バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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第二問だ

「凄かったねーAクラスの設備」

 

「ああ、何なんだよあのクラス。どこかの高級ホテルかよ?」

 

「・・・・・完璧に教室には必要ない物が勢揃い」

 

「あれを見たら僕達Fクラスの設備はどうなのか・・・・・考えたくないよ」

 

例を挙げれば、ノートパソコンはともかく、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシートだ。

冷蔵庫には当然のように各種飲料やお菓子を含めた様々な食料が、

エアコンは教室どころか各人に一台。それぞれが好みの温度に調整できるようになっている。

さらに見渡してみたら天井は総ガラス製でありながらスイッチ一つで開閉可能となっており、

壁には格調高い絵画や観葉植物がさりげなく置かれていたんだ。

ガクトの言う通り、まるで高級ホテルのようだった。

そして、その教室の中を覗いた時、Aクラス代表の霧島翔子さんが自己紹介をしていた。

 

「あれだとSクラスも似たようなもんじゃね?」

 

「あれ以上の豪華な設備があってたまるか!」

 

「中、見れなかったわね」

 

「てか、Sクラスの教室って扉を通らないと中に入れず、中の様子はどんなのか把握できない。

あのクラスに入った生徒は本当の意味でエリートだからな」

 

この学校はF~Sまでクラスがある。下から順に進んでいくと設備は段々と良くなっていく。

僕達はFだから最低ランクの設備だろうね。だからこそ―――目の前の光景に僕は目を疑うしかないんだと思う。

 

「えっと・・・・・ここがFクラス?」

 

「うん・・・・・二年F組とプレートに書かれてあるし・・・・・」

 

「つーか、廃墟?」

 

「見るからに、人体に影響が出そうな教室だな・・・・・」

 

教室の前で僕達は躊躇している。だけど、いつまでもここで立っているわけにはいかない。

 

「まあ、住めば犬小屋って言うしね。入りましょ?」

 

「ワン子。住めば都だ。犬小屋はお前の家だぞワン子」

 

「じょ、冗談よ!わざと間違えただけ―――!

 

そう言いながら彼女はFクラスの扉を開け放った。

 

「早く座れ、このウジ虫野郎」

 

「・・・・・え?」

 

その瞬間、なんて物言いを発言した奴が一子に発したのだった。

一拍して、なっ・・・・・!?と、驚く声が聞こえてきた。

 

「おう、雄二。俺達のワン子にいきなりウジ虫よばりするなんていい度胸だな?」

 

「赤ゴリラは動物園にいるべきだと思う」

 

「ちょっ、ガクトに椎名!す、すまん!本当に悪かったって!

てっきりバカの明久だと思って―――!」

 

「取り敢えず、歯ァ食い縛れェ!」

 

ガクトのストレートパンチが動揺する赤ゴリラの腹部に直撃して教室の壁まで吹っ飛んだ。

うわー、あれ、絶対痛いって。

 

「よしよし、ワン子はウジ虫じゃないからな。お前は犬だ。俺達の可愛い犬だ」

 

「いや、大和?それはそれでどうかと僕は思うんだよ?

え、僕だけ?おかしいと思っているのは?」

 

「うーん、多分おかしくないから大丈夫だと思うよ」

 

ああ、いかにも根暗な男子生徒、師岡卓也が僕をフォローしてくれた。

 

「なんだか、僕の紹介がちゃんとされていないような気がする・・・・・」

 

「モロ、なに言っているんだ?」

 

「え?」

 

「―――お前は女装すれば可愛いんだって。なあ、モロちゃん」

 

「その話はもうやめて!アレは僕にとって黒歴史の一ページだから!」

 

モロが顔を赤くして叫んだ。それにしてもあいつ、僕の悪友である坂本雄二はいきなり災難?

いや、自業自得な目に遭ったね(笑)。

 

「えーと、ちょっと通してもらえますかね?」

 

不意に背後から覇気のない声が聞こえてきた。そこには寝癖のついた髪に

よれよれのシャツを貧相な体に着た、いかにも冴えない風体のオジサンがいた。

 

「それと席についてもらえますか?HRを始めますので」

 

学生服も着ていないし、どう見たって十代には見えない。

どうやらこのクラスの担任の先生みたいだ。

僕たちはそれぞれ返事をした後にそこらへんの席(?)に着く。

というか、椅子が無いから直で床に腰を下ろす形が席なんだね・・・・・。

あっ、雄二がようやく起き上がった。

 

「・・・・・お前、あとでぶっ殺す」

 

「僕が一体なにをしたと!?」

 

あまりにも酷い理不尽!八つ当たりもいいところだよ!?

先生は僕らを待ってから壇上でゆっくりと口を開いた。

 

「えー、おはようございます。二年F組担当の福原慎です。よろしくお願いします」

 

自分の名前を書こうとしたのだろう。だが、薄汚れた黒板に振り向いた時にやめた。

うわ、チョークすらロクに用意されていないよ。

 

「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されてますか?不備があれば申し出てください」

 

六十人程度の生徒が所狭しと座っている教室には机が無い。あるのは畳と卓袱台と座布団。

なんて斬新な設備だろう。一年生の時から噂には聞いていたけど、

実際に目の当たりしたりすると言葉が出ない。

 

「先生、座布団に綿が殆どないです」

 

と、僕が先生に不備を申し出る。

 

「あー、はい、我慢してください」

 

「先生、僕の卓袱台の足が折れています」

 

「木工ボンドが支給されていますので、あとで自分で直してください」

 

「先生、窓が割れていて隙間風が寒いんですけど」

 

「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」

 

セロハンテープすらないのぉっ!?もうAの設備とは雲泥の差以上だよ!

 

「必要な物があれば極力自分で調達するようにしてください」

 

「「マジかよ・・・・・」」

 

唖然と言う大和とガクトだった。流石にこの環境で学校生活は絶対にやだよ!

 

「では、自己紹介でも始めましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします」

 

福原先生の指名を受け、車座を組んでいた廊下側の生徒一人が立ち上がり、名前を告げる。

 

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」

 

「大和、お前の知り合いに畳屋はいるか?いたらなんとか譲ってもらって、

このカビだらけな畳と交換したほうがいいって」

 

「分かった。今確かめる」

 

「お姉様もこの教室で学んだのかしらね・・・・・」

 

「そう言えば去年のこの日ぐらいに物凄く愚痴を言っていたね。

『あんなの教室じゃなくて廃屋!いや、キノコ栽培する場所だ!』って」

 

その気持ち、物凄く同感です。川神先輩。

 

「・・・・・土屋康太」

 

「あ、姉さんからだ。・・・・・お前ら、教室はどうだ?」

 

最高(最低)です!って、返信してやれ」

 

「それと、お姉様の気持ちは物凄く伝わったよってお願い」

 

「島田美波です。海外育ちで、日本語は会話はできるけど読み書きが苦手です」

 

何人か知り合いが自己紹介をしている中でも風間ファミリーは自分の空間を作り、

ほのぼのとしている。ある意味、空気を読まない集団だ。そんな集団にも順番が回ってきた。

 

「俺の名前は風間翔一だ。趣味は冒険と探検!よろしくな!」

 

どっちも一緒のような気がするけど・・・・・。

 

「直江大和だ。これから一年間よろしく」

 

うん、シンプルな自己紹介だ。

 

「アタシは川神一子!好きなことは努力することよ!皆も一緒に努力しましょうね!」

 

『努力最高っー!フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!』

 

・・・・・返す言葉が見つからない・・・・・っ!

 

「椎名京。得意なことは弓を射ること。それから好きな人は・・・・・・」

 

『・・・・・』

 

「旅人さんだね」

 

『異端審問会を開こうではないか!』

 

おのれ、幸せ満喫の誰だか知らない旅人よ!僕の前に現れたらミンチにしてくれるわっ!

 

「島津岳人だ。自前の体を鍛えることが趣味だな。あと彼女募集中だ!」

 

『俺達も今現在絶賛中彼女募集中だゴラァアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 

何時も聞いているから聞かなくても分かる自己紹介だ。

 

「えーっと、師岡卓也です。機械、主にパソコンのことに関する事を知りたいなら僕に訊いてね」

 

このクラスにその知識を得ようとしている者はいないだろう。っと、今度は僕の番だった。

気さくで明るい好青年ということをアピールしないと。

一瞬考えて、軽いジョークを織り交ぜて自己紹介をする事に決定。軽く息を吸い、立ち上がる。

 

「―――コホン。えーっと、吉井明久です。気軽に『ダーリン』って呼んでくださいね♪」

 

よし、これで僕と言う人間を紹介でき―――。

 

 

『ダァァ――――――リィ――――――ンッッッ!』

 

 

野太い声の大合唱。これは思った以上に不愉快だ!

 

「―――失礼。忘れてください。とにかくよろしくお願いします」

 

作り笑いで誤魔化しながら席に着くものの、

 

「よう、ダーリン。これからよろしくな」

 

「よろしくね、ダーリン♪」

 

「よろしくな、ダーリン!」

 

「よろしく、ダーリン」

 

「ダーリン、よろしくね♪」

 

「墓穴を掘ったな。なあ、どんな感じだ?どんな感じなんだダーリン?」

 

「あふんっ!」

 

予期せぬ場所から再び不愉快な発言がぁっ!もう穴があったら入りたい!

だから、そんな温かい目で僕を見ないで!お願いだからぁ!

そんな僕の気持とは無関係に自己紹介は続く。その後もしばらく名前を告げるだけの

単調な作業が続き、いい加減眠くなった頃に不意にガラリと教室のドアが開き、

息を切らせて胸に手を当てている女子生徒が現れた。

それからその後ろに―――不審者がいたのも確認した。

 

「あの、遅れて、すいま、せん・・・・・」

 

彼女の存在に誰からと言うわけでもなく、教室全体から驚いたような声が上がる。

そりゃそうだ。普通はビックリするだろう。

―――彼女の背後に全身を包み隠す黒いマントを着込んでいる骸骨のマスクを被っている

奴がいるんだから!

 

「ねえ、大和、ハロウィンってもう始まっているのかしら?」

 

「いや、まだ始まっていない。まさかと思うが・・・・・。

あいつもこのクラスの生徒だというのか?」

 

「いやいや、ボディーガード・・・・・にも見えないよなぁ?」

 

あんなボディーガードは絶対に嫌だよ。

 

「おや、あなたは・・・・・?」

 

先生があの不審者に対して驚かない!?何てマイペースな人なんだろうかと、そう思っていると包帯で巻かれた手をこっちに来いとばかり上下に動かした。先生は先生で不審者と共に廊下へ出てしまった。

一分ぐらいして、教室に戻ってきた。

 

「では、姫路さんから自己紹介をお願いします」

 

「は、はい!あの、姫路瑞希といいます。よろしくお願いします・・・・・」

 

小柄な体をさらに縮めこめるようにして声を上げる姫路さん。肌は新雪のように白く、背中まで届く柔らかそうな髪は、優しげな彼女の性格を露わしているようだ。保護欲を掻きたてるような可憐な容姿は、九割男のFクラスで異彩を放っている。

 

『・・・・・』

 

不審者がどこからともなく取り出したスケッチブックを開いた。

何かを書いて・・・・・僕達に見せびらかした。

 

『・・・・・名前は死神・ハーデス。蒼天からやってきた』

 

なんだ、その死を予感させる名前は!?そんな名前を持つ人間はこの世にはいない!

てか、どうして口で言わないんだ!?―――って、蒼天?

 

「あー、彼は小さい頃に全身が大やけどしてしまい、太陽光の光を浴びるだけでも

その時の傷が痛むので、こうして光を遮る形で生活を送っているのです。

その際、心も閉ざしてしまい滅多に喋らなく、会話をするときはこうして紙に書いて

意思表示をします。皆さん、できる限り優しく接してやってください」

 

いや、先生。口からプシューって煙を出す生徒と仲良くなるなんて・・・・・。

 

『我らの神が降臨成された!我らが主よ!我らが父よ!』

 

って、何時の間にか黒い覆面にマントを着用し、鎌を持っている

クラスメートたちが喜んでいるぅぅぅぅっ!?仕舞いには拝めているよ!

いきなり初日でクラスの殆どの心をあの姿で掴んだというのか!?

 

「類は友を呼ぶっていうけど・・・・・こんな感じなんだろうな」

 

「ははは・・・・・直ぐにこのクラスに馴染みそうだね」

 

何とも言えない面持ちの大和と苦笑のモロ。あの二人はそれぞれ席に座った。

姫路さんは僕と雄二の間。

ハーデスは・・・・・僕の後ろだ。物凄く安心できないよこの位置。

 

 

               ―――☆☆☆―――

 

 

あー、初めましてだな。俺は直江大和。今現在、教卓が壊れたことで先生は別の教卓を

持ってこようと教室から出た。教師がいない教室はただの部屋と化と成り、

Fクラスのメンバー達は自習と言うことで各々とのんびりし始めた。

そんな時、咳をする姫島を見た明久の奴は坂本を廊下に引き連れて行った。

何やら企みを考えていそうだな。・・・・・にしても、あのハーデスとか言う奴。

不気味さを抱かせてくれるが・・・・・なんだ、この感覚。懐かしい・・・・・?

 

「よっ、ハーデス。俺は風間翔一って言うんだ。よろしくな!」

 

『・・・・・よろしく』

 

バッと挨拶の言葉を書いたハーデス。早いな・・・・・。

キャップもキャップだが、よくあいつとあっさり話しかけられるな。

 

「なあなあ。蒼天から来たってほんとか?」

 

『・・・・・本当だ』

 

「マジか!んじゃ、蒼天の事を詳しく教えてくれ!」

 

「あっ、アタシも知りたいわ!」

 

ワン子まで好奇心に問いかける。蒼天の事は何時、ある程度でしか知られていない。

蒼天は他の国との交流を拒んでいて、蒼天のことに関してはあまり知らされていない

未開の地に等しい。どんな理由でこの学校に通うのか分からないが、

蒼天から来たというならば話を聞いても無駄ではないだろう。

 

「質問!蒼天に住んでいる人はどんな人達なの?」

 

ハーデスはすらすらとスケッチブックに文字を書いて俺たち見せてくる。

 

『・・・・・色んな国の人たちがいる』

 

「じゃあ、日本人もいるのかしら?」

 

『・・・・・見掛けるな』

 

「んじゃ、あの巨大な建物は何時頃完成できるんだ?」

 

『・・・・・今年いっぱいで完成する』

 

ハーデスから俺たちが知らないことを淡々と教えてくれる。こいつの話は退屈しのぎで丁度良い。

ワン子たちが質問攻めをしていれば、坂本と明久が教室に戻ってきて、先生も戻ってきた。

それから自己紹介の時間が再び始まる。

 

「坂本君、キミが自己紹介最後の一人ですよ」

 

「了解」

 

先生に呼ばれて坂本が腰を上げて立つ。ゆっくりと教壇に歩み寄る。

何故教壇に?ここに入ってくる時もあそこで立っていたな。

 

「坂本君はFクラス代表でしたよね?」

 

福原先生に問われ、鷹揚に頷く坂本。ああ、あいつが代表か。

別にクラス代表といっても、学年で最低の成績を修めた生徒たちが集められるFクラスの話。

何の自慢にもならないどころか恥になりかねない。

それにも問わず、坂本は自信に満ちた表情で教壇に上がり、俺達の方に向き直った。

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺の子とは代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれ」

 

 

「赤ゴリラ」

 

「赤犬」

 

「赤ちゃん」

 

「赤っ恥」

 

 

「よし、今言ったやつ前に出てこい。こっから外へ突き落すからな」

 

好きなように呼べっていた本人がこれだ。Fクラスというバカの集まりの中で比較的成績が

良かったというだけの生徒。他から見れば五十歩百歩といった存在。

 

「大和も本気出せばAくらいいけそうなのにねぇー」

 

「そう言う京だってBぐらいは余裕だろ?」

 

「Fはのんびりとできそうだから却下」

 

ま、俺と京はともかく他の皆と一緒にいたいという気持ちもあってか

いつものメンバーと学校生活を送ることができたわけだからよしとしよう。

 

『・・・・・』

 

視線を感じる。眼だけ動かしてみればハーデスがこっちを見ていた。

俺達の話を聞いていたのか?でも、こいつには関係のないことだろう。

 

「さて、皆に一つ訊きたい」

 

坂本が、ゆっくりと、全員の目を見るように告げる。間の取り方が上手いせいか、

全員の視線は直ぐに坂本に向けられるようになった。

皆の様子を確認した後、坂本の視線は教室内の各所に移りだす。

 

 

―――カビ臭い教室。

 

 

―――古く汚れた座布団。

 

 

―――薄汚れた卓袱台。

 

 

つられて俺らも坂本の視線を追い、それらの備品を順番に眺めていった。

 

「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが―――」

 

一呼吸おいて。静かに告げる。

 

 

 

「―――不満はないか?」

 

『大ありじゃっ!』

 

二年F組生徒の魂の叫びだったとここに追記しておく。

 

 

 

 

「だろう?俺だってこの現状には大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」

 

いや、お前にそんな意識があるとはとても思えないと思ったのは俺だけかもしれないな。

 

『そうだそうだ!』

 

『いくら学費が安いからといって、この設備はあんまりだ!改善を要求する!』

 

『そもそもAクラスだって同じ学費だろ?あまりに差が大き過ぎる!』

 

堰を切ったかのように次々と上がる不満の声。

 

「皆の意見はもっともだ。そこで」

 

思った通りの反応に満足したのか、自身に溢れた顔に不敵な笑みを浮かべて、

 

「これは代表としての提案だが―――」

 

これから戦友となる仲間達に野性味満点の八重歯を見せ、

 

「―――とりあえず、FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」

 

Fクラス代表、坂本雄二は戦争の引き金を引いた。

 

 

 

「おい、坂本」

 

あれからAクラスと戦える根拠の要素を述べた坂本だった。

宣戦布告をしに使者(死者)として明久を騙して行かせようと魂胆が分かっていたから、

ガクトと一緒にEクラスに向かってもらった。

 

「なんだ?」

 

「確かにC、D、E程度のクラスならAクラス候補だった

姫路を主力にして戦えば勝てると思うが、BクラスとはともかくAは無理があるんじゃないか?」

 

「ああ、集団戦で戦えばまず勝つことは不可能だな。だが、なにも戦い方はそれだけじゃない」

 

「・・・・・なるほど、お前の考えはそう言うことか」

 

「頭の回転が早い奴は嫌いじゃねぇぞ」

 

「だが、それでもキツい。どうするんだ?」

 

「心配すんな。俺がお前らに勝たせてやるよ。最後は俺が勝利の栄光を掴んでな」

 

・・・・・不安だな。こいつの幼少の頃の時は知っているが、それはもう過去の話しだ。

 

「負けたら承知しねぇぞ。やるからには下剋上だ」

 

「当然だ。しっかりお前も働いてもらうぞ、軍師大和」

 

「了解だ。それはそうとお前『とりあえずAクラスに』ってのはどういうことだ?」

 

「なんだ、覚えていたのか?」

 

「お前の発言に気になることがあるんだよ。

まさかとは思うが、Sクラスにまで戦争しようなんて考えちゃいねぇよな?」

 

あそこは身体能力、成績も優秀でまさしく文武両道のクラスと言えよう。

そんなクラスにも俺達の幼馴染がいるわけだが・・・・・。

 

「そうだな。いずれSクラスにも戦争をしようと思っている。

だからこそ取り敢えずだ。今の俺達に足りない者が多すぎる。何だか分かるか?」

 

「点数と戦争の場数・・・・・経験だろう」

 

「点数はしょうがない。が、お前の言う通り戦争をするためにはまず経験が重要だ」

 

これからする事に経験が必要。そして自信を付けさせるためだな。

 

「さてハーデス」

 

坂本がハーデスに声を掛けた。

 

「お前、学力はどのぐらいだ?」

 

『・・・・・点数が無い。補充しない限り戦えない』

 

「じゃあ、さっさと補充しておけよ。『試験召喚システム』を開発した蒼天の出身者さんよ」

 

『・・・・・了解。それと』

 

「なんだ?」

 

『・・・・・パートナとして、吉井明久を借りる』

 

「はっ・・・・・?」

 

『・・・・・いてもいなくても同じような雑魚なのだろう?』

 

ああ、坂本は確かに明久に対してそう言ったな。

当然、京に頼んで筆やらカッターやら鋭い道具を投げてもらい報復をしてもらった。

 

「どうしてあのバカだ?」

 

『・・・・・俺の勝手だ』

 

具体的な理由を言う気はないようだな。言うというより書く気はないっていった方が正しいか。

 

「・・・・・好きにしろ」

 

『・・・・・好きにさせてもらう。勝てば何だっていいらしいしな』

 

不敵な物言いを告げるハーデス。


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