聖☆お兄さん×HELLSING 戦争?ねぇよ、そんなもん!!   作:心太マグナム

2 / 9
こ、今回もシリアス…だと?

早くふざけたい……ふざけたいなぁ……

今回ブッダがマジ空気


2話〜吸血鬼の手と神の子の手〜

目の前の救世主に祈りを捧げる男はかつてヴラド三世という名で呼ばれ、当時世界トップクラスの力を持つオスマン帝国相手に闘った人物である。オスマンの手からキリスト教信者たちを守り、救った彼だが彼自身には救いは与えられなかった。イエスは肩膝立ちになると祈りを捧げるアーカードの手を優しく握る。神に祝福されたイエスがアーカードに触るとアーカードの手が焦げるような音と同時に煙が立ち上る。真祖であるアーカードでもイエスが本気の救世主モードになっていないとはいえ、神の祝福はアーカードの手を燃やし尽くすのに十分なのだ。しかしイエスはその手を離そうとせず、またアーカードもその手を振り払いはしなかった。アーカードはイエスを真っ直ぐに見つめながら叫びに近い声を上げる。

 

 

「ああメサイアよ……なぜ私の元に聖地(エルサレム)は降りてこなかったのですか!?私はあなたが沢山の人々に伝えた言葉を守るために祈り、闘いました!しかしその結果がこれなのです!守るべき領地も民も全て失なったのです!私の何が間違っていたのですか!?」

 

「ヴラド三世、竜の子よ…あなたの声は確かに届いていました。しかし私は何もしませんでした。あの時のあなたの元へ聖地を降ろすわけには行かなかったのです。私は人々に愛を教えました、あなたの祈りは闘いそのもの、闘いで聖地が降りてしまったのならこの世は地獄になってしまうと考えたからです。そしてあなたが信じていた神とオスマン帝国が信じる神はどちらも私の父なのです。信じる神が同じ故に父の子たる私は何もする事が出来ずその闘いを眺める事しか出来なかったのです。」

 

イエスは涙を流しながらアーカードの手をより強く握り締める。強く握り締めることでアーカードの手は灰になり崩れ落ちる。イエスはアーカードの手が崩れ落ちているのに気付かずアーカードの手がそこにあるように空を掴む。

 

「そして私が何もしなかった故にあなたは悲しい最後を迎え人間をやめてしまった……。この罪は数世紀経った今でも償いきれません。竜の子よ、私はあなたの怨むべき者『そんな事はない!私がこのザマになったのは私が選択したことなのです!あなたは何も悪くはない!ですからそのようなお顔はしてはいけない……』」

 

イエスがアーカードに自らの罪を訴えるとアーカードはそれ言わせんと言葉を上書きするように叫ぶ。アーカードは灰になった手を作り直すと空を掴むイエスの手を優しく握る。イエスの手を握るアーカードの顔は優しさを感じる笑みを浮かべていた。

 

「あなたは人々を救ってきた存在であり、そしてこれからも人々を救う役目がある。だからそのような顔は似合わない……そのようなお顔では救える人間すら救えません…笑うのです。神の子とはいえあなたは人間……人間には笑みこそが似合う」

 

「ヴラドくん…ありがとう……ありがとう……」

 

「……………」

 

イエスがアーカードの言葉に緩みかけていた涙腺が完全に緩み、目から止めどなく涙が溢れてくる。アーカードはイエスを暫く見つめた後立ち上がると息が弱々しくなってきたセラスの元へと歩きセラスを見下ろす。

 

「お前はやがて死ぬ。その傷ではどのみち助からない。私はあの方により少しかもしれんが救われた、だから私はあの方の真似事かもしれないが私もお前を救ってみようと思う。私はお前に2つの選択肢を与える、人間として死ぬか吸血鬼として生きるかの二つの道だ。」

 

 

「いや、選択肢はもう一つあるよ。もう一つの選択肢は人間として生きるか、だよ。」

 

「メサイア!?」

 

「神…様…?」

 

アーカードがセラスに選択肢を与えようとした時目を真っ赤に腫らしたイエスが割り込んでくる。セラスはぼんやりとした視界の中には片膝立ちで後光さすイエスの姿が目に入った。イエスはもう一つの選択肢をセラスに与えると同時に悲しそうな表情を見せる。

 

「しかしキミがこの選択肢をとった時、待っているのは恐怖の日々。キミは今日の事が一生離れなくなり、ずっと今日起こった事が頭から離れなくなりずっと怯える毎日が待っているよ。それでもいいのなら私は神の子として目の前の少女を助けるために奇跡を起こす事を約束するよ。」

 

「イ、イヤ……それは……それだけは……イヤ……!」

 

「そう……うん、わかったよ」

 

イエスの言葉でセラスは昔の事を思い出す。目の前で親を殺され、死んだのにも関わらず犯された母親が浮かんでくる。あの時の事は今でも夢に出てくる。もうあんな記憶は欲しくない、もう怯えたくない。セラスは涙を流しながら首を横に振る。イエスはそれを見て立ち上がり、一歩下がるとセラスの視界に再びアーカードのみが映る。アーカードはイエスを見てフッと笑うとセラスを見下ろす。

 

「メサイアから与えられた選択肢を捨てたか。愚かに見えるが実に面白い。では婦警よ、お前は残された選択肢のどれをとる?人間として死ぬのなら私が持つ右手の銃へと手を伸ばせ、吸血鬼として生きるのなら私の左手に向かって手を伸ばせ。人間として死ぬなら恐怖はお前の死と共に恐怖は忘却の彼方となる。吸血鬼として生きるのならお前は力を手に入れ、吸血鬼として果てしなく長い間生きていく中で恐怖は薄れるだろうがお前はただの化け物になる。さあ、お前ならどちらの選択肢を取るのだ?」

 

「(私は……神様の手を振りほどいてしまったけど……私は死にたくない……私は強さが欲しい……もう怯える毎日はイヤ……私は強さが欲しい……エディもサイモンも私が弱かったせいで私が逃げる時間を稼ぐためにあんな姿になってしまった……私が強ければ彼らは……もし私に今すぐ強さが手に入るなら……生きるためなら……私は何にでもなる……!)」

 

セラスがアーカードの左手へと手を伸ばしアーカードの左手を掴むとアーカードはニヤリと笑い、口を開いて肉食獣のような牙を見せる。

 

「お前はこの選択肢を取るのだな……ドラキュリーナの道への選択肢を。もう人間には戻れない……後悔するなよ?」

 

アーカードはセラスの首に噛み付くとセラスの血を吸う。セラスは血に吸われながら一種の快感を感じながら眠りについた。アーカードは口元に流れた血を手で拭うとニヤリと笑い、セラスを祝福する

 

「ようこそ婦警、夜の世界へ……」

 

______

 

眠るセラスを運ぶアーカードの少し離れた後ろでイエスとブッダがアーカードについて行くように歩いている。ブッダは先程の出来事について気になった事をイエスに聞く。

 

「イエス、あの時婦警さんに出した選択肢の後に言った言葉。なんであんな風に言ったんだい?あれじゃあ最初から婦警さんにキミが出した選択肢を捨てさせるようじゃない」

 

「……私は彼女が私が出した選択肢をとった時に後に起こる事を包み隠さず言っただけ、選択肢を捨てさせようと言ったわけではないよ。彼女は私の言葉を聞いた上で私の手を振り払った……彼女は私の手では無くてヴラドくんの手を取った……それだけだよ」

 

それだけじゃ、ないんじゃないかな?とブッダは言葉に出さずにそう思うとブッダは満月を見上げる。

 

「そう……もう私は何も言わないでおくよ」

 

「…うん、ありがとうブッダ」

 

ブッダの行動にイエスは礼を言うとブッダと同じように満月を見上げる。少し離れていながらもブッダとイエスの会話をはっきりと聞いていたアーカードはふっと笑うと満月を眺める。

 

「メサイアよ……やはりあなたは……いや、何も言うまい。……フフ、それにしてもいい夜だ…こんな美しい夜だ、メサイアと悟りに至った男に会っても可笑しくない……あぁ本当に…」

 

「「「なんて美しい満月だ……」」」

 

沢山の星が煌めく中でどの星よりも美しい月は新たに生まれたドラキュリーナを祝福しているように見える。そしてその美しく光る月を神の子、目覚めた人、ドラキュラが歩きながら眺めていた。

 

 

 

 




ちょっと駆け足だったかな?でも私の文章ではこれが限界なんだよなぁ

自分なりの考えなのですが聖地(イェルサレム)=天国と考えて書いてます。

キリスト教とイスラム教は信じる神は同じですが信仰?の仕方が違うんですよねぇ。イスラム教はキリスト教は神とイエスと精霊の三位一体でイスラム教は神のみだったかな?随分昔に学んだのでちょっと記憶があやふやです。

ちょっと不自然に感じたかもしれませんがご了承を。

これ書きながら思ったのが神の名(わかるのは神聖四文字のみ)がわからない宗教が世界で最も信仰されているのがなんか面白いですねぇ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。