・2 ミッション
突然だが今から俺の自己紹介をしたいと思う。
俺はさっきも言った通り旧人類である。髪も黒の短髪で背丈や体格もそれなり、顔もそれなりと自負している。
だが、未だに大昔に流行った言葉でリア充と呼ばれるものになったことがない。
うん、理由は多分わかっている。むしろこれ以外ないと思いたい。
男なのに神翼彩夏(しんよくさいか)という女みたいな名前をしているからである、と信じたい。
親曰く、「病院の人が女の子ですって言っていたから女の子の名前しか考えてなかったのよー」という全くもって信じられない理由で付けられた名前である。
そしてライが教室を出た後クラスの奴らから“変態糞野郎”という烙印を押された。
そして現在若干病み気味な俺は課外授業ということで外に移動し、生物調査の授業を受けている。
恐竜とのクローンで生まれた今の大半の生物達は短期間で数万種類まで増加、進化し、今でもそれは終わりを見せていない。
そこでHUNTERの方々や生物調査の授業という名目で俺達みたいな生徒もほぼ毎日森林地区などの外部エリアに行き、生物の生態系を調べているのだ。
しかし、まさか今日のパートナーがまさかのライとかどういうこと?
なんか向こうは向こうでチラっと見て、目が合ったら顔はもちろんのこと耳まで真っ赤にして首が千切れるんじゃないのかってぐらいの勢いで顔を逸らしている。
そして気づけばまたチラッと見てきて目が合うと再びものすごい勢いで顔を逸らすというループを繰り返している。
んー俺の顔になんか付いているのか? ちょっと聞いてみるか。
「なぁライ……」
「ゴメン! また後でね!」
逃げられた。声かけただけなのに全速力で、逃げられた。
そして周りの奴らから“振られた変態糞野郎”に改編、基不名誉を通り越すぐらい降格された。
なんとかライを捕まえたが状況は悪化し、捕まえた瞬間ライは発狂してそのまま気絶してしまった。
そして今俺は臨時医務室で寝ているライの隣に座っている。
ちなみに現在臨時医務室にいるのは俺とライの二人である。
元々は女性医務医がいたのだが……
「私はちょっと用事が出来たという名目で外に出るからほどほどにねぇー」
と言って本当に出て行ったのだ。
いやほどほどってなんだよ。
いや何が言いたいかわかるけど!
「あぁもう!」
あの女医のせいで変に意識してしまう!!
なんでこんなにドキドキしてるんだ、俺は!
太陽の光のせいか彼女の金髪が眩しく輝いていた。
それはまるで神話に出てくる女神の様に彼女は輝いていた。
やべぇ……触りたい。
「ちょっとだけなら、いいよな?」
なんか犯罪臭がする発言をした気がしたが決して犯罪的なことはしないから!
ただ髪を触るだけだから!
あれ、なんか髪だけでも十分犯罪臭くね?
「……おぉ」
なんて葛藤があったが結局触ってしまった。
「んっ……」
髪を触られ、くすぐったかったのかライの口から声が漏れた。
それに驚いた俺はすぐ手を離し、起きたのかと思い変に背筋を伸ばしながらしばらく様子を見た。
結果的に起きていなく、ライはそのまま寝ていた。
それに安心した俺は椅子の背もたれに体を預け再びライの顔を見た。
教室でも思ったがこいつは友達でも俺には勿体ないぐらい可愛い。そして今にして思うと、こいつは性格も普段元気でバカだから全然気づかなかったけどいつも優しくて笑った顔がとても暖かくついこっちも笑ってしまう。
あれ? あぁそうか、俺ってこいつのことが――
あれからすぐではないがライは目を覚まし、さっきみたいに顔を赤くしたり逃げるような行動はしなくなった。
本人ももう大丈夫と言っていたので担当教員に一声掛けてから授業に参加した。
この授業は主に新種生物の発見である。
一人は新種探し、もう一人は周りに危険種や地形的に危険な所がないかと調べるペアで受ける授業である。
ちなみにペアは毎回くじ引きで決まり、今回ライと組むのは本当に偶然なのだ。
そして現在、ライが新種探しで俺が周りを警戒及び調査という風に分かれた。
開始十分もしない内にライは新種の動植物を20種近く見つけた。
「これで25種類目っと。ねぇ彩夏、今日はなんか多いけどたまたまかな?」
ライは見つけた新種植物のサンプルを採りながら聞いてきた。
「たまたまだろ。前別の奴と組んだ時は10種も見つけなかったぞ?」
まぁ一つの理由としてはこいつが獣人だからだろう。
獣人は旧人類に比べ視力や聴力等に優れている。
大概は危険種の察知や地形の記憶等で新種探しの方にはならない。
では何故ライは新種探しをしているのか、それはさっきも言ったがバカだからだ。
本人曰く、わかってはいるけど別にいいかな、会ったら会ったで討伐か捕獲したらいいやと思っているらしい。
現にそれで何回か危険種に遭遇して狩っている。
そして逆に狩られかけたこともあったらしい。
それを聞いた俺は、もし彼女と組んだ時は何が何でも新種探しの方をさせる!と結構前から決めていたのだ。
結果は明らかに大漁である。
ただ今28種の新種をって、また見つけやがった。これで29種類目か。
さてそろそろ引き上げないと。
このままだと授業終了時刻までに帰れなくなるな。
そう思いライに声を掛けようとした時、ライのすぐ下の地面が盛り上がり何かが出てきた。