皆さん、感想がほしいという図々しいお願いを聞いて下さり、ありがとうございます!
おかげで、やる気はMAXです!!
これからも感想や意見、案などの投稿よろしくお願いいたします!
そして今回は独自解釈があります。
少し混乱するとは思いますが、ご了承下さい。
では、投稿です。
お昼休みも終わり、お腹が満たされた生徒の皆が睡魔に襲われる春の暖かな午後。
生徒たちが科目ごとの授業を受けているなかで、その人物は1人、一般棟の屋上にいた。
「…………」
その人物は夜神 蒼真。
本当ならば任務もないので、強襲科でトレーニングをしていなければならないのだが、彼はすでに1学期分の単位を獲得しているので問題ない。
そんな彼は立ったまま目を瞑り、なにか集中しているようだ。
そして次の瞬間……
蒼真を中心になんの前触れもなく、
かつ音や衝撃もなく色もない、
そんな〈なにか〉が急速に拡がっていく。
さらに、拡がっていく〈なにか〉に誰も気付かない。
それは、一般には〈氣〉と呼ばれるものだ。
しかし、それは〈氣〉と呼ぶにはあまりにも異質。
〈氣〉とは、すなわち生命エネルギー。
それを放出すると、少なからず衝撃や、その衝撃により発生した風の圧や音等があるものなのだが、蒼真の氣にはそれらがない。
さらに、それを放出するということは、自身の生命エネルギーを削るということ。
例え氣の達人が、氣をどれだけうまく扱おうとも、普通ならば学園島の5分の1も拡げられない。
そもそも、それほどまで氣を放出してしまえば、生命エネルギーが底を尽き、高確率で死んでしまう。
それなのに、蒼真が放つ氣はどこまでも、どこまでも拡がっていく。
とうとうそれは学園島を覆いつくし、それでもなお拡がり続け…………やがて蒼真の氣は、本島にたどり着く。
蒼真の氣はそのまま拡がるのかと思いきや、少し拡がっただけで止まってしまった。
しかしその距離、なんと蒼真を中心に半径約10km。
ここまで氣を拡げるのにかかった時間は約30秒。
人の身でそこまで氣を拡げられるとは、もはや化け物である。
「…………っ」
それを成した蒼真は氣を拡げた状態で、何かに集中しているようで先程から目を瞑ったままである。
そんな蒼真の額に一筋の汗が流れた。
それは頬を伝い、顎に沿って流れて、やがて落ちていった。
「……っ」
そして、蒼真はゆっくりと目を開けた。
……瞬間。
その氣はまたしてもなんの前触れもなく、巻き戻しのように〈戻っていく〉。
そう、戻っていくのである。
普通、放出した氣は拡散してしまい、戻ってくることなどあり得ない。
なのに、蒼真の氣は拡がっていく時より速く戻っていく。
やがて蒼真の氣は全て戻ってきた。この間約20秒。
蒼真はその場に腰を下ろし、側に置いてあったスポーツ飲料を口に含み、そのまま休憩をする。
それから15分ほどたっただろうか。
蒼真はおもむろに立ち上がり、また目を瞑り、集中する。
そしてまた同じ様に自身の氣を拡げる。
この繰り返しを4セット。3日に1回のペースでやっている。
これは氣の訓練。
しかしそれは、氣のなかでも特殊で異質な氣を扱う蒼真専用の訓練…………。
《夜の氣》を使いこなす訓練である。
△▼△▼△▼△▼△▼
そもそも、《夜の氣》とはなにか。
それは、簡単に言うなれば…………。
〈夜の性質をもった氣〉である。
では、それはどういう意味なのか。
まずは尋ねよう。……あなたが考える〈夜〉とはなにか?
夜にも色々ある。
例えば、暗い。
例えば、黒。
例えば、怖い。
例えば、恐い。
例えば、闇。
他にも色々あるだろうが、夜神 蒼真が行った訓練を考えて、ここではこう言っておこう。
夜とは…………。
夜とは、すなわち〈空間〉である。と。
1日の半分は、夜である。
そして生物は皆全てが、当たり前に各々夜を過ごす。
その時間帯に何をするかは自由。
寝るか、騒ぐか、酔いしれるか、はたまた目覚めるか……。
だが、確かなことは1つ。
それは、夜を過ごさない生物はいないということ。
そんな生物たちが、1日の半分を過ごす〈空間〉。
それが夜である。
夜神 蒼真が持つ《夜の氣》には、空間と同じ性質がある。
だから誰もわざわざ認識しようとしない。
そこにあるのが当たり前だから。
だから放出した際、衝撃や風の圧や音がない。
そこにあるのが当たり前だから。
だから10kmも氣を拡げることが出来る。
そこにあるのが当たり前だから。
だから氣を拡散させずに戻すことが出来る。
そこにあるのが当たり前だから。
がしかし、だからといって《夜の氣》は、空間を支配できる訳ではない。
もし空間を支配出来るのならば、拡げた氣だけで、人を多数押し潰すことも可能ということだ。
しかし、夜神 蒼真にはそんなことは出来ない。
《夜の氣》は、あくまでも〈氣〉なのだ。
だがまあ、確かに彼は〈ある意味〉で空間を支配出来るのだろう。
つまり、ここで言う《夜の氣》=空間とは……。
文字どおり《夜の氣》により、〈夜と同じ空間を作り上げることができる〉ということ。
これにより様々なことが可能になるのだが、ここはひとまず端にに置いておく。
ここで言いたいのは、作り上げた夜と同じ空間、すなわち夜神 蒼真が《夜の氣》を拡げた範囲のことだが、彼はその中にいる者たちを〈全て〉把握することが出来る。
つまり《夜の氣》の範囲ならば、見ていなくともどこに誰がいるのかが分かる。
建物などの障害物に関係なく、だ。
そして話は訓練に戻る。
夜神 蒼真が行っていた訓練は、《夜の氣》により〈確実に人や物を握出来る範囲〉を拡げる訓練だったのだ。
つまり、彼は《夜の氣》を拡げた状態ならば、約10kmの範囲でどこで誰が何をしようとも、手に取るように分かるのだ。
そして、夜神 蒼真は自身の氣をさらに拡げようと思えば……出来る。
《夜の氣》=空間なのだから、出来て当然なのだが。
しかし、これ以上拡げてしまうと感知が甘くなり、全員を把握出来なくなってしまうのだ。
だから、その完全に把握出来る範囲を拡げる訓練を彼は屋上で行っているのである。
この訓練では、肉体と精神の両方を酷使する。
生命エネルギーである氣を把握出来る限界まで拡げ、そして、その中の1人1人を一瞬とはいえ把握していくのである。
この訓練の過酷さは押して知るべし。
そして、この訓練にはもう1つの意味があるのだが……。
△▼△▼△▼△▼△▼
今日の分の《夜》の訓練を終えて、俺は帰路についていた。
(……今日は‥‥生姜焼きと、キャベツ)
そして味噌汁と……と夕飯のメニューを考えながら寮に入る。
「…………」
今日の訓練でも、怪しい奴は見当たらなかった。
俺は3日に1回の《夜》の訓練で、有効範囲を拡げるついでに〈悪意〉を持った人間がいないかを探していた。
悪意を持った者を探し出せるのは、一族の中でも俺にしか出来ないことだ。
俺の《夜》は一族の中でもさらに〈異質〉だからな。
それはさておき、一昨日は確かに一般棟の近くで感じていたのだが、キンジとアリアの様子を見たあとにもう一度《夜》を拡げたのだが、見つからなかった。
(……逃げた、か)
普通なら、《夜》を拡げても誰も気付かないのだが、〈奴等〉ならば気付くだろう。
(……《陽》の者ならば、な)
そう考えていると玄関にたどり着き、鍵を確かめずにドアを開く。
すると……
「キャッ」
ドサッ
アリアの短い悲鳴が聞こえた。
何事かと思いリビングに向かうとそこには……
アリアがソファに半身だけ起き上がらせた状態で、ベランダを背にして仁王立ちし、顔を俯かせているキンジを見上げている。
そんな光景と共に、重々しい空気がリビングを包み込んでいた。
「あっ、蒼真……」
そんな空気にヒビをいれたのは、アリアが俺に気付いた声だった。
その声で、俺の存在に気付いたキンジは俯いていた顔を俺に向ける。
キンジの顔には、ただでさえ暗い顔に無視できない影が差していた。
俺はその顔をみて、この状況を大方把握した。
(……アリアが、踏んだか‥‥地雷を)
その地雷が〈どれ〉なのかは分からないが、キンジのこの雰囲気は不味い。
なので、キンジが放つ重々しい雰囲気をなんとかするために、声をかけようとして……
「……蒼真。話がある」
先にキンジに声をかけられた。
「…………」
俺に話があるということは……
(……パートナーの、ことか)
この状況で俺に対して、真剣に話すことがあるとすればその事しかない。
(……いい加減‥‥無視できなく、なったか)
アリアの勧誘がしつこくなるにつれて、キンジもそろそろ我慢出来なくなったのだろう。
お互いが徐々にヒートアップしていき、アリアがキンジの琴線に触れたみたいだな。
これ以上アリアに踏み込ませないためにも、一時期だけアリアとパートナーになるつもりか。
(……だから、話とは多分‥‥)
大方は予想がつくが、取り合えず……
「……ああ」
そう返し、2人用のソファに横たわるアリアに退いてもらい、そこに座る。
そして、俺の隣にアリア。その隣の1人用のソファにキンジが座る。
「…………ふぅ」
「……ねぇ、何で蒼真に話があるのよ。これは私たちの問題でしょう?」
今の状況が理解できてないのか、落ち着かせるように息を吐き出すキンジにアリアが尋ねた。
「…………」
キンジはそれを無視し、ただ、俺を見つめる。
アリアもただ事ではないと悟ったのか、黙って耳を傾ける。
「……蒼真、聞きたいことがある」
キンジは俺を見つめたまま、話始める。
「……なんだ?」
「‥‥お前は俺の相棒だった」
その言葉に、アリアは顔を驚愕の色に染めた。
キンジは続ける。
「俺の我が儘で、相棒を解消して友達になった」
「……そうだな」
「アリアが俺をドレイに……強襲科でパーティを組んでほしいと言ったときも、お前はなにも言わなかった」
「お前は、そんな俺たちを笑って見守っていた」
そこでキンジは一旦話を止め、組んだ指に額をのせる。
そして……
「‥‥蒼真。お前は……なにも感じないのか?」
キンジは……
「‥‥俺に対して。‥‥アリアに対して」
最後に……
「この事について、お前は許せるのか?」
問いかける。
「……どうなんだ、蒼真‥‥」
キンジは顔を見せないまま、俺の答えを待つ。
キンジの話は予想通りだった。
(……本当に、気にしなくて‥‥いいのに、な)
キンジの兄の事件。それを考えれば、武偵を辞めたいと思うのは当然だろう。
あのときの〈約束〉も、冗談の範囲だ。
だから、わざわざ俺に付き合う必要はない。
俺の道はもとから1人道なのだから。
一方アリアは、そんなキンジを見て、そして俺を不安そうに見上げている。
どうやら、アリアは俺とキンジが元相棒だったことを知らなかったみたいだな。
まぁ、知らないのも無理はない。
相棒っていうのは、俺とキンジが決めただけで、ほとんど誰も俺たちが相棒だなんて知らないからな。
せいぜい、仲のいいルームメイト程度だ。
アリアは今、蒼真を傷付けてしまった。とでも思っているのだろう。
俺はそんな2人に苦笑する。
俺を見上げるアリアの頭をポンッと撫でてあげ、キンジの質問に答える。
「……俺は‥‥気にして、ない」
キンジは顔を伏せたまま、俺の話を聞いている。
「……お前の‥‥事情は、知ってる」
「……解消したのは‥‥仕方がないと、思ってる」
「……だから、俺のことは‥‥気にするな」
「……アリアとの、ことは‥‥任せる」
「……お前が‥‥自分で、決めろ」
そして、次はアリアに話しかける。
「……アリアも‥‥気にしなくて、いい」
頭を撫でながら、続ける。
「……ようやく、見つけたんだろう?」
「……諦めたく、ないんだろう?」
「……だから‥‥お前の、思うままに‥すればいい」
「……やりたいように、すればいい」
「……俺は、応援する」
俺は2人にそう言い、アリアの頭をもう1度ポムッてする。
そして立ち上がり、
「……今日は‥‥生姜焼き、だ」
リビングに2人を残してキッチンに向かう。
ここからは、2人が決めることだ。
(……まぁ、結果は何となく‥‥見えているが)
俺は、キッチンで料理の準備をしながら、これからのことを考える。
……さて、まずはどうするか…………。
△▼△▼△▼△▼△▼
「…………はあぁ~~~~」
(……戻ることになっちまった‥‥な)
昨日の夕方の件から一夜明け、学校の昼休みが終わった昼下がりの午後、今俺は強襲科に向かっている。
隣に、どうしようもないお人好しを連れて。
「…………」
蒼真は無言で俺の隣を歩いている。
(強襲科に行くのも久しぶりだが、まさかコイツと、もう1度強襲科に行く日が来るとはな……)
そう思いながら、俺は昨日のことを思い出す。
■
□
■
昨日、結局俺はアリアの勧誘を〈条件付き〉で承諾した。
それは、1回だけ強襲科に戻って組んでやるということ。
強襲科に戻ってから、最初に起きた事件を一件だけアリアと一緒に解決してやる。という条件だ。
アリアはヒステリアモードの俺を必要としている。
そんなアリアに、凡人の状態の俺の本気を見せ、ガッカリさせてから諦めさせようという魂胆だ。
(……これで、大丈夫だろ)
夕飯も食べ終わり、部屋には今は俺1人しかいない。
アリアは俺の承諾を得たので、元の自分の部屋に帰っていった。何やら忙しいらしい。
なら泊まりになんか来るなよ。とは思うが、アイツもアイツで必死なようだ。
(時間がないとか言ってたしな)
まぁ、居なくなるならそれに越したことはない。
そして、元からここの住人である蒼真は外に出ている。
何やらやることがあるらしい。
大方、アリア関連のことだろう。アイツはアリアに甘いからな。
「…………」
(…………やっぱり、バカだよな……蒼真は)
蒼真は嘘をつかない、ていうか嘘をつけるほど器用じゃない。
だから、さっき俺とアリアに言ったことは全て事実で……全てが本音だということ。
『……俺は‥‥気にして、ない』
(何で、そう思えるんだよ……お前は?)
俺がパートナーを解消したときもそうだった。
あのときも、蒼真は…………。
『……何で‥‥怒る必要が、ある?』
ホントに、お前は……
『……何で‥‥恨む必要が、ある?』
誰よりもバカ野郎で……
『……あの事を、考えれば‥‥当然だ』
誰よりも優しい……
『……だから、気にするな‥‥〈親友〉』
(ホントに、でかくて、大きい奴だよ……お前は)
俺と同じで〈大切な人〉を亡くしたはずなのに、俺よりも、ずっと‥‥ずっとツラい目に、今もあっているはずなのに。
心が折れた俺を、許してくれた。
ちっぽけでクズな俺を、親友と、呼んでくれた。
そんな蒼真に、俺は今もだらだらと甘えて……。
そんな俺に蒼真は、いつまでも友でいてくれて……。
いつも、お前は……。
……俺はそんなお前を見て、考えないようにしながらも、ときたま自己嫌悪に陥っていた。
自分がどれだけちっぽけで。
自分がどれだけ弱くて。
自分がどれだけ‥‥クズなのか。と。
…………分かって、いるのだ。
俺には、勇気が‥‥ない。
折れた心を、再び真っ直ぐにする勇気が。
ちっぽけでクズな俺を自覚し、立ち向かう勇気が。
ひとたび裏切り、約束を破ってしまったのに、もう1度……。と、言う勇気が。
俺には、ない。
分かっているのだ。
‥‥‥‥‥そう、本当は…………………。
俺の心の傷は……もう…………。
■
□
■
「……キンジ?」
「っ!?」
蒼真の呼ぶ声に、俺は追憶から戻ってきた。
どうやら強襲科の訓練体育館に着いたようだ。
「わっ悪い、蒼真。考え事しててな」
「……そうか」
蒼真はそれだけ言って、また無言の姿勢に入った。
(……今は、こちらが先だ)
蒼真とのことは、今は置いておく。
まずは、あの赤鬼をどうにかしなければ。
そして、そのあと……身の振り方を考えよう。
俺は、今も無表情で隣に佇む親友を横目で見る。
だから蒼真、もう少し……
もう少しだけ、甘えさせてくれ……。
「……はぁ」
俺は、もう1度だけため息をついて、訓練体育館の横扉に手をかける。
「……行くぞ、蒼真」
「……おう」
蒼真に声をかけて俺は引き戸を開ける。
さっさとこんなことを片付けて、蒼真と向き合えるように……努力しよう。
そんな意を込めて、俺は訓練体育館に入っていった。
俺は後に、後悔することになる。
もっと早くに蒼真と向き合っていれば、もっと真剣にアリアのことを考えていれば……
2人を傷つけず、苦しませることもなかったのに……と。
如何でしたか?
分かっています、分かっていますよ。
「なに言ってんだ、お前」と言う声が聞こえますよっ!
私も途中で「うん?」と思いましたもの!
自身の文章力と語彙力のなさに絶望しております。
いや、いや!
挫けません、挫けませんとも、ええ!
皆さんの応援が、私を再び立ち上がらせます!
というわけで、皆さんも「うん?」と思ったところが多々あると思います。
なので、
分からなかったところ。
疑問に思ったところ。
おかしんじゃね、と思ったところ。
がありましたら、遠慮なく報告してください!
私も出来るだけお答え致します!
勿論、ご理解頂けたならばそれに越したことはありません!
私自身の成長のため、是非ともよろしくお願いいたします。
ではでは、いつもの。
活動報告のヒロイン募集を更新しました!
感想と批評、意見待ってます!切に!
ヒロインも大募集しています!
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