銀河天使な僕と君たち   作:HIGU.V

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空白期9 416年

空白期9

 

 

 

 

 

「よーし、今日はここまでだ。各自今日やったことの意味について考えてきな。レポートは毎度のように読むのが面倒だからいらないよ」

 

「ありがとうございました! 」

 

 

連日の事で既に定型文となっているこの会話。訓練が始まって毎度のいや、訓練の終わりに毎度繰り返されるやり取りだ。リコ、アプリコット・桜葉達、新エンジェル隊、通称『ルーンエンジェル隊』の訓練教官フォルテ・シュトーレンは合理主義で締めるところは締めるが、抜くところはとことん抜くのだ。元エンジェル隊の中で唯一の叩き上げの経歴を持つ彼女らしい考え方でもある。

 

「今日も疲れたのだー」

 

フォルテが退出した後最初に口を開いたのは、10歳程度の背丈の空色で、髪を短く切りそろえた活発な印象を受けるような少女だ。名前はナノナノ・プディングという。しかし彼女の外見には大きく平均規範から外れたものがある。それは、尻尾である。

彼女の臀部からは、レオタードのようなものに穴が開き、太めの長い猫のような尻尾が生えているのだ。そして左の耳の部分にヘッドセットをつけている。これは彼女の母親であるヴァニラ・Hからもらったものだ。

そう、名前からわかるかもしれないように、彼女はヴァニラの娘であるのだ。と言っても彼女が腹を痛めて産んだ子ではない。ヴァニラが研究員として、惑星ピコの衛星フェムトにて発見された大量のナノマシン集合体の内、唯一起動したのが彼女なのだ。そう、彼女は正真正銘のナノマシン集合体という存在であり、複数の銀河においても唯一の意思を持ったナノマシンなのである。起動時間はまだ1年と少々であるが、彼女の精神的な年齢は、ヴァニラの献身により10歳前後となっている。それでもだいぶ無邪気な態度が多い幼い猫のような印象を受ける少女である。

 

 

「えぇ~そうですわね~」

 

 

それに答えるのは、20歳程の金色の長い髪を背中まで伸ばした、おっとりとした美女である。背丈はムーンエンジェル隊でいえばランファと同程度、体型もランファとおなじくグラマラスでありながらスレンダーでもある矛盾した物。そんな彼女の名はカルーア・マジョラム。出身はマジーク勢力圏内の外れの星だが、現在はマジークにも12人しか存在しない公認A級魔女である。端的に言えば超一流の魔女だ。そんな彼女の二つ名は「一成る二者」である。その名前の由来はとして挙げられるのが彼女の特殊性だ。

 

 

「カルーア様は、半分テキーラ様にやってもらっているのにかにー? 」

 

「あら、ミモレットちゃん『あの人』がやっていようと、疲れるのですよ~ 」

 

 

猫の顔を饅頭のように大きくしたような形の使い魔、ミモレットの問いにはそう答える。彼女は俗にいう多重人格のようなものだ。しかし、それだけではない。魔法の性質や外見すら変化してしまう。もはや変身能力と言っても良いものだ。変身後の名前はテキーラ・マジョラム。おっとりとしたカルーアに対して彼女、テキーラは女王様気質というべきものであり、髪は赤みがかった紫色で、目尻もつり上がりまた別の魅力が見られるのだが、性格も大きく違うために、初見であったリコは大きく動揺する羽目になった。

 

 

「それにしても中佐は全く隙のない身のこなしだったな」

 

 

この微妙にずれた発言をしたのは、これまたなかなかの美女である。カルーアよりも少しだけ小さいが、体型は凹凸のはっきりした物でありながら、しなやかな筋肉がついていることがわかるある意味で理想的な肉体である。前は片目が隠れるほど長いものの、全体的に短めの濃い蒼の髪がナノナノとは違った活動的な女性の魅力がある。そんな彼女はセルダール王国の騎士である。

しかも、最年少近衛隊長を務める凄腕の騎士である。七重の護剣の二つ名があり、今ではほとんど廃れてしまった特殊な剣技『練操剣』の使い手である。名はリリィ・C(カラメル)・シャーペッド。年齢は19歳。少々堅物なところが見受けられるが、EDENの感覚でいうのならば、軍人であり、新エンジェル隊の中で現在唯一の軍経験者である。将来的にはEDEN軍(旧トランスバール皇国軍)のルーンエンジェル隊に所属する予定だ。

EDENと初接触の際には良い印象を持っていなかったようだが、フォルテとの剣対銃の獲物での決闘により、フォルテの事を信頼するようになったという経緯を持つ女性だ。

 

この3人にアプリコット・桜葉を加えた4人を訓練終了後に正式に新生エンジェル隊隊員として結成されるのが『ルーンエンジェル隊』である。

 

彼女たちは日夜訓練中なのである。もちろん訓練だけやるなど、エンジェル隊には合うわけがない。そのような人物はお呼びではないのだ。そう、彼女たちに求められるのはいかに一定以上与えられるストレス環境の中で良いパフォーマンスを出せるかという哲学的、自分に対する問題、そういったものなのだ。

紋章機は、搭乗者のテンションで大幅に力が変動してしまう、非常に軍に向かない機体なのだ。だからこそパイロットは現在最低限の軍規などの座学を学び、自衛のための銃の扱いを受ける合間、『息の抜き方』を自分なりに見つけるのがお仕事なのである。

 

だからこそ、現在彼女たちは、セルダール王城の中にあるカフェテリアへと足を運んでいるのだ。これも仕事だという大義名分をもって。

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦ルクシオール完成 そのニュースは軍関係者の中では非常に大きな注目をええた。全長が1km近い艦なのだが、横幅、全高も同じような大きさであり、正面から見ると十字架のような形をしているそれが、ルクシオールだ。

過去の艦の系譜には含まれない試験艦のようなものであり、最新の技術を惜しげなく使った非常に高性能なものだ。

 

そして、皇国初のVチップ搭載艦である。これには多くの保守派の反対があったものの、優秀なヴァル・ファスクが操舵した場合、数m単位での精密な操作が可能になるというメリットは絶大であり、また今後の平行世界間の交流も考えての事である。

この艦の格納庫には、NEUE製の紋章機が搭載されるように調整が施されており、実質ルーンエンジェル隊の紋章機の空母であった。そんな艦は現在タクトと数人のブリッジクルーが試験的な航海の練習を兼ねてトランスバール本星からNEUEまでの移動をしていた。丁度セルダールにつくころには、エンジェル隊が正式に配属になる運びである。

 

 

そんな新造の戦艦にラクレットはいた。すでに彼の教官としての仕事はほぼ終了している。半年繰り上げられた予定の為、訓練兵5人は現在白き月において実機を利用した開発実験。要するにテストパイロットとしての仕事を始めたところだ。一応身分上は訓練兵であるが、時期に正式に任官する運びだ。また、形骸化したとはいえEDEN製紋章機のパイロットとして白き月の聖母シャトヤーンへの顔合わせの意味も大きい。

事実数週間の逗留の後、機体と共にEDENへと再び戻ってくるのだから。そうしてEDENにおいて正式に任官した後に各自配属先が決定するという訳だ。

 

 

さて、ラクレットが今ルクシオールにいる理由は、ノアとカマンベールが彼の機体を届けにやってきたからだ。EDENに寄港したタイミングでラクレットに機体の実物を提示するのである。一応機体自体はラクレット個人の所有物であるために、軍が民間から兵器を借り受けている扱いになるのだ。その為にこのような面倒な手続きになる。

それと、ホーリーブラッドの最終調整の山場を終え、ちょっとしたEDENへの帰省という名の遅めの新婚旅行が目的の夫婦もいるのだが、それは置いておこう。

 

 

「来たわね、ラクレット。ようやく完成したわ。ホーリーブラッドの調整の合間にいじったりしていたからすごい時間がかかったわ」

 

「あはは、確かに実機に乗るのは、マイヤーズ夫妻を迎えた日以来ですね」

 

 

413年からなので丸々3年ほど搭乗していない計算だ。シミュレーションは欠かさなかったので、問題はないであろうが。彼の機体はEDEN防衛戦で損傷して以来、ノアやカマンベールを筆頭に優秀な科学者が常に弄り回してきたのである。実際エタニティーソードを長期にわたって研究することができた為にホーリーブラッドは大幅に早く、そして強力に製造することができているのだから。

 

 

「結局、いろいろ試したのだけど、火器をつけることは不可能だという結論に落ち着いたわ。ミサイル位なら、とも思ったのだけれど、そのスペースがあったら、スラスターに回した方がトータル火力が高いというふざけた仕様よ」

 

 

そもそも機体コンセプトが、戦闘機による近接戦闘を観戦して楽しむためのもの。と推測されている位なのだから、仕方ないと言える。そんな、彼の機体エタニティーソードは最近の研究でNEUE系統の戦闘機であることが判明した。NEUE紋章機にも同様に巡航形態(クルーズヴォイス)と戦闘形態(バトルヴォイス)に形態分けされるという点で同一なのだ。しかしエタニティーソードには、紋章が印されていなかった。

 

 

「それじゃあ、早速実物を見てもらうわよ」

 

そういって、ノアがラクレットを連れ添って、ルクシオールの格納庫にある巨大なコンテナの前に立つ。ノアが手元のコンソールを操作すると、コンテナが展開しまるでアニメの戦闘機が出撃するかのように、コンテナ内部の床がせり上がる。顔には出さないものの、ラクレットが興奮していると、出てきたエタニティーソードはまず色が違った。濃い蒼色だった機体は完全な黒に染まっておりマットブラックであった。そして形状も変化していた。全高12m 全幅20m 全長20mの平たい形の機体だったのが、一回り大きくなり、全体的に装甲が増えている。確認してみると、ギリギリ中型戦闘機の範囲に入るが、本当にギリギリの規格であった。

そして、何よりも彼が目に行った変化。それは

 

 

「剣が太く両刃になって真ん中に切れ目……まさか」

 

「驚いた? アンタ前から手数が足りなさそうにしていたからね。強度を実用レベルまで持っていくのに苦労したわ────剣の本数を可変にするのは」

 

 

元々、エタニティーソードは特殊兵装を使用する際に、双剣を一つにまとめて、高出力のエネルギーを収束させて繰り出すものだ。しかし最近ではシンクロ率が上限まで高まっており、これ以上の強化が図れないでいた。ラクレットの人間(パイロット)としての成長は打ち止めになってしまった。

しかし、今回の改修の目玉となる物、それは、剣の形態の変化だ。双剣がそれぞれ2本の剣をベースとした剣になったのだ。そうそれはつまり

 

 

「今のエタニティーソードは4刀流までできるわ。状況次第で本数の可変が可能。そして特殊兵装の時も、そもそも剣を1つにする必要がなくなったわ。アンタのシンクロ率ならば2分割しても十分に出力が出し切れる。機体自体の性能上限も上がったから、将来的には4本で撃てるかもね」

 

 

そう、機体側の限界まで追いついたのならば、今度は機体を発展させるだけだ。エタニティーソードは生まれ変わった。剣と一体となっている腕まで分離できるので正面から見れば、Xを描くようなフォルムになる。加えて腕の稼動域を人間の腕と同じだったものを、360度動くようにもしたため、全方位に瞬時に対応できるようになった。これが攻撃面での強化。

機動面では機体を大型化したために、スラスターやブースターを追加で搭載できるようになった。加速力は落ち、旋回性能も若干低下したが、最高速度と何より回避性能が上昇した。今まで以上に敵艦の群れに突っ込み場を荒らすという事に特化している。役割遂行能力が上がったともいえる。

操縦に関しては、トリックマスターと同じように思念操作を採用した。もちろん従来通りに2本レバーを主体とした操作だが、4刀流にすると無理があるのだ。これによりしばらくの訓練は必要なものの、慣れれば、自分の思い通りに4本の腕を駆使することができるのだ。

 

 

「この機体の新しい名前、と言っても改修機だからバージョン違いね。まあとにかく、機体名は『Eternity Sword Variable』略してESVにするのも エタニティーソードVにするのも自由よ」

 

「ヴァリアブル……可変機体ですね。元々その方向でしたから。うん、しっくりくる。よろしくな! 相棒!! 」

 

 

最近成りを潜めていた彼の子供っぽい感情。新機体を手にした高揚感が身を包む。幸福感と共に、彼はまた一段高みに昇ろうとしていた。愛機と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

この機体を用いた実機演習を、最後に訓練兵の実力を試す名目で行ったところ。ラクレットがはしゃぎ過ぎてしまい、新型紋章機ホーリーブラッドの性能が一部反対派から疑問視されてしまうことにまで発展してしまったのだが、それは完全に余談であろう。

 

 

 

 

そして少しの時は流れる

 

 

 

「やあ、ラクレット。久しぶり」

 

「タクトさん、お久しぶりです。ココさんも」

 

 

ルーンエンジェル隊が結成され、正式にルクシオールに配属された。艦には4機の紋章機と4人の隊員がいた。『ルクシオール』は『エルシオール』と共にNEUE復興計画に力を入れており、NEUEを忙しく行き来していた。まずは交通網の整備、その後起動している古代遺跡の防衛装置の停止や無力化など多くの仕事があったのだ。

そんな中、Absoluteに一時的な補給および、タクトのミルフィーと会いたいがための行動もあり立ち寄ったのだが、その艦が見える執務室らしき場所にラクレットは呼ばれていた。正式な命令で、秘密裏に来るようにと指示を受けたのだ。

 

此処の所は、EDEN各地にホーリーブラッドのコンバットプルーフと、同時に実戦経験を獲得するために散っていった教え子達と要所で合流しながら、小型の巡洋艦を母艦に海賊討伐に励んでいたのだが、かなり上の方からの命令の為彼は素直に従うことにしたのだ。

 

 

「さて、ブレイブハートについては、一通り知っているね? 」

 

「……はい、最後に発見された紋章機。しかもブースターとして合体をする機能を持ったそれですね」

 

 

そう、エンジェル隊の正式発足とほぼ同じころ、最後に見つかった紋章機それは『ブレイブハート』という名のものだった。その紋章機はクロノストリングもH.A.L.Oシステムも搭載していない。武装も機銃程度と貧弱であるが、NEUE製紋章機と合体することによって、凄まじい戦闘力を発揮することができるのだ。

紋章機の全ての性能が底上げされるというのだから、その強力さがわかるであろう。各紋章機には得手不得手があるため、状況に応じてチームの短所を補ったり長所を伸ばしたりといった運用ができるのだ。

 

 

「重要なのは、操縦者さ。紋章機側の操縦者との信頼関係が大きくなればなるほど、より強い力を発揮できる。まあ、パイロットは前のオレみたいな仕事ができなきゃだめだね」

 

「僕には無理そうですね。それは」

 

「うん、上の方からは是非に中尉がやるべきだって来たけど、まあ、新しく選ぶことにしたんだ。NEUEで公募を募って、ミルフィーが抽選する。そういう形になった」

 

「それが良いかと」

 

 

さすがに、新生エンジェル隊の面々と絆を築き上げともに高め合う関係になれるとは思えなかった。現状の実力に大きな隔たりがあるのに加えて、初対面の異性と仲良くなるまでの時間が、彼の年齢の男性の平均から『少々』遅いというラクレットには不向きな仕事であろう。

彼は、誰とでもすぐ仲良くなるタイプではない。だが仲良くなってしまえば本気で相手に良くしようとする。そういった人物なので、向いていないという事もないであろうが。とタクトは内心思っていたが、本人が乗り気でないために自分の決定は間違っていなかったことを改めて確信した。

 

 

「だけどね、どうしても不安が残るわけさ。EDEN最新鋭の艦に、まあオレという世間一般では英雄とされる人物。NEUE銀河に少なくない数居るEDEN排斥派からすれば格好の対象さ」

 

「そうですね、そしてそれを守るのはNEUE側の人間を主体とした数機しかない戦闘機部隊。性能はピカイチですが、人員の実力と経験に不安が残ると」

 

「そういうことさ。Vチップでも揉めたというのに、まあ女皇陛下に意見を言える人員が育ってきているという事を喜ぶべきだと先生も言っていたけどね」

 

 

そう、皇国で懸念されているのは、この『ルクシオール』の『戦力の低さ』である。最新鋭のルクシオールは艦足も速く、セルダール連合を中心に活動する『エルシオール』とは違いより広い範囲を活動領域と定められた『ルクシオール』には連合の統治領域から外れた地域も回るのだ。

そして、搭載されている戦闘機は艦のサイズからすると極端なまでに少ない。大型戦闘機であり、整備にも場所にもかなりのリソースを割くことになる紋章機は、他の戦闘機とは相性が悪いのだ。いくら『ルクシオール』が最新鋭艦だとしても、現在鋭意制作中の専用武装ができるまでは戦力的に不安が残るであろう。

 

 

「『ブレイブハート』のパイロットは丁度今エンジェル隊立ち合いの元、ミルフィーの抽選をやっていると思う。パイロットはこれから半年の集中訓練を受けた後、ルクシオールに来る。そうしたら、本格的な活動が始まる。それまでにこの艦のパイロット達を保守派のお歴々が納得するレベルまで伸ばすのは難しい。実戦経験があればいいんだろうけどね。だから優秀な護衛と万が一の時に対応できる人員を配属させることにした」

 

 

タクトはそういいながら、自分の手元から極秘と記されたデータが直接端末を接触させ有線でラクレットに渡されるのを眺める。ラクレットは一応周囲を確認してから、それを開封した。

 

 

「その人物には普段はオレ専属のボディーガード兼秘書のような扱いで艦では雑用をしてもらうことになる。戦闘時もよっぽどの事がない限り戦力としてはカウントしない。実際エンジェル隊だけで十分な戦力ではあるからね、エンジェル隊には彼が戦闘機パイロットだという事も伏せておく。保険があると知られればどこか油断が生まれるからね。彼女たちの成長の為にも最後の最後まで切らないジョーカーとする。これには保守派の歴々も納得している」

 

「あのー、この人物のプロフィールどこかで見たことがあるのですが……」

 

「名前は『織旗楽人(おりはたらくと)』旧文明の系統の名前だが出身は不明。階級は中尉。首にチョーカーのようなものをつけている。これは皇国のとある研究者が秘密裏に研究していた、変身器具『影首輪』を改良したものと酷似しているが関連は不明」

 

 

タクトは先ほどまでの真面目な顔を止め、いつもの少々へらへらした笑みを浮かべてそういう。いつから決まっていたことなのか、それっぽい理由も何者かの陰謀によってはめられただけで後付なのか。久しぶりに誰かの陰謀に知らず内に巻き込まれたこの感覚をラクレットは懐かしく思いながら、叫ぼうとしてやめた。『自分の事ではない』のだから。

 

肩を落として前向きに考え直すことにする。最新鋭の艦のクルーだ。しかもNEUEを拠点とする。艦の中の通貨はギャラであろうし、金銭に困ることはなかろう。休みの日にどこかに講演に行ったりCMやインタビューの為に出かけたりも無くなる。いいじゃないか。そう思い直すことにしたのだ。

 

 

「なるほど、彼でしたら少々縁がありますので、必要な道具や命令等があれば伝えておきます」

 

「ああ、それじゃあ、これが例のチョーカー。説明はさっきのファイルに入っているから。彼のコンテナに厳重に隠された機体が物資として搬入される4か月後に着任。それまでは今まで通りの任務を続けるように。それじゃあよろしくね」

 

 

こうしてラクレットは面倒な任務を伝えるために、彼の自室へと戻ったのである。

これが銀河を、いや全ての生きとし生けるものが望む選択だったのか、それともその友としての因果なのか。それは誰にもわからなかった。

 

わかっているのは、計画が一歩前進してほくそ笑むタクトがいることと、今後数か月の間にEDENにおける海賊の発生率が大幅に低下し検挙率が9割を超える事だけであった。

 

 

 

 




織旗楽人……何者なんだ……

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