バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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第三問!

「いよいよだな坂本」

 

「ああ、Sクラスをぶちのめす日がな。大和、作戦会議でもしようぜ」

 

「その前にEクラスの代表と一緒にSクラスに行こうぜ」

 

「なんでだ?」

 

「宣戦布告をしに行くからに決まっているだろう?どうせ仕掛けるし、

拒まれない状況に追い込む為にも一緒にした方がいい。

まだEクラスは宣戦布告をしていないはずだ」

 

「そういうことか。んじゃ、ハーデスと元Aクラスのメンバーも連れて

Sクラスに行くか。10時から模擬試召戦争が始まる」

 

そう言うことで俺と坂本はハーデスやワン子、京、クリスに元Aクラスから木下の姉と

霧島や工藤を連れてEクラス代表の中林、元Bクラス代表の根本に声を掛けて

Sクラスに威風堂々と侵入する。

 

「おーい、英雄ー」

 

「大和か。それにそんな大勢でこのクラスに入ってくるなど何用だ?」

 

「それを今から教えるさ。―――中林」

 

「ええ」

 

中林を前に移動させて俺達は静かに見守る。

 

「Eクラス代表中林宏美。私達EクラスはDクラスとの模擬試召戦争後のSクラスに

対し、模擬試召戦争を申し込みます!」

 

「んで、俺達Fクラスはお前達Sクラスに午後からの試召戦争を申し込みに来たわけだ。

お前らの大使から宣戦布告されたからなぁ?」

 

「まさか、断わりはしないよね?」

 

「ここで断ったらお前らSクラスがエリート集団と聞いて呆れるぜ?」

 

坂本が中林の後に宣戦布告を告げた。そんな俺達にSクラスの奴らは目を丸くして

ざわめきだす。

 

『雑魚が!集まったところで俺達に敵うわけがないのに何言ってやがるんだ?』

 

『しかも生意気な奴らだな!ここで全員ブチのめすぞ。

俺達に勝とうなんて思い上がった奴らにお灸が必要だ!』

 

『『『『『おおおおっ!』』』』』

 

10人ぐらい敵意を剥き出しに襲いかかって来た。

だが、お前ら・・・・・忘れていないか?

 

「馬鹿者ッ!手を出すではないわ!」

 

英雄が制止の声を発するも―――。

 

『・・・・・』

 

見えないように隠れていたハーデスが前に出て来て襲い掛かってくる奴らに

それぞれ殴り、蹴り飛ばした。敢えて口では言わないが、Sクラスはプライドが高くて

身体能力も学力も自分達がエリートだからこうして挑発してくれば案の定、

挑発に乗って襲い掛かってくるのが目に見えている。降り掛かって来る火の粉を払う

俺達は正当防衛を得れるわけだから、例え返り討ちに遭って

戦闘不能になっても俺達に何の罪もお咎めもない。

 

『し、死神・・・・・っ』

 

『ちぃ・・・・・っ!』

 

おーおー、面白いようにハーデスを警戒しているじゃないか。

今の10人、指示した訳でもないのに勝手に今日1日保健室でお世話になるだろうな。

そう思っていれば褐色肌に眼鏡を掛けたイケメンこと葵冬馬が話しかけてきた。

 

「大和君、やってくれましたね」

 

「言っておくが、俺はハーデスに何も言っていないぜ。

ただ、一緒に来てほしいとぐらいしか言っていない」

 

「ですが、おかしなことが。私達の大使はFクラスに赴く途中何者かに

よって排除されていたのです。なのに試召戦争とは?Fクラスは元Aクラスに

破れ三ヶ月間は試召戦争を仕掛けることは禁じられていたはずです」

 

「大使の記憶が混濁していたんじゃないか?だが、いずれ俺達と試召戦争を仕掛ける

予定だったんだろう?俺達はその手間を省いたまでだ。

それか坂本はただこの場のノリで言ったのかもしれない。ま、本気にするなよ」

 

 

「そーいうことだ。んじゃSクラスの代表、

精々死ぬなよ?お前ら、撤退するぞ」

 

坂本の促しに俺達はSクラスを後にする。

その途中、ハーデスがDクラスに入っていった。平賀に何か話でも?

そう思う俺は大してそれ以上気に留めずFクラスへ。

 

 

 

 

『・・・・・頼まれてくれるか?』

 

「分かった。できる限りはやろう」

 

「でも、何の意味があるの死神?こんなことをする必要があるのかしら?」

 

『・・・・・必要があるからこそ頼んでいる』

 

「お前がそこまで言うなら任せてくれ」

 

「そうね。一応、味方同士だから協力はするけど」

 

『・・・・・頑張り次第では俺から何か欲しいものをプレゼントしてやろう』

 

「物を釣ってやる気を出させるっていやらしい男ね」

 

『・・・・・自覚している』

 

 

 

 

 

「お、戻ってきたな。Dクラスで何をしていた?」

 

『・・・・・ちょいっと頼みごと』

 

「頼み事だ?模擬試召戦争中のDクラスを何か仕掛けさせるのかよ?」

 

『・・・・・とても簡単な頼み事だ。今後有利な展開になるかもしれない』

 

「有利な展開ね。お前の考えは教えてくれる気はないんだろう?」

 

『・・・・・まだ、その時じゃない』

 

ハーデスは窓の外を見下ろす。

ここから見えるグラウンドにD(B)の奴らが集結している。

Sクラスも既に気付いている頃だろう。

 

 

ピッ ゴゴゴゴゴッ!

 

 

Fクラスと空き教室を隔てる壁が開いて二つの教室が一つになった。

 

「何のつもりだ?」

 

『・・・・・作戦を伝えるならこの方が良いだろう』

 

「なんだ、そんなことか。というか、お前があの壁を改造したのか?」

 

『・・・・・許可はもらった』

 

さいですか・・・・・。―――っと、始まったな。

 

―――☆☆☆―――

 

―――Sクラス―――

 

「全員、校庭に突撃!」

 

DクラスとDクラスに転属させたCクラスが校庭で待ち構えているとは。

・・・・・とてもDクラスの代表が考えた作戦とは思えませんね。

きっと背後に巨大な支援者がいるのは間違いない・・・・・大和君辺りでしょうかね

考えるとすれば。Sクラス代表の英雄を守る近衛隊として私、葵冬馬の他に井上準、

榊原小雪に忍足あずみさん、マルギッテさん、英雄のクローンである義経さんと

弁慶さん、与一君が教室に居残って信長さんや正宗さん、不死川さんと他の人達は

校庭に向かわせました。携帯などの連絡方法は禁止されているから使えません。

各自に作戦を伝えてありますから余程のことがない限り私達はのんびりとしていましょう。

 

「ねーねー、僕達も行かなくて良いのー?」

 

「代表の英雄を守らないとダメでしょうが。

ここで大人しくあいつらが代表を倒すまで待ってなさい」

 

「えー、なんだかつまらないなー」

 

「あーもう、だったらテレビでも見ていなさい」

 

「うーん、そーするよ」

 

ユキが退屈そうにしていますね。

 

「た、大変だ!」

 

そう心の中で苦笑を浮かべていると、同級生の方が焦った表情で戻ってきました。

彼は確か伝令の者でしたね。

 

「どうかしたか?」

 

「Dクラスの奴ら、数の暴力で仲間を次々と倒しているんだ!」

 

「一人や二人ぐらいなら当然でしょう。400点オーバーの科目があるあなた達が

何をしているのですか?」

 

「そ、それがCクラスの奴らは戦った時よりも強くなっていて中々攻撃が当たらない

どころかこっちが一方的に攻撃されつつあるんだ!

3人1組で俺達と相手にしていて・・・・・!」

 

・・・・・Cクラスの方々が強くなっている?疑問ですね・・・・・。

 

「心はどうしているのー?」

 

「不死川さんはまだ大丈夫だけど、腕輪の能力を使って応戦中だ」

 

「おいおい、あいつが腕輪の能力を使っているって何はしゃいでいるんだ?」

 

「織田さんと伊達さんは協力し合っているからまだ何とか戦っているが、

腕輪の能力を使えない皆が一方的にやられているんだ」

 

やはり・・・・・数の暴力では厳しいようですね。

 

「まだ400点オーバーしている科目のある者を集めて体勢を立て直すのです。

その後、ここまで撤退しなさい。広い場所では数が多い向こうが地の利です。

狭い場所を誘導させて一人ずつ撃破を試みなさい」

 

「りょ、了解!」

 

伝令は駆け足でいなくなりました。

マルギッテさんの軍人としての作戦は正しいと言えますでしょう。

 

「DクラスはともかくCクラスって強かったっけ?」

 

「点数は僕達の方が高いよねー?」

 

「強化合宿でたくさん勉強したから点数が高くなったからじゃないか?」

 

「義経。流石にSクラスのような点数を数日間で叩きだせるレベルじゃないよ」

 

「んじゃ、召喚獣の操作が上達したんじゃねーの?」

 

「ですが、学力を強化を目的とした合宿です。合宿先で召喚獣を喚び出して

操作するような状況は起こらないはずです」

 

ユキ達がD(C)クラスの強さに疑問をぶつけ合っています。与一君の言う通り、

点数が一気に高くなったとは思えませんから操作の方が上達したのだと思った方が

辻褄は合います・・・・・が、マルギッテさんの言うこともまた正しい。

召喚獣を操作するような状況が合宿所であったのでしょうか?

そう思っていると騒々しくなってきました。

 

「おのれ、庶民の分際で!」

 

「あー、心。お帰りー」

 

「なんだ?随分とご機嫌が斜めじゃないか」

 

「あやつら!此方一人によってたかって攻撃をしてきたのじゃ!

しかも動きが此方よりちょっとだけ、ちょっとだけ上手くて攻撃も

中々当たらんなかったのじゃ!おかげで点数が減ってしまったわ!」

 

「腕輪の能力を使うからだろう?ほら、さっさと点数を補充して来いよ」

 

準が朗らかに言います。ですが、回復試験の先生はここにいません。

廊下に出て回復試験用の教室に行かねば・・・・・。

 

「で、伝令!各科目の教師がDクラスに拉致されました!」

 

「な、なんじゃとっ?回復試験の教師もかの!?」

 

「そ、そうであります!」

 

―――――やられた!数が多いほど相手は分散して他の作戦に行動できる。

教師を拉致だって可能・・・・・。

私達はSクラスだから回復試験なんてことは頭から完全に抜けていた。

いざって時になるとこれほどまでに衝撃を与えられるとは・・・・・。

 

「それで、今残っている科目はなんですか?」

 

「総合科目です!」

 

「おいおい、こりゃヤバいんじゃねーの?」

 

「よ、義経達も出た方がいいと思うぞ」

 

「いきなりピンチってどれだけ向こうは強いの?」

 

「面倒くせーな」

 

「仕方がありません。ここは私達も出ましょう」

 

皆さんが打って出ようとする。点数が消費していない私達が出た方がいいでしょう。

 

「あずみさん。扉は固く閉めていてください。最悪、あずみさんが交渉人して

時間になっても決着がつかなかったら明日に繰り越しとお願い致します」

 

「了解でございます☆」

 

では―――行きましょうか。

 

 

 

 

「・・・・・決着がついたか」

 

「いい勝負だったのにねー」

 

「じゃが、Sクラスの殆どの点数は減ったのじゃ。

これもDクラスの皆のおかげじゃな」

 

「・・・・・次はE(B)クラス」

 

「ここでもっと点数が減れば、ウチらは有利ね」

 

「いんや、そう簡単に有利な状況になるとは思えない。何せ相手はSクラス」

 

「特に冬馬や英雄の奴は頭が良いからなー。あの二人は次元が違う」

 

「でもでも、こっちにはハーデスがいるじゃない」

 

そのハーデスは明久を連れて廊下に出たまま帰ってこない。

あいつ、何かを待っているのは確かだが何を待っている?

 

「ハーデスみたいな人が十人もいたらもう無敵だね」

 

「そりゃそうだろう。もしもそんな奴らがいた場合、

明久なんて学校に来なくても良いぐらいだ」

 

「おいおい坂本。あんまり明久を虐めてやるなよ」

 

「虐め?それこそ心外だ。俺はな、あいつの幸せがムカつくだけで、

あいつの不幸が俺の幸せなんだ」

 

・・・・・明久とこいつ、本当に友人関係なのか疑心暗鬼だな。

 

「よし、霧島の妹に良い結婚式会場を教えてくるか」

 

「待て直江。お前は俺の人生を滅茶苦茶にする気か?」

 

立ち上がる俺の肩を力の限り摑んでくる坂本の手をどかして朗らかに言う。

 

「霧島の妹は姉同様だぞ?性格をちょっとだけ目を瞑れば文句のない良い女じゃないか。

それをどうしてお前の人生が滅茶苦茶になるんだ?

 

「お前は分かっていないだけ直江。あ、あいつは・・・・・・」

 

あいつは・・・・・?震える坂本に小首を傾げ耳を傾ける。

 

「隙あらば、俺の隣に全裸で横たわって既成事実に仕立てようと

脅迫をしてくるんだぞ!?俺はあいつに―――(ゴッ!)げばッ!?」

 

『須川会長、異端者を確保しました』

 

『よし、これから異端審問会を行う。罪人は磔にしろ』

 

『『『『『了解です』』』』』』

 

語るに落ちたな坂本。ここには一部を除いて醜い嫉妬をする奴らの巣窟なのに。

 

ガラッ。

 

「あれ、雄二・・・・・どうして磔されているの?」

 

廊下に出ていた明久とハーデスが戻ってきた。

 

「なに、あいつが勝手に自爆しただけだ。それで、お前らは何をしていたんだ?」

 

「ああ、うん。ハーデスがね。Dクラスに頼んでいた物を受け取っていたんだよ」

 

「頼んでいた?ああ、そう言えばハーデスが伝えてきたな。

ハーデス、Dクラスから何を受け取ったんだ?」

 

『・・・・・』

 

マントから紙の束を俺の机の前に放り投げた。その一枚を手にすると所属クラス、

名前、科目の点数、召喚獣の装備の詳細が書き連ねている。

 

『・・・・・敵の情報を集めさせてもらっていた』

 

「お前、よくこんなことを頼んだな。俺ですら思い付かなかったぞ」

 

『・・・・・情報は武器になる。そういうことだ』

 

紙の束を手にして自分の席に座りだし、何か高速でし始めた。

 

「大和、ハーデスは何をしているの?」

 

「さあ、俺にもさっぱり・・・・・」

 

E(B)クラスとSクラスの戦争が始まった頃、ハーデスは姿を暗ました。

 

 

―――Sクラス―――

 

 

「回復試験の教師がまた拉致されたぞっ!」

 

「他の科目の教師も何人か連れ去られた様子だ!」

 

「おい!何時まで雑魚と苦戦しているんだよ!さっさと渡り廊下を制圧するんだ!」

 

「うっせぇなぁっ!だったらてめぇーが制圧しに行けよ!」

 

「こいつら、やたらと動きが鋭いな・・・・・っ!」

 

E(B)クラス戦、二回戦を始めた私達。D(C)クラスのように校庭から

始めるのかと思えば、教室から始めた様子で渡り廊下を早々に占拠されました。

 

『Sクラスの奴ら、全然大したことがねぇなっ!』

 

『いっつも自分の出世やエリートであることを自慢しているのにどうしたんだ

Sクラスさんよぉっ!』

 

『おっかしいな、Sクラスだから雑魚の俺達を一蹴するって思ったんだけどかなり

てこずっているじゃないか?調子でも悪いんですかー?』

 

『おいおい、可哀想なことを言うなよ。相手はD(C)クラスと戦っていたんだ。

点数と体力を消費しているから~なんて口に出せるわけがないだろう?』

 

『それこそ可哀想なことを言うなって。あのSクラスがそんなことで言い訳するような

小さくないクラスだろう?しかも、Fクラスにいる死神にコテンパンやられた上に

丸坊主にされたやつらなんだからさ』

 

敵が私達を挑発嘲笑い掛けてきます。その効果はとても覿面(てきめん)でした

 

「てめぇらっ!よくも言いたい放題言うじゃねぇか!」

 

「そんなに戦死者になりたいなら今すぐ俺が倒してやる!」

 

試獣召喚(サモン)ッ!」

 

相手は三人一組で私達と勝負をしてくる。戦いの様子を見ていると、

三人の内一人が防御に徹して、一人は攻撃を仕掛け、

もう一人は遊撃・・・・・理想的な戦いだからこそ有利になるのですね私たち相手に。

しかも・・・・・。

 

「船越先生、元Bクラスの根本恭二がSクラスの葵冬馬に勝負を申し込みます」

 

私のようなSクラスの主力にたった一人で勝負を申し込むことも把握済み。

自分より高い者に一人で挑むことは無謀にも見えますが・・・・・。

 

『根本がSクラスの主力の一人を引き受けたぞ!』

 

『俺達も敵を引き受けつつ前進するぞ!』

 

『Sクラスまで後もう少しだ!』

 

敵を引き付けている間に拠点へ攻め込むこそ彼らの目的でしょう。

 

「まさか、元代表が私のような相手に囮の役割をするとは」

 

「俺達が負けても、俺達を巻き込んだFクラスが勝ってくれるだろうからな。

約束も果たしてもらわないと割が合わないしよ」

 

「その約束とはなんでしょうか?」

 

「はっ、俺が教えるとでも思うかよ?」

 

「教えてもらえないならばFクラスに訊くまでです」

 

武器を構えて私の相手に突貫します。この勝負は私達の勝ちでしょう。

ですが、流石の連戦で点数も体力も消費している私達は最後の試召戦争が苦戦に

強いられる可能性が大いにあります。


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