夜の神は太陽に恋焦がれた   作:黒猫ノ月

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どうもです。

さあ、暴れますよ~~。彼が暴れますよ~~!

では、投稿です。


第5弾 「今日は、厄日だっ!!」

「遅いわ蒼真!ウチが呼んだら10分前には来んかっ!!」

 

「…………」

 

俺は今強襲科棟、通称〈闘技場〉に来ている。

訓練体育館じゃないのは、先生に呼ばれたらだいたいここに来い、ということだからだ。

俺は午後、強襲科に来るのは週に2、3回あればいい方で、ほとんどは高ランク任務や〈私用〉、《夜》の訓練などをしているから滅多にという訳ではないが、そんなには来ない。

来ても、射撃やトレーニングルームで鍛えるぐらいで、組み手などの実践訓練はしない。

俺と張り合うものもいないし、チームプレーも俺に追い付けないから意味がない。

唯一相手ができる男が1人居たのだが、ご存知の通り今はいない。

そういう訳で〈闘技場〉なぞにはそれこそ滅多に来ないのだが、呼ばれたということは

 

(……シメか‥‥手本か)

 

この2択だな、と考えていると、

 

「おい、聞いとんのか!?」

 

「……はい」

 

気付けば、目の前にメンチ切ってる蘭豹の顔。

 

(……そんな顔‥‥しなかったら、いいのに)

 

ていうか、10分前て。…………改めて思えば、正論か。

相手が正論とはかけ離れた蘭豹なので、思わずツッコんでしまった。

さすがに10分前は早いけど、5分前行動は基本だな。

とりあえず、了承の意を返すと

 

「……ふんっ、分かればいいんや。分かれば」

 

蘭豹は納得したようですぐに顔をどけ、振り向きざまに、

 

「じゃあ、奥に入って待っとけや」

 

「……はい」

 

そう言って蘭豹は訓練体育館の方に向かう。

 

(……さて‥‥どっちかね?)

 

俺はそう思いながらも、言う通りに闘技場の奥で待機する。

すると…

 

「……ああめんどくさっ」「なんで来なきゃいけねぇんだよ、たる~~」「あれでしょ、1年の誰かがチクったんでしょ?」「うっわ、後でシメて殺ろうぜ♪」

 

だらだらと闘技場の真ん中に集まる20人以上の1年ども。

 

(……あぁ、シメか)

 

奴らの態度と言動で全部わかってしまった、というか……。

 

(……分かりやす‥‥過ぎる)

 

まだ、グチグチ文句を垂れている奴らのもとに

 

「うるっさいわ!!」

 

 

 

ドッガーーーーン ッ!!!

 

 

 

蘭豹は余程イライラしてたのか、自分の銃S&W M500をぶっ放す。

 

「文句ある奴ぁ出てこいや、ボケがっ!!」

 

一気に静かになるが、どいつもこいつもその目には不満の色が見てとれる。

 

「……チッッ!」

 

蘭豹もそれがわかるのか、盛大に舌打ちをして腕を組み、何かを待っている。

 

(……もう‥…あんたが‥‥シメれば、いいのに)

 

そうは思うがあの人も一応教育者。自分でシメるのではなく、上には上がいることを教えるために俺が時たま呼ばれる。

因みに選択肢のもう1択は、強襲科のA・Bランクの者たちに色々な技を見せることだ。

俺は基本、教えてもらえば何でもこなすから、見本や手本として呼ばれることがある。

 

(……なら‥‥教えて、やろう)

 

上には上がいることを、そう思い闘技場に入ろうとすると、

 

ガヤガヤガヤ

 

何故か他の1年たちもこの闘技場にやって来た。

 

(……どういう‥‥ことだ?)

 

今までと違う状況に戸惑う中、

 

「全員そろたな、じゃあ入ってこいや!」

 

蘭豹が俺に向かってそういうので、

 

(……行くか)

 

とりあえず、闘技場の真ん中に行くことにした。

すると、

 

ザワザワザワッ

 

さっきとは異なるざわめきに俺は苦笑する。

 

(……まぁ、仕方ない‥‥か)

 

俺は強襲科の首席、しかもあの二つ名で呼ばれてるからな。

そんな喧騒の中、蘭豹が叫ぶ。

 

「静かにせいやっ!!」

 

蘭豹の声に黙る1年。

静かになった闘技場で蘭豹は言う。

 

「じゃあ今からお前らは〈全員〉でこいつと殺ってもらう」

 

その言葉にまた少しざわめくが、それよりも

 

「は~?これと~?」「嘗めてんのか? あ!?」「ざけんな!」「マジ調子のってるぜ、こいつ!」「意味分かんないんですケドッ!」

 

真ん中に集められた者の内、数名程がそんな声をあげながら俺に不愉快な視線を向ける。

 

(……救えない‥‥な)

 

才能だけで来たものは、彼我の戦力差を把握できない。

これは日常的に戦う者にとって致命的だ。

自分の力を過信し、その傲りが身を滅ぼす。

撤退や退くこと等を考えず攻めて、ほぼ確実に死亡する。

だから……

 

(……俺が、教える)

 

徹底的に、な。

声をあげなかった十数名は俺のことを知っているのか、はたまたまだ〈救える方〉なのか。

 

「おい蒼真。お前手ぇ抜くなよ?」

 

「……了解」

 

俺はそう言って、バカどものところに歩いていく。

 

「うっそマジでやんの?」「調子のってんじゃねぇぞ、あ?」「頭、狂ってんですか?」「さっさと片付けようや」

 

バカどもはまだなにか言っているが

 

「じゃあ、始めやっ!」

 

次の瞬間には……

 

 

 

ゴキッ

 

「っっぐああぁーー!!!」

 

ドサッ

 

 

 

静寂が場を支配した。

俺がしたことは、ただ単純に一番近くにいた奴の左腕を〈右腕〉だけで折っただけ。

右腕の肘と脇に挟んで折ってやった。

まぁ、バカどもには何があったか分からないだろうがな。

俺は右腕を押さえてうずくまっている奴の折れた右腕を

……

 

 

 

ガッ

 

「ぎぃやあああぁーーーーっっ!!!」

 

踵で踏みつける。

 

 

 

耳をつんざくような絶叫が辺りに響き渡る。

 

「ひ!?」「な、なななっ」「や、やだ」

 

 

 

「……ご託は‥‥いい」

 

 

 

「「「「「ッッッ!!?」」」」」

 

足をどけ、未だに態勢を整えていないバカどもに俺は告げる。

バカどもは恐怖で体が動かないのか、その場に突っ立ったまま、怯えた目で俺を見る。

それでもお前らA・Bランクか、と思いながら俺はそんなバカどもに、

 

「……構えろ」

 

冷めた目で見ながら、告げる。

 

「……でないと」

 

 

 

「…………身の保証は‥‥しない」

 

 

 

「「「「「ッッウオオォォーーーー!!!」」」」」

 

俺の言葉にバカどもは自分を奮い立たせ、俺に向かって来る。

 

「……さて」

 

俺はナイフで切り掛かろうとした男の右腕を掴みながら、呟く。

 

 

 

「……殺るか」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「ぎぃやああぁーーーーっっ!!!」

 

 

 

「ひっ……」

 

アタシはその絶叫につい悲鳴をあげてしまった。

アタシには夜神先輩があの男の右腕を折るところしか見えなかった。

なんて凄い人だろう、と思っていた瞬間に聞こえた絶叫。

夜神先輩はあろうことか、折った右腕を足でふんずけていた。

 

「よ、容赦ねぇ」「さすが、夜神先輩」「あいつら終わったな」「顔色変えずにあんなこと出来るか、普通?」「戦闘機人の名は伊達じゃねぇな」

 

回りの人達は口々にそう言っている。

 

〈戦闘機人〉

 

夜神先輩はそう言われている。

これは正式な二つ名ではなく、この武偵校で言われている二つ名だ。

夜神先輩がその二つ名で呼ばれる理由、それは先輩が例えどんなに傷つこうとも、表情を変えずに戦い続ける、戦闘ロボットみたいだから《戦闘機人》。

アタシは見たことがないが、見たことがあると言う女の先輩が言っていた。

 

 

 

「彼は、《化け物》よ」と

 

 

 

さらに詳しく聞けば、仲間を庇って2発の弾丸が左脚を貫いたのに、表情を変えることなく前線で戦い続け、見事犯人グループを逮捕したのだと言う。

 

 

 

アタシはその話を聞いたとき、まず最初に思ったことが……尊敬だった。

 

 

 

その先輩は今も他の1年たちに詳しく、夜神先輩がどれほど《化け物》なのか、を話しているがアタシはそうは思わなかった。

夜神先輩は仲間を身を呈して守り、その後も重症の怪我をものともせずに、仲間の足を引っ張らずに最後まで戦い抜いたのだ。

尊敬こそすれ、そんなふうに《化け物》呼ばわりするのはお門違いだと、そう思った。

けれど……

 

ゴキンッ

 

「ッガアァァーーッ!?」

 

ゴキッ

 

「ッイイイィィーーッ!!」

 

アタシは目の前の光景を目の当たりにし、女の先輩の言葉は真実なのだと、夜神先輩は《化け物》なのだと認めざるをえなかった。

無表情でありながら、刺すような鋭く冷たい眼差し。

そして淡々と相対する人の骨を1人づつ、確実に折っていく。

その姿は正に《戦闘機人》だった。

 

ゴキンッ

 

「ッアアアァァーーーー!!?」

 

また1人、左脚の骨が折られた。

20人以上いたA・Bランクの奴らが、今じゃ8人しかその場に立っていなかった。

対する夜神先輩は息切れ1つせずに、堂々と立っていた。

すると……

 

 

 

ドドドドーーーーン!!

 

 

 

「つぁっ!?」「ぐぅっ!?」「くぅっ!?」「なぁっ!?」

 

夜神先輩はいつの間に持っていたDEで、倒れていた奴らが先輩に向けていた銃を吹き飛した。

 

(夜神先輩は、後ろが見えんのかよ!?)

 

もう倒したと思われた者たちの、背後からの奇襲。

それを、分かっているかのように振り向きざまに4発。正確に相手の銃だけを吹き飛ばす。

 

(今のは……スゴかったな)

 

アタシが夜神先輩の凄さに感嘆していると

先輩はDEを持ったまま、8人に向かってゆっくりと歩いていく。

8人はさすがに立ち直ったのか、即座に全員で先輩を囲む。いや、囲もうとして……

 

ドオゥン!!

 

「うぐうぅぅっっ!!」

 

先輩の目の前にいた奴が右肩を押さえて膝をつく。

先輩は囲まれる寸前で、一気に目の前の奴に近づき近距離でDEを放って、奴の右肩を折ったようだ。

 

パパパパパパパパパパパーーーーン!!!

 

そんな先輩に背後から7人全員が銃を連射するが、先輩はすでにその場におらず、また次の瞬間には

 

ドオゥン!!

 

「っぐうぅうぅぅ!!」

 

女子生徒が1人、右肩を押さえて膝をついた。

残りは6人。

先輩はまた、そいつらに向かって歩き出す。

まるで恐怖を植え付けるように、ゆっくりと。

そんな先輩の顔は今も色のない、冷たい顔をしていた。

 

 

 

 

「ぐっく、く……そっ」

 

ドサッ

 

そしてその処刑は実にあっけなく終了した。

闘技場は今、無言の静寂に包まれている。

アタシも、他の誰もが声を出せなかった。

それは恐怖か、壮絶さか、はたまた先輩の非情さか。

先輩は無傷でその場ににたたずみ、先輩の周りにはどこかしら必ず折られている者たちが、折れた箇所を押さえてうずくまっていた。

 

「ふんっ情けないの~~クズども」

 

そんな静寂を蘭豹先生が打ち破る。

 

「さっきまでの威勢はどしたんや、あ~ん?クハハッ!!」

 

(…………蘭豹先生、めっちゃ愉しそうだな)

 

まぁアタシも同感だけどな、と思っていると蘭豹先生が言う。

 

「貴様らも見たやろ。これが敵を嘗めてかかった奴らの結末や!」

 

「このクズどもも今回は骨ぇ折られるだけですんだが、もしこれが実戦やったら……こいつらは死んどる」

 

蘭豹先生の言葉に、アタシたちは息を呑む。

確かに、夜神先輩が殺ろうと思えば確実に殺せただろう。

それほどの力の差が、あいつらと先輩の間にはあった。

 

「ガキども、よおく聞けや!確かにこのアホは強いわ。けどな!」

 

蘭豹先生はあの夜神先輩をアホ呼ばわりしてアタシたちに話続ける。

 

「このアホとの力の差ぁ理解して、他の奴らとうまく連携すればこんな無様なことにはならん!」

 

「自分の力ぁ過信して、努力も怠ったこいつらはそれが分からへんかった!」

 

「才能や努力で培った、自分の力ぁ信じるな言わへん。上勝ち上等や!ケド、過信すんな!敵を見誤んな!力の使い方ぁ間違えんな!!」

 

 

 

「エエなっ!?」

 

「「「「「‥‥はいっ!!!」」」」」

 

 

 

蘭豹先生は満足げに頷き、夜神先輩になにか話している。

アタシたちは、先生が何故ここに呼んだのか今分かった。

先生の言う通り、自分の力を過信したらどうなるかをあいつらには身をもって、アタシたちにはそんなあいつらを反面教師として見せるために呼んだのだ。

なんだかんだ言って蘭豹先生もちゃんと先生しているな、と思ったところでふと、思った。

 

(……夜神先輩はわざと、恐怖を煽るやり方をとったのか?)

 

あの先輩ならただ気絶させることも出来た筈だ。

もし、そうなら…………。

 

 

 

「…………」

 

「……っっ!!?」

 

 

 

叫ばなかったアタシを褒めてやりたい。

まぁ、めちゃくちゃビックリしたけど。

今、ちょうど考えていた人物……夜神先輩がアタシの目の前にいた。

驚いて固まってしまったアタシを無表情で先輩は見ていたが、すぐに目を伏せてアタシを避けて、その横を通ろうとする。

アタシの横を通り過ぎようとする夜神先輩の顔を、何気無く見ていたアタシは、

 

「……えっ‥‥」

 

声を漏らしていた。

何故なら……

 

 

 

今まで色がなかった先輩の顔に、寂しそうな苦笑が浮かんでいたから。

 

 

 

アタシは呆然としてしまった。

先程まで、無表情で淡々と制裁を加えていた人がそんな顔をしていたのだ。

他の人には今の先輩の顔が見えなかったのか、

 

「やっぱスゲーな、夜神先輩」「お菓子みたいにパキポキ骨折っといて、無表情だもんね」「あの人敵にまわしたら一貫の終わりだな」「くわばらくわばらっ」

 

先輩を遠巻きにして、そんなことを囁いていた。

今、アタシの中にはひどい罪悪感が渦巻いていた。

アタシも途中までは周りの奴らと同じようなことを思っていたから。

しかも、

 

(あの苦笑、アタシの反応を見たから‥‥だよな)

 

アタシは殊更自己嫌悪に陥った。

そんなことを頭の中で考えながら、アタシは強襲科棟から出ようとする夜神先輩の後ろ姿を見ていた。

あの苦笑を見たからだろうか?

アタシには、

 

 

 

誰からも恐れられ、遠ざけられる先輩の背中から、孤独な雰囲気が漂っているように見えた。

 

 

 

(……次に会ったときに絶対謝ろう)

 

アタシは心の中でそう呟いた。

アタシはここに来て確信していた。

みんなから恐れられる夜神先輩はきっと…………。

 

 

 

───とても優しい先輩なのだと───

 

 

 

「おっしゃ、分かったんならぐずぐずせんと特訓してこんかいっ!!!」

 

「「「「「はいっ!!!」」」」」

 

アタシも蘭豹先生の言葉に大きく返事を返す。

1つは自分のために。

もう1つは、自分を犠牲にした優しい先輩のために。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

茜色の夕日が道路染めて、細長い人影をいくつも作っている。その影の中に、リュックを背負い左手に食材を入れたビニール袋を持っている男の影があった。

 

「…………」

 

その影の持ち主……蒼真は先の出来事を振り返りながら家路についていた。

 

(……恐い‥‥か)

 

 

バカども撃破後、蘭豹がいっぱしの先生ぶりを見せて1年たちに説教していた。…………意外だ。

成る程、そのために1年たちを呼んだのか。

バカどもの矯正&1年への教訓と一石二鳥の授業。

 

(……誰かの‥‥入れ知恵、か?)

 

俺がそう思っていると一通り言い終えたのか、蘭豹が満足そうに腕を組み俺を見た。

 

「蒼真ぁぁ~~。お前もえげつないの~~!」

 

バンバンッ

 

そう愉快そうに言いながら俺の背中を叩く。

 

「……どうも」

 

あんた、手加減すな言うたやん。と思ったが面倒なので返事だけ返す。

 

「ま、こいつらもこれに懲りて少しは大人しゅうなるやろ。もしならんかったら……」

 

滅茶苦茶悪い顔してますよ、姐さん。

俺はさっさとここから離れるため、蘭豹に視線で訴える。

 

「あん?なんや蒼真ぁ。……ああ、いつもの単位か。わーってるわーってる、ちゃんと単位やるから」

 

バンッ

 

蘭豹はそう言い、俺の背中をもう一度叩く。

 

「次に呼んだときは10分前には来とけよ。つうか教室に居れや!!」

 

理不尽ですよ、姐さん。

 

「……はい」

 

俺は蘭豹を背にして歩き出す。

闘技場を出てすぐに目の前に女の子にしては背の高い、金髪を後ろで束ねた如何にも活発そうで綺麗な娘が立っていた。

 

「…………」

 

「……っっ!!?」

 

俺を見てその娘は少しは怯えたような目をして俺を見つめた。

 

(……当然か)

 

先程の矯正を目の当たりにしたなら当然の反応だ。周りの1年たちも俺を見て何事か囁いている。

俺はさっさとこの場から立ち去るために彼女の横を通り過ぎ、出口に向かう途中で苦笑する。

 

(……また‥‥離れていく、な)

 

俺にとってはその方が構わないし、周りの人たちを危険な目に遇わせなくてすむのだが、やっぱり……

 

 

 

寂しいと思ってしまう自分に、なんだかんだ言って俺は〈人〉なのだと改めて思う。

 

 

 

───どんなに力を持っていても、な───

 

 

 

その後、なんだか修行する気にもなれず、荷物を整理してリュックを背負い、学校を出る。

適当にぶらぶら散策し、そういえばと思い平賀文に連絡。

今度の商品紹介の日時を決めて少し世間話(あやが一方的に俺に話しかけ、それに応答する)。

その後に学園島に一軒だけあるスーパーで買い物をして今に至る。

俺はキンジとアリアのことを考えていた。

 

(……キンジは‥‥どうなったか)

 

キンジを売った俺は少し考えて、

 

(……パン‥‥3個、奢ろう)

 

安い謝罪で済ますことにした。

俺は自分の住む寮につき、階段を上る。

 

(……アリアは‥‥まだ怒ってるか)

 

今までの経験を思い出し、

 

(……今回は‥‥怒ってるだろう)

 

かなえさん関係のことだし、今はあいつ自身余裕がないからな。

俺は自分と昼行灯の部屋のドアを開ける。

この時間にはキンジはいつも帰っているからな。

すると中から、

 

 

 

「今は2人暮らしだが」

 

「ふーん、まあいいわ」

 

 

 

ちょうど今考えていた2人が部屋の中に居た。

 

(…………なんでアリアが?)

 

玄関にはトランクが鎮座している。

 

(……なんで?)

 

まあ、さっさと用件を聞こう。と思い2人がいるリビングに向かい……

 

 

 

「キンジ、あんた私の〈ドレイ〉になりなさい!!」

 

 

 

……………………時が‥‥‥‥止まった。

 

なんだなんだどういう状況だこれはああそういえば朝あいつヒステリアなってたなそうかそうかそういうことかそうだなあの時決めたな俺はキンジの味方だ妹であるアリアの味方だ。

ここまで、思考速度0,5秒。

 

「……えっ」

 

「なっ!!?」

 

アリアが蒼真に気付いて、その声とアリアの視線で後ろを振り向き、蒼真の存在に気付いたキンジが声をあげる。

今、この瞬間。

アリアとキンジは今日始めて会ったのに、2人の思考が一致した。

 

( (蒼真(グレイ)に勘違いされた!!!) )

 

そんな2人をよそに、蒼真はいつもと変わらない無表情でありながら、どこか優しい目で、

 

 

 

「……大丈夫。……俺は‥‥お前たちの、味方」

 

 

 

蒼真はそう言ってビニール袋の中身を冷蔵庫に入れるため、キッチンにむか

 

「ま、待ってくれ蒼真!!お前は今凄い勘違いをしている!!!」

 

「ま、待ちなさいグレイ!!違うの、違うのよ!あれよあれ、屋上で言ったあれ!!!」

 

アリアとキンジは必至で蒼真を引き留め、蒼真の勘違いを正そうとするが

 

「……安心しろ‥‥誰にも、言わない」

 

当の本人は2人が〈そういう関係〉だと決めつけている。

それに先程からの蒼真の2人を気遣う目と優しい言葉が2人には何より痛い。

 

「頼む蒼真!!俺たちの、俺たちの話しを聞いてくれ!!!」

 

「お願いグレイ!!屋上のこと謝るから!!ごめんなさいするから話しを聞いて!!!」

 

アリアもキンジもそれは、それはもう懇願して話しを聞いてくれるよう頼み込んでいる。

アリアの方はもう涙目だ。

 

 

 

 

それからしばらく2人の懇願が続き、何とか蒼真に話しを聞いて貰えるようになった(アリアの目から涙が零れそうだったから)。

リビングで3人座って蒼真に、アリアとキンジが必至に誤解だと説明した。

蒼真も自分の勘違いだと納得して、それを了承すると2人はどっと疲れた顔をしてソファーに背中を預けた。

そんな2人のために料理を作ろうと思い、蒼真はキッチンに向かう。

 

夜はまだまだこれからだ。




如何でしたか?
そうそう、とある方の助言により、ヒロイン募集を活動報告で行う事になりました。
お手数おかけしますが、何とぞよろしくお願いいたします!

では
感想と優しい批評、評価とても待ってます!!
ヒロインも大募集です!!
これからも応援よろしくお願いいたします!!

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