ガンダムSEED 平和な世界で   作:ジバニャン

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03 群青

 

 

悲しい思いをさせてしまっているのだろう。

彼女はいつも、俺の顔を見るたびにどこかさみしそうで。

それほどまでに、ムウ・ラ・フラガという男を大事に思っていたのだろうか。

 

それを見るたびになぜか胸がしめつけられる。

まだ記憶は戻っていないが、彼女に対する思いは昔の記憶からなのか、それとも今の俺の、ネオ・ロアノークとしての感情なのか――――。

 

 

 

「何かほしいものある?」

彼女、マリュー・ラミアスは負傷したネオを収容した時からずっと看病している。

少しでも彼のそばにいたいのだろう。

2年間も苦しんだんだ、無理もない、とネオも思う。

そしてきっと、そばにいれば、もしかしたら思い出してくれるのではないかという、僅かな希望もそこにはまざっているのだろう。

「いや、特に..今はない。」

「そう..」

目を伏せる彼女に、何か気の利く言葉をかけた方がいいのか、思考を巡らすが、やはり何も声をかけることができない。

「ねぇ」

「?なんだ?」

「私のこと、全く..覚えてないのよ、ね..?」

「..あぁ..。」

「この艦のことも?みんなのことも?」

「..すまない。」

「いえ、そうよね..あなたはムウではないものね..変なこと聞いてごめんなさい。」

「いや、..ただ..」

「えっ」

「わからないが、俺の中で君を、覚えている感覚が、あるんだ。」

「...!!」

「君を見てると..なぜかあたたかい気持ちになる。」

「そう、なの?」

さきほどまでは暗く塞ぎ込んでいた彼女だったが、その言葉を聞いた途端に驚きと共に、パァッと顔色が明るくなる。

 

そんなに嬉しいのか?

ネオはその様子をみて、なぜかまた心が痛んだ。

 

「よほど..」

「え?」

「"彼"が好きなんだな。」

「....そう、ね。」

「彼はどんな人間だったんだ?」

そう聞くとマリューは少し驚いていたが、ふっと優しい笑みを作り話す。

 

「優しい人..だったわ、とても。

仲間思いで、決して何があっても逃げ出さない、真面目で、不可能を可能にする、そんな人かしらね。」

彼の話をしてる時のマリューは、本当に幸せそうだった。

彼女が見ているのは俺じゃない、

そうはっきり突き付けられてるようで

ネオはマリューから目をそらす。

俺じゃだめなのか?

伝えることができたらどれほど楽になれるかわからない。

だが、そうすればきっと、彼女は迷うだろう、そして、また、この笑顔を曇らしてしまうぐらいなら..

「そう..か。なら、記憶を取り戻せるように努力するよ。」

それが彼女の望みなら。

「え?」

「いつになるかはわからんけどな。」

「..ありがとう」

はじめて俺に向けて笑ってくれた。

「でも..」

「?」

「無理はしないで」

「…………」

「あなたが生きていてくれるだけで、私は幸せだから。」

今は体治すことだけ考えて下さい、とニコッと笑う彼女をみて、

自分がどうしようもなく彼女に惚れているんだと思い知らされた。

ムウ・ラ・フラガとしてではなく、

ネオ・ロアノークとして、――――――。

 

 

 

「じゃぁ」

時間の許す限りそばにいてくれた愛しいひとを見送る。

このまま記憶が戻らなくても彼女はそばにいてくれるだろうか。

 

横になり、そんなことを考えながらネオは深い眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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