夜の神は太陽に恋焦がれた   作:黒猫ノ月

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私は皆様に御詫びを申し上げねばなりません。
それは

「出会いと再会」が終わりませんでした。

誠に申し訳ありません!
そのため、第5弾も最後だけ修正しております。
ほんのちょっとなので見なくても構いません。
今回で、今回で終わりです!!

応援してくれている皆様、本当に申し訳ありませんでした!!
では、投稿です。


第6弾 「……よく‥‥頑張ったな」

ジャーーー……

 

トントントントントン

 

チッチチチチチ‥ボウゥー……

 

キッチンからなんとも家庭的な音が聞こえる。

俺の無口な同居人……蒼真が料理をしているのだ。

先程の騒動(SM疑惑)のあと、誤解した御詫びと今日はアリアも居るということで、少し豪華にしてくれるらしい。

余談だが、蒼真は料理がかなりうまい。

どれくらいかといえば、白雪とタメはれるぐらい。

昔、蒼真はお師匠様に料理を教えてもらったり、自分が〈例のあの娘〉に料理を教えたりしていから上達したらしい。

……正直、ギャップが凄いです。はい。

そんな俺はアリアと二人でソファーにダレている。

蒼真の勘違いを正すのに精根が尽き果てたのだ。

 

「……ねぇ」

 

ソファーに背中を預けながら白い天井を眺めていると、横から先程の騒動の原因……ちびっこアリアが俺に声をかけてきた。

 

「……なんだ?」

 

余り喋りたくないので簡潔に返すと、

 

「‥‥コーヒー、作りなさい」

 

命令形で俺にそんなことをデコチビが言い放った。

 

「‥‥ふざけんな」

 

「何よ、無礼な奴ね。私は客よ客。さっさとしなさいうすのろ」

 

(…………そのデコ、ひっぱたいてくれようか)

 

そう思いダルい体を起こして、いざ実行に移そうか。と思った時に、

 

 

 

コト……コト……

 

 

 

テーブルの上にコーヒーが2つ置かれた。

 

「……飲んで‥‥待ってろ」

 

いつの間にかリビングに来ていた蒼真により、俺は行動に出ずにすんだ。

 

「サンキュ」

 

「……おう」

 

色んな意味を込めて礼を言う。

お?アリアのと俺のとで、コーヒーが違うな。

アリアの方は確か……。

 

「……ちゃんと出来てるわね」

 

アリアはそう言って、ソファーから体を起こし蒼真が差し出したコーヒーを飲む。

すると、

 

「……あ‥」

 

アリアは少し驚いた顔をしてカップの中のコーヒーを見て、そのあと蒼真の顔を見上げた。

 

「……昔と‥‥変わらない、な」

 

そう言って蒼真は苦笑した。

 

(そういえばこいつら、知り合い……なんだよな‥‥)

 

教室での惨劇を思い出し(蒼真に売られた事も思い出した)、今更だが、どういう関係だ?と首を捻っていると

 

 

 

「…………ありがと」

 

 

 

首がネジ切れるかと思った。

お礼を言ったアリアは少し恥ずかしそうに俯いて、蒼真を見ないようにしながらコーヒーを飲んでいる。

俺は驚愕の出来事に捻っていた首を違う意味で捻ってしまった。

これは仕方のない事だろう。

だって、だってあの……あのアリアが‥‥

 

(お礼を言っただと!?)

 

今日始めてアリアと出会ったが、今までのアリアの行動と先の言動で、こいつはそう簡単に感謝の意を伝えやしないだろうということは想像がつく。

しかも教室での久し振りの再会に、蒼真はアリアをおちょくるというなんともな事をしでかし、今はケンカ中であるはず(先の誤解の件は別)だと思ったのだが。

そんなアリアに蒼真は、

 

「……ああ」

 

と苦笑のまま返して、キッチンに戻っていく。

 

(…………なんというか、慣れてる感じだな)

 

こう、ケンカが当たり前だけどホントは仲の良い兄妹。みたいな。

 

「‥‥仲、良いんだな」

 

俺はアリアに思った事を聞いてみた。

そしたらアリアは頬を少し赤く染めて、ふんっと鼻をならしながら、

 

「く、腐れ縁よ、腐れ縁」

 

そう言い、アリアはコーヒー(エスプレッソというやつだ)を口に運ぶ。

 

(これ以上聞いても何も答えないだろうな)

 

それなら、先程の問題となった件を詳しく聞こう。

 

 

 

「なあ、先言ったドレイってなんだよ?」

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

チャポンッ……

 

「……ふぅ~~~」

 

やっぱりお風呂はいいわね。

健康にも良いし、疲れも取れるし、リラックスもできるし……。

それに考え事をするにはうってつけの場所よね。

今、グレイもとい蒼真はキッチンで料理を作ってる。

キンジのバカは外に頭を冷やさせに行かせたわ。

 

(アイツの料理……久し振りね)

 

蒼真の料理はホントに美味しい。

味もそうだけど、何ていうか……心がこもってるっていうか、なんか‥‥暖かいのよね。

昔、料理の秘訣を聞いたことがある。そしたら、

 

 

 

『……愛情』

 

 

 

無表情でさも当たり前のように言ったから、一瞬何を言ったか分からなかったわ。

そのあと、余りのギャップに大笑いしたけど。

 

『せめて、いつもの苦笑ぐらいしなさいよ!?』

 

私は笑いをこらえながら疑問顔の蒼真に言ったのを覚えてる。

でも私は、あの時に再認識したの。

 

 

 

ああ、こいつはホントに不器用な奴だって。

 

 

 

ホントは優しい奴なのに、表にこれっぽっちも出てこない。

笑ったらとても暖かいのに、普段は無表情か苦笑ばかりで笑おうとしない。

ホントに不器用で損してる……バカな奴。

そう。私はアイツがそういう奴だと分かっていたのに、私は屋上で…………。

 

「っ~~~~!!」

 

バシャンッ!

 

私は自分の沸点の低さと自己嫌悪で、なんとも言えない気持ちになり、頭までお湯に浸かった。

 

 

私は屋上でグレイにボロクソに言ってやったあと、ダッシュで1階の人が居ない教室に駆け込み、少し落ち着くために深呼吸をした。

 

「すぅーーはぁーー、すぅーーはぁーー……」

 

ある程度落ち着き、私は先のグレイへの数々の暴言を思い出し……。

…………………………。

 

 

 

「……~~っやっちゃったーーーー!!」

 

 

 

頭を抱えて、大声で叫んだ。

 

(私、色々いっぱいいっぱいになっちゃって、最後まで聞かずにキレちゃった~~~!!)

 

「うにゃーーーーーーっ!!」

 

頭をかきむしってまた大声で叫ぶ。

だってアイツ、ワケわからないことばっか言うんだもん!

頼ってほしかったら、何で隠れてんのよ!

ママのこと知ってる癖に、時間がないの分かってるくせに!なんなのよ!

しばらく、一人でギャーギャー騒いだあと……

 

「……はあ~~~~…………」

 

大きなため息をついた。

 

(違う)

 

確かに私は意味不明な理由を言っているグレイに納得出来なかったのは事実だ。

でも、私はそんなことでキレたんじゃない。

 

(…………分かってる)

 

私は今余裕がない。

パートナーも見つからないし、ママのことがあるからグレイを本気で探そうともしなかった。

そのくせに、中途半端にグレイを探しちゃうからなんかもやもやして。

それで余計に余裕が無くなっちゃって。

こんなんじゃ、ママを助けるために〈アイツら〉を捕まえることも出来ないとさらに焦っちゃって……。

……私のキレた理由は簡単。

そんな私の焦燥感をアイツに……

 

 

 

『嘘だ』

 

 

 

グレイに見透かされてたからキレたんだ。

いわゆる逆ギレ。

アイツには、「 私は昔とは違う!!」と言ったけど……全然変わってない。

いつまでも子供な自分が嫌になる。

アイツに八つ当たりすることは出来る、そんな自分に腹が立つ!

 

「…………」

 

しばらくの間、私は自己嫌悪に陥っていた。

すると……

 

キーン、コーン、カーン、コーン…………

 

お昼休みの始まりを告げるチャイムで私は自己嫌悪から戻ってきた。

 

ぐぅ~~……

 

こんな時でもお腹は空く。

 

「……はあぁ~~~~」

 

私はさっきよりもより深いため息をついた。

 

「……なんか、食べよ」

 

そう思い気分が沈んだまま、好物の〈ももまん〉でも食べて元気出そう。と思って空き教室を出ようとする。

だけどふと、お腹が空いた影響か、アイツが言っていた隠れていた理由を思い出す。

だけど私は見透かされたショックで沸騰して、アイツの話を途中でぶった切ってしまったからその理由を最後まで聞けなかった。

 

『……お前に‥‥自力で見つけて‥‥ほしかった』

 

私がグレイを自力で見つけることにどんな意味があるんだろう?

頼ってほしかったら、助けてって言ってほしかったら隠れる必要はない。

 

『……それは』

 

アイツはなんて言おうとしたんだろう?

無口なアイツが、頑張って私に言おうとしたこと。

 

 

 

「……ホント、バカだな私…………」

 

 

 

『人でなしっ!!』

 

 

 

そんな言葉とは正反対のグレイに、あんなこと言っといて何を考えてるんだろう。

 

「……今度こそ、愛想つかされちゃったかな?」

 

ふと呟いた言葉に……

 

ブンブンブンブンッ

 

頭をふって今までのことを頭の隅に置く。

 

「もうっ、ダメじゃない私!終わったことをぐちぐち言っても仕方ないじゃない!!」

 

私は声に出して自己嫌悪も後悔も吹き飛ばす!

 

「さって、まずはももまんを食べて、あのヘンタイの情報収集。それから……」

 

ガラガラガラッッ!

 

私は勢いよく引き戸を開けて、空き教室を出る。

 

(今は前を向かなくちゃ!!)

 

そう気持ちを一新して私は歩き出した。

パートナー候補のドレイを……グレイの代わりをパートナーにするために…………。

 

 

ブクブクブクブク…………ぷはぁっ

 

私は気持ちが落ち着いて来たので、浸かっていた頭を出した。

 

「…………」

 

…………蒼真は‥‥‥怒ってなかった。

今度こそ、私は見捨てられるって覚悟してたのにアイツはいつもどおりだった(誤解の件のときは妙に優しさが滲み出てたが)。

普通なら無視しても良いぐらいなのに、蒼真は私に晩ごはんを作ってくれるって言ってくれて。

作ってる間、コーヒーを出してくれて。

そのコーヒーが……私の好きなエスプレッソで。

 

『……昔と‥‥変わらない、な』

 

苦笑混じりにそう言う、いつもと変わらない蒼真に私は…………。

 

 

 

本気で……本気で、泣きそうになった。

 

 

 

そのときは隣にキンジがいたから意地で我慢して、お礼だけ言ってキンジの質問に答え、本題のパートナーの件に入ったけど。

まぁそのあとに、あのわからず屋の頭でっかちは追い出したけど。

私はさっきのことを思い出す。

 

 

キンジを追い出したあと、私たちがパートナーの話をしてたのに口を挟まず、黙々と料理を作り続けるグレイの背に私は恐る恐る聞いた。

 

「……グレイ、怒って‥‥ないの?」

 

「…………?」

 

グレイは私の言葉に一旦料理をする手を止めて、振り返り首を傾げる。

 

「……えっと、屋上での‥‥こと、なんだけど」

 

私はしどろもどろになりながら言うと、

 

「……おぉ」

 

今思い出したようにグレイが声をあげる。

 

「……いや‥‥怒っては、ないが?」

 

まるでそれがどうした?とでもいうように蒼真は答え、そして……

 

 

 

「……あんなの‥‥いつもの‥ことだろ?」

 

 

 

そう言うグレイに私は今度こそ……我慢、出来なかった。

その涙の意味は嬉しさと‥‥疑問。

 

「……ど‥‥して」

 

「…………?」

 

私は疑問をぶつけた。

 

「‥‥どうっして?何で?っ‥‥私、グレイにっあんなっ、ことっ言ったのっに……」

 

だけど言葉に出来なくて。

 

「…………」

 

「ひっ、それっに……わたし‥ひっく、や、やつあたりもっして……」

 

グレイは黙って聞いていて。

 

「ひっく、ひっなのにっどうし……」

 

 

 

……ぎゅう

 

 

 

「っ!!?」

 

私は、それ以上……なにも言えなかった。

だって……

 

 

 

グレイが優しく、それでいて強く私を抱き締めたから。

 

 

 

「……何を‥‥泣くことが、ある?」

 

ぽむっ

 

グレイは私を抱き締めながら、頭を優しく撫でる。

私は今度こそ黙ってグレイの言葉に耳を傾ける。

 

「……俺は‥‥お前の気持ち、全部は‥‥分からない」

 

『私が今、どんな気持ちか知らないで!!』

 

「……お前が‥‥正しい」

 

「……俺が‥‥お払い箱‥なら、それは‥‥良いこと」

 

『アンタは、もうお払い箱なの!!』

 

「……自分で‥‥自分の力で、パートナーを‥‥見つけた」

 

「……お前が‥‥頑張った、証」

 

グレイの言葉に、声に、優しい手に、暖かい体に、私は……涙が止まらない。

 

「……理由が‥‥あろうと、お前から‥‥隠れてた」

『この人でなしっ!!』

 

「……俺は‥‥人でなし、だ」

 

「っち、違!」

 

私は否定しようとしたけど、声がつまって出来なかった。

そんな私の頭をグレイはくしゃって少し強く撫でた。

グレイは少し体を離して両手を私の肩にのせて、私の涙を流す瞳を見つめる。

 

「……お前は‥‥確かに‥‥昔と、違う」

 

『私はもう、昔の私じゃないっ!!』

 

そして……

 

 

「……よく‥‥頑張ったな、アリア」

 

 

 

「……グ、レイ…………」

 

どうして?

 

「ひっく‥‥グレイィ~」

 

私が悪いのは明白なのに。

 

「グレイイィ~~~!!ひっ、うわああぁぁーーーーー!!!」

 

嫌われても、おかしくないのに。

 

ぎゅうっ

 

「うわああぁぁぁーーーー!!……ひっく、うわああぁぁーーーー!!!」

 

どうして、私が欲しかった言葉を言ってくれるの?

 

(……優し過ぎるわよ‥‥グレイ……)

 

グレイは泣き叫ぶ私を、私が泣き止むまでずっと抱き締めてくれた。

 

 

ピチョンッ

 

狭いお風呂場で水滴の音が響く。

 

……ザバァ

 

アタシは少しのぼせた身体を、お湯からあげてお風呂の縁に腰かける。

 

 

私がしばらくして泣き止んだときにグレイはゆっくり体を離した。

 

「……ふっ。……まったく‥‥ひどい顔だ」

 

グレイは苦笑して私にいつもと同じようにそう言い、私の涙を指で拭う。

 

「……すん‥…うるさい、バカ」

 

そんなグレイに私もいつもの調子で返す。

だけど、私は改めて痛感した。

グレイは、変わらずに私を愛してくれてること。

そして、見てられないほどに優し過ぎることを。

 

「……風呂に‥‥入ってこい」

 

「……えっ」

 

唐突にグレイはそう言った。

 

(…………何で、お風呂?)

 

私が頭に?を出してると

 

 

 

「……そんな顔を‥‥キンジに‥‥見せる、のか?」

 

 

 

(……アイツの存在を忘れてたわ)

 

確かに、アイツにこんな顔見せるわけにはいかない。

 

「……風呂に‥‥入って、切り替えてこい」

 

そう言ってグレイは私の頭をポムッてする。

 

「……あと、俺の名前‥‥なんだが」

 

「‥‥?」

 

(……そういえばこいつ、ここではグレイじゃなくてソウマとかって呼ばれてたわね)

 

「……本名は、蒼真。……夜神 蒼真だ」

 

「……そう」

 

向こうでは、《夜王》としての名前を使ってたのね。

表と裏で名前を使い分ける人はいる。

だいたいは表と裏で性格が違ったりするのだが、

 

(グレイに‥‥いや、蒼真に関しては言うまでもないわね)

 

「ん、分かった。これから蒼真って呼ぶわ」

 

「……おお」

 

そして、蒼真は私の頭に置いた手をどけて、長い間放置してた料理を再開しようとキッチンに向かう。

そんな蒼真の背に私は……

 

「‥‥蒼真!」

 

意を決して、声をかける。

蒼真は黙って振り向き、私の言葉を待っている。

私は慣れてない、精一杯の感謝を込めて……言う。

 

 

 

「ありがとう、蒼真!これからまたよろしくね♪」

 

 

私は腰かけていたお風呂の縁から立ち上がり、お湯からあがる。

そして、汗を流すために軽くシャワーを浴びる。

お礼を言ったら蒼真は微笑んで、

 

「……おう」

 

と返してくれた。

 

(……やっぱり、優し過ぎるわよ)

 

ホントにそう思う。

蒼真は言った、屋上でのことはいつものことだと。

確かに、あんなケンカは向こうではよくしてた。

蒼真も私をおちょくったりしたから、私もそれに対抗してアイツの悪口を言った。

今日よりもひどいことを何度も言った。

けど、蒼真はいつも許してくれた。

ハッキリと言ったわけじゃないけど、さっきみたいにいつも通り接してくれた。

私もそれが当たり前だと思ってた。

蒼真も私を弄ってるんだから当然だと。

そしてそんなケンカを繰り返して、ママから兄妹みたいねっていつも言われてた。

だけど、今回はいつもと違う。

蒼真は悪くない。私が一方的に八つ当たりしただけ。

なのにアイツは許してくれた。それは、私が色々溜め込んでいるのに、無理しているのに気付いたから。

蒼真はそんな私の溜め込んでいる黒いモノを吐き出させてくれた。

ホントにつくづく思う。

蒼真は優し過ぎで……そして

 

 

 

私は蒼真のそんな優しさに甘えてるって。

 

 

 

(このままじゃ、ダメよね……)

 

甘えるだけじぁダメだ。頼ってばかりじゃダメだ。

 

『……お前に‥‥頼って、ほしかった』

 

蒼真はそう言ってたけど、私はもう十分蒼真を頼ってる。

私は蒼真にたくさん救われた。

 

(なら、今度は私が蒼真に頼ってもらえるように頑張ろう!)

 

誰よりも優しくて、誰よりも溜め込んでいるアイツに……〈お兄ちゃん〉に吐き出させてあげれるように強くなろう!

 

だからまずは……

 

(アイツをドレイにしなくちゃ!!)

 

まずはそこから。

蒼真の手を煩わせず、1人でアイツをパートナーにしてやるんだから!

そしたら……

 

 

 

「蒼真も頼ってくれるかな……?」

 

 

 

シャワー止めて、お風呂場を出る。

その前に顔をパンパンッてしてから、よしって気合いを入れる。

 

「頑張ろっ」

 

気持ちを一新して、お風呂場の扉を開ける。

そこには……

 

 

 

私の着替えを漁るヘンタイがいた。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

――ぐわあぁっ!!!

 

――死ねっドヘンタイ!!ホントに死ねっっーーーー!!!

 

ガッシャーーンッ!

 

「……お?」

 

もうすぐ料理が出来るのでキンジを呼び戻すため携帯にメールを送ろうとして、聞こえてきた二人の叫び声。

 

(……いつの間に‥‥帰って?)

 

……俺はアリアが風呂に入っていったあと、キンジに「アリアお風呂ナウ。間違ってもお前のために戻って来るな」と俺はメールを送ったはず。

 

(……なのに、何故…………はっ!?)

 

先の誤解、女王様と奴隷疑惑は晴れたがしかし……キンジロリコン説。これは誤解ではないはずだ。

朝、アイツはアリアでヒステリア化してるし、今も女嫌いなはずなのに風呂場に潜入した。

ここから……女嫌いではなく、合法ロリ好きだから嫌いという推理が成り立つ!!

 

(……まぁ、冗談はさておき)

 

キンジのことだから、何か理由があるのだろうがとりあえず。

 

(……このネタで‥‥弄る)

 

そう思い、料理が出来たことを2人に言うために洗面所に向かおうとして、

 

こん、こんっ

 

ベランダの窓を何かが叩く音がした。

俺はベランダに近づくいて、窓の外を見る。

そこには黒い羽根が2枚落ちていた。

 

「…………」

 

スッ

 

俺は外に向かって指で1と2を差す。

すると

 

こんっ

 

またもや黒い羽根が1枚飛んできた。

俺はそれを見たあと、再度洗面所に向かおうとして……

 

「ねぇ蒼真!このドヘンタイどうしてくれようかしら!?こいつ、私のし、しし下着をっ!!裸をっ!!」

 

「だから誤解だと言ってるだろ!違うんだ蒼真!これには訳があって!!」

 

騒がしくリビングに入って来た2人は蒼真に言い寄る。

ぎゃあぎゃあ喚く2人に苦笑して

 

 

 

「……キンジは‥‥ロリコン」

 

 

 

俺もそれに参加する。

 

 

 

………………。

…………。

……。

 

 

 

近くに都心があるせいで余り煌めく星々は見えない。

ここは俺が住んでいる寮の屋上。真夜中の0時となると中々に寒い。

あれから、3人で俺が作ったハンバーグとカレー、そしてサラダを食べたが、なんとまあアリアとキンジの仲の悪いこと。

キンジも俺のロリコン発言に少し不貞腐れるしで中々に騒がしい夕食だった。

俺は星空を見ながらそんなことを考えていると

 

バッサ、バッサ、バサッ‥‥タッ

 

「……ご足労かけて申し訳ありません‥‥〈マスター〉」

 

空からとある女性が、夜よりも黒い黒曜石のような艶のある翼を羽ばたかせて舞い降りてきた。

 

「……いや‥‥待たせたな、椿」

 

椿と言われた女性は、蒼真の言葉に首を振る。

年のころはまだ20歳程であろうか。しかしとても物腰が落ち着いていて、大人の女性という雰囲気を醸し出している。

 

髪は黒く、ショートヘア。こちらはさらさらとしていてまるで絹のような髪。

目は蒼く、とても綺麗な澄んだ色をしている。

目や鼻は西洋人特有の美しい形をしているが、口は東洋人の慎ましくそれでいて淡いピンク色のふっくらとした唇をしている。

結果、西洋と東洋の素晴らしいところを厳選したような、とても美しい顔をしていた。

 

服装は長袖ロングスカートの‥‥いわゆるメイド服を着ている。

体つきはメイド服で隠れていて余り分からないが、スレンダーながらも無いわけではなく、とてもバランスの取れた美しい肢体をしていた。

 

そんな人形のような姿をした女性が蒼真に対して申し訳無さそうに話す。

 

「そんなことは。本当ならば今日の夕方ごろには報告が出来るはずだったのですが、別件で少し見過ごせないことがありまして」

 

「……なんだ?」

 

少し憂い顔をする椿に蒼真は尋ねる。

 

「では、それを含めて報告します。」

 

椿は顔を引き締めて蒼真に報告する。

 

「〈あの娘〉は変わらず元気にしています。それと、あの娘からマスターに言伝てを預かっています」

 

「……?」

 

「理子さまのことをお願いします。と」

 

「……任せろ」

 

「承りました。では続きまして、ブラドに関してはまだなんの手がかりもありません」

 

「……続けろ」

 

「全力を注ぐよう伝えておきます。では次ですが……」

 

2人はしばらくそんなやり取りをしていたが、

 

「……では、これが最後です。見過ごせなかった件ですが」

 

椿はそこで区切り、蒼真を見つめる。

 

「…………?」

 

そんな椿に蒼真は不審に思っていると……

 

 

 

「イ・ウーに……〈陽〉の者たちが協力している模様です」

 

 

 

その言葉に俺は……全てを理解した。

今日の朝の悪意。

セグウェイ6台による追撃。

干渉者と傍観者。

全てが…………繋がった。

 

「……そうか」

 

「マスター…………」

 

椿は俺を心配そうに見ている。

 

「……そうか」

 

俺はもう一度、声に出して答えると

 

 

 

「望むところだ」

 

 

 

 

 

これが3人の運命が交差した日の出来事。

 

 

 

ここまでが序章。

 

 

 

ならばこれからは…………。

 

 

───全てを巻き込む波乱の物語が……今、始まる───




如何でしたか?
本当ならば次に進むはずだったのですが、あまりにも跳びすぎるため、急遽投稿した次第です。
ご迷惑をおかけしました。
これからはこんなミスの無いよう注意していきたいと思います。
ちなみに《陽》は、「はる」と読みます。
活動報告に現在のヒロイン状況を更新しました。
では、
感想と優しい批評、評価待ってます!
ヒロインも募集中です!!
これからもよろしくお願いいたします!!

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