今回は大集合します。
そして……オリジナル厳しいぃーーー!!
そう思わせる、そんな回です。
また、後書きにお知らせが有ります。
では、投稿です。
「ぅ…ぐすっ……ひっ…ののか、ののかぁ」
「お姉ちゃん……」
「…うぅ…えっぐ……」
(なんで………どうしてっ!? 何であんなに優しいののかがこんなことに!)
私は、白い簡素なベッドに上半身を起こして横になってる私の妹……ののかに、すがるように泣きつく。
自分の今の状況と、自分にすがり付く私を見て……いや、"聞いて"いるののかは途方に暮れている。
そんな彼女の目は、白い包帯で覆われている。
そう、今……ののかは目が、見えていない。
(どうしてどうしてっ!? …………どうしてよぅ…っ…)
私は誰にも届かない疑問を心のなかで叫んだ。
ののかは、蒼真先輩のお見舞いに来た私の荷物を届けに来てくれた。
……夾竹桃とのことで心が暗く、重くなっていた私に。
私はその時に、ののかに長野のおばさんのところに隠れてるようお金を渡そうとしたときに、病院の玄関ホールでののかがいきなり倒れたのだ。
顔色がどんどん青くなり、呼吸が荒くなっていくののか。そしてののかは、私がどれだけ名前を呼んでも返事をしなかった。
それがお昼過ぎのこと。今はののかの検査を終え、ただでさえ暗かった空が、真っ暗になっていた。
検査の結果は……原因不明。
今は体調は落ち着いているけど、これから先同じようにならないとは限らない。
(…………もう、どうしたらいいかわかんない。わかんないよぉ……)
私の頭の中はもうぐちゃぐちゃだった。
夾竹桃には間宮に伝わる業を教えろと脅され、どうすればいいか悩んでいるときにののかが倒れた。
次から次に悪い方向へと転がる状況に、私の心と感情がついてこない。
「…………大丈夫だよ、お姉ちゃん」
……………ギュッ
いつまでも泣き、すがり付く私に、ののかが目が見えない中、手探りで私の手を探して、見つけた私の手を握りながら励ますように私に言った。
「きっとすぐに治るから…」
「でもっ! お医者さんも原因が分からないって……っ」
それでも涙が止まらない私に、ののかはギュウっと強く私の手を握りしめた。
……まるで、
「だらしがないぞ、お姉ちゃん。目が見えなくても耳は聞こえるし、それに……」
怯える自分自身をも励ますように…。
「喋れるんだからっ……っ……ぅ」
「の、のかぁっ……ひっぐ…」
ぽた、ぽたぽた…と繋がれた私たちの手の甲に雫が落ちる。
その雫は……ののかの涙。
情けない私を励ましていたののかも、とうとう堪えきれずに涙が頬を何度も伝った。
そんなののかを見てまた涙が溢れてきた私も何も言葉が出てこず、ただただ手を握り返すことしか出来なかった。
それでも、私はののかのお陰で少しだけ前向きになれた気がした。
(……そうだよね。私がしっかりしないといけないよねっ)
私が泣くことしか出来なくても、ののかのために心のなかで自分を奮い立たせているときだった。
「否。視覚の次は聴覚、次いで味覚…………8日もすれば、命を落とされる」
「ッ!?」
私を……私達を再び絶望に誘う、色の無い声が聞こえてきたのは。
私が背後から聞こえてきたその声に思いきり振り返ると、そこには少し前に《毒の一撃》で戦った……遠山キンジの戦妹、風魔陽菜が壁を背にして立っていた。
「っそれはどういう……!」
「あかりっ!」「あかりさん!!」「間宮さまっ!」
「ののかさん!」
私が彼女が発した言葉の意味を問いただそうとしたとき、病室のドアからいつものみんなが駆け込んできた。
「みんな……」
「あかりちゃん、ののかさん大丈夫ですかっ!?」
私が次々に起こる出来事に思考が追い付けなくなって呆然とするなか、みんなが私達に駆け寄ってきて心配をしてくれる。
「……ののか殿の症状の原因は、打たれてから2年の後に"五感と命を奪う"《符丁毒》」
そんな中、風魔陽菜は目を閉じ、眉間に皺を寄せながら医者さえ分からなかったののかの症状の原因を口にし、そして……何故それを知っているかを私達に語りだした。
ののかの症状の原因である《符丁毒》は作った本人しか解毒出来ないこと。
その毒が元々風魔の秘術であったこと。
そして……それが風魔の幼子に毒を打ち、人質として解毒を条件にその秘術を奪われたこと。
風魔陽菜はそれらを苦々しげに私達に話した後、最後にののかをこんな目に遇わせた者の名を口にした。
「毒を以て毒を奪うこの手口……"夾竹桃"に御座るな」
「……っ!」
私の脳裏にキセルを燻らせる黒のセーラーに身を包んだやつの姿が思い浮かぶ。
(やっぱり……やっぱりあいつが…っ!!)
そう、私は心のどこかで気付いていた。
今日私に夾竹桃が接触してきたこととののかが毒によって倒れたことが無関係ではないことに。
(ののかの毒を解毒できるのは、夾竹桃だけ……! ……それ、なら…ののかを救うには……っ)
『私のペットにしてあげる。……私の"モノ"になりなさい、間宮あかり』
思い出す夾竹桃の言葉。
「…………」
「……お姉ちゃん?」
(…………ののかを助けるには……もう、"なる"しかない。あいつの、夾竹桃のペット…に)
そうすれば、ののかが助かる……っ。
私は、スカートのポケットに入れてある連絡先を握り締める。
「…………」
「あかりさん…?」
「あかり?」
みんなが私を心配して声をかけてくるが、それが遠くで聞こえてくる。
(……もう、みんなの声も私には届かないみたい)
遠くで聞こえるみんなの声が、私にそう思わせた。
そしてそう思ってしまったと同時に…………覚悟が出来た。
「……っ!」
私はののかとみんなを背に、黙って病室から出ようと足を引き戸に向けた。
「っ! おい待てあかり!!」
「ついてこないでっ!!!」
「ッッ!!」
私はライカの制止の言葉に大声で遮る。
そんな私の様子に、ライカはたまらず声を詰まらせ、他のみんなも口を閉ざした。
「私が……私が犠牲になれば、ののかが助かるのっ!!」
「な、何言って……」
何も知らないライカは私の叫びに、当たり前の疑問を口にするけど……私は答えるつもりはなかった。
だって、みんなを無視して、早くここから出ていかないと……
(…………覚悟が……揺らいじゃうからっ)
私は引き戸の前に来て、改めて覚悟を決めるように、未練を振り払うように同じことをもう一度言って、引き戸を開けた。
「私が! 犠牲になれば……いいのっ!!!」
「自己犠牲が『美談』になるのはお伽噺の中だけ」
「ッ!!?」
「現実では逃げの手段よ、あかり」
覚悟を決め、引き戸を開けた先に、私の覚悟を思い切りへし折るように仁王立ちする…………私の大好きな戦姉がそこに立っていた。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「で、俺達は待機って訳か」
「……そのようだ」
"少し開けられた引き戸"を両側で挟んで、俺と蒼真は壁に背を預け、手持ち無沙汰にしていた。
さっきまでいたレキは、蒼真におつかいを頼まれたようで今はいない。
「「…………」」
俺達の会話はそこで終わり、ただ黙って中から聞こえてくる"BGM"に耳を傾ける。
内容は……まあ、アレな感じのやつだった。
自分が何者なのかって事と自身に起きた悲談という……俗に言う、知り合いに知られたくない過去というやつだ。
(……本当なら、あまりアイツを知らない俺でも何かしら反応しなくちゃいけないんだろうが…)
俺に対して険悪な態度をとる生意気な後輩だが、まあ、同情しないわけでもない。しかし……。
俺はチラッと隣に佇む親友に目をやり…………溜め息をついた。
(……この一年で、もっと"重いモノ"をかなり見聞きしたせいか…………なんか、慣れた)
そう思い、慣れてはいけないものだとは分かっているのだが、この一年の出来事をダイジェスト形式で思い返し、また重い息を吐いた。
「……どうした?」
そんな俺を見かねてか、その元凶中の元凶が声をかけてきた。
「何でもねぇよ。……ただ、小生意気なアイツにも色々あったんだなふーんって思っただけだ」
「……軽くね?」
「誰のせいだ誰の」
「…………俺か」
どうやら俺の意図は伝わったようで、蒼真は少し申し訳なさそうな顔をした。
そんな様子に、俺は今日数えるのが面倒なほどした溜め息をもう一度して、面倒なので話題を変えることにした。
「別に責めてないから変な顔すんな。……それより、アイツは俺達に"これ"聞かせて何がしたいんだ?」
「……さて、な」
俺の問に顔をいつもの無表情に戻し、しかし何か分かってる風に答えた。
『アンタ達、ちょっとそこで待ってなさい。絶対にどっか行かないこと。いいわね?』
俺は別にここに来たくなかったのだが、アリアに無理矢理連れてこられた……蒼真は付いてくと言って自分の意思で来たが。
蒼真は絶対安静なので、アリアが無理しなくてもいいと言うのは当たり前なのかもしれないが……扱いの差を嘆く俺は可笑しいのだろうか。
そうこうしている内に問題の部屋に到着したのだが、中から聞こえてくる籠った声で何かを喚く自分の戦妹の言葉を聞いている内に、段々と顔をしかめるアリア。
そして、さっきの言った言葉を俺達に残し、本人は中に突入していった。
……おそらく、中にいる奴等はアリアの登場によるインパクトのせいで、俺達に気付いていない。もちろん、話を聞かれていることも。引き戸を少し開けたままにしたのもアリアだ。
俺は、どうせ後で分かるかとこの事を脇に寄せ、適当に返した。
「ま、別にいいが。こんなん知ってもどうこうするつもりもないし、"どうでもいい"しな」
「……ふっ」
俺の言葉の何が可笑しかったのか、蒼真は苦笑しただけだった。
そんな蒼真に、俺はひとつ気になったことを尋ねた。
「……んで? お前はまた何を知ってるんだよ?」
「……?」
「惚けんな。アイツらを襲った奴等に心当たりあんだろ」
「……分かる?」
「分かるわ。お前は雰囲気に出過ぎだ」
巷じゃ《戦闘機人》なんて呼ばれているが、慣れればこいつほど分かりやすいやつもそういないと思う。
俺はそう思いながら続けた。
「今さら俺に隠すことでもねぇだろ? 溜め込む前にさっさと白状しろ」
「…………」
蒼真は俺の確信めいた言葉に目を少し見開き、前まで黙ったまま俺を見る。
しばらくそうしていたが、何か呆れたように苦笑して口を開いた。
「……俺は、奴等を知ってる。……"今回の件"とも、無関係ではない」
「…………」
「……奴等は、《イ・ウー》と呼ばれる秘密組織に…属している。……そして、彼女達を襲ったのは…おそらく、《イ・ウー 特戦隊》。……奴等は、"技術を奪う"ことに…特化した隊だ」
「……なるほど。《間宮》が狙われた理由は分かった。それで? お前は何を"抱え込んでる"? そして今、何を"抱え込んだ"?」
俺の立て続けの問に、とうとう隠せないと諦めがついたのか、こいつにしてはすらすら言葉を紡いだ。
「……奴等は昔、《夜》を襲った。……時期的に、《間宮》を襲う前だろう。……だから」
「お前がそのときに全部潰しとけばこうはならなかったってか? 嘗めたこと言ってんな。お前は化物でも神でもない……"人間"だ。なんでも出来ると思うのはおこがましいってモンだろ? それに、それは結果論で、お前にはそのときそいつらを潰せなかった"理由"があったんだろ? その時に"守れたもの"もあったんだろ? ならいいじゃねーか。まあ、気にするなとは言わねぇよ。お前の性格上無理だろうし。……けどな、お前のせいにするな。それでお前のせいにしたら、その時に守られたものにもお前の"ソレ"を押し付けることなるだろうが」
「…………ああ」
「誇れよ、その時に守れた事を。今、あのときああしとけばよかったとか、こうしとけばよかったとか考えずによ」
「……ああ」
「……あー、だから…なんだ。この事はこれで終わり。変なの一々抱えようとすんな。いいな?」
「ああ」
(…………あーくっそ、なに柄にもないこと言ってんだ? 俺にそんなこと言う資格ねーだろ、ったくよ)
ついつい思ったこと全部ぶちまけちまった。しかも決めるなら決めるで最後まで言やーいいのに、途中で恥ずかしさに気付いて、最後まで決まらなかった。
だぁーー!!!と心のなかで叫びながら頭を雑にガシガシッと掻く。
蒼真も蒼真で、俺の言ったことに素直に頷くしよ。なんだよ、さっきのこれでもかってほどかなり珍しく目を見開いて。
(分かってんだよ、自分でも恥ずかしいこと言ってるってよっ!! 笑わば笑えバカ野郎!!!)
「……っ…」
「…………」
「ッッ……っ」
「…………」
けれど、蒼真は俺が暫く見悶えているのを、笑う(かなり貴重な声を出して笑う方)こともなく、またいつもの無表情でいるわけでもなく、ただ苦笑したまま、俺を横目に黙っていた。
───約1分経過───
……これ以上ウダウダしててもしゃーないので、話を進めようと思う。
え? 立ち直り早い? うるさい。よく考えたら今さら俺の恥も外聞もこいつの前ではどうでもいいことに気付いたんだよ、悪いか。
「……はぁ。それで蒼真、その《イ・ウー》ってのが今回の件と関係あるってことは、《武偵殺し》はその一味ってことか?」
「……そうだ」
「……《陽》が《イ・ウー》に加わったってことか?」
「……そうだ」
「…ちっ」
(よりにもよって、だな)
ただでさえ《陽》はやっかい極まりないのに、よりにもよって"技術を盗む"ような奴等と手を組むなんて悪夢でしかない。
(技術を盗むということは、その技術を扱い、応用し、自分の力にするということ。それは果てない高みに昇華し続けるってことだ。……《陽》はいつか、蒼真を倒せる技術を身に付けるかもしれない)
っていうか、そのために《イ・ウー》に入ったんだろうな。……蒼真を殺すために。
(……全く、これも全部蒼真が全てを背負った結果って訳か。あの娘の事はお前は何も悪くないだろーが。何でこいつはこうも……ん?)
『……武偵として…!』
『でも、今の私はっ……!!』
俺が隣のバカの招いた状況と、それをも過去に"予期して"全てを抱え込もうとしている隣の最上級のバカについて頭のなかで(口で言っても変わらない)愚痴っていると、中から一際大きな声が聞こえてきた。
俺達が話している間に、いつの間にか病室の中ではなんかの佳境に入ったらしい。
いつものガキっぽいものではなく、凛としたアリア声と何かを吐き出すように叫ぶ後輩の声が耳に入ってくる。
『───作戦名は、《AA》───』
「……どうやら、話が終わりそうだ」
「……みたいだな。お前にはまだ聞きたいことがあったが、後でいいか。なぁ、結局アリアは何を……」
『聞いてたわねっ、キンジ、蒼真っ!!!』
……どうやら、俺達をここに残し、話を聞かせることに何か理由があったみたいだが…………半分ほど話を聞いてなかったとは、言えねーよなぁ。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「聞いてたわねっ、キンジ、蒼真っ!!!」
「……はぁ。まぁな」
「……おう」
「「「「えっ!?」」」」
私は、アリア先輩が背にした引き戸の方に放った言葉に、目に浮かんでいた涙も引っ込んでしまった。
そして片方はだるそうに、もう片方はいつもと変わらずに、"少しだけ空いた引き戸"から……防弾制服を身に付けた蒼真先輩と憎き遠山キンジが病室に入ってきた。
「し、師匠っ!?」
「そ、そそ蒼真先輩っ!!?」
突然の2人の登場に、風魔陽菜とライカが特に驚いた声をあげた。
……あれ? ライカの顔、何か赤いような……? …………じゃなくてっ!!
(……ど、どうしてアイツがっ!? えっ? 蒼真先輩っ!? 大怪我して寝てるんじゃっ!!?)
私の頭のなかがグルグルかき混ぜられ、訳がわからなくなる。そして……一番重要なことに気付いた。
(……聞かれた。私のこと、全部っ!)
私は絶望せずにはいられなかった。
まさか、違う意味で一番知られたくなかった二人に私の秘密を知られてしまったことに。
さっきまで私を叱咤し、励ましてくれたアリア先輩の裏切りに。
私は、アリア先輩を追及せずにはいられなかった。
「アリア先輩っ! どうしてっ!?」
「……キンジっ! ホントに聞いてたんでしょうねっ!!」
「……っ!」
「アリア先輩、これはあまりにもっ!」
そんな私を無視して、アリア先輩はアイツに声をかける。そんな私を見て、ライカがアリア先輩を咎めるように言うが、それでもアリア先輩は私達を無視した。
私はまた、泣きそうになった。……さっきとは別の涙を。
…………でも、次のアイツの言葉で、それは止まった。
「……悪いな。正直、"話し半分にしか聞いてなかった"わ」
「えっ」
いかにもけだるそうに引き戸のすぐ隣の壁に背を預けながらそういうアイツに、私はまた、涙が止まった。
「……悪い、俺もだ」
「……えぇ?」
蒼真先輩もアイツと引き戸を挟んで壁に背を預け、同じようにそう言い、私は一気に肩の力が抜けた。
「はぁ? なにしてんのよアンタ達! ホントに使えないわねぇ!」
「お前ここで待ってろって言っただけじゃねーか。それに人の話聞けよ。半分は聞いてたんだよ。……あれだろ、作戦名が《AA》なんだろ? 俺達が《武偵殺し》逮捕すりゃいいんだろ? たぶん、お前は俺に後輩に負けるなって言いたかったんだろうが、バカにすんなよアホ。さすがに後輩どもに負けるほどやわじゃねーよ。
──だからよ、俺が聞いてなかった残った半分の話は、"どうでもいい"だろ?」
「っ!!」
溜め息混じりに言ったアイツの言葉に、胸が一気に締め付けられた。
蒼真先輩は遠山キンジのそれを聞いて、黙ったまま苦笑している。
……私は、気付いてしまった。そう、"しまった"のだ。
アリア先輩が、何故この2人に私の話を聞かせたのか。そして……
アイツの……遠山キンジ…先輩の、気遣いに。
いや、私に気を遣った訳じゃなく、本心で言ったんだろう。けど……その言葉に、それに込められた"心"に救われた自分がいたことに、気付いてしまったんだ。
私は、今も言い合っている3人に目をやる。
「全く、蒼真まで聞いてないなんて。アンタそこのバカにバカ移されたんじゃないでしょうね?」
「……撃たれた腹が、痛くて」ボソッ(アホにバカ言われたくねーよ)
「……本気か冗談か分からないこと言うんじゃないわよ、バカ蒼真。あと、キンジ後で風穴」
いきなり始まった言葉の応酬と次々に変わる場面に、私以外のみんなはポカーンその光景を見ていた。
(……あぁーもぅ。悔しいなぁ)
そんな中、私が思った事はこれだけだった。
悔しい、ホントに悔しい。何故なら……
一番大っ嫌いなアイツのお陰で、心がまた軽くなったことに。
必要最低限のことしか言われてないのに、アリア先輩の"思惑通り"に動け、話せることに。
そして、あーやってアリア先輩と何処までも"普通"に話せることに。
(あーもうっ! 悔しい悔しい悔しいぃ! …………でもっ! 絶対っ!!)
絶対にあんなヤツには負けないっっ!!!
私はいつかヤツをギャフンッと言わせてやることを新たに心に決め、そんな羨ましい光景に目を向ける。
すると、いつの間にか言い合いは終わっており、アリア先輩が1つ咳払いをした。
「んっん。さて……キンジ、蒼真っ! まあ、話し半分でも聞いてるとこ聞いてるみたいだから、話進めるわよ!」
そう言ってアリア先輩は2人から目をそらし、くるっと回って私達の方を向いた。
そして、アリア先輩の宣誓が始まった。
「今回、私達は負けたっ! 私達一人一人がバラバラだったから! それは変えられない事実……だからここで! 初めて命のやり取りに向かう後輩の前で! 誓うわよっ!!」
そう言ったアリア先輩は1度止め……風魔陽菜を、島ちゃんを、ライカを、志乃ちゃんを、そして……私に、一人ずつ目を会わせていき、アリア先輩は声を張って誓った。
「もう2度と《武偵殺し》にも、"アイツら"にも負けないことを! 仲間を信じ、助けることをっ! 私達誰も欠けずに戻って来ることをっ!! 今、ここに誓うわっ!!!」
……私達は誰も、何も言葉に出来なかった。
理由は多分、みんな一緒……だと思う。
だって、だってだって……こんなにも…………
───こんなにも、カッコいいんだから───
でも、これだけじゃ終わらなかった。
私達が見惚れているなか、アリア先輩は私達から背を向け、両隣を挟まれた引き戸に向かい歩き出す。
そして、ガラガラッと音をたてて引き戸を一息に開け……お互いに背を向け合い1列に並んだ状態で、自身を挟むようにして立つ蒼真先輩と遠山キンジ…先輩に、告げた。
「分かったわねっ!?」
「「おう」」
……私は……いや、私達はこのとき、アリア先輩だけじゃなく……背を向け合った今の3人の在り方に、心から格好いいと思ってしまったんだ。
先輩方は最後の最後まで、多くを語ることもなく自分達の在り様を示してくれたのだ。
───信頼し合える「仲間」…と───
アリア先輩は2人の返事に満足したのか、何も言わない私達を見ることなくそのまま出ていってしまった。
その後を壁から背を離した遠山キンジ…先輩が続いていく。
そして最後に、蒼真先輩が病室を出ていこうとして……何も言わない私たちを振り返って、こう言った。
「……負けるなよ、お前達なら…乗り越えられる」
その言葉を聞いた瞬間、私はアリア先輩にも、アイツにも言えなかった分も込めて、蒼真先輩に思い切り頭を下げた。
「ありがとうございましたっ!!!」
蒼真先輩はそんな私にどこか戸惑った空気を醸し出していたが、少ししてフッと息が漏れるように笑った。……ような気がした。
「……じゃあな」
それだけ言って、今度こそ蒼真先輩は引き戸をくぐって出ていった。
……私は、下げた頭をあげる。
もう私の中には、暗く重いものは何もなかった。
(さあ、前へ進もう。仲間達と共に!)
私は振り返り、みんなを見る。するとみんなは、笑顔で答えてくれた。
「……ねぇ、お姉ちゃん」
私達が気合いを入れていると、今まで黙っていたののかが声をかけてきた。
「なぁに、ののか?」
私が返事すると、ののかは目が見えないながらも、私に笑顔を向けて口を開いた。
「とっても、格好いい先輩達だね?」
「…………うんっ!」
私はそれに迷わず頷いた。
如何でしたか?
今回はアリアの格好よさを表現するべく、あかり視点をふんだんに使いました。
ってゆうか考えていた格好よさの半分も引き出せなかったっ!!
プリーズ ギブ ミー 文才!!!
皆さんのご期待に添えていることを願うばかりです(T_T)
それでは、お知らせです。
……ええー、この度私…、
蒼真を主人公とする「外伝」を新たに投稿し始めました!!! 題名は「蒼真伝 ~IF ROUTES~」です!!
まあ、いわゆる番外編と言うヤツです。
詳細は私の活動報告の方に記載しております!
蒼真ファンの皆様は是非にお読み下さいませ!!
ではでは(^-^)/
感想や意見を心より、心よりお待ちしております!!
これからも応援よろしくお願いいたします!!!