも起こし、ステージの形状も大きく変えた

はずでそのステージから二つの影が出てきた。

 

「おいこら燕・・・・・私達まで巻き込もうとしたな?」

 

「まったく・・・・・酷い目に遭ったぞ」

 

「あはははっ、ごめんねー?でも、あの人にダメージを与えたかもしれないから

結果オーライってことで」

 

苦笑いを浮かべる松永燕とエネルギー砲を食らってボロボロな川神百代と九鬼揚羽が

溜息を吐く。

 

「百代ちゃんも砲撃してくれる?イッセーさんには象でも引き千切れない

強烈な粘着性の糸で縛ってあるから」

 

「放出系の攻撃は効かないと言われたんだが・・・・・やってみるか」

 

川神百代も極太のエネルギー砲を松永燕の砲撃と一緒にステージへ放った。

更にステージは大質量の爆発が巻き起こり、爆発的な脚力で何度も宙を蹴っている

二人と松永燕の視界に煙はまだ発生していてイッセーの姿は見えない―――そう思った時だった。

金色の六対十二枚の翼が出現していく。同時に煙から金色の閃光が飛び出して三人に

迫り来たことに松永燕達は回避した。

 

「こ、これは・・・・・!」

 

「デカい・・・・・!私の技より何倍も威力があるぞっ」

 

「イッセーの本気ということか?」

 

空に消える金色のエネルギー砲から視線を逸らし、地上を見下ろす三人の視界に煙は既に晴れていた。

そこには金色の六対十二枚の翼。真紅の長髪は金色に塗り替わり、

金色の双眸は蒼と翡翠のオッドアイ、頭上に金色の輪っかという特徴的な姿になっていた

イッセーが手を三人に向かって伸ばすと突然重力に引かれたようにステージへ叩きつけられた三人。

改めてイッセーを見るとその姿はまさしく・・・・・神の御使いである天使、

いや大天使であろう姿だった。

 

「・・・・・綺麗だ」

 

川神百代は思わず呟いた。それは全世界でこの大会を観ている人類が一瞬でも思った気持だろう。

 

「ああ言っておくが俺は別に天使じゃないからな?天使になれる力を得ているからこの姿になれるだけだ」

 

「えっと・・・・・変わりないような気がしますけれど・・・・・」

 

「・・・・・そうなのか?」

 

「ああ、変わらない。―――が」

 

九鬼揚羽が徐に立ち上がり闘気を纏った。

 

「その姿を見て我は戦う意欲が湧きあがったぞイッセー」

 

「天使と戦える好機・・・・・これは見逃せないよな」

 

「イッセーさん。弱い私達に付き合って貰いますよね?」

 

川神百代と松永燕も起き上がり攻撃態勢の構えになる。イッセーは三人の気持ちに笑みを浮かべこう言った。

 

「敗北は必須。それでもか?」

 

「「「もちろん!」」」

 

三人が一斉にイッセーへ飛び掛かる。イッセーは翼を羽ばたかせて三人に飛び掛かった。

イッセー達が互いに通り過ぎると一拍遅れて・・・・・川神百代、松永燕、九鬼揚羽が崩れ落ちた。

 

「ま、こんなもんだろう」

 

ステージから観客席にいる観客を見渡し腕を挙げた。

 

 

『さ、最終バトルロワイヤルの優勝者は・・・・・中央区の王、イッセー・D・スカーレットだぁっ!』

 

 

司会のアメリヤンの言葉を呼応、反応した観戦客達はドッと歓声を沸いた。

後にテレビのニュースで『蒼天に天使が出現』と毎日報道されるようになった。

 

 

 

―――大会後―――

 

「さて、あなた・・・・・私達に言うことはあるわよね?絶対に、ええ絶対にね」

 

「・・・・・別に隠していたわけじゃないからな」

 

「じゃあ、どうして私達に教えてくれなかったのですか?」

 

「教える機会、あの姿になる機会が無いから今に至るんだよ」

 

「私達がどれだけあなたと戦ってもあんな姿になる必要もなかったと?」

 

「実際、俺を本気にさせるほどお前らはまだ強くない。あれは俺と同等かそれ以上の

相手にしか解放しない力だったがあの時は場の流れで解放してしまっただけだ」

 

「へぅ・・・・・でも、ご主人様が天使になるとは知りませんでした」

 

「知ったところでこの国の住民に不安を募らせるだけだと思っていたからな」

 

「まあ確かに民達はあなたのことで噂が持ちきりよ。で、これからどうするのよ?」

 

「・・・・・一度、街を出回る。住民が俺の姿を見たその時の反応次第で決めるよ」

 

「もしも、あなたに恐怖心や畏怖の念、恐れ戦かれた場合はどうする気?」

 

「その時は・・・・・俺はこの国から姿を消すよ」

 

「本気で言っているの?」

 

「ああ本気だ。―――お前ら、後は頼んだぞ。

俺がいなくても国は動くようだし蒼天の上空、ドラゴン達と隠居でもしているさ」

 

「・・・・・分かったわ」

 

「か、華琳さんっ!?」

 

「ちょっと、アンタもなに本気で了承しているのよ?」

 

「そうです。きっと民達はご主人様の事を怖がったりしないはずはないですよ」

 

「もしもの場合だ。民が俺のことを受け止めてくれるなら俺はここに留まる。

民を信用してやれ」

 

「へぅ・・・・・ご主人様・・・・・」

 

「・・・・・分かりました」

 

「そうね・・・・・取り敢えず今は信用しましょう」

 

 

 

 

 

「姉さん!」

 

「ああ、弟達。完全に負けたよ」

 

「それにしちゃ・・・・・何だか嬉しそうだけど?」

 

「嬉しいに決まっているじゃないか。旅人、イッセーと再会できたうえに戦えて

あの姿を見たんだ。この敗北は悔しくは無い。

もっともっと強くなってあの姿のイッセーとまた戦いたい」

 

「旅人さん・・・・・またいつか会えますよね」

 

「ハーデスに頼もうぜ!」

 

「キャップは良いことを言うわね!そうしましょう!」

 

「旅人さん・・・・・ますます好きになっちゃったよ」

 

 

 

 

「フハハハハッ!フハハハハッ!」

 

「姉上・・・・・さっきから笑いっぱなしですぞ」

 

「すまぬすまぬ。だがな英雄、我はさらに決心した。我は絶対にイッセーと結ばれるぞ!

我は完全にイッセーを惚れたのだからな!」

 

「中央区の王が旅人ということであれば、コンタクトを取ることは不可能では無くなりました。如何しますか揚羽様?もしもあの男と会談をしたいのであればこの俺が・・・・・」

 

「ヒュームは旅人と戦う展開になりそうですからダメです」

 

「旅人さん・・・・・生きていたんだ」

 

「良かったね正宗ちゃん」

 

「けっ・・・・・あの人がそう簡単にくたばるタマかよ?」

 

「遠くからだけど旅人と目があったよ義経」

 

「義経もだ。あの時、義経達を見つけていたのだろう。義経は凄く嬉しい!」

 

「旅人さん。九鬼家に来てくれないかな・・・・・」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。