異世界戦記   作:日本武尊

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第五十八話 

 

 

 

「くそっ! 何なんだよ!」

 

 突然の攻撃を受けたロヴィエア側は何とか態勢を整えて砂浜の丘の陰に隠れ、モシンナガンやDP28、SG-43といった銃火器で地下トーチカに向けて発砲する。

 その後方では揚陸した榴弾砲D-1 152mm榴弾砲が一斉に火を吹き、同時に前進しているT-34-85の主砲から放たれる砲弾が各陣地に襲い掛かる。

 

「ここには誰も居ないんじゃなかったのか!?」

 

「口を動かしている暇があったら撃て!」

 

 モシンナガンに弾を装填しながら愚痴り、隣の歩兵がDP 28を撃ちながら大声で怒鳴る。

 

「とにかく撃て、撃ちまくれ!」

 

 SG-43を撃っていた歩兵は直後に頭を撃ち抜かれて後ろに倒れる。

 

 直後に空気を切り裂く音とともに榴弾が落下し、機関銃とその周辺に居る歩兵を吹き飛ばす。

 

「くそっ!!」

 

 歩兵の一人が上陸用舟艇に備え付けられた『DShk38重機関銃』を岩山の砲台陣地に向けて曳光弾交じりの弾を放つ。

 

 直後に独特の音と共に飛来してくる複数のロケット弾が上陸した用舟艇に次々と着弾して爆発を起こす。

 

「こちら上陸部隊! 艦隊司令部! 応答願います!!」

 

 

 

 

「司令! 上陸した部隊が攻撃を受けています!」

 

「なに!?」

 

 報告を聞いた司令官は目を見開き、窓際まで近付く。

 

「更に他の島に上陸した部隊も攻撃を受けていると報告が!」

 

「ぬぅ! まさかこの島々に他国の軍がいたとは」

 

 司令長官は腹立たしく歯軋りを立てる。

 

「どうしますか?」

 

「決まったことを! 我々の邪魔をする者は全て消すのだ!」

 

「ハッ!」

 

 

 その直後爆発音とともに金属が砕ける音が響く。

 

「な、何だ!?」

 

「ガングート3番艦、及び5番艦被弾!」

 

 通信手の報告を聞き司令長官と艦長は窓際に近付き双眼鏡を覗くと、ガングート級戦艦2隻が黒煙を上げている。

 その直後に海に面している岩壁内部にある砲台陣地から次々と砲撃が行われ、艦船の周囲に着弾して水柱を上げる。

 

「要塞の砲台陣地からの砲撃です!」

 

「ぬぅ、生意気な! 全艦撃ち返せ!! 砲台陣地を粉々に粉砕しろ!!」

 

 司令長官の指示ですぐさま全ての軍艦が主砲を岩壁の砲台陣地に向けられ、砲撃が行われ岩壁に次々と着弾する。

 砲台陣地側からやり返しといわんばかりに各種砲が一斉に放たれて重巡洋艦やガングート級戦艦に命中弾を与えるが、ガングート級戦艦が放った砲弾が砲台陣地に入り込み、直後に大爆発を起こす。

 

「見たか!」

 

 司令長官はグッと握り拳を作る。

 

 

 しかしその直後雷鳴のような轟音が辺りに響き渡った瞬間、ガングート級戦艦の1隻が文字通り粉々に粉砕され轟沈し、もう1隻の至近に空高く巨大な水柱が上がる。

 

「なっ!?」

 

 その光景に司令長官は目を見開き呆然となる。

 

 更に同じ雷鳴のような轟音が響き渡った瞬間、ソビエツキー・ソユーズ級戦艦の6番艦『ソビエツカヤ・アルメニア』の二本目の煙突とマストに巨大な物体が直撃して粉々に吹き飛ばされ、更にその周辺も吹き飛ばされて傾斜が生じ始める。

 

「ガングート3番艦轟沈! 9番艦に至近弾! アルメニアにも直撃弾!」

 

「馬鹿な。ガングートならまだしも、我が海軍最強のソビエツキー・ソユーズ級が!?」

 

 目の前の光景が信じられず呆然と立ち尽くす。

 

「っ!敵砲台陣地中央に巨大な大砲が!」

 

 見張り員の報告で誰もが砲台陣地中央に目を向けると、他の砲とは明らかに倍以上の大きさを持つ巨大な砲が4基その姿を見せている。

 

「な、何だあの大きさは!?」

 

「16インチ……いや、それ以上の大きさだ!」

 

「そんな馬鹿な!? 噂に聞くファシストの列車砲じゃないんだぞ!?」

 

 大砲の大きさに艦橋にいる誰もが驚愕の声を上げる。

 

 

 

「命中! 4発中2発が敵戦艦2隻に命中!! 1発は戦艦1隻の至近にて着弾!」

 

『おぉ!!』と陣地内に歓喜の声が上がる。

 

 先の砲撃は海に面した砲台陣地に配備された『六一糎列車砲』であり、先の大戦後はこのハヴァ島に解体して移送され、専用の転車台と共に4台が配備されている。

 

「っ! こうしてはおれん! 列車砲後退急げ! やつらはすぐに撃ってくるぞ!」

 

 すぐさま列車砲が下げられて、分厚い隔壁が下ろされると、そこに各戦艦から放たれた砲弾が命中するも貫徹には至らず弾き返される。

 

「装填急げ!」

 

 列車砲の停車後すぐに砲弾の装填作業が行われる。

 

「やつらはこの列車砲に警戒して退避するだろう。恐らく次の一撃のみになるな」

 

 列車砲を見ながら指揮官は呟いた。

 

 

 

 

『уаааааааааааааааа!!!』

 

 その頃別方向から上陸した部隊は戦車を盾にして山の各地からの銃撃と砲撃をものともせずに突き進む。

 

 各陣地からは83式155mm榴弾砲と84式203mm自走榴弾砲より榴弾が放たれ、その前には61式戦車に五式中戦車、グラミアム軍に売却された四式中戦車と三式中戦車改が砲撃を行い進撃中のT-34-85数輌に命中させて撃破する。

 

「くそっ! とんでもねぇ数だな!!」

 

 三式重機関銃改を放ちながら歩兵は愚痴り、弾が切れるとコッキングハンドルを引いてフィード・カバーを開け隣の兵が弾薬箱を開けてベルトリンクを取り出し、給弾口に差し込むとフィード・カバーを閉じてコッキングハンドルを引いて、U字型トリガーを押して射撃を再開する。

 

 四式中戦車が主砲より砲弾を放ち、T-34-85の右側履帯に着弾して起動輪とともに吹き飛ばすが、その直後にT-34-85の砲が四式中戦車に向けられた直後に砲弾が放たれ、四式中戦車の車体正面を貫通して内部で爆発を起こして隙間から黒煙を上げる。

 続けて走行中のT-34-85の放った砲弾が61式戦車のターレットリングに直撃し、砲塔旋回が不可能となる。

 

「グラミアムの四式がやられたぞ!」

 

「くそっ! やつらの戦車の砲、精度はよくないが強いぞ!」

 

 五式中戦車の車内で砲手と操縦手が叫び、直後に砲を放ってT-34-851輌を撃破すると自動装填装置で次弾が自動で装填され、短い間隔で砲撃をして更にT-34-851輌を撃破する。

 

 

 

 

「くそっ! やつらの戦車は手強いぞ!」

 

 ロヴィエア連邦軍のT-34-85の車長は他の戦車長に伝える。

 

 直後に隣を走っていたT-34-85が61式戦車の砲から放たれた徹甲弾が車体正面から貫通されて動きを止める。

 

「くっ! 怯むな! 数ではこっちが上だ! 突き進め!!」

 

 味方の被害をものともせずにロヴィエア連邦軍は突き進み、主砲や車載機銃と同軸機銃を次々と放っていく。

 

 

 

 

 その直後近くで走っているT-34-85が砲塔右側面に砲弾の直撃を受けて動きを止める。

 

「っ!?」

 

 車長は右方向にペリスコープを向けると、丘の陰に隠れていたグラミアム軍の戦車が姿を現して砲撃を行う。

 

「あれはゲルマニア軍のタイガーじゃないか!? なぜあの戦車がここに!?」

 

 それはグラミアムに売却された扶桑陸軍のティーガーなのだが、一部仕様変更していると言っても元が同じなのでロヴィエア連邦国軍の戦車長が見間違えるのは無理もない。

 

 直後にティーガーの放った砲弾がT-34-85の車体側面に直撃して貫徹し、動きを止める。

 

「くそっ! ファシスト共め!! こんな所にまで!」

 

 戦車長が叫んだ直後に61式戦車の放った砲弾がT-34-85の砲塔のターレットリングに着弾して貫徹し、砲塔と車内で爆発を起こして砲塔が吹き飛ぶ。

 

 

 

「よーい! ってぇっ!!」

 

 84式203mm自走榴弾砲の装填手が榴弾と装薬を装填し終えて合図とともに榴弾が放たれ、同時に他の84式203mm自走榴弾砲も砲撃し、弧を描いて榴弾が飛翔してT-34-85数輌の至近に着弾して履帯と転輪を吹き飛ばし、タンクデサントしていた歩兵が衝撃波によって吹き飛ばされる。

 

 尾栓を開けて次弾装填しようとしたとき、ロヴィエア連邦軍の空母から飛び立った航空機が飛来してくる。

 

「敵機来襲!!」

 

「対空戦闘! 敵機を撃ち落せ!!」

 

 敵機の存在にいち早く気付いた歩兵の一人が叫び、すぐさま扶桑陸軍の『87式自走高射機関砲』とグラミアム軍の一式対空戦車が銃身を上げて対空戦闘を始める。

 

 各陣地から放たれる弾幕に爆撃を行おうとした攻撃機は瞬く間に機体を蜂の巣にされて翼が折れ、機体を回転しながら墜落する。

 

「くそっ! やつらの対空砲は精確だぞ! 各機注意し――――」

 

 攻撃機のパイロットは他の機のパイロットに伝えようとするが、自身の乗る機体も87式自走高射機関砲の放った弾が機体下部からコクピットを貫き、パイロットは粉砕されて機体は墜落する。

 

 

 

「向こうは航空機を出してきやがったぞ! こっちの航空隊はどうなってんだ!」

 

「さっきの砲撃と爆撃で滑走路が無事なわけ無いだろ!!」

 

 銃手の文句を返しながら装填手は一式対空戦車三型の40mm連装機関砲に弾を装填する。

 

 装填手の言う通り、ハヴァ島にある島は艦砲射撃と爆撃によって穴だらけになっており、少なくとも早急に復旧ができるものではない。

 

「っ!? 敵機直上!!」

 

 歩兵の一人が叫び銃手が上を見ると爆撃姿勢に入った攻撃機が迫っていた。

 

 とっさに銃身の仰角を上げて足の撃発ペダルを踏んで射撃を行う。

 

 攻撃機は弾幕を恐れずに突っ込み、爆弾倉を開けて爆弾を投下するも、直後に40mmを翼の付け根に直撃して折れ、スピンしながら墜落する。

 

「退避! 退避!!」

 

 投下された爆弾は目的の自走砲と榴弾砲の陣地から外れて対空戦車の居る場所へと落ちていき、逃れるように歩兵や一式対空戦車が後退するが、その直後に爆弾が着弾して爆発し、衝撃波とともに放たれた破片が歩兵や一式対空戦車の乗員に襲い掛かる。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「足が! 足がぁ!?」

 

「衛生兵! 衛生兵!!」

 

 破片によって一式対空戦車の銃手と装填手、歩兵の多くが負傷し、腕や足が吹き飛んでもだえ苦しむ者に無事な兵が近づき衛生兵を呼ぶ。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「うわぁ、これは派手にやってくれたなぁ」

 

 その頃島の中央辺りにある飛行場では、艦砲射撃と爆撃によって滑走路に大小の穴が開いている光景を見た兵士が思わず声を漏らす。

 

「格納庫も全滅か」

 

 崩壊した格納庫は瓦礫の山と化しており、見る影も無い。

 

「でも、地下に格納庫を作って正解でしたね」

 

「あぁ。総司令の助言がなかったらどうなっていたことか」

 

 しかしこんな事もあろうかと、弘樹の案で飛行場の脇にある格納庫はあくまでも整備をする場所であって、航空機は地下の格納庫に収容されている。

 なので航空機自体は無事である……のだが――――

 

「でも、これどうするよ?」

 

 格納庫が崩壊しているため、地下に格納している航空機を地上に出すには瓦礫を撤去しなければならない。

 

「敵さんが来ないのを祈るしかないな」

 

「だな」

 

 そう呟きながら兵達は瓦礫の撤去作業に取り掛かろうとした。

 

 

 

「っ!」

 

 すると地面が僅かに揺れ金属の軋む音がしてとっさにその方向に視線を向けると、砂煙を上げながら進む戦車数輌とその上に乗る歩兵の姿があった。

 

「敵の戦車だ! 戦闘配置!」

 

 隊長の指示ですぐさま全員が所定の位置に着き、通信兵が無線を手にして応援を要請する。

 

「こちらハヴァ島中央飛行場! 進攻中の敵部隊を確認! 敵戦力は戦車を含む! 応援を請う! 送れ!」

 

『了解した。戦車1個小隊をそちらに送る。砲兵部隊にも支援要請を送る。それまで何とか食い止めてくれ。送れ』

 

「っ! 了解した! 終わり!」

 

 

「それで、何だって?」

 

「増援が来るまで俺達だけで食い止めてくれってさ」

 

「はぁ!? 無茶言うなよ! 戦車の大群に戦車3輌に対戦車兵器だけであの数を食い止めろってか!?」

 

「俺に文句言っても仕方ねぇだろ! それに別に全滅しろってわけじゃないんだ! 時間を稼げればそれでいい!」

「そうすれば砲兵の支援が来る!」

 

「あぁもう!! こうなったらやるだけやってやる!」

 

 兵士は愚痴を零しながら『76式対戦車噴進砲』の先端に対戦車榴弾を装填し、戦車の接近に備える。

 

 

 

 

 


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