皆様、大変ながらくお待たせいたしました!!
謝罪の言葉しか出てきません!
奇跡的に受かっていた大学、忙しい大学生活、馴れない一人暮らし等々。
多忙ですね、はい。
さらに今回は恋愛談というまた筆の進まないこと!!
それを過ぎれば早かったのですが……(汗
これからも不定期になるとは思いますが、どうぞ応援よろしくお願いします!!
では、サプライズを残して……投稿です。
「っはあ、はあ、はあ…………はあぁぁ~~」
アタシは蒼真先輩の病室を逃げるように出たあと、早足で1階の隅にある人気のない非常口まで来た。
そこで荒い息を落ち着かせたあと、間を置いて一際大きい溜め息をつく。
(なにやってんだアタシっ!? いくら"アレ"を見てるのが恥ずかったって言っても、もっとやりようがあっただろ!?)
でもいきなりあんなん見たらどうしたらいいか分かんないしでも蒼真先輩に恥ずかしいとこ見せちゃってああアタシなんて言ったっけどうしようあんな無理矢理押し付けるようにお見舞いの品渡しちゃってああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!
‥わしゃわしゃわしゃぁっ
余裕のない頭のなかで先程の光景を思い出しながら、声を出さずに思いの丈を吐き出し、頭をかきむしる。
……そんな状態でも、一応ここが病院であることも考慮出来てた自分を誰か誉めてほしい。
「うーーあーーうぅぅーーー……」
(……だけど、よく分からない呻き声をあげるのは許してほしい…です)
見えない誰かに赦しを請いながら、この行き場のない想いを溜め込まずに、声に出すことで解消を試みる。
………………。
…………。
……。
───それからしばらく───
「うあぁーー……。………………ふぅ」
(……ようやく、落ち着いたかぁ?)
あれからどれくらい経ったか?
デニムのショートパンツのポケットに入れてた携帯を見て、経過していた時間にまた溜め息をつく。
(はあ、どうっすかなぁ……)
過ぎたことをいくら言っても仕方ない。
なら、次をどうするかを考える方がマシだ。
……さっきまでうだうだしていたアタシが言うのもなんだけど。
というわけで考えてみたのだが、
(先輩なら、素直に謝ったら許してくれるか。……いやまて、そもそも気にしてすらないかもしれない)
…………落ち着いて考えてみれば、何も心配することなどなかった。
「うっわーー。なんだよアタシ、悶え損じゃねーか……」
気付いた事実にアタシは頭を抱えて落ち込む。
(ホント、あの人が絡むと調子狂うなぁ)
蒼真先輩の顔を思い浮かべながら落ち込むも、どうしてか頬は緩み、嫌な気分にはならなかった。
(……いつからだろ、こんなふうになったのは?)
ふと疑問に思って、気持ちを落ち着かせるのも合わせて振り返ってみる。
《闘技場》での先輩の苦笑を見たときからしばらくはこうじゃなかったはずだ。
あかりには『大人っぽい』て言われたけど、そのときはこんなにいっぱいいっぱいじゃなかった。
(う~~む。もっと後か…)
アタシはウンウン唸りながら、蒼真先輩との出来事をもっと掘り返す。
そして次々に思い出していく、噂とは全然違う先輩の姿。
先輩と出会って少ししか経ってないが、あの人は無表情な顔の裏に想像以上に様々な顔を持っていた。
優しい先輩。
苦笑する先輩。
能天気というか、天然というか……何処か抜けている先輩。
遠山先輩と三流漫才を繰り広げる、ふざけた先輩。
神崎先輩と自然に息ピッタリに行動する、兄のような先輩。
先輩より抜けてるあかりをちょこちょこ気にかけている、先輩然とした先輩。
そして……
『……ありがとう、火野』
射撃場でアタシの頭を撫でながら見せてくれた、先輩の本質を示すような……温かくて、優しい笑顔。
「──っ!! ////」
‥‥ボッ////
私は、射撃場での蒼真先輩の"笑顔"を、頭を撫でてくれた蒼真先輩の手の温もりを思い出してしまい、顔がさっきとは違う恥ずかしさで一気に燃え上がった。
(な、何でそこ思い出すんだよっ!? いやっ、確かに色んな先輩を思い起こしてたけどっ!! ////)
今も思い浮かんでいる蒼真先輩の笑顔を振り払うようにのぼせた頭を滅茶苦茶に振る。
……余談だが、さっきから百面相&挙動不審&一喜一憂しているライカを見かけた看護師が、キテレツなものをみたような顔をしたあと、見なかったことにして回れ右をしたのはここだけの話。
さておき。
どれ程頭を振ろうとも振り払えない蒼真先輩の笑顔。
それは、アタシに調子が狂う原因を気付かせるには十分だった。
(……そ、そうだ。あんときの蒼真先輩の"笑顔"を見たときからだ)
始めて見た蒼真先輩の笑顔。
いつもは無表情なその顔に浮かんだ、優しく笑っている先輩の笑顔を見た瞬間、アタシは見惚れてしまったんだ。
だって、その笑顔は……。
アタシが今まで見てきたなかでも……。
誰よりも温かくて、誰よりも優しくて、……そして、誰よりも素敵な笑顔だったから。
…ぽぉー……////
そのことを理解した途端、沸騰していた頭が今度は心地よい温かさになりボーッとなる。
顔は相変わらず中々に熱い。
(……あれ、そういえばその時くらいからか? アタシが自分の事でおかしいって思い始めたの……)
頬に手を添えて顔の熱さを確認していると、ふとアタシが蒼真先輩の事とは別で、最近気になっていた事が気になりだしたのも同じ時期なのに気が付いた。
その気になっていたことっていうのは……アタシ自身の変化。
そして私の頭のなかで、カチッ、カチッと何かが噛み合っていく。
そう。
アタシはあの日を境に、知らないうちに自分は変わっていったのだ。
蒼真先輩の笑顔を見たあの日から……。
アタシはあまり気にならなくなった。
今までなんだかんだ言っても気になってた、男子のアタシに対する《男女》みたいな下らない蔑称が。
アタシは少しずつ気になりだした。
自分の髪型や服装、今まで気にしたこともなかったスタイル何ていう、気にしなくてもいいものまで。
アタシはよりいっそう憧れた。
アタシの戦徒の……麒麟のような、守ってあげたくなる女の子らしい可愛らしさに。
アタシは羨ましいと思った。
あれだけネタにしてた、アリア先輩とあかりの戦徒として近くに、側にいられる関係を。
……そして、アタシは…………。
「………………ぁ……」
…トクンッ……
……そしてアタシは。
……たった今、この瞬間。
───ありがとう、火野───
自分の気持ちに気が付いた。
「……………………」
…トクンッ…トクンッ……
……顔が、熱い。
だけど、アタシの頭は不思議とクリアだった。
(…………そっ、か)
アタシの胸が不自然に、思ったよりも遥かにゆっくりと、けれどいつもより鼓動が大きくアタシに伝わる。
(……そっか)
…トクンッ…トクンッ…トクンッ……
いつまでも鳴り止まず、自己主張を続ける心臓が存在する胸に、アタシは両手を重ねる。
(……アタシ…)
そして、恐る恐る……アタシは自分の気持ちを確認するように、呟く。
「アタシ、蒼真先輩のこと……好きになっちゃってたのか……」
…~~♪、~~♪
「ッどぅわ!!?」
始めて感じる夢のような心地よい感覚が、着信を告げる携帯の音で現実に引き戻された。
……さっきまで乙女の世界に浸っていたとは思えない声を上げて。
(……うっわぁ。アタシ、なにやってんだ? つかなに考えてんだっ!? //// …………っじゃないっ! 携帯っ!!)
アタシは未だに鳴っている携帯を慌てて掴み、わたわたしながら電話に出る。
「も、もしもしっ?」
『わっ。……えっと、ライカさんですか? 佐々木ですけど』
携帯から聞こえてきたのは、今は学校に居るはずの友人……佐々木 志乃の驚いた声だった。
「お、おう! どしたんだよ?」
『あ、はい。午前中、"お二人"の姿がお見えにならなかったので電話をかけたのですが……ライカさん、大丈夫ですか? 何か慌てているような……?』
「な、何でもない! なんでもないぞ、ホントっ! …………ん? "二人"?」
志乃の言葉に、相手に見えないにも関わらず手をバタバタと大きく左右に振る……が、その動作の途中で志乃の言葉の一部に引っ掛かるものがあった。
すると、アタシはその言葉を自然と志乃に聞き返していた。
『ええ。朝の1限目以降、ライカさんと"あかりちゃん"のお二人がいらっしゃいませんでした。……その様子ですと、あかりちゃんが居ないことは?』
「……初耳だ。最初はあかりと一緒に居たけど、早退したんだよ、アタシ。まあ、仮病だけど。んで……」
アタシはそれから志乃に、1限目以降にあったこととアタシが早退した理由、早退することをあかりに頼んだことなんかを話した。
『……となると、あかりちゃんはライカさんと別れたあと、行方が分からなくなったみたいですね』
「みたいだな。アタシの伝言も届いてねぇし……うっし! なら、アタシも適当に探してみるから、そっちはそっちで探してみてくれ」
『はい、分かりました。何か情報が入り次第、ご連絡します』
「おう、んじゃな」
そしてアタシは携帯を切り、ポケットに仕舞う。
(……行方不明、ねぇ。あいつの心配しすぎだと思うけど…)
今頃教室で、「あかりちゃん、ああ、あかりちゃん、あかりちゃんっ!!」なんて言いながら、あらゆるコネと権力を使い、捜索していることだろう。
「……まあ、いい気分転換になるし、付き合ってやるか!」
アタシは何かを振り払うようにそう声にだし、フロントの方へ足を向ける。
……しかし、そんなアタシの心と頭のなかは変わらず蒼真先輩で一杯だった。
(…………今度、どんな顔で会えばいいんだよぉ)
《恋》というものを知ったアタシはどうすればいいのか、そして、この行き場のない感情のやり場にほとほと困りながら、アタシは早足で雨が降りや止まぬ曇天の空へと足を踏み出した。
あかりを探しに行く筈なのに、ライカの中には、当の本人はこれっぽっちも、毛ほども存在していなかった。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「…………そう。奴は未だ健在なのね……」
「うんっ♪ そりゃもうピンピンしてたよっ! 肩の傷は治るのに2、3日くらいで、お腹の傷は1週間掛からないって言ってた!」
「…………っ」
…ぎりりっ
私の報告に、ソファに座り足を組んでいたアカ姉は、中々にスリリングな雰囲気を撒き散らしながら顔を俯かせた。
アカ姉の身体は憤怒で震え、歯はこっちにも聞こえるほど噛み締められている。
ここ最近根城にしてたスイートルームは、今やアカ姉が放つ暗い怒気によって禍々しく染められていっている。
かくいう私も背筋がブルッてしてる。
(まぁ、"わざと"そうしたんだけどね♪)
私は心の中でテヘッとおどけてみせた。
そうくん成分を補充するためにお見舞しに行ったとき、私はさりげなく"メモ"をそうくんに渡した。
そのメモには、これからの"打ち合わせ"なんかを書いてある。
そのあと、怒れるおチビちゃんをさんざん弄り倒して、ダッシュでここまで帰ってきた。んで、いまに至るわけだけど……。
(……アカ姉ゴメンね、裏切るようなことして。だけど、私はもう"そんな"アカ姉見てたくないの。だから……もっと"怒って貰わないと"…ね?)
今頃、そうくんが私のために色々"準備してくれている"頃だろう。
(だから、私もそうくんのために"準備"を整えとこっ♪)
そのために、もっとアカ姉を煽らなければ……。
「ねぇアカ姉、これからどうするの? 私はこのままターゲットをブッ飛ばす準備するけど、夾ちゃんとジャンヌも計画進めてるし、"あのバカ"は帰ってこないし……」
「…………そうね。私は少し"奴等"を調べ直してみるわ。今回はどうやらこちらの情報不足だったみたいね。"奴等"がなにをしたか全く分からなかったわ」
アカ姉の言う奴等は、そうくんとレキのことだろう。
その事を知ってるかも知れない私に無理矢理尋ねずに自分で調べる辺り、アカ姉はまだ"戻れる"ところにはいるみたいだ。
アカ姉は続ける。
「……おそらく朱美は戻ってこないでしょう。私は直に"見た"けど、武偵達の査報告書にも、『"犯人"は左肩を負傷したまま現在逃走中』と書いてあったし、ほとぼりが覚めるまであの娘は何処かに隠れているはずよ。この場所に帰ってくるなんていう、わざわざこちらの不利になるようなことをあの娘はしないわ」
アカ姉は私の言葉に、殺伐とした雰囲気のまま答えた。
私は内心ビクビクしながらも……つっこむ。
「ふんっ。全く、なぁにやってんだか。あんだけえっらそうなこと言っておいて、蓋を開けてみたらこれだよ。ダッサぁ~」
「……理子、やめなさい」
「えぇ~~、だってそうじゃん? あんだけ啖呵きっといて、そうくんの肩を2、3日負傷させただけって……なんかそうくんを心配したこっちが拍子抜けだよ」
「…理子」
「それにさ、あのグズは……」
「やめなさいと……言わなかったかしら、理子?」
「っ!」
……私の中を、黒く冷たい何かが這いずり回る……そんなイメージを、アカ姉の怒気は私に見せた。
(……あ、危ない危ない。来ること予想してなかったら思わず漏らしちゃってたかも)
額と背中に冷や汗を流しながら、私は心の中で軽口を言い、未だに怒りをこちらに向けるアカ姉に取り繕う。
「わ、分かったよアカ姉、もう言わない」
「…………ふぅ。……ごめんなさい理子、貴女に当たってしまったわね」
「いいよいいよっ、こっちこそゴメンね? アカ姉の気持ち考えないで……」
「……ええ」
それっきり、アカ姉は足を崩し、両膝の上で指を組みながらそこに額を当てて俯く。
(お、思ったよりも追い込まれてる? ……これは早くそうくんと戦って"貰わない"と不味いかも…)
おそらく朱美が帰ってこないのも焦りに拍車を掛けている。
(うぅ~~ん。感情のコントロールなんて、ムツカシイよそうくん。"堕としすぎず、もっと暗い感情でこころを満たしてもらう"なんて……)
私はそう思いながら、一息つくために冷蔵庫にあるジュースを取りに行こうと足を向け…………
「……どうした、陽神 茜? 念願の復讐を始めたというのにその様は?」
「っ!!?」
「あっ、雅樹さん……」
アカ姉はその声がした方に憤怒の表情を向け、勢いよく立ち上がりその人物と距離を置く。
その声の主は、私が足を向けた先に立っていた。
その人は、ただならぬ気配という言葉がしっくり来るほど、並外れた気配を放っていた。
さっきまではそこにいることすら気づけなかったのに、だ。
服装は、全身を黒一色に統一している。
黒のズボンに黒のフード付きのレインコートを着ている。
そこまではまぁ、いいんだけど……。
(……フードくらい脱げばいいのに…)
180後半はある身長に、がっしりとしたガタイ。
そのような成りで、全身ずぶぬれのままフードを目深に被られると、表情が見えないのも合わさり中々にホラーだった。
「朝霧 雅樹……!」
そんなことを考えていると、アカ姉が警戒しながら件の人物の名前を呼んだ。
そう。
この人の名前は朝霧 雅樹。
私たち、イ・ウーのトップ……《教授》に、『人間がたどり着ける1つの完成形』と言わしめた人である。
「……ふん。なんだその顔は? 復讐を謳う者の顔ではないな」
朝霧 雅樹……雅樹さんが口を開くたび、部屋の重力が増したかのような錯覚をおぼえた。
雅樹さんはそう言いながら、目深に被ったフードを取り去り、未だに警戒を解かないアカ姉に対して、言いきる。
「……今の貴様の顔は、"強者"に対して踞り、ビクビクと怯えている"弱者"のそれだ」
「っ!? き、さまぁ!」
「んもぅ。……雅樹さん雅樹さん。何かご用?」
私はこのままだと色々……それはもう"色々"と不味いことになりそうなので、ちゃっちゃか話を進めるために雅樹さんに用件を尋ねた。
「…………」
声をかけてきた私を見やる雅樹さん。
ただそれだけで、圧力が数倍上がったかのように感じた。……けど。
「ん? 理子の顔になんかついてる?」
私はいつも通りに話す。
「…………ふん。奴からの"最後"の指令だ、陽神 茜」
その人は、誰も寄せ付けない。
その人は、誰にも恐れられている。
その人は、赤子であれ必要ならば殺す狂戦士。
その人は、《朝霧》と言われている。
血も、涙も、感情も、心もない……人殺し。
だけど、私はそんなこの人が……。
怖く、なかった。
恐ろしく、なかった。
文字通り、『恐怖』なんて感じなかった。
むしろ、私はこの人のことが好きだった。
この人は……。
「『例のものを使い、《夜想曲》について調べろ』。……今の貴様に出来るかどうかは、甚だ疑問だがな」
裏の闇の世界で、《朝霧》として名を轟かせている……
───イ・ウーの実質No.2に君臨する、最強の《人類》だった───
如何でしたか?
はいっ、わかる人にはわかるぅ~~!
まんまですねぇ。
わからない人は、名前をググってみてください。すぐ出ます。
私この作品も好きでして、そしてこの人好きでしてっ!
出しちゃいました、後悔はありませんっ!
……てなわけで、今回はここまでとします。
最後にお知らせ!
今日中に活動報告でアンケートを行いたいと思います!
是非にご参加ください!!
ではでは(^-^)/
いつもありがとうございます!
感想、意見どしどし募集しております!!
これからも応援よろしくお願いいたします!!!