夜の神は太陽に恋焦がれた   作:黒猫ノ月

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どうもです。

今回難産だったです、はい。(orz


ここまで長かった、長かったですよ。ええ。
とうとうあの娘が出ますよ~~!出てきますよ~~!

そして、後書きでお知らせ&結果発表です!

では、投稿です。


第12弾 「調子がいい戦妹ね、もう……」

「……それで不機嫌に入ってきたのね」

 

「‥‥はい」

 

「…………」

 

私はあかりの話を聞き終えて、ももまんを一口頬張る。

くつくつと笑っていた蒼真も、今は新しく淹れてきたコーヒーを飲みながら、あかりの話を聞いていた。

 

(あかりも忙しい娘ね、もう……)

 

私の頭に、さっきの出来事がよぎった。

 

 

あれから蒼真はすぐに落ち着いて、何事もなかったように台所を片付けたあと、

 

 

 

「……じゃ」

 

 

 

と右手を挙げて帰ろうとしたので、

 

「「まてまてまてまてーーーー!!」」

 

私とあかりで全力で止めた。

 

(誰が帰らすもんかっ!!)

 

滅多に笑わないくせに、突然笑い出した理由も聞かずに帰らせるワケないでしょ。

話も終わってないし。

というか、

 

(あかりももう躊躇わなくなったわね……)

 

さっきので、蒼真に対する印象がガラッと変わったのね。

今も引き留めた蒼真と……

 

「夜神先輩っ。な、何で笑うんですか!? 私、先輩を傷つけたんだと思って謝ったのに、ひどいです!」

 

「……すまん」

 

「うっ……な、なんだろう、私は悪くないなずなのに罪悪感が……」

 

「……?」

 

そんなやり取りをしている。

 

「はぁ……」

 

(まったく、調子がいいんだから)

 

変わり身が早すぎる戦妹に、ため息をつく。

 

(まぁ、私も少し熱くなっちゃったのは事実ね)

 

"昼間のこと"もあったから、蒼真のことに敏感になってたみたい。

 

(私も反省しなくちゃ‥‥)

 

「……あかり」

 

「えっ、あ、はいっ」

 

「少し言い過ぎたわ、ごめんなさいね」

 

「…………」

 

私が謝ったら、あかりが黙って俯いた。

 

「な、何よ?」

 

「……せ……ぱ‥‥」

 

「?」

 

 

 

「あっ、アリアぜんばい~~~!!」

 

 

 

「みゃっ!……ど、どしたのよっ!?」

 

しばらくすると、あかりが突然泣きながら抱きついてきた。

 

「わ、わだじ……ひっく、ぜ、ぜんばいにぎらわれだど思っで~~」

 

「…………ふぅ~」

 

(ホントにまったく……)

 

「そんなこと、あるはずないでしょ。しょうのない娘なんだから……」

 

‥なでなで

 

今も泣きついてるあかりの頭を撫でてやる。

 

「ひっく、アリアぜんばい~~~!!」

 

「あーーもうっ、分かったから泣き止みなさい。 ……ちょっと待って、蒼真」

 

あかりの頭を撫でながら、"背を向ける"蒼真に声をかける。

 

「話はまだ終わってないわよ」

 

「……?」

 

蒼真は振り返り、疑問符を頭に浮かべている。

 

「いいから、自分のコーヒーでも作って待ってなさい!」

 

「…………了解」

 

納得はしてないようだが、蒼真は台所に戻っていった。

 

(さって、とりあえず……)

 

「ほら、あかり! いい加減泣き止みなさいっ」

 

「ぐすっ……は、はいっ!」

 

あかりを一先ず落ち着かせて、ソファに座らせる。

 

「さっきの続きなんだけど……」

 

「……はい、すみませんでした」

 

「いいのよ。 あかりはちゃんと謝ったし、蒼真も許した。今度からはそんなことないようにね?」

 

「はい……て、えっ! 夜神先輩は許してくれたんですか!?」

 

笑ってただけですけど!?とあかりは驚いている。

 

(まあ、分からないわよね……)

 

私も蒼真と会って、1ヶ月ぐらいからちょっとずつわかるようになったから。

 

「そもそも、蒼真が許さないことなんてないわよ。 アイツは相当なお人好しだから、ね」

 

「……そう、ですか‥‥?」

 

あかりは首を捻りながら、台所にいる蒼真を見やる。

 

「信じられないなら、蒼真に確認なさい。……ねぇ、蒼真?」

 

‥‥ギシィ

 

出来立てのコーヒーをもって、1人掛けのソファに座った蒼真に尋ねる。

 

「……ああ」

 

「…………分かり、ました。でも、もう一度だけ言わせてください。本当に……すみませんでした、夜神先輩」

 

あかりはそう言って、蒼真に謝った。

 

「……おう」

 

蒼真は苦笑して、それに答えた。

 

「よし、この話はこれで終わり! 次は、……蒼真、アンタ何で笑ったのよ? 私、アンタが笑ってるところ1度しか見たことないから、気になって仕方ないのよ」

 

「……ん?‥‥ああ」

 

「じーーー…………」

 

それから蒼真は笑った理由を話し出した。

蒼真は説明足らずなところがある。

だから、あかりが分からなかったところを私が教えながら話を聞いた。

 

で、蒼真の話を纏めると……どうやらあかりの友達も、同じように蒼真に頭を下げて謝ったそうだ。

1年の子達には絶対に近寄られないと思っていたところに、まさかの謝罪。

しかも、1日に2回同じように。だ。

蒼真は予想外な出来事がありすぎて、かつ嬉しかったのが混ざって……思わず笑ってしまったらしい。

 

(なるほど、ね)

 

蒼真が声をあげて笑うときは、"そういうとき"なのね。

 

(確か"あのとき"も……)

 

 

 

『……く,く‥‥‥‥ありがとう、アリア』

 

 

 

蒼真が……"グレイ"が《夜王》として戦っていたときのことを思い出す。

 

(じゃあ、"あのとき"も嬉しかったのかしら?)

 

もしそうなら、これほど嬉しいことはない。

何故なら……

 

 

 

("あのとき"の私の判断は、何も間違っていなかった!)

 

 

 

蒼真が嬉しいと思える選択が出来たことを、改めて実感できたから。

 

『……後悔、するぞ』

 

(アイツが《夜王》かどうかなんで関係ないっ)

 

蒼真は、蒼真だ!

そんな当の本人は……

 

「そっか、ライカも……」

 

「……いい友達に‥‥巡り会えた、な」

 

「‥‥はいっ! あ、でも先輩、ライカっていつも意地悪なんですよっ。この間も……」

 

さっきまで怯えていた相手と談笑していた。

そんな"当たり前"の光景をみて、私は決めた。

 

(これからも、絶対にこいつの味方でいよう)

 

 

 

───無愛想で無口で不器用な……誰よりも優しい蒼真の味方で───

 

 

 

思考が一息つき、ももまんをパクついて‥‥ふと思い出す。

 

「そういえばあかり、アンタなんか話があるんじゃなかったっけ?」

 

 

私は、おせっかいをしていた戦妹に訳を話す。

 

「私は私の捜査のために、アイツが使えるのかどうか確認しようとしてるの。 アンタが心配してるようなセンじゃないわ」

 

「アリア先輩……」

 

「それにあかり、おせっかいはダメよ。 武偵同士は必要以上に深い関係になっちゃダメなの」

 

私はあかりの目を見ながら、少し厳しいことを言う。

 

「たとえば仲間と依頼人、どちらかしか助けられない時は……依頼人を助けなきゃいけない。 そういう時、ちゃんと私を見捨てられる?」

 

「‥‥アリア先輩を‥‥見捨てる……?」

 

あかりはその時を想像したのか、徐々に涙が溢れ始める。

 

(やっぱり優しい娘ね、あかりは……)

 

そんな戦妹に苦笑して、いつも蒼真が私にするように頭を、

 

ぽむっ

 

て撫でてやる。

 

「アリア、先輩……?」

 

「アンタ、そういうのニガテそうね。 それなら……どっちも助けられるようにしっかり強くなりなさい。‥‥"こいつみたい"にね」

 

私はそう言って、私たちを無言で見ている蒼真を見る。

 

「‥‥夜神先輩みたいに……?」

 

「ええ。 こいつは仲間と依頼人、どちらも守れる強さを持ってる。 ……まぁ、それに徹しすぎて自分を省みないけど」

 

「…………」

 

「だからあかり、強くなりなさい。 仲間と依頼人、そして"自分"も守れるように‥‥ね?」

 

「……ハイッ!!」

 

あかりは元気よく返事した。

 

(ホントに分かってるのかしら、この娘は……)

 

元気で能天気なこの娘を見て、苦笑する。

 

実際は、アリアがあかりに感じているところと、蒼真がアリアに感じているところは似ているのだが、"姉兼妹"の当事者は分かってないようである。

それは置いといて。

 

話がまた一段落し、場が落ち着いた頃に蒼真が空になったカップを3つ持って、

 

「……そろそろ、出る」

 

と帰る意思を告げた。

 

「カップは台所に置いといて。 淹れてもらったんだから、洗いぐらい私がやるわ」

 

「……おう」

 

そう言って、蒼真は台所に向かう。

 

‥‥ガチャガチャン

 

そして、台所から戻って来たときに、

 

「‥‥あの、夜神先輩。 最後に聞いてもいいですか?」

 

あかりが帰ろうとする蒼真に声をかけた。

 

「……お?」

 

「えっと、じゃあ、何で先輩は‥‥遠山 キンジ先輩と一緒にいるんですか?」

 

(……確かに気になるわね‥‥)

 

そんなあかりの言葉に同意する。

 

私も少し気になってた。

蒼真がアイツの元パートナーと聞いたとき、「またやっちゃったっ!!?」と思ったけど、蒼真は気にしてないって言った。

蒼真は嘘がつけないから、本当に気にしてないんだと思う。

なら……

 

(何でまだ、"一緒に"いるのかしら?)

 

"あの"蒼真が、隣にいていいと認めた相手だ。

キンジは否定していたが、そこそこ……そこそこ強いのでしょう。

だけどそのパートナーがここを辞めるつもりならば、蒼真にとってキンジは"距離を置くべき対象"になるはずだ。

 

("一般人"や"無関係"な人が巻き込まれるのを、蒼真はひどく嫌う。 なのにどうして?)

 

そんな疑問を持って、蒼真を見ると……蒼真は、

 

「……ふむ」

 

なにか考えてる素振りをみせている。

 

「…………」

 

「…………」

 

私とあかりは、蒼真の答えをただひたすらに待つ。

そしてついに、蒼真は苦笑しながら……

 

 

 

「……おもしろい、から」

 

 

 

…………………………。

 

「「……はい?」」

 

予想後ろ斜め上にいく答えが帰ってきた。

 

「……じゃ」

 

……ガッチャン

 

呆然とする私たちを置いて、蒼真は帰っていった。

 

「「………………はい?」」

 

私たちは、しばらく間抜けな顔で玄関のドアを見つめていた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

『何で先輩は……遠山 キンジ先輩と一緒にいるんですか?』

 

「…………」

 

アリアの部屋を出てすぐ、その場に立ち止まる。

 

『……おもしろい、から』

 

(……嘘は、言ってない)

 

そもそも、キンジに良いところがないと1年間も一緒にいない。

まあ、〈良いところ=おもしろいは〉ちょっとあれだが……。

ともかく、キンジがアリアに話してないのに、わざわざ言う必要はない。

 

あかりは純粋に俺とキンジが友達なのが不思議だから尋ねたのだろうが、アリアが聞きたかったのは"何で遠ざけないのか?"だろう。

 

アリアは、俺が人を遠ざけようとしてるのを知っている。その理由も。

だから不思議に思ったはずだ。

武偵校を辞める奴を、俺が遠ざけずにいつまでも側にいることが。

 

勿論、俺はパートナーを解消したときに、寮を出ようとした。

だけど、その時にキンジが言ったのだ。

 

 

 

───俺たちは"親友"だ───と

 

 

『おい、出ていくってどういうことだよ?』

 

『……お前が、ここを辞めるなら‥‥もう、俺と関わらないほうが、いい』

 

『…………』

 

『……俺は、《夜王》だ。……一般人になるお前に‥‥迷惑は、かけられない』

 

『……っ!』

 

『……じゃあな』

 

 

 

『…………ま、待て、蒼真!』

 

 

 

『……?』

 

『…………迷惑ってなんだよ。迷惑掛けてんのは俺じゃねーか! ‥‥約束のこととか、ヒステリアのこと、生活のこと、任務の時だって俺の方が迷惑かけた……』

 

『…………』

 

『……はぁ…………蒼真』

 

『……なんだ』

 

『……俺はお前との約束を破った。……それで俺たちは、"相棒"から"親友"になった。間違いないな?』

 

『……おう』

 

 

 

『なら、お前は俺にとって《夜王》なんかじゃない。"親友"だ』

 

 

 

『…………』

 

『……だから、お前はもっと"俺に迷惑を掛けろ"』

 

『……?』

 

『俺も、もっと"お前に迷惑を掛けてやろう"じゃねーか』

 

『…………』

 

 

 

『お互いに迷惑を掛け合い、そして支え会う……それが"親友"ってもんじゃねーのか? なぁ、蒼真?』

 

 

 

『……っ』

 

『……俺も開き直ってやる。もっともっとお前に迷惑を掛けてやるよ……お前が嫌になるほどな』

 

『…………』

 

『だからお前はもう《夜王》だなんだ気にするな。気にせず俺に迷惑を掛けろ、蒼真。"お互い様だろ"?』

 

『…………』

 

『……まあその、……あー……だから、俺が武偵校を辞めるまでよろしくな、"親友"』

 

『…………っ』

 

『……なんだ、文句があるのかよ?』

 

『……っ……いや‥‥く‥‥』

 

『?』

 

 

 

『……っ‥‥く,く,く』

 

 

 

『……………………は?』

 

『く,く,く,く……』

 

『‥‥な!! お、おまっ! …………蒼真が‥‥笑っただとっ!!?』

 

 

(……そういえば‥‥あの時も、笑った)

 

あのときに、俺はキンジと本当の"親友"になれたのだと感じた。

 

過去を思い出しながら、俺は止めていた足を動かし"上の階"に向かう。

 

俺が笑い終わったあと、キンジは説明を要求してきたが、俺は簡潔に「……ありがとう」とだけ伝えた。

キンジは納得しなかったようだが、俺が出ていくことをやめたのは分かったようだった。

 

それから4ヶ月。

《夜》や《陽》関連で色々あったが、俺に後ろめたいことは無かった。

遠ざけなくてもいい。

平気で巻き込んでもいい。

迷惑を掛けてもいい。

キンジは俺にとって、そう思える存在になった。

まあ、キンジはそのたびに俺にキレていたが。

 

俺は目的の階に着き、今日訪ねる予定の……"俺のパートナー"の部屋に向かう。

 

‥‥キンジは、気づいているだろうか。

…………ああ、気づいているのだろう。

俺たちにとって、"相棒"と"親友"は……

 

 

 

『お互いに迷惑を掛け合い、そして支え会う……それが""相棒""ってもんじゃねーのか?なぁ、蒼真?』

 

呼び方を変えただけで、根本は"同じ"ものだということに。

 

 

 

キンジは兄のことで傷ついている。

だから、こういう"言葉遊び"が必要なのだ。

‥‥自分を誤魔化すために……。

‥‥理屈をつけて、俺といてくれるために……。

 

(……素直じゃない‥‥意地っ張りな、お人好し)

 

そんなキンジに苦笑する。

俺としては、なんだっていいのだ。

 

 

 

アイツがなんだかんだで一緒にいてくれる。

 

その事実だけで、俺は救われているのだから……。

 

 

 

そうこう思っている内に、目的地に到着。

 

(……さて)

 

思考を切り替えよう。

俺とキンジのことから……俺とキンジ、そしてアリアのことへと‥‥。

 

……ピンポーーン

 

目の前の部屋のチャイムを鳴らす。

するとすぐに……

 

……ガチャ

 

ドアが‥‥開く。

 

 

 

 

女子寮に来た本当の目的。

 

それは彼女に会うため。

 

彼女に、"聞きたいこと"と"頼みたいこと"があるから。

 

そんな彼女の名は…………

 

 

 

「……悪い、遅くなった‥‥レキ」

 

「大丈夫ですよ、蒼真さん。どうぞ中へ」

 

 

 

彼女の名はレキ。

 

俺の"パートナー"であり、アリアの"友達"。

 

そして……

 

 

 

───《夜》の"奴隷"となってしまった…‥俺が助けなければならない少女だ───




如何でしたか?

最後に出てきましたレキさん!
やっとこさ登場させることができました。

そして皆様、"奴隷"という言葉に勘違いしないでください!
そういう意味ではありませんよ!!
ちゃんと物語が進むにつれて明かされますから、焦らないで下さい!
本当にお願いします!!

んっんん……、では、お知らせです。
少し書き方を変えてみました。
詳しくは活動報告で。

そしてヒロイン募集の結果発表!
こちらも活動報告に載せておりますので、ぜひ見ていってください!

ではでは、
感想と意見、案など切に待っております!!
これからも応援よろしくお願いいたします!!

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