IS×GARO《牙狼》~闇を照らす者~   作:ジュンチェ

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絶~No hope~ 中編

……篠ノ之束…

 

箒と同じ名字を持ち、明らかに自分を殺しにかかる勢いでコンテナと降ってきた彼女に流牙は視線を向けた。姉……とするなら面影が似てなくも無いが、堅物な妹と比べてはメイド服といい兎耳といい、重なる部分が少なく見える。

束はコンテナから飛び降りるとそのまま、愛する妹に抱きつこうとするがヒラリとかわされた。

 

「箒ちゃん、久しぶりぃ!大きくなった、主に胸とか!」

 

「ふんっ!」

 

それに、妹の蹴りであしらわれて尚も喜ぶエキセントリックな様は方向性が真逆なキャラクターだ。

 

「痛いよ、箒ちゃん!でも束さんは嬉しいよ!」

 

「黙りやがってください、変態!?」

 

「……何事だ、篠ノ之…道が……」

 

そこへ、千冬もやってきた……が歩が途中で止まった。すると、束は…今度は千冬に標的を向けて『ちーちゃぁぁん!』と飛びつこうとしてきたのである。無論と言わんばかりに鉄拳でこちらもあしわれたが……

 

「酷いよ、ちーちゃん!?これが久しぶりに再会した親友にこの仕打ち!?」

 

「黙れ。お前が来る時など面倒事しかあるまい。」

 

「やっだなぁ~……人を疫病神みたいに~……」

 

やり取りからみて、知り合いだろうか?随分と千冬も鬱陶しそうだが……

さて、こんな珍客だが…人で賑わうビーチに未確認の物体を叩き落としのだ。勿論、それなりに騒ぎになっているわけで……

 

「SG-1だ!そこのお前、膝をつき手を頭の後ろに当てろ!」

 

すぐに、エンホウが率いるSG-1がとんでくるのは必然の理。あっという間に警棒を持った鉄仮面の隊員に囲まれた束は指示どおりに膝をつき後頭部に手をつけた。

 

「貴様、何者だ?」

 

「世紀の天才・篠ノ之束さんだよ~、SG-1の隊長・エンホウさん。」

 

「ほう?冗談は休み休み言え!」

 

「嘘ではない、本物だ。」

 

そして、千冬の一言で隊員たちにどよめきが起こったあと…彼女は開放された。う~んと、背伸びすると楽しそうにくるくる回りながら呟く…。

 

「良いねぇ~……天才が顔が利いて。」

 

「天才?『天災』の間違いじゃないのか……?」

 

しかし、不意に陽気な彼女の一時に割り込む流牙。その眼は笑みとは裏腹に怒りが走っている…。束も流牙にわざとらしく、今気がついたように向き直ると深々とお辞儀をする。

 

「これはこれは、イレギュラーくん。いや、黄金騎士・道外流牙サマ?お逢いできて光栄ですよ~。」

 

「何処の口が言う?」

 

「この天才の口ですが、何か?」

 

態度は形は丁寧だ……丁寧すぎてイライラするほどに。ISの開発者と名乗る変態と世界で唯一の男子のIS操縦者……間には見えない火花が散っている。箒は驚いていた…基本、流牙は人間には初対面から敵対的な態度はまずとらない…だが、今の彼の行動はホラーを見る時のよう。許されるなら魔戒剣を引き抜きそうな勢いだ……

 

「さてさて、その天才からのお願いなんだけど……黄金騎士サマのIS、白狼だっけ?みーせて、くれないかなぁ?」

 

「…ふざけるなよ。誰がお前なんかに触らせるか。」

 

「…おい、束に道外もそれくらいにしておけ。」

 

あと少しで触発…といった所で千冬が両者を制した。すると、流牙は魔導火ライターを取り出して火をつける…。緑に照らされた彼女の瞳には何の反応も無く、とにかくホラーではなさそうだと彼は懐にライターを戻した。

とりあえず、人間ならばと千冬は束に問う。

 

「…貴様、わざわざここに来たのは何の用だ?まさか、わざわざ愛する妹と私に会いに来ただけではあるまい。」

 

「オフコース!!今日は箒ちゃんにプレゼントを持ってきたんだよ!」

 

箒以外、皆が首を傾げる。まさか、プレゼントというのはこのコンテナのことだろうか?何が入っているかわからないといった様子に束はニヤリと笑うと指を鳴らす。

同時に、コンテナは粒子に変化して…更に、中身のコーティングも粒子となり、深紅のISが折り畳まれた状態で露になる。

 

「さあ、箒ちゃん!これが君の専用機…束さんが持てる英知を注いで造り上げた傑作!第4世代IS…『紅椿<あかつばき>』だよ!」

 

シュゥゥ…と蒸気を発しながら、戦闘機のように収縮した状態から解れるように展開していき…中央に人が搭乗できるスペースが現れた。『紅椿』…確かに名に恥じぬ程の椿の花弁がごとき紅に力強さがある。

これを見るや否や、箒はキラキラと…まるで、新しい靴を買ってもらった少女のように輝き…対して、千冬は『また面倒なものを…』と顔をしかめる。

 

「これならきっと、偽りの『白』に敗けることはないね!」

 

また、チラッと束は流牙に目線をおくったが流牙は睨み返して応えた。その言葉の真意も知らず…

一方で目を丸くしたのはエンホウだ。

 

「バカな…まだ各国が第3世代の開発に着手したばかりだぞ!?それを第4世代などと…あり得るはずが!?」

 

「それが、あり得るんだなぁ~?だって、私…天才だから?あーはははは!!」

 

そう……セシリアといった世界各国の代表候補生が所持する機体がこれにあたる。ブルー・ティアーズといったISもかなりの高スペックを誇るのだが……この機体はそれらを飛び越えて存在するとの開発者の談。各国で名高い技術者たちが苦心しているというのに……この自称・天才は軽くそれらを凌駕してしまうというのか。

 

「さ、箒ちゃん……色々と作業があるからこっちに来て!」

 

「む……」

 

そして、姉に促されるまま箒は紅椿へと手をのばす。最中、心配そうに流牙のいる方向へ振り向いたが……彼が視線を合わせることは無かった。流牙が何を思っているのだろう…?専用機が獲られたという喜びに一筋の不安がよぎる…… しかし、今の彼女ではどうすることも出来なかった。

 

一方で、千冬の端末に不穏な着信が入る。気がついた者は流牙とエンホウくらいだが、顔が一気に険しくなった彼女はアイコンタクトと手振りで彼等を呼ぶのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「篠ノ之 束!?」

 

思わず、セシリアはすっとんきょうな声をあげた。

それから、呼び集められた代表候補生の少女やリアンと簪たち。折角の遊泳を中断されて不機嫌そうだったが先の出来事を流牙が話すと全員が度肝を抜かれた顔をする。

 

「あ、あああれですわよね!?ISを開発した第一任者の…!?」

 

「しかも、それが箒のお姉さんだったなんて……」

 

「ど、どどど、どうしよう!?サインとかもらったほうが良いのかな!?」

 

セシリア、鈴音、簪は完全に落ち着きを失って狼狽えているが……リアンのみが腰に手を当てて呆れ顔をしていた。

 

「あんたたち、もうひとつ大事なことを忘れてない?」

 

…大事なこと?

 

「箒のお姉さん…っていうことは……苻礼法師の娘ということよ。」

 

「「「!」」」

 

そうだ。即ち、IS開発者の父は魔戒法師ということになる。つまり……と鈴音は考えた。

 

「じゃあ…魔戒法師ってこと?」

 

その問いがでてきたのは自然だろう。父と妹が魔戒法師だったなら……姉が魔戒法師でもおかしくはない。答は確かに予想の半分はあっていた…

 

「正確には元・魔戒法師……彼女は追放された身よ。世界をISによって歪め…多くの陰我をばらまいた裏切り者。その大罪はヴァリアンテの魔女裁判を行ったメンドーサに次ぐと言われてるわ。」

 

ヴァリアンテの魔女裁判……詳しくは日が浅いセシリアたちに知る由もないが、犯罪者…もしくは狂気のテロリストに比例する目を魔戒騎士や魔戒法師から見られているということだろう。ISは確かに世界を変えた……善くも悪くも……良い意味合いでは様々な人類の未来を豊かにする可能性を秘め、学園の生徒たちのように新たな道が開けた者もいる。されど、女性しか扱えないという欠点から広まってしまった女尊男卑思想をはじめに……それを巡って争いや陰謀が起こっているのも事実。その全ての起点は篠之乃束なのである……あながち、流牙の『天災』という呼び方も間違いではない。ましてや、人々をホラーから守る側からしてみれば彼女はまさに裏切り者であろう。

 

「まあ私たちは箒や苻礼法師の事情は最初から知ってたけど……驚かない様子からして、シャルも薄々勘づいてた?」

 

「…そうだね。ただ、苻礼法師の娘ってことは初耳だったんだけど……」

 

「流牙、話してなかったの…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのぅ……少し宜しいでしょうか?」

 

 

 

 

 

ここで、セシリアが恐縮といった具合で手をあげた。どうやら、何か気になることがあるようだ…

 

「彼女は魔戒法師であった…のですよね?ならば、魔戒騎士の鎧とISは何か関係があるのでしょうか?おかしなことを言っていたらすみません…。でも、存在がまるで反転してるように思えるのです。男性しか纏えない鎧に女性しか使えないIS……やっぱり、意図したような…」

 

盾の表と裏……昼と夜……とでも言えるような魔戒騎士の鎧とIS。鎧は男のみ魔戒騎士として装着可能な代物で、人々に知れず存在する。一方、ISは女性のみが使用可能…まあ、目の前にイレギュラーがいるが基本は無理で今や世界に影響を及ぼすモノ。偶然か…?確かに接点が無ければそうかもしれない。

 

しかし、魔戒法師が開発者だとしたら……?

 

…セシリアの疑問は最もだろう。

 

「関係無い…とは言いきれないよな。」

 

流牙は答える……否、呟いたといったほうが正しい。今、彼の視線はセシリアではなく、人気の無い崖へと場所を移していた例の姉妹へと向けられていたからだ…。

箒が紅椿に搭乗し、束がケーブルで接続したキーボードなどて調整を行っているのが見える……。間もなく、未知の第4世代のISが主を獲て巣立ちの雛鳥のように飛び立とうとしているのだ。

 

その時、ギュイィィン!とけたたましいエンジンの音がしたかと思うと深紅のバイクが少女たちの前にブレーキをかける。そして、ヘルメットから顔を見せたのはタケルと意外な人物だった…。

 

「リアン、流牙、何が起こっている?」

 

「苻礼法師!?」

バイクの後部に跨がっていたのは苻礼法師。ヘルメットをタケルに手渡すと歩いていき…崖の彼方へと目線を移す。瞳に映るのは血肉を分けた2人の娘……特に、束に対しては険しい顔を…。一体、細める目が今…何を秘めているのかは流牙たちには解らない。すると、リアンが呟いた。

 

「……そろそろね。」

 

何の頃合いかはすぐに目の前で示された…。空気を震わせて、大地を力強く蹴るように箒が駆る紅椿は舞い上がったのだ。

 

「それじゃあ、箒ちゃん!好きに動いてみなよ。」

 

箒は姉の言う通り、海面スレスレに機体を弾丸のように走らせる。これだけで、水面が裂け…白い飛沫が壁のように上がった。そのまま、機体を切り返してジャンプするように勢いよく上昇すると…あっという間に雲の高さへと到達する。

 

「凄い……これが、紅椿……。私の新しい力…」

 

凄まじい……まだ速さだけだが、空中での移動だけで振り回されそうだと実感する箒。その様子は地上で取り残されていた者たちにも伝わっていた。

 

「……なんてスピードに空中の姿勢制御。流牙さんの白狼に…いや、それ以上!」

 

セシリアは流牙と唯一、IS戦で刃を交えたからこそ白狼の性能を身を持って知っている。速さと並みの機体では無理な空中での姿勢制御をする力……地に足がつかない空では基盤かつスピードをあわせることで絶対的な能力になるのだが…武装はまだ見てはいないものの彼女の機体は主を明らかにその次元へと追いつかせている。

青空に自らを誇示するような紅の椿……それは少女たちに戦慄を走らせた。

 

「箒……」

 

ただ流牙は……哀しげともとれるような表情でそれを見上げている。本人も何を思っているのか解らない………だって、今は空を舞う彼女の気持ちが解らないのだから。何故、束は突然に現れて彼女に紅椿を与えたのか……そんな彼女は何を思っているのか………

色んな背景が無ければ、新しい力を獲た彼女を祝福しただろう。でも、今の流牙は素直に友として喜ぶのは無理であった。

 

「さ、箒ちゃん!次は武器を使ってみるんだ。ターゲットを出すから遠慮なくやってみて!」

 

続いて、束は自身の横にどんな理屈かミサイルポッドを出現させるとあろうことか盛大に花火よろしく愛する妹に向かってミサイルの波を放ったではないか!されど、箒はあわてず腰に左右でマウントされていた刀を抜き放つと刃を滑らせるように乱舞…!

次の瞬間、剣先からビームが迸り…ドドドドドドドン!!と連続した爆発をしてミサイルは粉々に。そして、周囲の雲も衝撃波で形を変えたのであった。

 

「あははははは!すごい、すごい!すごいよ箒ちゃん!!左が『空割』、右が『天月』だよ!!」

 

…天才は笑っているが、もう下では皆が唖然とする。火力は完全に白狼のみならず現行のISを凌駕しているも同然だった。

やがて、箒は紅椿の感触を感じながら…ゆっくりと地上へ降りていく…。

 

 

……その様子を崖の森林の合間から不吉なサングラスが見ているとも知らず…

 

 

「どうどう、箒ちゃん!?束さんの最高傑作は?」

 

「はい……最高です。ありがとう、姉さん…」

 

「良いってことよ!可愛い妹のためだもん。これからも、何でも言って!」

 

地上に降りた箒は紅椿の展開を解除すると、新たな愛機は右腕に帯につけられたスズのような待機形態となりおさまった。待っていましたと、姉の溺愛にさらされ苦笑いするのだが……すぐに、歩み寄ってくる一行にその笑みすら消えた。

 

「束……」

 

苻礼法師は押し潰されたような声で……娘の名を呼ぶ。しかし……

 

「いやあ、最高だったね!流石、天才・束さんとその妹の箒ちゃんだ!」

 

…おもむろに差し出されたような響きを…そよ風のように気にかけない素振りの束。箒が気まずそうな顔をするが、先にキレたのはタケルだった。

 

「おい、あんた!折角の父親との再会だろ!!無視すること……!」

 

ズンズンと制止する間もなく踏み出していく彼…

 

その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばん。」

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

不意に距離を詰めた束はタケルの額に軽くデコピンを。同時に、弾かれたようにタケルはふっとんで岩場の地面に叩きつけられる。

 

「タケル!?貴様っ!」

 

何が起こったかわからない……それでも、仲間を攻撃された流牙はすぐに魔戒剣を引き抜き身構えた。だが、苻礼法師が腕を出して止める。

 

「…何を企んでいる?」

 

「別にぃ?」

 

…いつ以来かの親子の対面だが………交わされた言葉は暖かさの欠片も無い。互いの間の距離は…もう埋まらない、見えない溝そのもののようだった。

 

「やれやれ、取り込み中のようだがすまない。」

 

そこへ、緊迫した空気に石を投じるように千冬が間に入って現れる。『緊急事態だ…』と言葉を携えて……

 

 

 

 

 

 

 

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「諸君、事態は火急である。」

 

宿泊施設の旅館の一室へと案内された流牙と少女たちへ千冬は告げた。そこに、苻礼法師とタケル…束の姿は無い。

薄暗い部屋の中にはケーブルが伸びるたくさんの計器が持ち込まれて、ホログラムがいくつも映し出されている。

 

「今回の件は口外を断じて禁ずる。情報の漏洩があった場合は禁固、もしくは監視といった相応の処分が下ることを最初に言っておく。」

 

「千冬さん、何があったの?」

 

緊迫した空気の中、流牙は問う。少女たちがISスーツに着替えている様子からみてただ事ではない…。何がまず起こったのかについてはキーボードを操作する真耶が説明する。

 

「海洋で実験中だった無人試験機のIS・『シルバリオ・ゴスペル』……通称・福音が突如として暴走状態に入りました。これはアメリカとイスラエルが極秘に共同開発していた機体なのですが……先刻、外部からの不正アクセスで暴走状態に陥ったそうなんです。」

 

無人IS……あまり心地よいひびではない。かつて、同様のゴーレムに襲われた流牙からしてみればだ。

続けて、千冬が捕捉の説明に入る。

 

「この機体は現状、北上を続けており…今から3時間以内にここの海域の近くを通過する。無論、周囲の海域は封鎖しているが、包囲網は万全ではない。よって、被害が出る前に諸君らにはこれの迎撃をお願いしたい。」

要は福音というISを近くにいるなら止めろ……ということか。すると、リアンが手を挙げた。

 

「敵ISの正確なスペック情報は…?」

 

「残念ながら、こちらにはあまり開示されていない。極秘だからな。」

 

標的の情報を知れれば作戦の練りようはあるだろうと問うたことだが、事が事でもそう易々とデータが出てくるわけもない。恐らく国家の椅子に座る者たちの駆け引きとかそういったものが関係あるのであろうが、実際に収拾に向かう者たちからしてみれば迷惑も良いところだ。

さて、どんな作戦を組み立てたものかと考えていると……

 

 

「ちーちゃん、ちーちゃん!私の頭に良い作戦がなう・ろーでぃんぐだよ!」

 

 

何処からともなく、束がにゅぅ…と沸いてきた。相変わらずはしゃぐ子供のようなテンションに煩わしそうな千冬だが、彼女は真耶からキーボードの操作を奪うと勝手にいじくはじめる……

 

「…失せろ。部外者は立ち入り禁止だ。」

 

「紅椿と白狼なら、一撃離脱の作戦を組めるしトップスピードで不意討ちを入れれば…」

 

「失せろと言っている。」

 

「…迎撃はそこまで難しくないよ!相手は無人機だしね!」

 

全く、自由奔放すぎる彼女。千冬の言葉にチラリとも耳を貸そうとしない…。そんな態度は先のタケルのこともあり少女たちの心象を悪くさせるには充分だった。

 

「じゃあ、ちーちゃん……このメンバーで紅椿と白狼以外でこれに匹敵して最大火力を出せるISを持つのはだぁれ?いないよね~? 」

 

「篠ノ之はまだあのISに慣れていない。危険だ。」

 

「ちーちゃん、お気に入りの道外流牙くんがいるじゃないか!」

 

確かに両者の言い分は正しい。白狼と紅椿並みの火力と速さを兼ね備えたISは無い。作戦にはうってつけだ。一方で、箒はつい先の時…触れたばかりだ。使い慣れない武器は…強力であればあるほど危険である。

 

「あ、あの……私は構いません……。」

 

…その時、声をあげたのは他ならぬ箒。彼女は決意を固め、胸を張ると高らかに自らの意を話す。

 

「私と紅椿ならやれます!道外の力もあれば、きっと…!」

 

張りがある声は自信を感じさせた。千冬は悩む……やる気があるのは構わないが、まだ信用には足らない。そこで、流牙に視線を向けると…

 

「俺も構わないよ。現状、それしか手立てが無さそうだし……」

 

なんと、彼も承諾。ならば、束の案に乗るのは癪だが仕方ない。

 

「……わかった。本日、正午より作戦を開始する。それまで、ブリーフィングを続行し作戦の詳細を練る。ここにいる者は全員まずは残れ。」

 

 

 

 

 

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刻は正午……

 

 

流牙と箒はそれぞれ愛機を展開して崖の上に立っていた…。流牙はリアンやセシリアたちからメッセージを受け取っている。

 

「流牙、気をつけて!箒のことしっかり面倒を見なさいよ!」

 

「流牙さん、貴方ならきっと…!」

 

「嫁よ…いざという時は私やリアンたちがサポートにまわる。大船に乗ったつもりでいろ!」

 

有難い声援だ。戦いに赴くのはこれがはじめてではないが、暖かい気持ちになれたのははじめてかもしれない。

これに、笑みでかえすと…隣で箒が見ていたことに気がつく。

 

「リアンたちか?」

 

「ああ。嬉しいよ、待ってくれる人がいるっていうのは。」

 

「そうか………その、流牙……」

 

「…ん?」

 

「いや、何でもない。そろそろ出撃だ…いくぞ。」

 

最後に何か言いかけたような…本人が否定したなら追及しないほうが無難か。

 

やがて、2機は流星のような勢いで青空の彼方へ消えた……。

 

 

 

 

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それから、暫くして旅館の突貫管制室の真耶と千冬に福音撃墜の一報が届く……。

 

「やりました、皆さん!任務成功です!!」

 

すぐに、歓声が舞い上がるが……束のみが眉をひそめる。まるで、喉になにかつっかえたように…

 

「どうした、束?お前の作戦がうまくいったんだぞ?」

 

「…おかしい。いくらなんでも早すぎる。」

 

千冬はすぐに彼女の異変を覚る。すると、真耶のオペレートも徐々に異変が起こりはじめた…

 

「流牙くん、箒さん?応答して…応答してください!」

 

【な、なんだ……】

 

【…バカな…】

 

通信にもノイズが入り始めるが、間違いなく好転する事態は海の彼方で起きてはいない。再び真耶の席を束が奪いとり、自分の端末を繋いで操作すると映像が浮かびあがる……

 

 

……映ったのは青空…白い雲…

 

 

そこから舞い降りてくる福音と呼ばれた骸を吊るす『黒い死神』……そのシルエットに誰もが目を見張った。何故なら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……黒い白狼…!?」

 

 

道外流牙の愛機と…あまりにも酷似した姿だったのだから。

 

天才は予想外の事態にいつ以来かに驚愕を覚えた…。

 

 

 

To be continued…

 




次回……事実上の尊士回。


感想おまちしてます。


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