流星のロックマン Arrange The Original 2   作:悲傷

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第43話.孤高の力

 ブライの挑発にロックマンブライは簡単に乗ってきた。ウェーブロードを一直線に駆け、ベルセルクを振りかぶる。エランドたちを紙切れのように消し飛ばした破壊の一撃だ。

 それに対し、ブライは微塵も揺るがなかった。拳を下から上に突き上げる。

 

「ブライバースト!」

 

 地を這う衝撃波がウェーブロードを抉りながら突き進む。猛進していたロックマンはまともにそれを受けた。大剣ごと吹き飛ばされ、体が宙に浮いた。

 ロックマンは眼下のブライを睨み付けるとシノビにトライブオンした。近くのウェーブロードを蹴り飛ばし、ブライの周りを上下左右にと動き回り、翻弄を試みる。

 だが、ブライは見向きもしなかった。

 

「地を伝う衝撃から逃れるための工夫か。思考能力は残っている……いや、本能で理解しているだけか?」

 

 ロックマンが巻き起こす大気の渦の中で、ブライは静かに目を閉じる。それをチャンスと思ったのか、ロックマンが攻勢に出る。巨大な手裏剣を手元に多数召喚し、ブライの背中に投げつけたのだ。

 それをブライは待っていたのだ。右拳で闘気が膨れ上がらせ、振り返りざまに腕を振った。

 

「ブライナックル!」

 

 拳型の闘気が群れを成して迎え撃つ。放った攻撃の密度が違った。手裏剣の数が7,8枚なのに比べて、ブライの拳は軽く20程はある。手裏剣たちが次々と砕かれ、拳が雨となってロックマンに襲い掛かる。とっさにロックマンは腕を交差し、足を曲げて体を小さくする。肩に一発、続けざまに足に一発被弾した。防御姿勢が崩れたところに、最後の一発が直撃し、ウェーブロードに撃ち落とされる。

 ブライはこのチャンスを逃さない。起き上がろうとするシノビスタイルのロックマンに追撃をしかけようと距離を縮める。ロックマンも危機に気づいたのか、自慢のスピードを生かして別のウェーブロードへと跳躍する。それにブライが並行した。ロックマンのスピードについて来て見せたのだ。

 

「無駄だ。お前は俺から逃げることすらできないんだよ」

 

 ブライの拳がロックマンの胴を打ち上げた。間を置かずして顔面を殴り、顎を打ち上げる。そして空中で1回転すると踵落としを顔に打ち込んだ。

 

「ブライアーツ!」

 

 強力な一撃がロックマンを地面へと突き落とす。落ちた先で道路にヒビが入った。そこで赤いオーラが瞬いた。今度はダイナソーだ。ダメージをものともしていないのか、ただ痛覚がマヒしているだけなのか、跳び上がってウェーブロードへと戻ってきた。

 

「こんどは力任せか? いいだろう、来い」

 

 目が黒くなり、置物のようになったウォーロックの顔が前方にかざされる。左手の砲口でダイナソーの野性味溢れる炎が燃え上がり、火球が放たれる。ブライは避ける動作すら見せなかった。爆炎が巻き起こり、辺りの空気を焦がした。その中をブライは悠然と歩んできてみせた。

 彼の前方に異変が起きていた。透明な……だが白い紋様が刻まれた1枚の壁が形成されていたのだ。大きさはブライの全身を優に覆えるほど。

 

「驚いたか? これは『電波障壁』。あらゆる物を断ち切り、拒絶する力。己との関係を自ら絶ち切り、孤高を極めた者にのみ扱うことができる絶対防御……。そう、俺のみに扱うことが許された奥義だ」

 

 ロックマンはもう一度トライブオンする。最初のベルセルクだ。

 

「良いだろう。最後にもう一つ見せてやる」

 

 ブライが右手を前にかざす。すると彼の手の内から何かが生成された。それは柄となり、白銀色の刀身を形作り、一振りの長剣が召喚された。

 

「ブライソード……」

 

 ブライが剣を構えると、ロックマンは振りかぶって駆け出した。ブライも応じる。2人の剣がぶつかり合う。ロックマンの大剣をブライの剣が横に弾いた。小回りの利く長剣がロックマンの肩を斬りつける。

 痛みに悶えることもなく、ロックマンは剣を戻すようにして薙ぎ払う。ブライは落ち着いて後ろに飛んでかわすと、すぐに距離を詰める。

 

「剣はこうやって使うんだよ!!」

 

 一瞬の合間に、剣先が複数の線を描いた。その数だけロックマンの体に鋭い傷が刻まれた。ここまでのダメージが積み重なったのか、ロックマンが後退する。ブライはそのまま連撃をたたき込む。剣に黒い闘気を纏わせた。

 

「ブライスラッシュ!」

 

 剣を一薙ぎする。無数の斬撃が嵐となってロックマンの体を切り刻む。とうとうロックマンが膝をついた。

 そんな彼の姿に目を細めると、ブライは空中へと飛び上がった。先ほどとは比べ物にならないほどの闘気を剣に込める。

 大技を予感させる動きにロックマンは体を無理やり起こして見せた。そしてこちらもベルセルクにエネルギーを込める。彼の奥義、サンダーボルトブレイドの準備だ。だが、雷の色は黒に変色してた。

 

「それぐらいやってもらわいとな……行くぞ! ブライブレイク!!」

 

 ブライが空中を駆けた。ロックマンは片足を下げて地面に腰を据える。2人が剣を振るう。黒い力がぶつかり合った。

 結果は圧倒的なまでのブライの勝利だった。大きく吹き飛ばされるロックマン。彼はウェーブロードを転がると、うつむけに伏して動かなくなった。黒い力が抜け落ち、青い姿へと戻る。

 

「…………こんなものか」

 

 ブライが落胆した声で言った。だらりと剣を下ろすブライの前に、戦いを見守っていたエンプティーが下りてくる。

 

「もうよかろう、ソロよ。とどめは私が刺そう」

「好きにしろ。もうこいつに興味は無い。オーパーツを手に入れた手柄もお前のものにすればいい」

「ではそうさせてもらおう」

 

 エンプティーが両手を広げる。するとロックマンの周囲に幾つもの球体が生成された。大きさは野球ボールほどで、色は赤、青、黄、緑の四色。

 

「せめてもの情けだ。私の奥義で葬ってやろう。四属性の波に飲まれ、跡形もなく消え去るが良い」

 

 多数の弾がロックマンの周りを回転し始め、虹となる。ロックマンは気を失ったまま動かない。広げられていたエンプティーの手が大きく交差された。

 

「エンプティーマジック!!」

 

 虹が収束する。中央にいるロックマン目掛けて。

 四属性の球がぶつかり合う。エネルギーの多量衝突により、大規模な爆発が引き起こされる。光が辺りを満たし、白く染めあげた。

 光が収まっていく。次第に状況がはっきりと見え始める。ロックマンがいた場所のウェーブロードが消し飛んでいた。2人の足元には粉々になったウェーブロードの破片。まるで小規模な隕石でも落ちたかのような有様だった。

 

「…………おい」

 

 しばらくして、周囲の周波数を探っていたブライが眉を顰めた。

 

「分かっている」

 

 ブライの意味ありげな問いかけに、エンプティーは軽く息をついた。

 

「逃げられたか。どうやらあの娘の仕業のようだ。待て、今は好きにさせてやれ」

 

 剣を握り締めるブライを宥めながら、エンプティーは空を見上げた。真っ暗だった。星ひとつ瞬いていないほどに。

 

「どうせ全ては私の掌の上なのだからな」

 

 エンプティーの声色にブライは少々の違和感を覚えた。喜んでいるわけでも、冷徹なわけでもない。どこか淡々とした口調。なぜか彼がそこにいないような……そんな気がした。

 

 

 

 寂しい夜空を見つめる彼が仮面の下でどんな顔をしていたのかは……誰も知らない。




先週、8月2日はミソラの誕生日と設定されている日でしたね。
流ロクファンが記念すべき日なのに、忘れてたよw
で、そのタイミングでスバルを裏切るミソラを描いてる私って……

ま、まあとりあえず、ミソラの誕生日(と設定されている日)おめでとう!!

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