哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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遅くなりました。
寝るのが幸せ過ぎて何も手につきませんでした。
恐るべきは新しい布団……。
書いてる間も眠くて眠くて。誤字が心配です。


第十章拠点フェイズ :【鑑惺伝】デートイベント その一

 「最近 聆ちゃん 元気ないの」

「…………」

「…………」

「最近 聆ちゃん 元気ないの」

「沙和、ちょっと静かにしといてぇな。ウチ、今真剣勝負やってんねんから」

「ああ。俺としてもそうしてくれると助かる。真桜は少しのミスでピタゴラ死させてくるからな」

 

朝の警邏が終わって、俺は真桜と昼の奢りをかけて将棋を打っていた。俺が勝ったらワリカン、負けたら全額だ。勝ったところで奢ってもらえるわけではないし、食べる量は俺が一番少ないからワリカンでも損なんだけど、強引に無条件で奢らされるよりマシだ。多分。

 

「えーー!!たいちょーも真桜ちゃんも、聆ちゃんのことはどうでも良いのー?」

「昼飯代も大切や、ってだけの話や」

「ああ。特に俺はな。逃れられるチャンスがある時に逃れられないと、後々財布がすっからかんになるのは経験上明らかなんだよ」

 

最近は、聆が半分出してくれたりしてるんだけど、あいにく今日は凪と一緒に別ルートの警邏で、そのまま城に直帰だ。

 

「それに聆が元気ないってのもなぁ。ぴんぴんしとるやん?」

「確かに、風邪引いたりしたけどさ。あの後結局殆ど全員かかってたし」

 

信じられないことに、聆の風邪は、あの春蘭や華雄にも移った。一時期は魏の中枢が停止寸前までになって……。そう考えると別に聆だけが体調が悪くなったわけではないし、むしろ早くかかって早く治った分、聆が元気に何人分もの仕事をこなしていた印象が強いほどだ。

 

「そーゆーのじゃないのー!」

「はいはい……あ、ごちそうさんでーっす」

「え!?ミスった!?」

「じゃ、ここに……」

「いやいや、落ち着け……。……ここだ!」

「はい」

「うげ!?……ええい!」

「ほい」

「くっ……」

「もー詰んどるってー」

「いや、こうすれば……?」

「あかん。これ効いとる」

「じゃ、これは?」

「ここ下げてこう」

「………」

「………」

「………出来るだけ安い店にしてくれ」

「よっしゃ!沙和ー、勝ったでー!お昼どこ行く!?」

「あーあー!もう!今日は何とか回避するつもりだったのになぁ」

「はっはっはー。確かにたいちょー、天の言葉出まくりやったもんなー」

「あ、そうだった?普段はあんまし使わないように気ぃつけてるんだけど」

「出とった出とった!『ちゃんす』とか『みす』とかなんとか。相当必死やってんなぁ」

「結局負けちゃったけどな。あーあ。もう開き直るさ。で、真桜、沙和。どの店に行く?」

「あ、ウチあっこが良え!あの最近 東地区に出来たとこ!」

「げ、あそこいかにも高そうじゃないか……」

「えー、たいちょー負けてんやからしかたないやん」

「いやいや、沙和の意見も聞かないとな!沙和はどこが良い?……安い店でたのむ(小声)」

「………」

「沙和ー……?」

「悩んどんやったらウチの言うた店で!」

「いやいや、それはおかしい」

「なんもおかしいことあらへんって」

「はっ!?そう言えばそもそもお金出すの俺なんだから俺が決めれば良いんじゃね!?」

「ちょ、オーボーや!沙和も何か言うたって!」

「……うるさいぞこの食うことしか脳にない豚糞どもーーー!!!!」

「!?」

「!?」

于禁軍曹!?

 

「そんなにお昼ご飯が大事かーーー!!!」

「わ、分かった話を聞く!だから落ち着け!」

「どーどー」

「むー、そのなだめ方はすっごく癪にさわるけど……まあいいの。……それでね、聆ちゃんのことなんだけどー……」

「元気がないってんやろ?さっきも言うたけど、ぴんぴんしとるやん」

「そうだよ(便乗)」

「そうじゃなくてー。精神的なものなのー」

「精神的?」

「そーそー。最近の聆ちゃん、何か大人しすぎるかなーって」

「いやいやいや、何言ってんだ?むしろ最近が一番ヤバかっただろ。ほら、華琳の……」

「えー、でもアレ、華琳様が一方的に拗ねてたんじゃないの?」

「せやなぁ。聆がずっと謝り通しやったなぁ」

「うん……まぁ、そうだけどさ」

 

結局、何が原因かは分からず終いだったけど、拗ねさせるようなことすること自体が問題なワケで。

 

「それに、聆ちゃん最近全然怒んないしー……。この前も――

 

 ※―――――――――――――――――――――――――――※

 

 「あーあー。警邏ってつまんないのー」

「沙和ェいっつもそれ言いよんなぁ」

「いっつもつまんないんだからしかたないの」

「多少警戒しながらになるけど……こーやって街並みを眺めるんもなかなか良えと思うで?」

「えー?いつも大して変わんないから面白くないのー。それにこの辺、服屋さんも無――」

「ん、どないしたん?」

「あー!新しい服屋さんができてるのー!」

「は?どこに……」

「ほらほらあそこ!三つ向こうの角のとこ!」

「……沙和って伊達眼鏡?」

「服屋さんは雰囲気で分かるの!……ねー、それより、寄ってこーよー」

「仕事中やろ。後にせんか?」

「先延ばしにしてたらいい服は無くなっちゃうの!じゃあいつ行くの?今でしょ!?」

「………はぁ。分かった。んだら四半刻だけな。その代わり、それ終わったらきっちり全部廻ってもらうで」

「聆ちゃんは来ないの?」

「私は普段廻らんとこでも行って来よかと思っとる」

「えー!聆ちゃんも来ないとー!」

「なんでやのん?」

「やっぱりー、こーゆーことに積極的じゃないと女の子としてどーかと思うの」

「あー、私は将としての仕事を優先するわぁ」

「えー、せっかく聆ちゃんキレイなのにー……」

「んだら沙和が私に合う服選んどいてぇな」

「んー……しかたないの。じゃあ、行ってくるのー!」

「ちゃんと戻って来ぃよー」

 

  ※――――――――――――――――――――――――――※

 

 ――って」

 

うわー……なんと言うか……。

 

 

「うわー、それ、ホンマなん?」

「ホントホント」

「やとしたら確かに聆、元気無いわ……」

「ん?どうしてだ?」

 

沙和の不真面目っぷり以外には特におかしなことはなかったように思うけど。

 

「聆ちゃん、前までは、『女の子として〜』ってダメ出しするといっつも『私の乙女力にケチ付ける気ィか?』ってキレてたのー」

「それに、そもそも寄り道しようとした時点で一喝やったやろな」

「そー言えば、『あァン?』も言わなくなったの……」

「地団駄も踏まんようになったなぁ……」

「うーん……確かに………」

 

言われてみれば、出会った頃の聆はもっとこう、言っちゃ悪いけどチンピラ風だった気がしないでもない。

 

「でも、これって『落ち着いた』って言うんじゃないの?」

「まだ落ち着くような歳じゃないのー」

「せやなぁ。まだウチらピッチピチの十代やしぃ〜」

「わざとらしく言ってるとどんどん価値下がるぞ。……それに、仮に聆の元気が無いとして、結局どうする気だ?」

「そんなの、元気付けるに決まってるのー!」

「具体的にどんな方法で?」

「………」

「………」

「たいちょー、よろしくなの」

 

丸投げかよ。

 

「そう言われても原因が分からないことには何とも……」

「やっぱり仕事中心の生活の問題ちゃうか?」

「一理あるな」

 

将として落ち着いた態度を求めすぎてそれが素になっているのかもしれない。

 

「あと、女の子らしいことができてないからなの!」

「沙和はどうしてもそこに持っていきたがるな」

「いや、でも間違ってもないんちゃう?今の聆は、"将らしさ"ばっかりになってもとるみたいやから……」

「そーそー。だから、たいちょーの力で聆ちゃんの"女の子"を目覚めさせて、ほしいのー!」

 

地団駄とかが女の子らしさになるのかはともかく……。それに何かその言い方卑猥だなぁ……。

 

「はぁ……。じゃ、出来る限り頑張って考えるから、思いついたら真桜と沙和も協力してくれよ?」

「あいあいさー!なの」

「ほーい」

 

女の子らしさとかは一旦置いといてゆっくり休んで、楽しんでもらう計画を立てるつもりだけど……。二人とも何か軽いなぁ。ホントに手伝ってくれるのか……?




そろそろ頃合いやと思うんや。

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