では、どうぞ。
『La…』
「な、何なんだコイツは!?」
ゴーレムの出現に驚愕する流牙たち。その最中、VIP客らの席にシャッターが降り、生徒たちも我先に逃げ出そうと次々に出入口に押し寄せる。
この様子に苻礼法師は眉をひそめた。
そこへ、箒が走ってきた。
「苻礼法師………!学園のシステムがハッキングされて避難経路のシャッターが降りてる!!これでは、生徒の避難が…!」
「…」
まずいことになった。生徒がいなくならなければ鎧の召喚どころか、自分たちも迂闊に動くことが出来ない。顎に手をあて考える苻礼…。この場の突破は流牙と鈴音に任せるしかないのか?
「…おいおい、こりゃあまずくねぇか?」
「タケル、迂闊に動くな。あの黒いISは流牙と鈴に任せる。お前たちはホラーが来ないか各自、警戒しろ。」
的確な指示でまず、アグリとタケルを苻礼は散らす…が、箒だけはこの場に残った。彼女の頭にはある嫌な考えが浮かんでいた。
「………こんな、こんなことを出来るのは…」
「箒!今、そんな話をしている場合ではない!」
ただ、非常事態に呑気に憶測している暇はないと一喝。すると、箒は『くっ!』と表情を浮かべながら、走り去る…。
(あなたはいつもそうだ!だから、『あの人』もッ………離れていったんだ!だから、皆、皆、バラバラになったんだ!!)
荒れる箒の胸の内………だが、苻礼法師は目もくれずゴーレムを睨む。
「…そこまでして、黄金騎士が欲しいか!束!!」
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「ハアアッ!!」
バシュ!!
月呀でエネルギーの斬撃を飛ばすが、ゴーレムのバリアにより弾かれてしまい…今度はお見舞いにと腕から放つガトリングがこちらを襲う!!
「駄目だ、キリがない!!どうにかして、近づかないと…!」
白狼は元々が高起動近接特化タイプのIS。遠距離・中距離はあまり得意ではなく、無理矢理に近接に持ち込んで戦うのが基本スタンスだが、ゴーレムのバリアと大火力の武装に阻まれ本来の戦い方が出来ずにいた。
「流牙!」
バシュウウ!!!!
鈴音も甲龍の龍砲を放つが、これも無効。煩わしいと、ゴーレムは鈴音にもガトリングの射撃を見舞う。
「きゃあ!何よ、コイツ!!全然、効いてないじゃない!?少しは怯むなりしなさいよ!」
紙一重でなんとか弾には当たらずに済んだが、正直…彼女をカバーしながらでは本気で突っ込んでいくことが出来ない流牙。この戦い、流牙においては未だに連携の訓練を積んでいない甲龍ではいくら鈴音と息があおうと無理がある。彼女を逃がしたいのも山々だが、現状…至難の技だろう。ゴーレムが背を向ける彼女を逃がすとは思えない。
『La♪』
ゴオォン!!!!!!
「くっ!」
そんな考え事をしている間に飛んでくる黒い鉄の拳。月呀でなんとか防御をするが、流牙はここである違和感に気がついた。
(なんだ……全然、『命』を感じない!?まるで、機械のような…)
そう…さっきから、動きが直線的で防御と火力以外は実際のところなんとかなる程度。さらに、密着して感じるのはまるで無機質だということ。ISは女性が乗らなければ動かないが、このゴーレムには人が乗っているという感覚が伝わってこない。
(…まさか、無人!?)
「…はっ!」
ガッ!!
とにかく、一旦は刃で払い…距離をとる。ふと、よぎった『無人』という考え。だったら、目の前のゴーレムから受ける感覚に納得がいくが…疑問がひとつ。そんなISは今まで存在していないということだ…。その今までこの世に無かった物が突然、目の前にとなるとにわかに信じ難い。だが……
(俺は……俺の直感を信じる!)
「流牙、しっかりしなさい!」
「鈴…あの機体は多分、『無人』だ!」
「む、無人!?馬鹿言うんじゃないわよ!?ISの無人運用なんてまだ何処の国も……」
己の勘を流牙は信じた。無論、鈴音からしてみれば非常識に極まりないことだが…流牙の優れた聴覚の能力については知っているので完全には否定出来ない。
「俺は感じた!アイツの中には命は無い!!」
「そんな、そんなことって……」
『それだけじゃないぞ!アイツの装甲……魔導具と同じ物を使ってやがる!!』
「「何!?」」
加えて、ザルバからの説明……意味することはゴーレムはザルバと同様な構成物(マテリアル)で組み上げられており、つまりは……
……魔戒騎士か法師に携わる何者かが関わっているということである。
「…どーすんのよ!?それじゃ、私の武装じゃ通じないわよ!」
鈴音は焦るが、流牙は動じない。おそらく、『彼女ら』も事態についておおよそ把握しているはず……
なら…
「…」
地面にフワリと着地すると、月呀を地面に突き刺して白狼の左腕の展開を解除して静かに立つ。ただ、的にしてくださいと言わんばかりの…あまりにも目を疑う行動に鈴音はたまらず叫んだ!
「流牙!?なにしてんのよ…!!武器をとりなさい!ねえ!!」
「…」
それでも、流牙は動かない。接近してくるゴーレム……止まる的に銃口を…
「リアン……」
【もっちろん!】
バババババババン!!!!
『La…!?』
その時、的確かつ凄まじい銃撃がゴーレムのガトリングをはじめとした武装を撃ち抜いてボロボロのスクラップにしてみせた。何事かと、ゴーレムが視線を向けてみればフィールドの端で見慣れぬ白とブラウンのISがライフルらしき武装を構えている。その姿は袴のような意匠を微かに残すものの、スタイリッシュに絞られたデザインで腰にもハンドガンタイプの銃が引っ提げられていれ……その操り手は鈴音も知っている。
「リアン!?あんた、その機体!?」
「…そう、この機体が、私の専用機…『打鉄・戒式 百花繚乱』!!」
『 打鉄・戒式 百花繚乱 』
日本の量産モデルであるIS『打鉄』をリアンにあわせて取り回しのいい銃武装を中心にあわせてチューニングした彼女専用の機体。カラーリングは主たるリアンの趣味で所々に金の装飾が光る。
『La♪』
瞬間、彼女の存在を確認したゴーレムはまだ生きているブースターを動かして向かおうとするが……百花の影には……
「さ、任せたわよ…セシリア、アグリ!」
「ええ、バッチリのタイミングですわ!」
「ああ、外しようがない。」
スターライトの銃口を向けるティアーズを展開したセシリアに弓を引き、矢先を向けるアグリ。リアンが屈むとギリギリのタイミングとスレスレの距離で光輝くレーザーと矢が放たれ、ゴーレムの両肩の接続部を撃ち貫く!
ドシュゥゥ!!!!
『La!?!?』
「「「流牙(さん)!」」」
「ムゥゥッッ!!!!」
斬!!!!
待っていた、このタイミング!
流牙は左手に魔戒剣を握り、突き刺していた月呀を抜き放ち旋風がごとき刃の乱舞を繰り出すッ!!数秒後、ゴーレムは十字に斬り裂かれバラバラになると地面の上でスクラップの山と化した…。
そして……
「やっぱり、無人だったのか……」
このゴーレムの残骸には人間が座すべき場所には何か奇妙な機械しか残っていなかった。つまり、流牙の予想は当たっていたのである。
(す、すごい……これが、流牙たちの力………)
一方、上空では鈴音が流牙に対して驚いていた。自分は代表候補生のIS学園生徒…専用機持ちということは実力は学園の中でも折り紙つきということだが………その立場の目から見ても流牙やリアンは唸ってしまうほど強い。ISならば、まだ自分が上だと思っていた鈴音だが胸の内で考えを改める…。
(流石、セシリアを転校初日で破っただけある…。ISもウカウカはしてられない……)
また、セシリアも……
(…いつまでも、その背中を見ているだけでは……決して追いつかない。強くならなくては…いけませんわ。)
これから共に戦う者同士…隣に立つには流牙はかなり先に立っている。ISの技術ならまだ同等かもしれないが、このままでは近いうちに越されるだろう。そうなれば、本当に自分たちはお荷物でしかなくなる……。
強く、ならねば………
あの背中の隣に誇って立てるように…………
「流牙、終わったか!?」
「箒!他の生徒たちは?」
そこへ、流牙の元に駆けてきたのは箒。白狼の展開を解除し、ゴーレムの残骸を背に立つ流牙を見た……
ーーーグルルルッ…
「!?」
わずか、一瞬……血に濡れた牙狼の姿と重なってしまい、怯んでしまう。
「箒?」
「……え、ああ…大丈夫だ。混乱はあるが、先生たちが終息に力を尽くしている。問題はあるまい………」
「そうか。こっちも片付いた…。無人のIS…こんな物、誰が…」
ハッ!?と我に戻った彼女はゴーレムの掌にとれるほどの欠片を手にとる流牙を眺める。その胸にはセシリアと鈴音とは違う思い……
(道外流牙……やはり、私は………)
不協和音が…微かに響き始めていた……。
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「さてさて、これはまた大変なことになったわね。」
学園内の廊下にて『面倒』と書かれた扇子を拡げている楯無は考え事をしていた。明らかにこのゴーレムの件は何らかの勢力からの攻撃とみて間違いない。詳しくは分からないが、不確定な要素がこの学園に多い今…果たして、教職員と生徒だけでどうにかできるかといえば不安な所だ。
(無人のIS…道外流牙……フランスからの新たな男子……。ここで、最も信用できて強いのは………)
彼女は端末を取り出すとアドレス帳を開き、サー…と流すとある名前のところで目を留める。
(そうだ、彼女なら……)
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日本国内……
某・ジムにて………
「…ふっ!ふっ!」
マットの上で力強く腹筋をする楯無と同じかそれ以上の女性。辛うじて少女も通るだろうか…?日本人独特の黒髪をポニーテールにして、黒いシャツに茶色いズボンとお洒落もへったくれもない簡素な出で立ちをしていた。
PiPi…
「?…もしもし……」
上体起こしをしている最中、鳴った端末をのに気がつき…起き上がり手にとると……
【ハァーイ!久しぶり、エンホウ。】
「…楯無。珍しいな……」
電話の相手は楯無だった。久方ぶりの友の声だったが、この声とタイミングから察する。
「…仕事か?」
【ええ、すまないわね。代表候補生の護衛任務中に……。そのミッションが終わったら、貴方たちSG1には学園に滞在して警戒に当たって貰いたいの。】
「今のお前たちでは乗りきれそうにないのか?」
【……これは漏らさないで欲しいけど、今日…学園は襲撃を受けたわ。】
「何?」
しかし、どうやら事態は思った以上に良くないようだ。端末をとりながら、彼女はトレーニングマシンにかけていたタオルを手にとって汗を拭くとスクッと立ち上がる…。
「被害は?そして、こちらのミッションへの支障は…?」
【今のところ、目立った被害は無い。護衛任務も予定通りでOK。だけど、今のIS学園には不安な要素が多すぎる…。この場において、最も信頼できて力を発揮できるのは貴方だけよ。】
「…フッ、買い被り過ぎだ。まあ、良い。正式な手続きがなければSG1は動かせん。それらは頼んだ。」
【わかってるわ。じゃ、学園で会いましょう。】
「ああ。」
一通りの話を終えると、通信を切る女性『エンホウ』。畳んでおいたジャケットに黒い帽子を被り、然るべき場所へと向かおうとするが………そこへ、長い金髪の少女…いや、中性的な顔立ちの少年が現れる。
「…デュノア嬢。」
「エンホウ!僕は『男』だってば!それに、シャルルって呼んでって言ったよね!?」
「あ……申し訳ない。シャルル。」
そんな顔立ち故に、エンホウは彼をつい女性とつい勘違いしてしまう。彼からしてみれば随分と長いこと一緒にいるのでいい加減、直してもらいたいのだが……
「ふ~ん………もしかして、その電話…何か僕たちに関わりのあることかな?」
「いや、そうではない。日程に関しては変更の予定は無い。心配するな。ただ…決定ではないが、恐らくは学園でもまた別の任ではあるが一緒になることになった。」
「ほんと!?じゃあ、仲良くやろう!それに、エンホウがいないとボーデヴィッヒさん止められないし!」
嬉しそうにキャッキャッと騒ぐ彼。余程、彼女と共にいることが喜ばしいのだろうが、エンホウは真剣な眼差しを彼に向けていた。
「シャルル、私の正義にかけて…これからも、貴方たちを護ります。」
「…ふふっ、ありがとう。」
…学園へと向かう新たな波紋を呼ぶ投石。果たして、エンホウと少年・シャルル…どのように流牙たちと関わり物語を繰り広げていくのか?
一難去り、また一難…奇妙な運命の行く先は……
To be continued……
★ ★
次回予告……
リアン「その姿はあまりにも、驚異で……為すことは大胆不敵で美しく、彼は闇を走る。次回・【盗~Steal~】……その掌には邪悪な輝き。」
★ ☆
シャル「やったよ!次回から僕、合流!!」
ラウラ「まあ、更新が何時になるかわからんがな。」
シャル「…( ̄▽ ̄;)」
そういえば、最近…ガンダムブレイカー2を購入したのですが面白いですね。アレ。後輩の勧めで買ったのですが個人的にシナンジュやHi-νとか好きです。ぶっちゃけ、宇宙世紀はあんまり詳しくないですが……(いやはや、Zから入って断念しましたハイ。)
あとゴッドイーター2もプレイ中……やべえ、防衛班のステータス上げ(キャラエピ)がしんどい。全然、レイジバースト篇行けないし、武器に規制かかってるし……ああ、防衛班の帰還を有料ダウンロードした私はなんだったのか(ハァ…
あと、そろそろですよね闇照の劇場版!やらねぇんだろうな、私の地元で……うぅ…
加えて、就活という……
次回は何時になるかはラウラが言うようにわかりませんが、感想まってます!