今回の話は作者の技量不足で少しわかりづらいかもしれません。
苦情があれば書き直すつもりです。
「おいおい!?こいつは魔皇兵じゃねーか!?」
バンダナをつけた銀髪赤目の青年は少し焦るような表情になる。
「知ってるのかいクロウ?随分と強そうだが。」
それに答える紫髪の美少女は言葉の割にはどこまでも優雅だ。むしろ、薄い笑みを浮かべている。
「あぁ、こいつは暗黒時代のゴーレムだよ。自動修復能力があるから厄介なんだよ。」
「へぇ、それはまた大層なご相手なものだ。だが・・・」
「ま、俺たちならやれるか。」
「あぁ!」
二人に絶望の文字は存在しない。お互いを信頼しているからこそこの二人にはどんな状況ですら打開できるのだ。
「ムンクくん!?酷い怪我だよ、大丈夫!?」
「ミ・・ン、ト・・・?」
「待って!回復するね!」
「はぁぁティアラ!!」
回復アーツが僕の体をやさしく包む。全身ポカポカとしたかと思うと重症と思えた傷も軽症程度まで回復した。
流石にひしゃげていた左腕は回復しなかったが。なおるかなこれ。
「ミント、あの人達は・・・?」
「アンゼリカ先輩とクロウ先輩だよ!ほぇ〜あの2人凄いねぇ。あのでっかいのと互角以上だよ!」
あの2人は先輩だったのか。繋ぎを着た紫髪の美少女は見覚えがあった。
しかし、2人の戦闘はミントが感嘆するように凄いものだった。
二丁の魔導銃を扱うクロウが的確に関節部に攻撃を被弾させ魔皇兵の動きをほとんと封じている。
そしてアンゼリカ。その折れてしまうと錯覚するような華奢な身体からは想像できない拳撃の威力だ。
動きを見たところ一応同門だろうか?
動きの所々に泰斗流の特徴が見える。といっても僕以上にアレンジしているみたいだが。
「それにしてもミントのアーツは想像以上に効果が高いな・・うっ」
体を起こして立とうとしたら身体に鋭い痛みが走る。
「まだだめだよ!あくまで応急処置にしかアーツを使っていないんだから!」
ミントは慌ててフラフラ立ち上がる僕に肩を貸してくる。
「別に戦うつもりはないよ、、、あの2人めちゃくちゃ強いし。」
「そうだね。」
「まずいな、、、」
戦闘が再開され早五分―――
クロウとアンゼリカは魔皇兵を押していた。
ただ、押してはいるが圧倒はしていない。決め手に欠けている。
「えっ 何が?先輩達全然押してるよ?」
ミントから見たらそうなのかもしれないが恐らく現状は違う。
「いや、違う。クロウ・・・先輩がいってたでしょ?自動修復能力があるって。」
「ほぇ?どういうこと?」
「つまりだな、中途半端なダメージを与えても回復されちゃうってことだよ。」
「そ、それってまずくない!?」
そう。だからまずい。
しかも現状あの2人に決め手がない。
それに、あの2人も人間だ。後少し経てば体力の限界がどうしてもくるはずだ。
「やるしかないかっ・・・ぐぅっ!?」
体を無理矢理動かすと激痛が走る。
だけど、そんなこと気にしている状況ではない。
「ムンクくん!?なにするつもり!?」
「止めないでミント・・・今誰かが動かなきゃみんな死ぬ・・・やるしかないんだっ!」
ミントは眉を顰め泣き出しそうな顔を見せないかのようにうつむく。
少し罪悪感が胸をチクリと刺す。
「わかったよ・・」
「ごめんね、ミント・・・」
「違うよムンクくん・・・あたしが戦う!!」
「なっ!?」
あまりの提案に絶句してしまう。
「そんなのだめっ・・・あだだだだだ!!?」
「ほら!少し小突いただけでこんなんじゃん!そんなんじゃなにも出来ないよっ!」
このアホなにも思いっきり怪我してるとこを叩かなくてもいいじゃない・・・
「で、でも・・・」
「これ以上うだうだいうとフルボッコにするよ?」
「あ、はい。スイマセンデシタ・・・・・」
ミントの目は本気だった。こわい。
血の気がサーっと引いていく。この状態の僕をフルボッコしようとするとかどういう神経してんだ!
「解析開始・・・。これより対物理障壁を無効化する。」
ブウウウン
導力器特有の起動音がなる。
「行くよ!ディフェクター!!」
「グオッ!?」
魔皇兵はいきなり起きた体の異変に動揺する。
こう見えてミントのアーツの腕はピカイチだ。やろうと思えば上級アーツでも発動可能だろう。
まぁ、時々うっかりしたとか言って仲間にフレンドリーファイアするんだけどね・・・
だから、ミントは学園で密かに爆弾娘とか言われて恐れられている。
「よし!弱体化成功っ!!」
ディフェクターは相手を解析し弱体化させる技で使い方さえ間違えなければかなり強力な技だ。
余談ではあるが僕はミントにこの技をかけられたことがある。今でも腹が立つ。
「先輩達!!好機です!!」
この好機を見逃すクロウやアンゼリカではない。
すでに駆け出していた。
「クククッ 取って置きを見せてやるよ!」
クロウの魔導銃の銃口に赤黒いエネルギーが収束していく。どんどん集まるエネルギーはとどまることを知らず、そして高密度に圧縮される。
圧縮
圧縮
圧縮
「カオストリガー!!」
轟音と共に銃口から高密度のエネルギーの塊が打ち出される。それはもう言ってしまえばレーザーだ。
そしてそのレーザーはどんなものすら貫けないと思わせるような魔皇兵の重厚な鎧を抉るように突き破った。
「ゼリカ!!」
「応!!」
「はあああああああああああああああああああ!!!」
今度はアンゼリカだ。
彼女はただでさえ感じる力強いオーラを更に爆発させる。
とんでもなく攻撃的なオーラが彼女を包む。あまりのオーラに肌がざわつくほどに。
「行くぞ!!!ドラグナアアアア!!」
そして天井にぶつかるかと思うぐらいに高く跳躍。
そして一本の矢のように急降下。
「ハザーーーード!!!!」
けたたましい轟音と共に魔皇兵は物凄い勢いで吹き飛ばされる。
その鎧にもはや意味はなくあまりにも強大すぎるその威力はもう逆に同情するレベルだ。
壁に強く激突し魔皇兵は沈黙。その鎧はもうボロボロで鎧とは言えず単なる鉄くずにしかみえない。
「はぁはぁ、俺らの敵じゃなかったな」
「フッ・・・先輩の面目躍如だね」
二人はニヤリと笑いハイタッチした。
――――――
「強がったものの、今回はマジでギリギリだったな。」
「あぁ、強がってはいるがもうクタクタだよ。倒れそうだ。」
クロウとアンゼリカは肩で息をしている。それほどギリギリな戦いだった。
「あ!!そうそう嬢ちゃん!嬢ちゃんの補助でなんとか勝てたよ!」
「あぁ、ほんとにね。あれがなかったらどうなっていたかわからな―――。」
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
「おいおい!?まだ動くのかよ!?」
「もうひと頑張りか・・・。」
二人は構えるが顔にでる疲労は隠せていない。
「ま、まってなんだか様子がおかしい!!」
いきなり感じた違和感に僕は叫ぶ。
なんだこの嫌な感じ。
嫌な予感とは往々にして当たる。
いきなり魔皇兵の腕が倍になった。
しかも胸を締め付けるような威圧感は際限なく高くなっていく。
「あいつ!?腕が四本に!?」
「ここまで追い詰めてパワーアップか。やれやれ詰が甘かったね。」
「もう終わりなの・・・?」
状況は最悪。
クロウもアンゼリカも疲労困憊。ミントはそもそも補助向きだし、僕に至ってはダメージがでかすぎてお話にもならない。
それでもとクロウとアンゼリカは立ち向かうが力の差は歴然でもう勝負にもなっていない。
死が頭をよぎる。一度希望を持ったぶんその後の絶望はでかい。
「・・・・。」
おわり?終わり?オワリ?頭の中に言葉が何度も高速で繰り返される。
恐怖なのか、絶望によるものなのか頭の中にぐちゃぐちゃになった光景が何度もフラッシュバックする。
なんだこれは・・・
『少年・・・いやムンク。辛いかもしれないが生きてなよ。いつかいいことあるさ。』
綺麗な女性だ。腰までかかるような綺麗な髪、そして輝くカーネリアのような瞳。その瞳は見る人を吸い込むかのように魅了する。
そんな彼女が向日葵のような笑顔で話しかけてくる。
いや、これは知っている。知っていることだ。ただ、僕がずっと目を背けていたこと。
『なに?戦い方を教えてくれ?』
彼女は驚き、そして困ったように顔をしかめる。
『ぐふっ・・・。焼きが回ったか・・・。まぁ、これはアタシのミスだ。君が・・・気にする必要はない。』
最後の映像は目をそらしたくなるほど凄惨な光景だった。歪なほど巨大な腕が一人の女性を腹から貫いている。上半身と下半身はもう皮一枚で僅かに繋がっていた。
そして・・・・
そして・・・その腕の伸びる先には『僕が繋がっていた』
「・・・・・。」
いつ倒れてもおかしくないような身体を叱咤して無理矢理立ち上がらせる。
あぁ・・・。
あぁ、そうだ。いつもみたいに目を背けている場面じゃない。
「ムンクくん・・・?無茶だよ!?そんな体で!?もうボロボロだよ!?」
ミントが泣きながら叫んでくる。
分かってるよ。でも、いかなきゃ前へ。
「何するつもりだ・・・?」
「君、まさか捨て身の特攻でもするつもりかい。それは・・・。」
何か言っているがもう気にしない。正直誰にも見せるつもりもなかったし、見せたくもなかった。
それでも今必要なんだ。
「がああああああああああ!!!!!」
吠える。体の奥底から無理矢理何かを引きずり出すように思いっきり叫ぶ。
「骸騎纏」
地獄のそこからの唸りとも思えるような騒音とともに、黒い何かが僕の右腕を徘徊する。
幾重にも重なるようにでた黒い流れは螺旋を作り渦巻く。
そして巨大で、尚且つ歪な一本の腕を形成した。
今僕は右腕だけあまりに大きい化物に見えることだろう。いや、腕についているおまけと言ったほうがいいかもしれない。
「おいおい!?あの腕・・・!?」
「なんて禍々しいんだ・・・・。」
「あれが・・・ムンクくん・・・?」
「ギィッ!!?」
「はぁはぁ、とっとと終わらせよう・・・。僕もこんなものいつまでも出しておきたくない。」
禍々しいし、汚らわしいものだと自分でも思う。こんなもの1秒だって出していたくない。
今度は立場が逆だ。一歩。また一歩前行く。
「がああああああ!!!くらええええええええええええ!!!!!!!!!
巨大な黒い腕が魔皇兵に切りかかりホンの少しの間膠着したかと思うと黒い腕はまるで紙を割くかのように魔皇兵を縦に切り裂く。
魔皇兵の残骸はやかましく地面に転がったかと思えば次の瞬間光になって爆発するかのように霧散してしまった。
「もう・・・これ以上失ってたまるか・・・。」
ムンクの本気すげー と感じる作者。
というわけで今回はここまで!
次回もお楽しみに!