夜の神は太陽に恋焦がれた   作:黒猫ノ月

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どうもです!!!

大変お久し振りでございます!!
この作品を楽しみにしていた方々、大変お待たせ致しました!!!

イヤー、やっと大学の忙しい前期が終わり、夏休みに突入いたしまして。
腐るほど時間が出来たので、投稿した次第でございます。

では、長い前置きを終わりに致しまして……投稿です!!!


第24弾 「私は、貴方だから……」

「……そうね。今思えばアンタには聞きたいことがや・ま・ほ・どあるけど、今は今回の事件に関することだけにするわ」

 

「……おう」

 

俺はアリアのその含みのある言いように苦笑した。

 

(……まあ、色々隠しているのは…事実だから、な)

 

だからせめて、今回の件に関しては訪ねられたら何でも答えよう。それが例え……

 

(……この事件の犯人に…理子に、繋がることだとしても)

 

理子もなにやらバレても別にいいみたいなことをメモに書いてたし。

さてさて、俺の口下手でどこまで説明出来るかね?

しゃべることが多さに少しナイーブになっている俺を他所に、アリアはキンジを横目で見やった。

 

「キンジ、私が先に聞くけどいいでしょ?」

 

「ああ、俺の聞きたいことなんて確認がほとんどだしな」

 

「そ。レキ、アンタは?」

 

「私も構いません」

 

「ん。なら蒼真、ちゃんと答えなさい? ……それじゃまず一番気になっていること、アンタ……」

 

キンジとレキの返事を聞き、了承を得たアリアは俺に念を押し、そのあとベットに横になっている俺の身体を見ながら言う。

 

 

 

 

 

「何でそんなに"弱くなってる"のよ?」

 

 

 

 

 

「…………」

 

(……やっぱり、な)

 

最初は必ずそれを聞いてくると思っていた。

今回の件とは直接関係はないが、気にならない筈がないだろう。だから、話す分には別にいい。

向こうの俺しか知らないアリアにとって、今の俺はあまりにも"弱すぎる"しな。それに……

 

(……泣かせて、しまった)

 

本当に心配をかけた。

 

 

 

『…………っ!! 蒼真ぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!』

 

 

 

『蒼真っ! 蒼真ぁ!!』

 

 

 

思い出すのは、レインボーブリッジで倒れる俺を見て泣き叫ぶアリア。

俺の血に塗れながら、俺の名を何度も呼ぶ。

今まで"ほとんど無傷"で共に戦っていた相手が、いきなり血塗れで倒れていたら誰でも取り乱すだろう。

しかし、俺がいない間に何があったのか。

今の俺を見るアリアの表情や目には少しの動揺も見られない。

 

(……まぁ、誰と何があったかは…予想つくが)

 

俺はアリアの隣に立つ親友を見やり、そしてまた苦笑した。

 

「蒼真?」

 

俺の挙動に疑問を感じたのか、アリアが声をかけてきた。

 

「……いや」

 

俺はアリアに返事を返し、思考を現実に戻した。

さあ、話そうか……

 

「……アリア、気付いているだろう」

 

「……何を?」

 

 

 

 

 

「……今の俺と、昔の俺…姿が違うことを、だ」

 

 

 

 

 

「!」

 

(……俺の、《夜王》の由来を…な)

 

「……確かに不思議に思ったわよ。お陰でアンタがこんなに近くにいることに気付かなかったんだから」

 

アリアは俺を恨みがましく見つめる。

 

「……悪いとは、思ってる」

 

いや本当に。

でも、かなえさんの頼み事である『頼ることを覚えてほしい』という願いを叶えるのに好都合かな、と思ったのだ。

今の俺の姿ならアリアにバレずに側にいられて、さらにアリアが"本気で"俺を探し出して、頼って来てくれたならすぐにでも駆けつけることが出来たから。

 

「で、それがなんだって言うのよ?」

 

そんな俺の勝手な事情を知らないアリアは、頭の隅に置いていた出来事を掘り返されて不機嫌に尋ねてきた。

俺はそれを受け止めて答える。

 

 

 

 

 

「……その原因は、俺の中の…"《夜神》"にある」

 

 

 

 

 

───《夜神》───

 

俺の名字と同じ字を書き、読みは《ヨルカミ》という。

この"化物"のせいで俺は……《夜王》となった。

自身の《夜の氣》が底を尽きることはなく、内氣功……つまりは自己治癒力が異常に発達する。

その他にも様々な超常の力を得た俺は、人でありながら……人ではなくなってしまっている。

 

「《夜神》? アンタ《夜王》でしょ?」

 

「……その《夜王》たる由縁が、《夜神》だ」

 

「…………」

 

「……あの頃の俺は、この《夜神》を…御しきれなかった。……アリア、あの頃の俺は…《夜神》が半ば、暴走していたんだ」

 

「…………それが、"あの時の姿"なの?」

 

「……そうだ」

 

ああ懐かしき思いでよ。

あの頃は全く制御出来なかったな。

そのお陰で氣が延々と垂れ流しになるわ、よく目を凝らすとうっすら発光しているわ、そのせいで聖職者や闇の眷属どもに襲われるわ。

そんなふうに俺が昔の未熟(今もまだまだ)な頃を思い出している間、アリアは口元に手を当てて、俺の話をゆっくり飲み込みながら理解していっているようだった。

少ししてある程度話を整理したのか、アリアはまた口を開いた。

 

「……つまり、あの頃はアンタの中の《夜神》っていうのが暴走してて、そのせいで容姿が違くて、異常に強かって、《夜王》って呼ばれてバチカンに追われてたってこと?」

 

「……ああ」

 

「なら、その《夜神》って何?」

 

「……《夜神》は、…………」

 

俺はその問に言葉が詰まった。

……正直、話そうと思えば話せる。

今さらアリアに俺のことについて隠すことなんてない。

しかし《夜神》が俺に"宿った"過程を話すと、場の空気が氷河期のように冷えきる自信がある。

なんせ……

 

 

 

 

 

(……《夜神》は、ひなたに託されたもの…だから)

 

 

 

 

 

ひなたのことはアリアも知ってる。

そして、もうこの世にいないことも。

けど、アリアはその"理由"を知らない。

《夜神》のことを話すなら、その事も含めて話さなければならない。

 

(……本当、自分の口下手さが…嫌になる)

 

俺は嘘がつけるほど口が達者じゃない。

こういうとき嘘がつけたらなぁ……。

 

「…………」

 

「……蒼真?」

 

黙る俺にアリアが焦れたのか、声をかける。

さて、どうしたのものか……。

 

「アリア」

 

「? キンジ?」

 

俺が話すかどうか悩んでいると、今まで黙っていたキンジがアリアに声をかけた。

 

「お前、蒼真の銀時計持ってるだろ?」

 

「何よ突然……持ってるわよ。それがなに?」

 

…ジャラッ

 

キンジの唐突な言葉に眉間に皺を寄せ、スカートのポケットから俺の銀時計を手に取る。

 

「それに"何が"入ってるか、知ってるか?」

 

「知ってるわよっ、だからそれが…………っ!」

 

アリアがキンジの要領を得ない問に段々と口調が荒くなっていったが、突然何かに気付いたように口を閉ざした。

そして、アリアは俺の方をバッと振り返り、先程と打って変わって顔を泣きそうに歪ませた。

 

「………………関係、あるの?」

 

「……ああ」

 

「…………ごめん。……ごめん、なさい」

 

「……気にするな」

 

…ポフッ

 

俺は側に来ていたアリアの頭をゆっくり撫でる。

身長のせいか、ベットに横たわっていても手が調度いい高さに来ている。

 

「……キンジ、ありがとう」

 

「別にいい。……アリア、この事についてはまた今度でいいな?」

 

「…………(コクン)」

 

一気にシュンッとなったアリアは、キンジの言葉に静かに頷く。

こんなときだけ気の利く親友に、俺は苦笑と共に心から感謝する。

 

(……結果、気を使わせてしまった)

 

やはり、嘘をつけるぐらいには器用になろう。

俺はそっと心のなかで決意した。

アリアが頷くのを見たキンジは話を続ける。

 

「なら、それは置いとくとして。アリア、まだ聞きたいことあるんだろ?」

 

「……ええ。蒼真、もういいわよ。……ありがと」

 

「……おう」

 

大分調子を戻したアリアのいつも通りの言い方に、俺はまたも苦笑して頭に置いた手を下ろす。

そして、髪の毛を整えながらアリアは口を開いた。

 

「ねえ、蒼真。姿が変わってる……じゃなくて、戻ってる?ってことはもうその《夜神》っていうのは大丈夫なの?」

 

「……ああ。……今は、奴を俺の中に…"封印"している」

 

「封印…ね。ほんとに大丈夫なの?」

 

「……キンジに、聞けばわかる」

 

俺はこの一年ずっと一緒にいた親友に話を振る。

 

「どうなのよキンジ」

 

「俺が初めて会った時にはもう今の姿だったぞ。それに、この一年こいつが"外傷以外"で苦しんでるのを見たことない。つーか今じゃ暴走どころか、《夜神》をある程度"制御"してるしな」

 

キンジはとある言葉を強調しながら答えた。

その目には、呆れと諦念が込められている。

キンジの言葉を聞いたアリアは、やっと俺の言うことを信じたのか1つ頷いた。

 

「ん、ならいいわ。……もしかして、撃たれた傷がすぐに塞がったのは《夜神》のお陰?」

 

「……ああ」

 

「……そう。じゃあ、結論。アンタは弱くなったんじゃなく、元の強さより少し強くなっただけってことでいいのね?」

 

「……その通りだ」

 

俺はアリアの述べた結論に軽く頷く。

 

(……やっと、一段落)

 

本当なら《夜神》についてはもっと複雑な事情や現象がこんがらがっているのだが、それについてはまた今度でいいだろう。

俺は隣で黙って座っていたレキが、タイミングよく静かに淹れてくれた水を1杯受け取る。

 

「…………ふぅ、ありがとう」

 

「はい」

 

「……なら、次に聞いていい?」

 

その様子を見ていたアリアは、ムスッとした顔で俺に話しかける。

 

「……なんだ?」

 

「アンタとレキ、"なんか"あるでしょ? 仲が良いとかはともかく……ともかくっ!」

 

コロコロ表情が変わる様を微笑ましく眺め、そのあとにレキと目を合わせる。

 

「…………」

 

「…………」

 

……どうやら、アリアには話してもいいようだ。

うーむ。話すなら、"アレ"から話すか。

俺とレキを半眼で睨み付けるアリアを置いといて、俺はキンジに退出願いを出す。

 

「……キンジ、回れ右」

 

「あ? 何でだよ。お前とレキの"繋がり"を話すだけだろ?」

 

「……ここ、見せないと…いけないだろ?」

 

そう言って俺は自身の"胸の中心"をトントンと叩く。

それを見てキンジはしばらく考え込んでいたが、すぐに思い出したのだろう。

 

 

 

…バッ(首をグリンっと回してレキを見やり)

 

 

 

…かぁ~っ(顔をほんのり赤くさせ)

 

 

 

…ダッ!!(回れ右して扉にダッシュ!)

 

 

 

「お、終わったら呼べっ!!」

 

短くそう言い残し、キンジは扉の奥に速攻で消えてった。

いつも通りの反応に苦笑し、俺はキンジのために話を進める。

 

「……アリア、まず…これを見てくれ」

 

俺はそう言って、レキに目線をやる。

するとレキは頷き、

 

…シュルッ

 

武偵高の防弾制服のタイの結びをほどき始めた。

 

「なっ!? な、ななな何してんのよアンタ!!?」

 

「いえ、見てもらった方が早いかと」

 

レキは淡々と真っ赤になったアリアの慌てた声に答えながら、防弾制服のシャツを脱ぐために袖から腕を抜こうとする。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいっ!! 何のことか分かんないけど、ここには蒼真が居るのよ!」

 

言いながら俺を指差すアリア。

こら、ヒトを指差すのはやめなさい。

しかし、俺が余裕だったのはここまでだった。

何故なら次のレキの言葉で……

 

 

 

 

 

「蒼真さんになら見られても構いません。それに"もう何度も見られてます"ので」

 

 

 

 

 

「……へぇ」

 

 

 

 

 

病室の気温が氷点下にまで下がったような錯覚を得たからだ。

 

(……これは、マズイ)

 

俺の背中に冷や汗がダラダラと流れ出す。

俺は紅い仔虎の人を殺せるような視線をギリギリ受け止めながら、レキに助けを求めるが……

 

「…………(プイッ)」

 

…………顔を、逸らされた。

まさかの確信犯。

どうやら、今回の事件で"わざと"腹に銃弾を受けたことをお許しになってなかったらしい。

 

(……どうにか、せねば)

 

俺は自分の口を必死で動かす。

 

「……アリア、これには訳が…」

 

「へぇー、ふぅーん。訳? 訳ね。是非とも…ええ是非とも聞かせて貰おうじゃないっ!」

 

アリアはガルルゥッと俺に犬歯をちらつかせながら威嚇する。

けれど、一応は訳を聞いてくれるらしい。

 

(……これが、キンジなら)

 

問答無用で『風穴ぁーーー!!!』だったろう。

…っとぉ、早くしないと噛みつかれる。

 

「ちょ、レキっ!?」

 

…バサッ

 

そうこうしている内に、レキは俺たちの問答を他所にいつの間にかシャツを脱いで、シンプルだが小柄なレキに合う白いレース付きの下着だけになっていた。

 

(…………)

 

……それ、この間買ったやつじゃね?

………まぁ、準備も出来たし…やるか。

 

「……レキ、"出すぞ"?」

 

「はい……んっ」

 

「えっ!? 蒼真!!?」

 

俺達はアリアの動揺の声を無視して、俺はレキの薄くとも確かにある柔らかな2つの膨らみの間に手を当て、呟く。

 

「……出でよ、隷属の証よ」

 

 

 

 

 

…コオォォォォォォォォ──

 

 

 

 

 

「っ!!」

 

「んっ」

 

するとレキの悩ましい声と共に、レキの胸に当てた手から淡く黒い光が漏れ出す。

そして俺はレキの胸からゆっくりと手を離しながら、レキの胸の表面に"それ"を出す。

 

「……これ、は…」

 

「……これが、お前の言う…"何か"だ」

 

俺は手を下ろしながら、呆然と呟くアリアに答える。

俺の不甲斐なさと、必ずどうにかするという決意を胸に抱きながら。

 

「……っ…」

 

「……これは、《夜王》である俺に…隷属した証だ」

 

レキの胸に浮かび上がった"それ"は、縦に長い歪な形をした……黒い光を淡く輝かせる宝石のような石だった。

それを見て、アリアは絶句している。

レキはもう慣れたもので、いつもと変わらない様子で座っている。

 

「…………」

 

「……これには、俺と隷属した者を…"繋ぐ"力がある」

 

「……繋ぐ?」

 

「……そうだ。……これにより、レキは俺の氣を…間接的に、扱えるようになった。そして、俺とレキは…どこにいても、テレパシーが使える」

 

「…あっ、だから……」

 

「……そう、だから俺は…あそこに来れたんだ」

 

アリアも思い至ったようだ。

俺が何故、バスジャックの現場に向かおうとするアリアたちの場所に"レキがなにもしてない"のに来れたのかに。

俺はレキに軽く問い詰めた夜に頼んだのだ。

アリアが俺を呼ばずに《武偵殺し》の事件に向かおうとしたら、俺にテレパシーで教えてくれと。

そしたら案の定、アリアは俺を頼ってはくれなかった。

ああかなえさん、俺とアリアが家族になるのはまだまだ先のようです。

 

「……でも、どうして? こういうの、アンタが進んでするのは考えられないんだけど?」

 

…グサグサっ!

 

俺の心に100のダメージ!!

アリアの純粋な疑問を浮かべた瞳が俺の心を抉っていくっ!

俺の不甲斐なさを何処までも掘り返されているようだっ!!

さすがアリア、伊達に1年の間ほとんど顔を合わせてた訳じゃない。

俺の精神の虐め方を分かってやがる!

 

……冗談はさておき。

 

「……俺達が1年の頃、とある事件で…レキが致命傷を負った」

 

「っ!」

 

「……これを埋め込めば、その者は…俺と同質の、《夜の氣》が扱える。……そうすれば、致命傷の傷も…」

 

「…………」

 

「……時間は、残されていなかった。……だから」

 

「私が蒼真さんに頼んだんです。まだ、死ぬわけにはいけませんでしたから」

 

俺が黙って聞いているアリアに説明している最中に、レキが横から言葉を挟んだ。

レキは俺を心なし睨み付けながら話し続ける。

 

「蒼真さん、自分が全部悪いみたいに言わないで下さい。これは蒼真さんが私の願いを聞いて、蒼真さんが私に最後の手段を提案して、それを私が了承しただけです」

 

そう言って、レキは顔を俯かせて……俺の袖をキュッ掴んだ。

 

「……それに…それに私は貴方だから、貴方だったから受け入れたんです。貴方の奴隷なら、それも良いと」

 

「……レキ」

 

「少なくとも、私は後悔はしていません。そして、今の"体質"も……苦ではありません。だから……」

 

…ぽむっ

 

俺はそれ以上レキに話させないよう、彼女の頭に手を置いた。

そして、ゆっくりと優しく撫でてやる。

 

「……すまない…………ありがとう」

 

「……んぅ…分かれば、いいんです」

 

俺の感謝の気持ちを深く、深く込めながら。

レキはくすぐったそうに目を細めながら、それを受け入れる。

……どれくらいそうしていただろう。

長い沈黙を保っていたアリアが、重たい空気を吐き出すように深く息を吐いた。

 

「……なるほど。アンタも、こっちに来てから色々あったのね」

 

「……まあ、な」

 

「レキ、いい加減服を着なさい。はしたないわよ」

 

「……はい」

 

アリアの言葉に、俺もしまったと思い手を下ろした。

それを感じたレキは名残惜しそうにしながらも、アリアの言葉に頷き、シャツを手に取り着替え始めた。

 

「……にしても《夜神》、か…。…何であの頃話してくれなかったのよ?」

 

「……話すタイミングを、逃した」

 

「…そ。ま、今話してくれたからいいけど」

 

アリアは俺の訳に納得した様子だった。

それに俺は心の中で安堵した。

どうやら、嘘はつけなくとも…隠すことは俺でもまだ出来るらしい。

 

(……嘘は、言ってない)

 

そう、嘘は言ってないのだ。

話すタイミングを逃したのは本当だ。

"あの時"にでも言っとこうかなとは思っていた。

……結局、言いそびれたが。

でも、本当は……

 

(……まだ、心の整理が…ついていなかったから)

 

アリアと出会ったのは、彼女が……ひなたが死んでから間もない時だった。

……語ろうにも、何も口から出てこなかった。

 

(……俺は、あれから…どれ程強くなったか)

 

この頃思う自問自答。

でも、答えは必ず……いつも同じ。

 

(……俺は、まだ…………弱い)

 

本当に、そう思う。

 

…ブゥ~~ン、ブゥ~~ン……

 

「……?」

 

俺が自分の弱さを再確認していると、ベット横の小さいテーブルから俺の携帯の振動音が聞こえた。

 

「はい、蒼真さん」

 

「……ありがとう」

 

キチンとタイを結び直し、制服の皺を整えたレキが俺の携帯を渡してくれた。

渡された携帯の画面を見ると、そこにはウブな親友の名前が。

おそらく、まだかっ!!という催促の電話だろう。

俺は苦笑しながらも通話ボタンを押し、携帯を耳に当てた。

 

「……もしもし」

 

『蒼真か。どうだ、終ったか?』

 

「……ああ。……レキも、服を着ている」

 

『そ、そうか、ならいい。俺も今から戻る』

 

「……おう」

 

服を着ているというフレーズに過剰に反応するキンジに苦笑し、電話を切ろうとしたところで……

 

『……そういえば蒼真』

 

いきなりトーンを変えたキンジから話が振られた。

 

「……なんだ?」

 

俺はそれをいち早く察し、こちらも心なし佇まいを直す。

……そして、俺は次の言葉で……

 

 

 

 

 

『さっき1階の自販機でジュースを買ってたんだがな、……ホールの入り口から、火野とその友達が慌てた様子で入ってきたんだよ』

 

 

 

 

 

頭の中が切り替わった。

 

「……なに?」

 

『あの面子は確かアリアの戦妹のグループだった筈だ。そして、そのなかに……"アリアの戦妹は居なかった"』

 

「…………」

 

『……深読みならいいが、尋常な雰囲気じゃなかったんでな。アリアはまだいるか?』

 

「……ああ」

 

俺はアリアを見やる。

アリアも俺の雰囲気が変わったのを察したのか、真面目な表情で俺を見つめる。

 

『どうする? 一応言っておくか? 余り戦姉が戦妹を甘やかすもんじゃないが……』

 

「……アリアは、そんなことしないだろ?」

 

『……ふっ、確かにな』

 

俺の言葉に思い当たることが多々あるのか、キンジは鼻で笑う。

アリアは突然自分の名前が出てきたことに?を浮かべている。

 

『じゃあ、俺は今から戻る。……アリアには』

 

「……俺が言っとく」

 

『良いのか? なら任せる』

 

「……ああ」

 

そうして俺は電話を切った。

それを見計らったアリアは俺に尋ねる。

 

「電話の相手キンジでしょ? 何よ、私に関係あること?」

 

「……ああ。……実は…」

 

今日は質問会の時間で終わると思ってたんだがな。

……どうやら、まだまだ今日は"騒ぎ"を終わらせてはくれないらしい。




如何でしたか?

いやもう本当忙しかった(--;)
お陰で3ヶ月開けてしまいました。
今の時間がある間にあと4~5話くらい上げようと思っとります!
これからはできるだけお待たせしないよう、頑張って参りますので、これからも応援よろしくお願いいたします!!!

あと、ずっと放置していたアンケートなんですが……嬉しい誤算とはこの事なのでしようね(*´ω`*)
というわけで、結果も後程アップさせていただきます!
アンケートに参加してくださった方々、本当にありがとうございました!!

では、定例文で締めさせていただきます!
いつも応援ありがとうございます!
久方ぶりの感想を大変心待ちにしております!!
これからもよろしくお願いいたします!!!

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