夜の神は太陽に恋焦がれた   作:黒猫ノ月

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どうもです。

最強タグ&無敗と言っておきながら倒れた蒼真。
一体どうなるのか?

今回はオリキャラが出ます。
お気に召すかは分かりませんが、張り切って参ります!

では、投稿です。


第18弾 「おじさん、これでも強いのよ?」

「……グッ、……クッソっ」

 

ビルとビルの間。

雨空模様も相まって、一段と暗く淀んだ空気が漂う狭い路地裏で、そんな言葉を吐き捨てる声が響く。

 

‥‥ピチャン‥‥ピ、チョン‥‥

 

声の主が路地裏を不規則に歩いていくのと同時に、いくつもある水溜まりに何かが滴り落ちる音が雨音に混じって聞こえる。

それは‥‥ゆっくりと水溜まりに広がっていき、

 

「はーっ、はーっ、はーっ!」

 

それは‥‥朱の色に染め上げていく。

 

「はーっ‥‥‥‥あんのクソ餓鬼がぁっ!」

 

息を荒げて、赤黒く染まっている"左肩"を押さえて、もつれる脚を必死に動かして‥‥‥‥陽神 朱美は薄暗い路地裏を逃げる。

答えの返ってこない怨嗟の声を叫びながら……。

 

 

 

 

 

「……っ‥‥何故だぁっ!!」

 

 

 

 

 

完全に有利なはずだった。

 

アドバンテージをとっていたはずだった。

 

ヤツをいたぶり、大事なものを傷つけ、身も心も破滅させて……殺すはずだった。

 

なのに……、なのに何故──!

 

 

 

 

 

「……この俺がっ……っ‥この、俺がぁっ!!」

 

 

 

 

 

みすぼらしく、溝鼠のように逃げなければならないのか──!?

 

「ぐぅっ!」

 

一段と痛んだ左肩を押さえて、朱美は答えの見えない疑問の渦に飲み込まれる。

 

 

 

……。

…………。

………………。

 

 

 

一瞬だった。

 

 

 

隠れた場所から出てきたかと思えば、ナイフ2本でこちらの銃弾を悉く弾き返す憎い仇。

フェイントを混ぜるも、"あり得ないはず"なのに、まるで見えているかのように弾き、かわす敵。

頭に血が上り、自棄になって銃弾を……3発目の引き金を引いた瞬間……。

 

 

 

 

 

‥‥ァァラバラバラバラバラッッ!!

 

 

 

 

 

急速にこちらに向かってくるヘリ。

慌てて〈空間の氣〉とライフルの銃口をヘリに向けると……ヤツが‥‥‥‥あのクソアマが既にっ!

 

 

 

 

 

雲の向こうから俺を……完全に俺を見て、ドラグノフの引き金を引いていた──!

 

 

 

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

 

その結果がこの有り様だ。

特注のライフルは破壊され、朱美が貫いた仇と全く同じ場所を、"《夜》が籠められた銃弾"で撃ち抜かれた。

 

「‥‥ギィッッ……ぐぅっ、……な、何故だァ!」

 

打ち込まれた《夜》が、《陽》を蝕み続ける。

体力が削られ、朱美の歩く速度が落ちていく。

歩調はいっそう不規則になり、フラフラと身体が傾き始める。

さらに、疑問の渦は朱美を狂わせる。

 

何故、〈空間の氣〉で察知できない銃弾をかわし、弾くことが出来たのか……?

 

何故、俺の居場所が分かったのか‥‥?

 

何故、あのアマは《夜》を扱えたのかっ?

 

何故、何故、何故、何故、何故っっ!?

 

 

 

 

 

「っ何故だあぁぁぁーーーーっっ!!?」

 

 

 

 

 

痛み、憎悪、疑問……様々な感情を含んだ狂気の絶叫が路地裏に木霊する。

 

 

 

 

 

そのとき……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ジジ‥‥あっららぁ~~、負け犬が汚く吠えちゃってぇ。情けないぞっ♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今朱美が聞いてはいけない少女の声が、近くで聞こえた。

 

「ゴミ女あァァあぁ!」

 

朱美はその声に再び叫び、音源を探す。

 

『そんなに叫んでていいわけ~? 追っ手に見つかっちゃうよぉ?』

 

すると、その声は横にあるゴミ捨て場から聞こえた。

朱美はそこを、鬼の形相で見やる。

そこには、2つのゴミ袋と雨に濡れたテディベアが置いてあった。

 

『わあ、怖い顔してる~~♪ くふふっ』

 

どうやらテディベアから声が聞こえてきているようだ。

 

「そうかそうかそうかそうかそうかぁーーーーっ!! オマエがっ! オマエが奴等にっ! バラしやがったなぁぁぁぁぁーーーーっ!!!」

 

朱美はそのテディベアを掴み、痛みも忘れてそれに叫び続ける。

 

『ええ~~? あんた見張ってたじゃん。何? 自分のミスを認めちゃうの? どっちがゴミなんだか』

 

その声の主……理子はいつもとは違い、淡々と朱美と会話する。

意思疏通ができているかは甚だ疑問だが。

 

「黙れぇぇぇぇっ!!! 殺すっ!! 殺す殺すころすコロスコロスゥゥゥっ!!!」

 

朱美は壊れたように言葉を繰り返す。

 

『……もういいや。どうせ"お別れ"だし』

 

朱美の叫びを聞いても、理子は一向に悪口を返さない。

それどころか、そんな言葉を朱美に告げた。

 

「……お別れ? そうだなぁ! 俺がオマエを殺すんだからそうなるよなあぁ!! 俺を撃ったクソアマもっ!! あのクソ野郎もっ!! 全部全部ぐちゃぐちゃにしてやるよおぉぉぉぉーーーー!!!」

 

‥‥ビッシャァンッ!

 

朱美は思い切りテディベアを血に染まる水溜まりに叩きつける。

 

『ジジ‥‥ジ‥はいはいそうですね。‥‥じゃあ最後にイイコト教えてあげる♪』

 

それでもテディベアは壊れなかったようだ。

真っ赤になっていくテディベアからは、まだ理子の声が聞こえる。

 

「ああ゛っ!?」

 

『とある都市伝説にね、こんなのがあるの』

 

何事も無かったようにいきなり話始めた理子に、朱美の苛立ちはどこまでも募っていく。

 

『警察も一目を置く、"正義の味方"。その人達は見返りを求めず、決して人を殺さないヒーロー。だけど、誰もその人達を知らない。確かにいるはずなのに、見たことがあるはずなのに誰もその人達を覚えていないの……』

 

訳のわからないことを語る理子に、どこまでも募っていた苛立ちが一周した朱美は、冷めた口調で言うことだけ言って、テディベアを踏み潰すことにした。

 

「もう黙れ。待ってろ、今からオマエをバラバラにしに行ってやるから。そこでブルブル震えて泣いてやがれ、"出来損ない"」

 

『存在するはずなのに存在しない。幻のようなその人達は、こう呼ばれてるの……』

 

朱美の言葉を無視し、理子は変わらず語り続ける。

頭が冷めた朱美は、左肩の痛みを思い出し右手で押さえた。

そしてそのまま右足を振り上げ──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……《夜想曲(ノクターン)》って』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その通りよ~~~ん♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰だっっ!!?」

 

突然背後から聞こえたふざけた男の声に、朱美は足を下ろして振り返る。

そこには……

 

‥‥カラン、カラン

 

「どうもお嬢ちゃん♪ いや~残念なことにお嬢ちゃんを捕まえにきた者よ、俺は」

 

舞う桜が鮮やかに彩られた紫の着物をユルく着て、30後半程の男が下駄を鳴らして立っていた。

 

その男……着物は上等なのが一目で分かる代物なのだが、如何せん男がだらしない。

身長は170後半はあるだろうか。

目尻が緊張感なくどこまでも垂れ下がっていて、顎には無精髭。

黒い髪はボサボサで、適当に後ろで束ねている。

右手を衿に仕舞い、番傘を指している。

 

そんな全体を胡散臭さで埋め尽くしている男は、朱美にそれだけ言ってテディベアに目をやる。

そして、

 

 

 

 

 

「りこり~~ん♪ 元気だった~~? おじさんは慣れない労働にくたくたよ~~ホント」

 

 

 

 

 

只でさえ下がっている目尻をさらに下げ、なんとも力が抜ける声で親しげに理子に話しかけた。

 

『おじ様! 久しぶり~~♪ りこりんはちょっとブルーかなぁ? くすんっ』

 

理子も同じよに親しげに猫なで声で返す。誰が聞いても分かる泣き真似付きで。

すると男は、

 

 

 

 

 

「なにっ!? それはいけないっ! どれ、優しいおじさんが慰めてあげよう。このあとにお茶でもどうだい?」

 

 

 

 

 

それを見事に本気にして心配し、かつちゃっかりデートの約束を取り付けようとする。

だが、

 

 

 

 

 

『ゴメンねぇ。このあとそうくんに慰めてもらう予定なの♪』

 

 

 

「ノォォォォォォっ!!!」

 

 

 

 

 

理子はあっさりと猫なで声を止めて、男をバッサリ切り捨てた。

切り捨てられた男は叫びに叫ぶ。

 

「また青年っ!?やっぱり顔? 若さっ!? そんなの幻想よっ!? 漢は渋さっ! 女性をリード出来て、頼りになる年上のダンディでしょっ!!」

 

その哀れな叫びに理子は、

 

 

 

 

 

『それ、殆どそうくん持ってるもんっ♪』

 

 

 

 

 

止めのオーバーキルを執行した。

 

‥‥カランっ

 

「…………ぐはっ!」

 

男は漢として歳以外で負けたことに、番傘を落とし、下駄を鳴らして膝をついた。

……はっきり言おう。

 

 

 

この男、どうしようもないマヌケである。

 

 

 

そして、このアホなやり取りで茅の外だった朱美は、

 

「……っ……ふ‥‥」

 

怒りに身体を震わせ、

 

「ふざけるなァぁぁアぁぁぁぁ!!!!」

 

喉が裂けそうな憤怒の絶叫。

朱美はナイフを右手に持ち、未だ膝をついている男に襲いかかる──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおやお嬢ちゃん、怒りは思考を妨げる原因よ? カルシウム取らないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に背後で"声だけ"が聞こえ、

 

‥‥トトトトトンッ

 

首、両肩、両腿に何かが触れたような気がして‥‥振り向いた、次の瞬間──!

 

 

 

 

 

‥‥ダアァンッッ!!

 

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

 

 

 

 

さっきまで目の前にいた男に胸の中心に掌底を食らい、壁に叩き付けられた──!

 

‥‥コポッ

 

そのせいで、肩の流血が激しさを増す。

 

「ぐっ‥‥て、テメェっ!…………なっ!?」

 

「オーオー威勢がイイコト。だけど無駄だよん」

 

朱美は男にナイフを投げようとして、気付いた。

 

「何しやがったっ!!?」

 

「身体、動かないでしょ? 俺様こう見えてもスゴいのよ?」

 

男は朱美にウインクを送る。

そう、朱美の身体が壁から剥がれないのだ。

これは男の特別な術で、先程触れた5つの場所を中心に敵を張り付けるというものだ。

 

「‥‥ぐぅっ!。こ、こんなもの、っ……俺には効かねぇよっ!!

 

朱美は自身の《陽》の気を解放する──!

 

 

 

 

 

‥‥ゾオォンッッ!!!

 

 

 

 

 

朱美を中心に金色の光が太陽の如く路地裏を照す。

 

「おおおおぉぉぉあああぁぁぁぁあっっ!!!」

 

朱美は声をあげ、力を振り絞り、全力で拘束を解こうとする。

が、

 

「んーー。さすが《陽》を名乗るだけのことはあるけど、お嬢ちゃんじゃダメだねぇ」

 

拘束が、一向に解けない。

 

「ガアァァぁぁぁっっ…………っ!!? ……っ……ぎ‥っ !!!」

 

そして、とうとう朱美の喉が裂けてしまった。

朱美はそれでも諦めず、口から血を吐き出しながら一心不乱に頑張るが、解ける気配がない。

 

「あらあら。……全く、女の子が無茶して。諦めなさいな。お嬢ちゃんの因子じゃあおじさんの術は解けないよ。例え……」

 

 

 

 

 

「俺が闇の眷属であってもね」

 

 

 

 

 

「っ!!!?」

 

朱美は男の言葉に驚愕し、さらに力を込めるが……無駄であった。

 

「んもう、諦めが悪いんだから」

 

『おじ様おじ様っ!』

 

男がため息をつくと、テディベアから男を呼ぶ声が。

男はそれを拾い上げ、懲りずにだらしない顔で答える。

 

「おー悪いねぇりこりんっ! いや~おじさんつい張り切っちゃった♪」

 

『いいよ♪ ねね、おじ様。理子をそいつに近づけて?』

 

「? 別にいいけど……」

 

男は言われた通りテディベアを朱美に近づける。

 

『ジジ‥‥で~、さっきの続きなんだけど。この都市伝説、実は本当に実在するのでしたっ!』

 

「俺様実はそこの人なの、スゴいっしょ?」

 

「……っ!‥‥っ!!」

 

『えっ? 何? 聞こえなーい。……でねでね、《夜想曲》はこの東京を中心に活動しててね。悪い奴等を許さないの。そしてさらに~~』

 

理子は溜めに溜めて、最後に言い放つ。

 

 

 

 

 

『《夜想曲》は、そうくんの配下の人達でしたっ!!』

 

 

 

 

 

「っっ!!?‥‥ゲッ……!!」

 

その言葉に、目を見開き血を吐き出す朱美。

 

「まあ、厳密には違うけどね」

 

男は余計なことを言うが、理子に怒られる。

 

『細かいことは気にしないのっ!‥‥んんっ。で、理子が何を言いたかったと言うとぉ……』

 

理子はまた溜めて、朱美を焦らす。

そして、

 

 

 

 

 

『お前は"ここ"でそうくんに手を出した時点で終わってたんだよ、ぶわぁーーーーかっ!!!』

 

 

 

 

 

「っっっ!!!!」

 

「あれまぁ~」

 

理子は言うだけいったあと、男に声をかける。

 

『んじゃあおじ様っ! これ以上は不味いので通信を切ります! なお、これは通信を切ると同時に爆発するので気を付けてね♪』

 

「……え?」

 

すると、

 

 

 

 

 

‥‥ボオォォンッ!!

 

 

 

 

 

テディベアが男の手の中で爆発した。

 

「あっっっちゃーーーーーーーっっ!!!?」

 

男はその熱さと衝撃、痛みに涙を浮かべ、汚い路地裏の地面を転がり回る。

 

「やっぱ俺ってこんなんばっかぁーーーーっ!?」

 

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

 

しばらくして、

 

「ふぃ~~~、えらい目に遭った。……お?」

 

着物を叩き、落ち着いた男は一息つく。

そして、貼り付けにされたままの朱美を見やると、

 

「……ヒュー、‥‥ヒュー、‥‥ヒュー」

 

血の流しすぎと氣の使いすぎにより、虫の息だった。

 

「おっとと。これは不味い」

 

そう言うと、男は左肩を右手で押さえ、何かをぶつぶつと唱え始める。

5分ぐらいそうしていただろうか。

男が手を退けると、なんと‥‥血が止まっているではないか。

傷は治ってはいないが、これで出血死は避けられるだろう。

 

「危ない危ない。お嬢ちゃんに死なれちゃあ俺が椿ちゃんに大目玉をくらっちまう。酒抜きは勘弁勘弁っと」

 

男は朱美の頭を掴むと、すぐに朱美が気を失う。

それを確認すると男は拘束術を解き、朱美を抱える。

 

「さって、帰りますか!……にしても、りこりんえげつないなぁ。女って怖い。……だけどそれがいいっ!!」

 

‥‥カランッ

 

男は言いながら番傘を足で蹴り上げ、器用に傘を指す。

すると、

 

‥‥ザアァァァァァ……

 

雨が思い出したように降り始める。

そして、その路地裏には……壁に血痕があり、雨に洗われた赤が排水溝に流れていく。

しかし、そこに人の影は見当たらなかった。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

『───です。現在、警察庁などが捜査にあたっていますが、犯人は未だ分かっておりません。警察庁は《武偵殺し》の模倣犯と考えており、今現在も捜査を続けています。次のニュースです。東京都渋谷区で───』

 

かなり広く、高級感溢れるスイートホテルのとある一室。

ここは私たちの用意した隠れ家の1つで、今は理子と私しかいない。

理子は今シャワーを浴びている。

これから"武偵"として、"自分で起こした事件"を調査しに行くためだ。

私はその部屋で一番広いリビングにあるソファーに座り、これまた大きいテレビでニュースを見ている。

いや、実際はそれに意識を向てはいない。

私はそれを聞き流しながら、先程のことを振り返る。

 

(…………どうして?)

 

結果から言えば、今回の作戦は成功だった。

無防備に立っていた奴に……夜神 蒼真に、《陽》を限界まで籠めた渾身の一撃を食らわせたのだ。

朱美がやられてしまったけれど、私が奴に念願の……そう、私がここ数年身を焦がすほどに願った宿願の第1歩が踏み出せた!……はずなのに‥‥‥‥

 

(……何で?)

 

なのに……なのに何故、私の身体は、私の心はっ!

 

 

 

 

 

「……こんなにも、満たされないの?」

 

 

 

 

 

私は声に出し、自問自答するが……答えはいつまで経っても出ない。

 

「……ひなた様」

 

答えの出ない私は、目の前のテーブルの上にある写真立てに声をかける。

正確には、その写真立てにある1枚の写真に写る……輝くような、それでいて温かく包み込むような優しい笑顔を浮かべる少女に。

 

「……貴女様の仇を討ち始めました。そして、先程は奴に重症を負わせました。……ひなた様。どうしたら、貴女様は"笑って下さいますか"?」

 

写真に写る少女……ひなた様は笑っているのに、私の心にあるひなた様は"あの日"から笑ってはくれない。

私はそれからしばらく、ひなた様に尋ねる。

そして……

 

(……もしかして)

 

そして、私はある結論に至った。

 

「……まだ‥‥まだ、"足りない"のですね?」

 

(そう、そうよ。そうよね! まだ計画は始まったばかり。奴もまだ死んでない。……"足りない"。そうよ。"足りない"のね?)

 

私は疑問を解消し、確固たる意思を持ってひなた様に告げる。

 

「お任せください。必ず、ひなた様が満足する結果を出してみせます」

 

そうしたら、きっと‥‥きっと……

 

(……貴女様は、私に笑ってくれますよね?)

 

私は写真立てを手に持ち、写真に写るひなた様に手を添えながら、心の中で尋ねた。

 

 

 

 

 

「……ん~~~! さっぱりした~~♪」

 

 

 

 

 

すると、バスルームから理子がバスローブを羽織って出てきた。

 

「あ、アカ姉! お風呂空いたよ♪」

 

「ええ、じゃあ入ってくるわね」

 

「うん♪」

 

理子は"いつもと変わらず"、私と接してくれている。

彼女が大切に思っている人を重症に追い込んでおいて、だ。

 

(……今更、何を考えているのかしら)

 

私は頭を振り、バスルームに向かう。

もう後には引けないのだ。

例え誰に恨まれようとも、私は必ず……

 

(必ず、お前を殺すわ。夜神 蒼真)

 

私は心で再度誓い、バスルームに入る。

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……なあ、満足か?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!!?」

 

ぞぉっ、とその言葉が頭の中を駆け抜け、それと同時に背筋が凍った。

 

(な、何っ!? 何なのっ!!?)

 

私は周りを見渡すが、当然誰かがいるようなことはない。

 

(い、今のは夜神 蒼真が最後に口にした言葉……!)

 

私は〈空間の氣〉を広げていたため、それを聞き取ることができた。

もちろん、手元には"アレ"があるため奴には気付かれることはない。

 

(あれは朱美に対しての言葉のはず、なのにどうしてっ!?)

 

私は降って湧いた悪寒に身を震わせ、頭を働かせるが、

 

(……ふぅ。‥‥駄目ね。少し落ち着かなくては)

 

いくら考えても答えは見えず、取り合えずシャワーを浴びることにする。

 

(疲れてるのか、それとも念願が叶うことに気分が高揚してるのか……分からないけど)

 

‥‥シュル、シュルル‥‥

 

服を脱ぎ、私はシャワールームの扉を開ける。

 

(熱いシャワーを浴びて、気持ちを入れ換えましょう)

 

私は今のことを頭の隅に置いて、熱いシャワーを浴びるために取っ手に手をかけた。

 

 

 

 

 

やはり、浮かれていたのだろう。

 

私は後で後悔することになる。

 

この時の悪寒に、もっと深く注意を向けていれば、と。

 

何故なら、この時の私は既に……

 

 

 

───奴の掌の上で踊らされていたのだから───




如何でしたか?

まさかのおじさんで4分の3を使うとは……(焦、汗
このおじさん、とあるキャラを参考にしてみたのですが……分かってしまうでしょうか?
分かった人は、私と趣味が合う方でしょう!
この方が出る作品、大好きなのです!!
感想をお待ちしております!

ご報告です。
活動報告にお知らせを載せました。
ご確認ください。

ではでは(^-^)/
感想と意見、案などのプレゼントを楽しみに待ってます!!
これからも応援よろしくお願いいたします!!

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