夜の神は太陽に恋焦がれた   作:黒猫ノ月

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どうもです。

待ちに待ったバスジャック♪
蒼真とレキの活躍を刮目せよっ!!

では、投稿です。


第14弾 「とうとう来たか、事件が……」

『わぁ♪』

 

鮮やかな桃色の花びらが舞い散る桜並木。

空を見上げても、青空も雲も少ししか見えないほどここら一帯は美しい桜の花が咲き誇っている。

 

そんな中、1人の少女が桜を眺めながら、満面の笑顔ではしゃいでいた。

 

『見て見て、蒼真くん、リアさん! すっごく綺麗だよ!!』

 

その名の通りに笑う少女……陽媛 ひなたは、朱に近い金髪の髪をなびかせながら、後ろでついてきている2人の人物に声を掛ける。

 

『……ああ』

 

『こらこら、桜が綺麗なのは分かったから前もちゃんと見ろ。木にぶつかるぞ?』

 

呼ばれた2人はそれぞれの反応を返した。

1人は少年で、表情に色がなく、またその身にふつりなかなり大きい荷物を背負っている。

もう1人は美しい女性で、顔は言わずもがな、何より目を惹くのは、地面に届きそうなほどまである銀色の髪だ。

今も咲き誇る桜に負けずに、日の光を浴びてきらびやかに輝いている。

 

『大丈夫ですよ、リアさん♪ それに、こんなに綺麗なのに前なんて向きたくないです!』

 

銀髪の女性……リアに注意されたが、ひなたは聞かずに上を見上げながら、そう答えた。

 

『‥‥フフ、まったく…………おっと、言わんこっちゃ‥‥』

 

今にでも木にぶつかりそうなひなたを見て、声を掛けようとしたが、

 

 

 

‥‥とさっ

 

『きゃっ』

 

 

 

それよりもはやく、少年……蒼真が荷物を置いて助けに行っていた。

 

『……気を付けろ』

 

『…………』

 

蒼真に"抱かれて"注意されるひなた。

だが、自分が"好きな人"に"抱きしめられて"、はたしてその言葉が耳に入って来るだろうか?

 

 

 

‥‥ボッ!

 

 

 

否、入ってくるはずがない。

ひなたは顔を真っ赤に染めて、蒼真の腕の中であたふたする。

 

『そ、蒼真くんっ!? や、えっと‥‥あ、あうぅ~~~~////』

 

『……?』

 

『‥‥フフフッ、要らぬ世話だったようだ。 おい蒼真、そのままひなたを少し強く抱きしめてやれ』

 

『ふぇっ!? り、リアさんっっ!!?』

 

『…………』

 

‥‥ぎゅうぅぅ

 

『……はぁううぅぅ~~~~////』

 

『可愛いねぇ』

 

そんな微笑ましい光景を、桜の木々たちはいつまでも見守っていた。

 

 

 

 

 

 

これはかつての"記憶"。

 

 

 

ただただ幸せだった"時代"。

 

 

 

もう……今では絶対に取り戻せない"時間"。

 

 

 

俺のかけがえのない"思い出"。

 

 

 

そして、何よりの"宝物"。

 

 

 

そう、今でも夢で見てしまうほどに…………。

 

 

 

 

 

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

 

「…………」

 

夜明け前の一番暗いとき、誰もが未だ寝ているであろう時間。

そんな時間帯に、俺はすでに目覚めていた。

 

(……"また"、か)

 

俺は身体を起こしながら、先程の"夢"を思い出す。

まさか1週間過ぎで"ひなたの夢"を視るとは……。

 

(……何かの予兆‥‥か?)

 

確かに昔はかなりの頻度でひなたの夢を視て、眠れない夜を過ごす日々が続いた。

けど今ではそんなこともなく、精々1ヶ月に1回ぐらいだ。

それなのに今になってこの頻度。何かあるとみてもおかしくない。

 

(……"準備"だけしとくか)

 

その"予兆"に心当たりがある俺は、その準備のためにベットから立ち上がる。

 

 

 

『理子は、優しいそうくんが‥‥だ~い好きだよっ♪』

 

 

 

ふと思い出される、理子の言葉。

このタイミングで思い出したことで、自分の勘が正しいと確信する。

 

(……"まかせろ"、理子)

 

俺は心の中で理子にもう一度だけ宣言して、気合いを入れ直す。

 

(……さて、まずは‥‥‥‥‥……朝飯か‥‥)

 

隣で穏やかに眠る同居人を見て俺は苦笑し、同居人の朝飯作りに取りかかった……。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

‥‥~~~~♪、~~~~♪

 

(…………あ?)

 

俺の耳元で鳴り響く携帯の着メロ。

俺の好きな曲を鳴らす携帯には、この前アリアと取ったレオポンがついている。

目覚めたばかりの気だるい身体をなんとか動かして、携帯を開く。

 

「‥‥‥‥‥誰だ、こんな朝早く……ん? 蒼真?」

 

それは蒼真からのメールだった。

隣のベットを見ると、当たり前だがもぬけの殻。

携帯の時刻を見ると、6時45分過ぎ。

 

(……また、だと?)

 

確認のためにメールを見ると、やはり"いつもの"だったようで、はやく起きたから先に出ることと、朝飯は作ってあるとのことだった。

 

(‥‥おかしいな……前のやつから2週間たってないぞ?)

 

蒼真がいつもの……"ひなたさん"の夢を視ると寝れなくなるのは知っているが、それは1ヶ月に2回ぐらいだった。

それに最近じゃペースが落ちて、1ヶ月に1回視るか視ないかといった具合だったはずだ。

なのに今さらなんで…………?

 

……………………‥‥。

 

(‥‥‥‥ダメだ‥寝起きの頭、しかも"今の"俺じゃまったくわからん)

 

気にはなるが、考えても仕方がない。

なので、学校でアイツに心当たりがあるのか直接聞くことにする。

 

「とりあえず、飯だな」

 

そう決めて、俺は蒼真の作った朝飯で腹を満たすため……の前に洗面台に向かう。

 

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

 

…………状況を確認しよう。

 

今日は生憎の雨空。

少し早めに出て、混むであろうバスに乗り遅れないようにしようと思い、蒼真の作った朝飯を食べた。

食べ終えて今の時間を"腕時計"で確認したら、まだ時間に余裕があったので、ここでお茶を一杯。

まったり過ごし、さあバスに乗ろうと部屋を出てバス停に着き、今にいたる。

 

さて、俺にはなんのミスも無かったはずだ。

 

(なのに、なのになんで…………っ!)

 

 

 

「おい、押すなよ!」「順番だろ、順番っ!!」「もう最悪~」「だから雨って嫌いなのよね」「うわ~、間に合って良かった~♪」

 

 

 

(なんですでに満員なんだよっ!!?)

 

神様ホント俺のこと嫌いですねっ!!

大方早めにバスが来たのだろうが、それにしても最近は最悪なことばかりが続くぞっ。

 

(いかん、俺も早くバスに乗らねばっ!!)

 

そう思い、急いで駆け込んだのだが、

 

 

 

「~っよっっしゃあーーー!! 間に合ったーーー!!」

 

 

 

我が最悪の悪友に最後の隙間を取られてしまった。

 

(ってまずい!!)

 

「おい武藤! 乗せてくれっ!!」

 

「おう、おはようキンジ! そうしたいがムリだ! お前チャリで来いよっ。 ていうか蒼真はどした?」

 

「アイツは先に行ってるよっ。 じゃなくて俺のチャリはぶっ壊れちまったんだよっ! これに乗れないと遅刻する!」

 

武藤は後ろを確認しながら、

 

「ムリなもんはムリだ! キンジ、男は思いきりが大事だぜ? 一時間目フケちゃえよ!」

 

そう答え、親指をサムズアップ。

 

「というわけで二時間目にまた会おう!」

 

「ちょ、待て……」

 

 

 

‥‥プシュウゥーー、バタンッ

 

‥‥ブロロロォォーーー

 

 

 

バスは非情にも俺を置いて発車してしまった。

 

(…………マジ……ですか……)

 

俺は呆然としながらバスを見送り、その場に佇む。

 

(………………クソッ!)

 

しばらくそうしていたが、行ってしまったものは仕方がない。

心の中で悪態をつき、気持ちを入れ換える。

 

(‥‥はあぁ~~~~、……この雨の中徒歩かよ。 遅刻確定じゃねーか‥‥)

 

しかし中々気持ちが変わらず、憂鬱なまま大きなため息を1つつき、傘を広げて歩き出す。

こんなときに無駄に広い学園島が腹が立つ。

 

学園島とジトジトしている雨にイライラしながら、俺はこの空と同じ色を心に映し、黙々と歩いた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

‥‥サァーーー……

 

 

 

「…………」

 

(……ふむ)

 

俺は一通りやることをを終えて、一息ついた。

 

(…‥おかしい)

 

ここは、一般棟の屋上。

鉛色の空の下、雨に打たれながら"広げていた氣"を元に戻す。

 

もうすぐ8時半回り、生徒たちが半数以上登校している時間帯だ。

俺は朝飯を作り、食べたあとジャージに着替え、防弾制服と"俺の"装備一式をリュックに詰めてそのままここに来た。

 

そして、いままで定期的に《夜の氣》の1つ……〈空間の氣〉を広げて、悪意や怪しい人物を探していたのだが見つからなかった。

俺の勘が外れたのかとも思ったが、それにしては見過ごせないことがある。

 

 

 

それは、今日……理子が学園島に"いない"ことだ。

 

 

 

昨日までいた理子がいないということは、"奴等"と共に行動に移すということだ。

なのに、最大範囲まで〈空間の氣〉を広げてみても、それらしい奴等が引っ掛からなかった。

ということは、まだ動かないのか‥‥今日じゃないのか‥‥明日以降なのか………。

 

(……とりあえず‥‥警戒は、しておこう)

 

そう思い、雨に濡れた身体を拭き、防弾制服に着替えようと屋上から出ようとして……

 

 

 

 

 

〔蒼真さん〕

 

 

 

 

頭の中に、俺のよく知る“声”が響いた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

‥‥キィーーー、バタンッ

 

C装備に身を包み、俺は女子寮屋上の扉を開けて外に出る。

 

‥‥ザアァァーーーーー……

 

さっきよりも勢いの強い雨が、武装している俺の身体を叩く。

学校に向かっていた俺が、何故武装なんかして、かつここにいのかとういと……アリアに呼ばれたからだ。

 

バスに乗り遅れ、徒歩で学校に向かいながら、一時間目フケるかいやでもしかし……と考えているところに携帯にアリアから電話が入り、傘をずらしてそれに出た。

 

するとアニメ声の喧しい声で、「事件が起きた。C装備に武装してさっさと女子寮屋上に来いっ!!」……と言うだけ言ってブッチしやがった。

 

強襲科近くを通っていたこともあり、難なく武装してその足でここまで来たのだが、

 

(…………心から願う、小さい事件であってくれと……)

 

そう思いながら屋上を見渡すと、中央付近でアリアがトランシーバーに向かって何やら騒いでいた。

 

「──だからいってるでしょっ!! こちらには人数がっ……!」

 

そう言っているアリアの顔は鬼気迫る顔で、こちらにも気付かずにがなり立てている。

 

「……お?」

 

それを見ていた俺は、ふと横で何かが動いたような気がしたので、そちらを振り向くと、

 

 

 

「おはようございます、キンジさん」

 

 

 

階段の廂の下で雨を避けながら、俺に向かって挨拶する狙撃科のレキがいた…………直立不動で。

 

「……ああ、おはよう」

 

俺は少し驚いたが、まあ"当たり前"かと思い挨拶を返す。

 

(アリアは蒼真"も"呼んでるはずだから、レキがいても"当然"だな)

 

レキは"今"の蒼真のパートナーだ。

俺が武偵を辞めると決めた後の"ある出来事"から2人はパートナーになったのだが、今は置いておく。

 

で、アリアは蒼真にベッタリなのはここ数日ではっきりしていることなので、蒼真を頼ることも簡単に想像できる。

ということは、蒼真のパートナーであるレキがいてもおかしくはないだろう。

 

「レキ、蒼真は?」

 

そこまで考えて、俺は当たり前のようにヘッドホンを耳から外すレキに尋ねたのだが、

 

 

 

「蒼真さんは呼ばれていません」

 

 

 

レキのその言葉に愕然とした。

 

「……なんだと?」

 

「私はアリアさんに呼ばれました。 けれど、蒼真さんは呼ばないようです」

 

レキは淡々と返すが、俺はそれどころではない。

 

(何故だ、何故呼ばない? あれほど蒼真に頼ってる癖に、なんで今さらアイツに声を掛けないんだ?)

 

俺は足りない頭で思考するが、答えは出ない。

 

「っあぁ~~クソッ」

 

今日は朝から気持ち悪いことが続くな。

蒼真の夢に、バスの乗り遅れ、さらにはアリアの謎の行動。

それらのこともあって、尚更思考が進まない。

 

 

 

「大丈夫ですよ、キンジさん」

 

 

 

そんないっぱいいっぱいになっている俺に、レキが声を掛けてきた。

俺は考えるのを止めてレキを見やると、レキはじっと俺を見上げながら話す。

 

「何も心配することはありません」

 

「……それはどういう意味だ?」

 

「…………」

 

レキはそう言ったまま、何も話そうとせずに、ただ俺を澄んだ瞳で見つめ続ける。

 

(……おいおい、考えることが増えたぞっ)

 

昔よりかは遥かに接しやすくなったが、それでも未だにレキの考えいることと言っていることは余り分からん。

 

(…………ん? まてよ……)

 

レキがあそこまで断言することはそんなにない。

あるとすれば………………あっ!

 

(……さては、蒼真を"呼んだな")

 

確かに蒼真を呼べば、アリアの行動の謎も分かるだろう。そして朝のことも……。

俺は蒼真とレキの"繋がり"を思い出し、それをレキに確認しようと口を開けるが、

 

「──時間切れね」

 

アリアがトランシーバーの電源を落としながら、こちらに声を掛けてきたことで中断された。

 

「もう1人ぐらい"Sランク"が欲しかったところだけど、他の事件で出払ってるみたい」

 

俺はその言葉を聴いて、本当に訳が分からなくなった。

 

(なんで蒼真がいるのに他のSランクを探して、見つからなければそのまま出ようとするんだ?)

 

俺は何かを言おうとしているアリアに、尋ねることにした。

 

「おいアリア、蒼真はどうした?」

 

「‥‥あ、アイツは……」

 

すると、アリアは明らかに吃りながら、俺を見ようとしない。

そんなアリアを追撃する。

 

「アイツなら教室に居るだろう。声を掛けようぜ」

 

「…………」

 

「…… なんでアイツを呼ばねーんだよ。 呼べばすぐ来てくれるだろ」

 

「…………」

 

それでも黙って口をつぐむアリアに、俺の謎は一層深まる。

 

武偵はどの事件にも全力を注がなければならない。

ならば、蒼真を呼ぶことは当然の判断なはずだ。

それが分からないアリアではないだろう。

 

俺は未だに答えようとしないアリアに嫌気が差して、少し語調を強めて問いただす。

 

「おい、いい加減にっ!」

 

 

 

「……そこまでに、しておけ」

 

 

 

いや、問いただそうとして……後ろからの声に俺は振り向いた。

そこには、防弾制服の上に黒いロングコートを羽織った蒼真がいた。

あのコートは蒼真の自前の装備だ。というか……

 

(やっぱりレキが呼んだか……)

 

「えっ!? どうして蒼真がいるの!?」

 

アリアはこちらに歩いてくる蒼真に驚愕しながら尋ねる。

 

「……俺がいたら、ダメか」

 

「べっ別にっ、そういうことじゃ、ない‥‥けど……」

 

アリアは次第に声が小さくなり、何かをぶつぶづ言っている。

蒼真はそんなアリアの頭を軽くぽんってする。

すると、アリアは目を見開いて蒼真を一瞬で見上げる。

蒼真はそれを見て苦笑し、アリアに語り掛ける。

 

「……頼って欲しいと、言っただろ?」

 

「っ!!」

 

アリアはその言葉に俯き、蒼真を見ようとしなかった。

それを見て蒼真はまた苦笑し、アリアの頭から手を離して、レキに声を掛ける。

 

「……レキ、"ありがとう"」

 

「はい」

 

レキにも軽くぽんって頭を撫でたあと、俺に顔を向ける。

 

 

 

「……行こうか、"親友"」

 

「‥‥‥‥そうだな、"親友"」

 

 

 

色々言いたいことはあるが、全部あとでいいだろう。

俺は蒼真の言葉に自虐的に返して、蒼真と共に未だに俯いているアリアに向き直る。

 

(‥‥まずは、アリアに事件の詳細を聞くか)

 

そう思い、俺はアリアに声を掛ける。

 

 

 

嫌な予感に身を震わせながら…………。

 

 

 

───さて、ここからだ───




如何でしたか?

少しずつ更新が遅くなって、申し訳ありません。
これからは1週間に1回更新させていただきます。

さてさて、始まりましたねぇ~~。
バスジャックはあと2話ほどて終わる予定です。
お楽しみに!

ではでは(^_^)/
感想と意見、案などを切にお待ちしております!!
これからも応援よろしくお願いいたします!!

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