IS×GARO《牙狼》~闇を照らす者~   作:ジュンチェ

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勘弁してけろ、仕事が忙しいんじゃあ(汗)

もう2ヶ月なるのかうっは…ww GSどころか紅蓮の月まで終わる始末!紅蓮の月はサエシマシリーズのオマージュが多かったですね。ああ、確かに名前も……

雷牙→雷

鋼牙→コウ→吼

→雷吼


うん、今さ気がついた。花から飛び出す心滅からその流れと最終形態あたりからなんとなく察してたけど…

あれ?これあとがきに書く話じゃね?


華~Wild flowers~ 中編

 

「…っ」

 

窓から差し込んだ朝日…ああ、また日が変わってしまったのかと重く痛い頭で理解する千冬。誰もいない部屋…自分しかいない空間…酔いがさめるといつも孤独感が襲ってくる。何時からか…弟がいないことが日常になってからはこの目覚めのこの時間が彼女は毎日くる1日で最も嫌いな時間だった…。

 

しかし、今日は違った…。

 

 

「…?」

 

まず、彼女は毛布代わりにかけられている黒い衣に気がつき…幾分かゴミだらけの部屋が片付けられていることに驚いて身体を起こす。そして、窓を見れば庭にて剣を素振りする人影……まさか……

 

「一夏!帰って……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ………目、覚めた?」

 

 

 

 

 

そこにいたのは見知らぬ青年であった…。

歳の頃合いは弟が今、生きていれば同じくらいであろう青年………いや、待てなんで見知らぬ人間が自宅に上がり込んでいる!?

 

「…大丈夫?昨日のこと覚えてる?」

 

「昨日…?」

 

昨日…確か、あれだ。泥酔してからろくに記憶が無い………確か、誰かにおくられたような記憶なあるのだが…

「あんまりにも、あんたが酷かったから放っておけなかったんだよ。お酒も大概にしないと………」

 

「余計な御世話だ。」

 

「……あっそ。なら、コートかえして。いつまでも居たら邪魔だろ?」

 

ここで千冬は自分にかけられていたのが青年のコートだと気がつき、これを手渡した。すると、彼は腕を袖に通し…笑みを向けると剣をしまい、その場を後にしようと背を向けた。

 

行ってしまう………そう思った瞬間、千冬は反射的に彼を呼びとめていた。

 

「お、おい……!?」

 

「?……なに?」

 

「その……名前はなんだ?お前の……」

 

何故だろう…こんな無理にでも引き留めたくなるほどの切ない気持ち。行ってほしくない…そう思ってしまう。理由は千冬本人にもわからない勢いだったが、青年は笑顔で応えた。

 

「俺は道外流牙……近くの五反田食堂でしばらく世話になってるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「それをきっかけに道外は私の家に上がりこむようになった…………おっと、教師に淫行の話を期待するなよ?残念ながらその類いの話は無いからな。」

 

…いや、貴女まで競争相手だったら恋レースが厳し過ぎだろというのが少女たちの本音。内心、ほっ…と安心しつつも続きに耳を傾ける。

 

「……そして、アイツがISを動かす頃だったか…。私がアイツの正体に気がついたのは…」

 

そして、語り部はもう遠くの日々になってしまった記憶へと想いを馳せながら………ゆっくりと……また口を開いた。

 

 

 

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流牙が千冬の家に通うようになって暫く…彼女の生活は変化をはじめていた。今までは不規則で荒んだ生活を正さんと、酒を飲む量を減らし……いつ以来かぶりにキッチンに立ち料理をしようとするも、元よりズボラで大雑把な性格が災いして散らかるばかりで断念。これは流牙も失笑…千冬も恥ずかしそうにし、結局は殆どの食事は五反田食堂の世話になることに……

加えて、部屋も片付けて綺麗にし…身の回りは驚くほど環境が変わった。

 

「「いただきます!」」

 

変わったのは周りだけではなく、彼女自身もまた然りと…流牙と共に五反田食堂にて朝食のどんぶりを平らげる様はまるで別人のようだと弾の談。まるで、魂が入れ換えられたようにイキイキとしていた…。

「いやぁ、随分と見違えたもんだ。これなら、本人の心のほうは心配無し…か。」

 

カウンターにて、弾はやれやれと溜め息を尽きながらふと視線をずらせば電源が入ったままのテレビ…。パリッとスーツのニュースキャスターがISに関しての報道がされており、各国の開発を更に進めるという内容であった。これは、また別の意味で溜め息をつかざらえない…

 

「はぁ…。ま、面倒は未だにおさまる気配は無しと。」

 

多分、世界は大きく変わる中のうねりにあるのであろう。強く柔軟な者、運の良い者は生き延び……適応できない、運が悪い者から世界の明るみから転げ落ちて消えていく。急激なれば尚のこと……女性しか扱えない最強の兵器などまさに世を嵐にさせる荒波。弾の考えの及ぶところではないが、多くの人間たちが呑まれていく…そして、そこにはどんな立場であろうと邪心・陰我が生まれる。波に乗って成り上がり肥えようとする欲望……波に呑まれた者たちの憎しみ・妬み。人の業…そこへ、影たるホラーは現れる。人間の邪心がある限り、絶えることはなく…陰我が膨らむほど多く強くなる。即ち、守りし者の仕事はかなり増えていくというわけだ。

 

 

【国連からの発表より、IS学園は……】

 

今、ニュースで記事を淡々と読み進める女のキャスターも恐らく、光り輝く未来の裏側など知るまい。ある種の知らぬが幸せというものだとこれまた溜め息をつきカウンターでふん反りかえる。これ以上、気にしたって自分はどうしようもできないのだから……

 

「ごちそうさま!おいしかったよ!」

 

「おうよ。んじゃ、これ今日の分の指令書な。」

 

とりあえず、面倒事は満腹になった笑顔の騎士に任せようと弾は赤い封筒を渡すのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……学校?」

 

食堂を出たところで千冬から出された思いがけない単語に首を傾げる流牙。別に学校が何なのか知らないわけではないが…不意にだされた提案に面食らってしまう。一体、彼女は何を考えているのだ…?

 

「…その、お前は学歴が一切無いと言っていたからな。どうだ?お前なら人当たりも良いし、呑み込みも早い。うまくやっていけないこともないだろう?」

 

「でも…」

 

「学費なら心配するな。金ならISの開発協力やらでありあまってるし、コネもある。」

 

「だからって……」

「大丈夫だ!私に任せておけ!!大船に乗ったつもりで……」

「千冬さん!」

 

確かに流牙と千冬は親しくなった……されど、これは心遣いというには一方的で強引すぎる。思わず、流牙も声をあげてしまい…彼女は歩を止めた。すると、彼の肩に手をかけて…まっすぐな瞳を見つめる……。

 

「頼む……『他人』だなんて言わないでくれ。確かに血の繋がりも何もない…でも、私はお前にまで離れて欲しくない。今度こそ、側にいてもらいたいんだ。」

 

「…」

 

 

解ってしまった……。

この時、流牙は儚く訴える彼女の胸になにがあるのか……

 

 

 

…………『弟』…

 

 

 

 

 

最も失いたくない存在でありながら、取りこぼしてしまった存在。彼女の心を大きく占めるそれを自分で替えようとしているのだ。その影を重ねているのだ。

 

……依存をしているのだ。

 

 

「…わかってる。お前は一夏じゃない…弟じゃない。だけど、私はお前のことを家族のようにっ!」

 

ああ、このままでは駄目だ。どんどん織斑千冬は脆く、壊れていく……彼女は今、立ち直りはじめたのではなく幻の杖によりかかっているにすぎないのだ。

その時………流牙は今までに無い眼をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺とあんたは他人だ。」

 

 

 

 

 

手を振り払い…

 

……すがる心を突き放した。

 

 

最初、千冬は目を丸くした。まるで、遊んでいた玩具を取り上げられた幼子のように…。そして、徐々に意識に浸透していく現実を拒もうとする。そんなわけない、ありえるわけない、優しい彼がこんなことを……自分の想いを拒絶するわけが……

嘘だ、嘘に決まっている。何かの悪い冗談に……

 

「俺はちゃんと、仕事もしているし今までひとりで生きてこれた。別に養ってもらう理由も無いし、必要もない。今までは可哀想だから付き合ってあげてたけど…むしろ、それが駄目だったみたいだね。」

 

「ち、違っ…!?」

 

「違わないさ。今のではっきり分かった。俺は家族じゃなくて、弟の代わりだろ?」

 

「!」

 

「そんな人のところに俺はいたくない。じゃあね……元気でね。」

 

現実は非情…常に自分に都合よくあるなどありえるはずもない。流牙は腕をはらい、背を向ける。それでも、っと千冬は衣裾を掴み引き留める。

 

「待て!なら、仕事とはなんだ!?お前のような若者が一体なにを……。あの夜に抜け出していることと関係あるのか!?」

 

「あんたには関係ない。」

 

最後の言葉すら…冷たくあしらわれた。やがて、彼の後ろ姿は曲がり角にさしかかるとつむじ風のように消え…あわてて追いかけた千冬のみが取り残される。

こうして、千冬は理解した。また失ってしまった……今度は他ならない自分の手が空を握ってしまったと。また埋まりかけた心の穴に突き崩されるような傷みを覚え…そのまま、彼女は涙を流して地に伏すのであった。

 

 

 

 

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時は少し過ぎ…とある小さな町工場。ここは昔から大企業の下請けを受け持つ部品の製作を取り組んできていたのだが……今、状況はいつもの活気ある雰囲気とは違い、異様なものであった。

薄汚れたツナギを着た中年の男がまだ歳若い高級そうなスーツを着た男にすがりつこうとするも、振り払われてアスファルトに転がっている。

 

「待ってくれ!社長、あんたたちの契約を切られたらワシたちは…!!」

 

「知るかよ。こっちだっていらないものにはらう金は無い。オタクらじゃ、ISの部品を造れないだろ?今はもう、古いただの鉄屑いじりの技術じゃ生き残れないんだよ、この先はな!」

 

「そう言われたってよう……!?」

 

古い者……中年の男がこれ。目立たずも今まで時代を支えてきたのだが、自らを時にあった形に成れず激動する世界の波に呑み込まれていく存在。

新しい者……社長と呼ばれた若い男がこれにあたるだろう。新しい技術を、世界が求める最先端を……。時代という荒波に乗って前へ進もうとする存在。そのためなら、無慈悲に不要とあれば何者であろうと切り捨てることはいとはない。

 

「とにかく、契約は打ち切りだ!話すことはない。」

 

「ま、待ってくれよ…!!!」

 

話は実に乱暴に幕を下ろされる。社長は男を突き放すと、控えていた黒い高級車の後部座席に座り…運転手に車を出すよう指示。悲痛に叫ぶ男を無視し、車は街角の彼方へ消えていく…。

 

「ふぅ……やれやれ、ごめんね。変なところ見せちゃって。」

 

ゆったりとした車内…社長は溜め息をつきながら、隣に座っていた少女に先とは真逆の笑みを向ける。少女とは…白い小綺麗な服をしているが彼女は当時のリアンであった。

 

「ううん、別に良いの。でも、さっきの人……」

 

「気にするな。親父のあたりからの契約だが、あんなの老害だ。役にたたずを養えるほどこの時代は楽じゃない。今はISだよIS!」

 

「…」

 

振り返ってみれば…まだ突き放された男とまだ若さがある青年が彼を助け起こそうとしているのが見えるが……濡れたボロ雑巾の泣き崩れる様は虚しく、見ている側からしても良心に近いモノが痛む。自分は助けられない人間を…目の前にしつつも通りすぎていくのだから。言い方をもっと悪くすれば見捨てる…であろう。

一方の若い自分の隣に座する若大将はそんな彼等を吐き捨てたガム…燃え尽きた煙草の吸い殻のように気にも留めない。自分が残忍とも残酷とも自覚は無く…顔にできたニキビを潰すのが何が悪いくらいにしか思っていない。

 

そんな両者に挟まれている自分は何なのか…?

 

 

リアンは男が気を引くために押しつけてくるダイヤを受け取りながら、自らの内側で考える…。ふと、そんな時…外に見覚えのある黒い装束を見た。

 

「あ!ごめん、ここで降ろして!!」

 

「り、リアンちゃん…!?」

 

彼女は無理に車を止めさせると、ドアを開けて飛び出していく。あの背丈と身なり…間違いない。

 

 

…道外流牙だ。

 

 

 

 

 

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「…」

 

ふらりと…ただ、何の気なしに足が向いたのは寂れて埃まみれの建物だった。もう誰もいない…厨房で腕を振るった主も、少し狭い食堂にぎゅうぎゅうとしてざわめく客も…

でも、道外流牙には残っている……ある少女とその家族との記憶。椅子を引いて腰掛け………耳をすませば、かつて活気があった頃の風景や声が残留思念として流牙の瞼の裏に浮かぶ。

 

「……鈴…」

 

でも、全ては自分が壊してしまった。自分と出逢わなければ、少女とその家族は未だに幸せに暮らしていただろう…。あの雨の日……自分は迂闊なミスで彼女の父を助けられず、主を失った店は閉ざされて誰もここにはいなくなった。

 

……自分のせいだ。

 

 

「…母さん……」

 

思えば、実の母とも死に別れていた。直接ではない……苻礼法師から『お前の母は死んだ』と…ただ、口から言われたのみで。嘘だと否定して、その時は実家にとんで帰っていったが…そこには亡骸すら無かった。

『約束』したのに……

 

 

……自分のせいだ。

 

 

 

 

「流~牙~くん?」

 

「!……君は…」

 

 

不意にかけられた声に振り向くと……そこに無垢な妖精のように微笑むリアン。いつの間に!?驚いてすっとんきょうな声をだす流牙だが、目の前に差し出すハンカチと彼女は告げる…

 

「涙……拭いたら?」

 

「……え?」

 

いつからだろう………ハッとした時に頬に伝う雫。感傷に浸る内に無意識で涙腺が緩んでしまったのか……

少し恥ずかしくなりながらも、流牙はハンカチを受けとると哀しみの雫を拭った。

「思い出してたの…?昔のこと?」

 

「関係ないだろ。」

 

ハンカチを返すと流牙はリアンに背を向ける。出来れば触れられたくないところだ……いくら同業といっても、そして…魔戒騎士であっても踏み込まれたくない心の深みはあるのだ。ましてや、それが暗い影であればあるほど……

 

「知ってるわよ。これでも、あなたと同じ苻礼法師の弟子で同業者なんだから…過去くらいざっと調べるって。」

 

「…」

 

「不快に思ったなら謝るけど……別に、今のあなたなら胸を張れるんじゃない?失われた牙狼の継承者となり、日々ホラーと戦って人々を護る守りし者。過去は拭いされなくても、あなたは多くの命を救っていく。現在(いま)も……そして、未来(これから)も………。」

流牙はふと、疑問に思った…。ただ自分を慰めているだけにしては何かが違う。違和感がある。

答えはすぐに解った。

 

「私のような名ばかりの守りし者とは違う。昼は男たちから魔導具造りの宝石を巻き上げ、夜は魔戒騎士についてまわるだけ。卑しいでしょ………別に人の命なんて護れちゃいないんだから。」

 

ああ、そうか。彼女は自分を自嘲している………

だから、声色に微かに諦めと羨望が重なるのか………

 

しかし

 

 

「そんなことないよ。」

 

否と………彼は言う。

 

「リアンは俺に出来ない術を沢山使えるし、魔導具だって直接じゃないだろうけど、多くの騎士や法師を救ってきたはずだ。守りし者に騎士も法師も…鎧の系譜も関係ない。力をそれぞれあわせて命を護る…それはリアンも同じ。だから、全然…卑しくなんかないよ。」

 

「流牙………」

 

こんなこと、言われたのは初めてだった。魔導具造りのために金品を巻き上げる自分を低俗と言われた時は幾度とあったのに………この黄金騎士は自らと自分は一緒なのだと暖かい笑顔で語る。

「ありがとう。優しいのね……」

 

「別に。あ、でも宝石とかは返してこいよ?」

 

「いーやーよ!貰ったモノは返さないわよぉ!」

 

不思議だった………まるで、心を優しく抱き留められたような温もりを…リアンはこの青年から感じた。

 

 

 

 

 

To be continued…

 




このリアンは原作と違って自分の卑しい部分を認めている反面でちょっぴり卑屈なんですよね。もう原作とは別キャラ路線突っ走り過ぎだね。

それにしても、千冬姉さん動かし辛い。何気に仕事の合間に書くにしては話が暗い!いや、牙狼ってほんわかする話があってもギャグに振りきれた話なんてほとんどないからですねぇ…(笑)


では、久し振りの更新で申し訳ありません。これからも低速ながら進めていくのでよろしくお願いいたします。


感想おまちしております!!わりと、切実に…



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