いうなれば軌跡の裏道   作:ゆーう1

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すいません、期間あきました・・・


ムンクと変態と変態と・・・

「うーん、慣れると意外と苦痛でもないや。」

 

「いや、慣れちゃいけないと思うんだが・・・」

 

椅子に縄で括り付けられた僕を隣に座るリィンがまるで未確認生物でも発見したのではないだろうかという顔になっている。

その顔で僕を見ないで。

 

「ムンク、其方はどこまでもそうなんだ・・・」

 

僕の斜め前に座る青鬼(ラウラ)が頭を抑えてる。

この程度で僕を正せると思うなよ。

 

僕がⅦ組に加入して早3日。

もう、僕が椅子に縄で括り付けられているのは日常風景とかしてしまった。

おかしいだろ、誰かつっこめよ。

こいつら順応高すぎ。

 

ミントに至っては

「あはは、なんかムンク君拉致された人質みたい!」

この有様である。くっそ、覚えとけよ。

 

僕は授業中寝てしてしかいないと憤慨したラウラは僕を寝ないように椅子に縛り付けた。

おかげで寝ずらくてしょうがない。

 

 

 

 

「んあ?もう放課後か・・・」

眠気がかなり残った混濁した頭を左右にふり眠気を緩和させる。

椅子に縛られようが授業中寝れるのだ。

あたりを見回すと教室には橙色の日差しがさしこんでいてすでに放課後だと言うことが分かった。

縛られたところで僕の睡眠を遮れると思うなよ。

 

「って!あれ!?僕縄に縛られたままじゃん!?」

 

え、これまじ!?ぼくこれ帰れないじゃん!?

どうすんのこれ!?

 

「だれかーーー!!だれかいないのかーー!!!」

 

叫んだところで放課後に人がいない教室ということで誰も反応しない。

 

「おう・・・神は我を見捨てたか。」

 

ガララッ

 

「おっ!?」

 

神は見捨てなかった!?

 

「む、ムンクか?こんな時間に教室で何をやってるのだ?」

 

教室に入ってきたのは凛とした雰囲気を放つ青髪の美少女。

つまり、ラウラ。

 

ぎゃあああああ!!!

 

もう、むちゃくちゃ嫌な予感しかしない。

 

「というか、何をしている?じゃないよ!!お前が僕を椅子に縛り付けてたんでしょ!!?」

 

「む、そう言えばそうだったな。それはすまなかった。」

 

あれ?すんなり謝った?

もっとこう説教的なことされると思ったのに。

 

ラウラは縄をスルスルと解く。

 

「んー、やっと解放だぁ。」

 

長い間縛り付けられたせいか痺れている身体を伸ばす。

 

「ムンク、この後はどうするのだ?」

 

「へ?」

 

「だから、この後はどうするのだ?良ければ一緒に帰らないか?」

 

 

 

「何をそんなビクビクしているのだ?男ならもっと堂々としたほうがよいのではないか?」

 

 

「え、まぁ、ね。あ、あはは。」

 

それは君に怯えてるからね。

何故か僕は今ラウラと一緒に下校している。

ラウラはどこからどう見ても美少女だ。

はい、うらやましと思った奴。今すぐ変わってくれ。

美少女と一緒に帰れるのは男のロマンだと言うことは認めよう。

ただ、ラウラとなると別だ。

正直日常的に制裁とか強制とか言われて暴力を受けているから恐怖しか湧いてこない。

まじで、誰か助けて。

もう、獅子に睨まれたありこんこみたいなね?

 

「其方はもう少し真面目になるつもりはないのか?」

 

「そんなこと言われてもなぁ・・・僕にやる気を出せってことは魚に陸上生活しろって言うぐらいのものだよ?」

 

「そんなに!?」

 

ラウラは驚愕するがこれが真実なのです。

魚は陸上では生活できないのです。それと同じで僕にやる気は出ないのです。

 

「全く・・・其方は何故この学院に来たのだ?」

ラウラは呆れたように半眼で視線を投げる。

 

「うーん。無理矢理いれられたというかなぁ。うん、まぁ、そんな感じ。」

 

「そんな理由で学院に・・・其方は目標とかはないのか?」

 

「目標・・・目標か。そうだなぁ、しいていうなら帰りたいかなぁ。」

そう。帰りたい。

いつだって僕は忘れない。この胸を掻き毟るような、焼き尽くすような思いを。

 

「?帰りたいなら帰ればよいではないか。」

 

「あ、あはは、まぁ、色々とわけがあってね。凄い遠い所にあって今は帰れないんだよ。」

 

ラウラはいまいち要領の得ない僕の話に疑問符を浮かべる。

「?では卒業後は故郷に帰るのか?」

 

「うん。出来ればそのつもりだよ・・・」

出来ればの話だが。

 

「そうか、それでは卒業後はあまり会えなくなるのだな。それは少しさみしいな・・・」

 

ラウラは少し俯き、その顔は少しさみしそうなものだった。

不意に見せられた表情に虚をつかれる。

 

「む、どうしたのだ?そんな口をあんぐりと開けて。私は何かおかしいことを言ったのか?」

 

そんな僕を見てラウラは首を傾げる。

 

「くくくっ いや、なんでもない。」

自然と笑みが零れる。

なんとも真っ直ぐな子だ。

こいつらはほんとまっすぐでいつも予想外に僕の心を穿つ。

 

「むぅ・・・人を笑うのは失礼だぞ。」

ラウラは頬を膨らませて不満顔を作る。

またそれが笑みをこみ上げさせてくる。

 

「こら!ムンク笑うな!!もうよい!」

そんな僕をみて憤慨したラウラは早歩きで僕をおいて行くように歩き出す。

 

 

「ちょ、ちょっと待って・・・むがが。」

 

 

 

「ん?ムンクはどこに行った???」

ラウラは振り向くとそこには先程までいたムンクの姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

「ん?ここは・・・?」

目を開けるとひたすら真っ暗だ。

おかしい・・・僕は確かラウラと一緒に帰っていたはずじゃ・・・

というかここどこ!?

暗くて何にも見えない。

 

 

「うっ 眩しい・・・」

いきなり明かりをつかられたせいで目が開けれない。

徐々に視界が回復し出すと何やら僕はまた椅子に縛り付けられていた。

え、また?

 

あたりを見渡すとここは学院の教室の一つだと言うことが分かった。

何故か僕を中心に机が円形に並べられている。

いやまじでなにこれ。

何より可笑しいのがなんか怪しげな魔術師みたいなマントを被ってるんだけど。

 

「これより第一級犯罪者の審議を行います。」

 

 

「へ?いや、え?」

 

 

「ぶん殴らせろーー!!」

 

「いや!拷問だ!!」

 

「オネイサマニチカヅクモノシアルノミ・・・」

蠢くなんか不気味な奴ら。

いや、もうイミワカンナイ。

 

「静粛に!静粛に!処刑は審議の後です!!」

 

 

いや、なにこれ。

一つ言わせてもらいたいんだけどさ、なんで処刑が前提?

 

「おや?どうしましたゴミカス?」

 

全く誰が呼ばれてるのかは分からないがひどい呼ばれようだなぁ。

ゴミカスなんて人に呼ぶ言葉じゃないよ。

「答えなさい。ゴミ屑!!」

 

パシンッ

 

「いたぁ!?って僕!!?」

思いっきりビンタされました。

どうやら僕はゴミカス呼ばわりらしい。

ひどい。

 

「僕が一体何したっていうの!?

というか君たち何!?」

 

 

 

「ふふふっ いいでしょう冥土の土産に答えてあげましょう。」

怪しげな集団は不敵な笑みを浮かべる。

というか僕冥土に行かされてしまうのか・・・

 

「誰よりも深くお慕いしております!!」

 

「「「「「お姉様!!!」」」」

 

「いつも背後より!!」

 

「「「「「お守りいたします!!」」」」」

 

「男はこの世に!!」

 

「「「「「不必要!!」」」」」

 

「この身の端から端まで全ては!!」

 

「「「「「あなた様のために!!」」」」」」

 

 

「「「「「我らトールズ支部ラウラ親衛隊!!!!」」」」」」

 

 

「ふふん。」

この怪しげな集団の真ん中にいる人物が誇ったように鼻を鳴らす。

 

あー、うん。いや、うん。

 

なにこれ。

とりあえず変態集団ということしか分からない。

 

「このウジ虫が。そろそろ自分の犯した罪を理解しましたか?」

 

「いや、全然意味わからな・・・へぶっ!?」

また、ビンタされた。

 

「全く、ほんとこの害虫は救い難いですね・・・。」

 

「ははっ モニカ嬢ここは私めに説明させてはいただけないでしょうか?」

 

「分かりました。」

というかこの二人見覚えがあるよ。一人はモニカという名前で確かラウラと同じ水泳部に入っている女子生徒。

もうひとりは確か、吹奏楽部の部長クレインだったはず・・・

 

「やぁ、ムンク君。僕が君の犯した罪を説明してあげよう。」

 

「いや罪ってなに?っていうか君も男じゃん!!」

 

「物事例外はつきものだよ。ラウラ親衛隊に男はその心の潔白性を示せば入れるのさ。」

 

いやルールガバガバじゃねーか。男は不必要じゃないのかよ。

だいたい僕の罪ってなんだよ!毎日自堕落に過ごしている僕に罪も糞もないだろ!!

うむ。よくよく考えたら僕に落ち度は全くないな。完璧無欠だな、うん。

その胸を伝えるとクレインは深くため息を吐く。

え?何か間違っていた?

 

「やれやれ君は本当に救いようがないね・・・いいかい君の罪はね!!」

 

「「「「ラウラ様の半径三十センチに近づいてること!!!」」」」

 

ポカーンと思考が停止。

 

何こいつら。とても関わりたいと思えない変態集団だよ。

街中で見かけたら誰も近寄らないだろうし、通報されることだろう。

というか誰か今すぐ通報してくれ。

 

「そもそもクラスメイトとか男いるでしょ・・・」

おかしくない?なんで僕だけこんな目に?

 

「節度ある付き合いならいいんです!!ただゴミ虫!!あなたは違います!!」

目の前のモニカは獣のように発狂する。

ある意味ホラーだよこれ。決して子供には見せられない。トラウマ確定となるだろう。

 

「あなたはその堕落しきった生活態度のせいでラウラに迷惑をかけ!なにより・・・」

 

 

「「「誰やりも多くラウラ様に関わってもらっている!!!殺したいほど妬ましい!!!!」」」

 

目の前の変態集団が殺意を言葉にし発狂しまくる。

ダメだ、こいつら誰かなんとかして・・・

 

「モニカ隊長!!こいつを殺させてください!!」

 

「もう我慢できません!!!」

 

「モニカ隊長!!!」

 

 

 

「その判決ちょっと待ったあああ!!!」

バンっと勢いよく開けられたドアの先には見慣れた顔があった。

普段はウザいと思えるぐらい明るい自信に満ちた表情は今や頼もしく見える。

 

「み、ミント!!」

 

「助けにきたよ、ムンクくん!!」

 

どうやって僕の危機を察したのかは分からないがこの状況では普段トラブルメーカーであるミントは女神に等しい。

え?普段あんなにボロクソに言ってる?ソンナジジツナイヨ。ミントハメガミ。

 

 

「おや?ミント君じゃないか?」

 

「ほえ?部長じゃないですか~こんなとこで何やってるんですか?」

そういえばクレインとミントはお互い面識があったのか。以前同じ吹奏楽部だとミントが言ってた気がする。

 

「ふふ、しいていうなら穢れ無き乙女の守り手をね。」

どう見たらラウラがそう写るんだろう?眼科いけよ。

よくて猪でしょあんなん。

 

 

「おお!流石ぶちょー!すごいですね!!」

あれ?なんかこの流れマズくね?

というかミント・・・何が凄いかも分からないのに凄いと褒めるとかどんだけスカスカな会話・・・。

君の頭のなかはスッカスカなの?

 

「ふふ、よければミント君、君も誇り高き我らの一員にならないかい?」

どこに誇りがあるのだろうか・・・。仮にあったとしても僕なら殴り捨てる。

 

「い、いいんですか!?ぜひ!ぜひ!」

 

「しかも三食おやつ昼寝付き!!!」

 

その言葉にミントに稲妻が走るようなエフェクトがかかる。

ミントの目は心なしか潤んでる。

「部長・・・アタシ一生ついていきます!!」

 

「アハハハハ!!さすがミント君だ!これから我らは同士だ!!」

 

「同士だ!!」

クレインに合わせてミントも叫ぶ。

 

「いやいやいやいや!!?君は僕を助けに来たんじゃないの!?」

 

 

「ムンクくんごめんね・・・。私たち敵どうしだから・・・。」

いきなりミントは目を伏せ悲しげな表情演出させる。

いや・・・そんなばりばりバトル小説みたいな雰囲気出されても困るんだけど・・・。しかも中身が驚くほどない。

 

 

「処刑・・・」

怪しげな集団の一人がぼそりと呟く。

 

「処刑・・・処刑・・・」

一人から始まったコールは瞬く間に広がり・・・

「処刑!!処刑!!処刑!!処刑!!」

いつの間にか始まった処刑の大合唱。その合唱にミントが加わってるのが解せぬ。

 

 

「これはもう判決を下すまでもないですね・・・。早速ですが死刑を執行します!!」

 

 

「うおおおおおお!!!!」

 

 

 

「その死刑待った!!」

また勢いよくドアが開かれた。

 

 

「き、貴様は!!第一級危険指定人物!!アンゼリカ・ログナー!!!」

 

 

「なるほどわざわざ自己紹介をする必要はないようだ。」

 

「何をしに来たんですか!!」

モニカがアンゼリカをまるで親の敵かのように睨みつける。怖い。

 

「あはは、私も嫌われたものだね。なに、挨拶さ挨拶。」

爽やかに笑っているが強烈な威圧感を放ってくる。

爽やかな笑顔の下に隠れた凄まじい威圧に一同はゴクリと喉を鳴らす。

「宣戦布告というね。」

 

その言葉を火蓋に乱闘が始まった。

アンゼリカvs変態集団。

もうなにこれ。

 

「ふふ、後輩君。何が何だか分からないって顔してるね。」

 

「あ、はい。」

十数人にもよる猛攻を軽く受け流しながらアンゼリカは僕に話しかけてくる。

いや、この人なんでこんなにも涼しげなの?

 

「前々から彼女らのことは警戒していたのさ。しかし随分と硬直状態が続いてね。」

すごいよこの人。蝶のように舞って攻撃を躱している。

 

「あまりじれったいのは好きじゃない。はっきりと言わせてもらおう!」

 

ラ ウ ラ 君 は 私 の も の だ !

 

そのあまりにもどうしようもない宣言はモニカの心の導火線をいとも簡単につけた。

「アンゼリカアアアアアログナアアアアア!!!!!」

モニカの表情はまるで鬼みたいだ。というかこの子、鬼とか悪魔に魂を渡しているのかってぐらい人間離れした表情と動きしてる。

 

 

「あ!いった!?」

誰だよ!俺を殴ったのは!?

 

「いった!?へぶっ!?だからいたいって!!」

乱闘のさなかど理不尽に暴力が雨のように飛んでくる。

 

 

「くぅっ 中々!!」

 

「とっととくたばりなさい!!!」

 

僕がボコボコにされている間に行われていた戦闘は凄まじいものだった。

モニカとアンゼリカ。

当然先輩ということもありアンゼリカに分がある。いや、それを差し引いてもアンゼリカの技量は凄まじいもので並大抵の力では相手にもならない。

が 今押しているのはモニカ。

 

「しっ しっ しっ」

凄まじい拳打の連撃。

拳が受け止められれば体をひねって蹴りを飛ばす。それも受け止められれば今度は頭突き。

止まらぬ連撃に思わず見とれてしまう。

 

 

「覚悟―――!!!」

「どわああ!!?」

 

見とれているといきなり鈍器が目の前をよぎった。

「ってミント何すんだよ!!!」

 

「私たち敵どうしだからね!!」

その設定まだ生きていたのか・・・

 

「というか、おかしいだろ!!君は僕を助けに来たんじゃないのか!?」

 

「ほぇ・・・?あれ?どうして私ここにきたんだっけ・・・?」

 

もうね・・・。あまりの馬鹿さ加減に呆れる。

 

「あ!?ムンクくん危なっーーー」

「へっ?」

 

目の前には拳が物凄い勢いで迫っていて・・・

 

 

 

後日談ではあるが、この事件の収拾はマカロフ教官がつけたらしい。

その場は丸く収まったが彼らの戦いは影では続いているという。

当然のごとく気絶した僕は保健室にいた。

ベアトリクス教官に保健室の常連扱いされていたのは地味にショックだった。

今回の事件で分かったことと言えばこの学院には変態しかいないということぐらいだ。

「はぁ・・・。」

自然とため息がでる。

気のせいと願いたいがここ最近ため息しついていない気がする。はぁ・・・・

 


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