夜の神は太陽に恋焦がれた   作:黒猫ノ月

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どうもです。

難産でした。
どれ程難産かと言えば……言葉ぁ~にぃ~、できなぁい。

……失礼。

では、投稿です。


第20弾 「……私も、バカね」

「───えっと、次の患者さんは……」「田中さん、田中さんはいらっしゃいますか?」「皆さん、こっちですよ~」「すみません、中原はどの病室ですか?」「大丈夫だって、これくらいのキズ」

 

私が1人、壁際の隅で椅子に座って俯いている中で、様々な声がこの広く白い空間を交差する。

私はそれをどこか遠くで聞きながら、蒼真に渡された"黒い布で包まれたモノ"を両手でギュッと握り締める。

 

ここは武偵病院のフロント。

さっき起こったバスジャック事件の後始末と"いざこざ"を終えたあと、蒼真の血で染まったC装備から制服に着替えて真っ直ぐにここに来た。

昼過ぎにここに着いたが、蒼真は未だ面会謝絶。

命に別状は無いみたいだけど、念のため検査をしているらしい。

レキは蒼真の部屋の前でジッと待機している。

私は自分の気持ちに整理をつけるためにここに1人で座っているが、中々に纏まらない。

 

(……"あれ"から、また色々あったから)

 

‥‥クゥ~~

 

さっきから鳴っているお腹のせいでもあるだろうが、こんなときに御飯を食べる気にはなれなかった。

 

「……バカ蒼真」

 

私の頭の中をぐちゃぐちゃにしている奴"等"の名前の1つを口にする。

 

 

 

 

 

 

『……なぁ‥‥満足か?』

 

 

 

 

 

インカムから聞こえてきた蒼真の声。

 

 

……そして、次の瞬間には……肉を抉る耳障りな音が。

 

 

何かが倒れる音。

 

 

蒼真の名を叫びながら、上層道路に上がると……そこには、

 

 

 

 

 

雨に濡れた道路を朱に染めて、俯せに倒れている蒼真の姿があった。

 

 

 

 

 

「…………や‥‥い、や」

 

湿度が高く、じめじめしているはずなのに……喉が乾く。

 

「……そ、ま」

 

……声が、出ない。

 

………何も、聞こえない。

 

…………前が、見えない。

 

………………………。

 

 

 

 

 

「…………っ!! 蒼真ぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

 

 

 

 

涙を流し、からからの喉を引き絞って、大声で蒼真の名を呼ぶ。

 

("こんなこと"無かったっ!)

 

蒼真に早く駆け寄りたいのに……足が絡まる。

 

("向こう"では、こんなこと無かったっ!!)

 

無事を確認したいのに……涙で前が見えない。

 

「蒼真っ! しっかりしてっ!!」

 

ほとんど転けるように駆け寄った私は、雨に打たれて血を流す蒼真の状態を震える手で確認する。

 

(……い、息はしてるっ! でも血がっ!)

 

「蒼真っ! 蒼真ぁ!!」

 

何度も、何度も呼び掛け、私の何倍も大きい体を仰向けにする。

そこには、

 

「……っ!!」

 

左肩だけでなく、お腹にも穴が空いていた。

そこから命の源が……血が湧き出てる。

その事に呆然となりそうになるがすぐに我に帰り、涙を拭う。

それから止血のために処置を施そうと、中々言うことを聞かない自分の手を必死で動かす。

すると……

 

 

 

 

 

「…………ア、リア?」

 

 

 

 

 

蒼真が……目を覚ました。

 

「蒼真っ! 今から血を止めるから、待っててっ!!」

 

私はそう言って、先程よりかは震えが収まってきた手で応急処置をしようとする。

……だけど、それは必要なかった。

何故なら、

 

 

 

 

 

「…………大、丈夫‥‥だ」

 

蒼真の拙いその言葉と共に……お腹の銃痕から流れていた血が、止まったから。

 

 

 

 

 

「…………えっ‥‥止まった?」

 

私は目の前で起きたことに、今度こそ呆然とした。

……よく見れば、左肩の血も止まっている。

 

(……え? え? 一体なにが? え?)

 

次々に襲ってくる事象に、頭の中が追い付かない。

 

「……っ……っしょっと」

 

そんな私の目の前で、蒼真がゆっくりと体を起こす。

そして、私の顔に右手を伸ばし、目元を指で拭う。

 

……だけど、そんなぐるぐる回る頭でも分かったことがある。

それは、

 

 

 

 

 

「…………心配、かけたな‥‥アリア」

 

 

 

 

 

……蒼真が、一命をとりとめたということだ。

 

「~~~~~っ!!」

 

その事に理解が追い付いた瞬間、色々と爆ぜた。

少し青い顔をしているが、いつもと変わらない無表情で私の涙を拭う右手を払いのけ、蒼真に思い切り抱きついた。

 

「……ぐ」

 

「バカっ!!バカバカバカバカバカぁぁぁぁっ!!」

 

蒼真が小さく呻くが知ったことではない。

私はそれから、散々に蒼真を罵倒した……と、思う。

言葉にならないモノをぶちまけ、最後にはただ泣くことしか出来なかったから、何を言ったか覚えてなかった。

……それでも、そんな中でも私が覚えていることと言えば、

 

「…………ゴメンな、アリア」

 

蒼真の謝罪の言葉と。

私の罵詈雑言を素直に受け止め、ヘルメット越しに私の頭を優しく抱き締めた事で感じれた……蒼真の確かな鼓動と、温かい体温だった。

 

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

 

その後に狙撃主を追っていたヘリに乗ったレキが急いで駆けつけた。

レキは蒼真の惨状を見て、私みたいに取り乱したりはしなかったけど……無表情&無言の圧力が凄かった。

蒼真も無表情だったけど、内心冷や汗が止まらなかったことだろう。

 

「…………」

 

「…………ゴメン」

 

「許しません」

 

「…………」

 

「許しません」

 

「…………はい」

 

(……レキ、怖いわよ)

 

レキと私に支えられながら、そんなやり取りをする2人。

蒼真をヘリに乗せ、武偵病院に向かって飛んでいる間に

も蒼真とレキは座って何か話していたが、蒼真が思いの外元気そうだっだ事もあり、私は別の事を考えていた。

それは、あの役立たず……バカキンジの事だった。

 

(……アイツは蒼真が認める程の実力者。それは私も自分の目で確認してる。……なのにっ!)

 

 

 

『武偵は命を懸けて事件に臨むんだぞ! いい加減、適当するのも大概にしやがれっ!!』

 

『確かにお前がリーダーだ。けど、俺は少なくとも"ちゃんと説明してくれる"ヤツを信じるぞ?』

 

『ということで蒼真っ! 早くなんとかしてくださいお願いしますっ!!』

 

 

 

(確かに私が悪いところもあった。それは認める。けど……アイツっ! 適当してるのはどっちよっ!!)

 

バスジャックの時のアイツの行動と言動を思い出し、頭が沸騰していた。

そう、私は怒ってる。

 

 

───本当は実力を持っているはずなのに、隠し通したアイツに。

 

 

───実力が及ばなかったせいで、蒼真を傷つけてしまった自分にっ。

 

 

───蒼真が傷ついたのにも関わらず、情けないことを言って他人任せにしたアイツにっ!。

 

 

 

 

 

───蒼真の優しさに漬け込んで、いつまでも甘えてるアイツ/自分にっ!!

 

 

 

 

 

……そう、怒っているのだ。私は。

アイツだけじゃない。

自分の不甲斐なさにも、情けなさにも、怒っているのだ。

私が両手をこれほどかと握りしめ、自分の中で暴れるものを押さえていると、

 

‥‥ポフッ

 

とヘルメットを脱いだ私の頭に大きな掌がのせられた。

 

「…………アリア」

 

顔をあげると、いつもより顔が青い蒼真の顔があった。

 

「……何してるのよ? 平気そうにしても重傷には変わらないんだから大人しくしてなさい」

 

私は俯き、蒼真にそう言った。

 

(……蒼真の顔が見れない。見れるはずがないっ)

 

自分の情けなさから蒼真を直視できない私に、蒼真は変わらない様子でゴソゴソとポケットを漁っていた。

そして俯いた私の顔の高さに合わせて、取り出したものを見せた。

 

「…………"これ"を、預かっていてくれ」

 

「……?」

 

それは、黒い布で包まれたものだった。

 

 

私は"それ"を握りしめ、少しずつ落ち着いていく思考に身を委ねる。

 

(……これは、蒼真の"宝物"。何よりも大切なモノ)

 

検査の時に、他の人に触らせたくない……いや、"触れない"からと預かったモノ。

それを渡された後、布を捲っていくと……いつか見た"銀時計"だった。

 

(そういえば、どんなときでもこの時計を持っていたわね)

 

昔見せてもらったが、これには……蒼真の大切な人の写真が埋め込まれている。

 

そんな大事なものを、私に預けてくれた。

 

お腹を撃たれる前、何よりも優先して私を抱き締めて、私の卑屈な問に答えてくれた。

 

だから、今は怒りは……情けなさは大分落ち着いている。

 

(……蒼真は私を"信頼してくれてる"。"頼ってくれてる"。それに今まで気づけなかったのは……)

 

 

 

 

 

───私も他の人達と同じように、蒼真を"特別視"してたから───

 

 

 

 

 

「…………」

 

そこまで思考がたどり着いたとき、怒るでもなく、恥ずかしいと思うことなく、ストンっと私の中にきれいに落ちてきた感覚を覚えた。

 

(……なんか、納得って感じね。……ホントに、私はいっぱいいっぱいだったんだなぁ)

 

蒼真は優しい。強い。気が利く。頭がいい。Etc Etc……。

そんな誰よりも頼りになる兄貴分。

だけど、そんな蒼真も1人の人間で。

淋しいと思ったり、辛いと感じたり、悲しいと嘆いたり……。

そんな、人なら当たり前の事を感じる1個の人間なのだ。

なのに私は心の何処かで、蒼真は完璧超人だと思ってた。

 

(……あかりにああ言った癖に、私自身が分かってなかったなんて、ね)

 

だから私は蒼真に追い付きたいと、頼りにされたいと願ったのだ。

だけど実際はそんなこと願う必要はなかった。

蒼真は私とアイツがそばにいるだけでよかったのだそうだ。

自分の宿命に平気で巻き込んでもいい。

そう思える私達がただそばにいるだけで、蒼真は本当に嬉しかったのだと。

蒼真の行動と"アイツ"との"いざこざ"がなければ、私は今も負の連鎖に苛まれていただろう。

 

(…………ふんっ、バカはバカなりに色々あったって訳ね)

 

私が蒼真の次に、"バカ"の事を頭の中で纏めようとすると、

 

‥‥クウゥゥ~~~

 

……さっきよりも大きなお腹の音が鳴った。

 

(……////)

 

さっきは感じなかった恥ずかしさを感じて、暑い顔でお腹を手で押さえてると、

 

 

 

 

 

「……やっぱ何も食ってなかったか」

 

 

 

 

 

「っ!!?」

 

目の前にはいつのまにかバカ……遠山 キンジがビニール袋を下げて立っていた。

ビニール袋を持つ右手には、包帯が巻かれてある。

よく見ると、左にも巻かれていた。

 

「ほらっ、お前の好物だ」

 

キンジは恥ずかしくて俯く私に袋を無造作に放る。

 

「きゃっ、ち、ちょっとっ! 投げないでよっ!」

 

「いいから食え。腹へってるんだろ?」

 

「…………ふんっ」

 

私はキンジにそっぽを向いて、太ももの上に乗っけられたビニール袋からモモまんを取り出す。

 

「……よっこいせ」

 

キンジは爺臭くそう言って、私の横に座った。

 

「…………はむっ」

 

「…………」

 

「‥‥もきゅもきゅ」

 

「…………」

 

「‥‥ゴクン‥‥はむっ」

 

「…………」

 

それからしばらく、私の咀嚼する音だけが2人の間に流れた。

 

(……正直、何話せばいいか分かんないのよ‥‥)

 

"あんなこと"があったのだ。

いきなり今まで通りに接することなんて出来ない。

私はモモまんを口に運ぶ。

けど、美味しくない。

いつも幸せになれるはずのモモまんを食べても食べても、そんな気分にはなれなかった。

 

「……ああ~、アリア?」

 

そんなとき、キンジが私に声をかけてきた。

 

「……ふぁによ?」

 

「ん、ああ‥‥その、なんだ」

 

キンジはしばらく躊躇っていたが、やっとはっきりと口にした。

 

「…………悪かったな、お前にあたって」

 

「…………いいわよ、別に」

 

私は素直に、その謝罪の言葉を受け取った。

すると、なんだか私も言わなくちゃいけないと思った。

 

(……違う。"言いたい"んだ)

 

だから私も静か言葉にした。

 

「……私も、悪かったわね。色々ぶちまけちゃって」

 

「……ああ」

 

それからまたモモまんを口に運んでみた。

すると、モモまんはさっきまでとは全然違った味がしたように感じた。

幸せにはなれないけど、さっきよりも断然美味しかった。

 

 

 

私達はそれから何を言うでもなく、私のモモまんがなくなるまで静かに時を過ごした。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

武偵高の生徒が乗ったバスを警察に任せたあと、電源を入れたインカムから、蒼真が重傷を負ったとレキから聞いた。

俺はすぐに"あのときの事"を思い出し、急いで病院に向かおうとしたところで、重傷のはずの蒼真から通信が入った。

 

『…………心配、かけたな』

 

「……はぁ。平気装ってるけどしんどいんだろ……無理するなよ蒼真。聞きたい事が山ほどあるが、とりあえずお前の処置が終わってからにするから」

 

『…………了解』

 

「じゃあ、あとでな」

 

『…………おう』

 

そう言って俺達は通信を終えた。

 

‥‥ザアァァァァァァ……

 

俺はヘルメットを脱ぎ、脇に抱えてなんとなしに空を見上げる。

今日の朝から降る雨は、強弱あれどやむ気配は未だにない。

雨粒が顔に辺り、目に入るが、俺は気にせず鉛色の空を見上げ続ける。

 

(……蒼真が撃たれたのは……多分、"わざと")

 

前にもこんなことがあった。

ひなたさんを"死なせた"蒼真に、《陽》が敵討ちにやって来たのだ。

そのとき、蒼真はそいつらの気持ちを受け止めるためか、はたまた自身への罰のつもりか……アイツは《陽》達の攻撃を一撃ずつ"無防備"に受け、重傷になったのだ。

……まぁ、その後にはきちんと俺と蒼真、レキでそいつらを片付けたのだが。

 

(……ったく、お前の事を本気で心配してる奴等は気が気じゃないぞ)

 

アリアとか、レキとか、理子とか…………俺、とかな。

にしても……

 

(バスジャックに何で《陽》が関わってるんだ?)

 

奴等は基本、"人間"には手を出さないはずだ。

いくら蒼真が事件解決に動いていたとしても、その過程で無関係な"人間"を巻き込んでいいという道理はない。

事実、これまで《陽》が蒼真を殺そうとやって来た時、蒼真や"対象外"になった俺とレキは殺されそうになったが、他を巻き込むような事はなかった。

 

(多分、この矛盾が蒼真が黙っていたことと関係があるな)

 

ノーマルモードの俺でもここまでは分かる。

しかし、ここからは全く分からん。

 

(……はぁ。やっぱ本人に聞くのが一番早いか)

 

俺は濡れた髪を乱暴にガシガシと掻いたあと、顔も手で拭い、C装備から制服に着替えるために強襲科に足を向ける。

……何となく、歩きたい気分だった。

雨が降りしきるなか、これ酸性雨で禿げるかもな。っとぼんやり思いながらゆっくりと歩を進めた。

 

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

 

そして、昼には少し早い時間。

俺はずっと雨に打たれながら歩いてきて、さすがに寒くなったので強襲科にあるシャワーでも浴びようと着替えを取りに行ったのだが……

 

 

 

 

 

何故か"男子ロッカールーム"に、紅い仔虎が居座っていた。

 

 

 

 

 

「………………何してるんだ、アリア?」

 

俺は既に制服に着替えてベンチに座っているアリアに一番無難な疑問を口にした。

色々言いたいことはあるのだが、なんか躊躇った。

……なんというか、蒼真が重傷を負った事でアリアが気にしてるんじゃないか?っと俺なりに気を使った(?)のだが、

 

「…………」

 

……意味はなかったようだ。

 

(今回のことはアリアのせいじゃない。蒼真が"自分"でやったことだ。だから気に病む必要はないんだが……)

 

……そもそも、アリアはどこまで"知ってるんだ"?

 

 

 

《夜》のこと。

 

《陽》のこと。

 

《夜王》のこと。

 

"ひなたさん"のこと。

 

その他色々なこと。

 

 

 

逆に俺が知らないこともあるかもな……。

 

…………………………。

 

(……あとで一緒に聞くか)

 

今は早くシャワーを浴びたい。

本当はアリアに声をかけた方がいいのかもしれないが、女を悉く避けてきた俺にはハードルが高すぎる。

しかもその相手がアリアなら、ハードルが棒高跳びの領域まで上がる。

俺はそう結論を出し、さっきからベンチに座ったまま俯いているアリアには触れないように着替えが置いてあるロッカーのところに行こうとして、

 

‥‥がたんっ

 

仔虎が唐突に立ち上がった。

 

「……?」

 

顔は俯かせたまま、無言でこちらに歩いてくる。

 

(……なんだ? この雰囲気、ただ事じゃない。…………まさか、蒼真が傷ついたのを俺のせいにする気か?)

 

……蒼真、アリアに少しくらい説明しとけよ。

俺は内心でそう決めつけて、何があっても対応できるように身構える。

そして、気付く。

 

(…………ん? アリアが右に持ってるものって……っ!)

 

俺はそれを見て、構えを解いてしまうところだった。

それほど迄に衝撃だったのだ。

アリアが、"蒼真の銀時計"を"持てていること"に。

そうこうしてる間に、2人の距離が1mほどになった時にアリアは止まった。

 

「…………」

 

「……な、なんだよ?」

 

そのまままた無言。

何時来るか分からない恐怖で、腰が引ける俺に……アリアはとうとう顔を上げた。

 

「……………っ!」

 

……その顔は、どこにも怒りが隠せてない憤怒の顔だった。

けど、それと同時に……

 

 

 

 

 

泣きそうで、叫びそうで……だけど何かと葛藤しているような……そんな言い様の無い顔をしていた。

 

 

 

 

 

俺はその顔を見たまま、動けなくなっていた。

 

(……俺はこれに似た顔をを知っている)

 

 

 

何故なら、それは……。

 

 

 

……そして、アリアはその顔をまた下げた。

 

‥‥ギリッ

 

すると歯を噛み締める音が聞こえる。

よく見てみると、両の手は握り締めすぎて真っ赤になって震えている。

 

(……俺は、今のこいつに似た心境を知っているっ!)

 

 

 

何故なら、それはっ!

 

 

 

しばらくそうしていたアリアは、また唐突にふっと力を抜かせた。

……そして、また顔をゆっくりあげる。

 

「…………」

 

……今度は、驚かなかった。

その顔のまま、アリアはゆっくりと口を開き、声を発した。

 

 

 

 

 

「……これで最初の事件はおしまい。契約は完了よ。あんた、もう探偵科に戻っていいわよ。さよなら」

 

 

 

 

 

……俺は、知ってるんだ。

 

今のこいつは、本当に"似ている"。

 

少し前まで……いや、多分今も同じなんだろうな。

 

本当に"似ているよ"。

 

何で知ってるかって?

 

決まってる。

 

それは……

 

 

 

 

 

───俺がしていた"顔"で、俺がしている"心境"で、俺がたどり着いた"顔"だったからさ───




如何でしたか?

いや~、進まない。20話こえてまだ1巻半ば。進まなーーい!

さてさて。
次回はアリア喚く、キンジ吠える回です。
原作とどう変わっていくか、お楽しみに!

ではでは(^^)/
感想と意見、本当に楽しみにしております。
心から楽しみにしております!
これからも応援よろしくお願いいたします!!

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