お見舞いは匙加減が大事ですね。
「ゴホッ……うぇぅ………」
なんか知らんが風邪を引いた。いや、だいたい原因の察しはつくが。最近は色々と頑張りすぎて寝不足気味だった。西涼のアレもあって、毒関連の勉強を始めたし、上からの指示で、火計対策の訓練もやらなければならない。ちょっと詰め込みすぎた。
とりあえず今日、明日は自室療養の申請を出している。移すといけないから面会は極力避けるようにとも言っておいた。多少暇だが、仕方ない。大人しく寝よう。
「よーっす!調子はどないや?」
「お見舞いに来たのー!」
「二人とももうちょっと静かに……」
少しウトウトとし始めた頃。バァーンと乱暴に戸が開き、三人娘がやって来た。相変わらず騒がしい二人。それに注意しつつも無遠慮に入ってくる凪までセットでいつも通りだ。
「お見舞いとかやめといてくれって言ったはずなんやけどな」
「極力、やろ極力。そんなことより良えもん持ってきてん。パンパカパーン!お菊ちゃ――」
「よっしゃ帰れ」
「えー!何でぇな。暇も躰も持て余しとるやろ?それに汗かいたら早よ治るって言うしー」
「その為に無駄な体力使ったら意味無いやろが」
それに私はオモチャは使わない主義だ。
「まぁまぁ。ウチらが帰った後にこっそり使えるよーに、ここ置いとくで」
「おう持って帰れや」
「あ、せやなせやな潤滑剤がなかったら使い辛いな。パンパカパーン!ろーしょんー!!」
「はぁ……どうしても使わなならんか……?」
「まぁ、頑張って作ったしなぁ」
「そーか。じゃ、使うか……」
「そーそ。それでええねん……って、何でこっち来るんちょ、待っ、待って待ってアカンってアカンアカンギャァァァァァァアァァァァァ!!!!!」
「うぅ……ウチ汚されてしもぉた………初めてはたいちょーにあげるつもりやったのにぃ」
「やから尻にしとるやろが。ってかこの前、やったってはしゃいどらんかった?」
「後ろの初めてもあげるつもりやってん」
「あー、んだら女同士は無効で」
「せやな」
「切り替え早いな」
「ちゃうねん。実際に使われてみて改良せなあかんトコが見つかったから、そっちのが気になるねん」
「そうか。帰って、どうぞ」
「んじゃ、お大事になー」
何かドッと疲れた気がする。
「沙和と凪も風邪移ったらアレやから……」
「うん。でもその前に沙和も渡したいものがあるのー」
「マトモなモンなんやろな?」
「見たら分かるのー。はい、これ!」
手渡されたのは毛糸で編まれた服。どうやらセーターのようだ。
「この前たいちょーに聞いて作ってたの。風邪のときには暖かくしなきゃだもんね」
「おー……予想外にマトモなモンでちょい動揺しと……?」
……広げて見てみると、何か言いようのない違和感が………。
「……これ、何で肩と胸元バッサァ開いとん?」
「その方がカワイイの!」
「痴女か!」
「私の服も開いているんだが それは……」
「あ、ごめん凪」
「聆ちゃんが隠し過ぎなだけたよー。せっかくキレイなんだからもっと出してかないと!」
「趣味に合わんから却下」
「でも聆ちゃん西涼でいやらしい服だったのー!」
「大きさが合わんかったんやから仕方ないやろ」
「えー?でも、たいちょーが こーゆーの好きだ、ってー……」
確かに好きそうだが……。
「待て。『風邪のときには暖かくしなきゃだもんね』って言葉と繋がらんのやけど」
さっきの話を聞く限り一刀とどうこうするための服なんだが。
「多分たいちょーも後でお見舞いにくるからー、それまでその服を着て待つのー!」
なるほどな。風邪対策をしつつ一刀を誘うのか。苦手だなぁ……。
「そういうんはちょっと……」
「聆ちゃんは奥手すぎるのー!」
一刀さんの一番搾り頂いちゃったこの私に向かって何言ってんだコイツ。
……それにしても服関連の沙和はしつこい。
「あーもー!分かった 貰うから騒ぐな」
「うんうん!なら早速着てみるの!」
しつこい。
「はぁ……。着たら帰ってな?」
セーターとか苦手なんだよな。チクチクするし。着るときはいつも内側に丈の長い服を着ていた。もちろんタートルネックはNGだ。
「あ、その服、せぇたぁ って言うんだけどー、着るときは下着を脱ぐのが まなー だ、ってたいちょーが言ってたのー」
一刀ェ……。
……あ、でもこれチクチクしない。さすが沙和。
「今度胸とか開いてないセーター作ってな」
「任せてなのー♪」
次は背中が開いていたのはまた別のお話。
「私からは治療だ」
続いて凪。
「治療……?」
素人がやると危険じゃないか?
「氣を使って生命力を高めて病を治す方法を以前本で読んでな」
あぁ、そう言えば書庫に五斗米道《ゴッドヴェイドー》の本が有った。凪なら氣の扱いはむしろプロだ。信用できるかもしれない。
「腕を出してくれ。――少し痛むかもしれないが……」
縫い針っぽい何か適当臭漂う針が刺される。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ………………!!」
凪の周囲に轟々と炎のオーラが現れる。
「げ ん き に な れ ぇ ぇ ! !」
――死――
「っらァ!!」
「うわっ!?」
突如として浮かんだ明確な死のイメージに、思わず凪を突き飛ばしてしまった。
「何をする!」
「いや待てお前!それ何か試したか?」
「……初めてだが」
「……ちょっとこの花に試してみてくれ」
「……? 分かった」
朝一で三課長が持ってきた白百合を手渡す。
「げ ん き に な れ ぇ ぇ ! !」
パァンッッ
破裂。沈黙。
実は五斗米道では、治療用に氣の量と質を細かく調整する必要がある。対して凪の氣はバリバリの攻撃特化。そりゃ破裂もするだろう。
「あ、あわわわわ……」
凪と沙和の顔が見る見る青くなる。
「す、済まない!あぁ……私はなんてことを……!」
「いや、大事には至ってないし大丈夫や」
「いや!あのままでは取り返しのつかないことになるところだったんだ!何か償わせてくれ!そうだ、私を殴ってくれ!!」
何これめんどくさい。普段なら笑えるハプニングなんだが、いかんせん今日は体がダルい。
「えーっと……とりあえず一旦帰ってくれればそれで」
「そんな!」
「聆ちゃん!凪ちゃんも反省してるし、謝ってるんだから……えっと、その、確かに危なかったけど許してあげて!」
「うん……?別に怒ってないって。ダルいだけや」
「聆ちゃん!」
「すまない……何でも するから、そん なこと言わないで……ッ許してくれぇ」
あれ、何か泣き始めたんだが。……あ!
「別に顔も見たくないとか、そう言うアレとちゃうからな!?ただ、えーと……」
『しんどいから』『騒がしいから』『疲れたから』……どの言葉を選んでも相手に気を使わせてしまいそうだ。
「ま、まぁ、明日にでもまた来ぃや」
「………ッ」
バッと走って出ていってしまった。なんなんだってばよ。
「え、えーと……じゃあ、お大事にーなのー」
それを追って沙和も。
どうやら私より凪の方が重傷になってしまったようだ。……でも私は悪くないよな?しかたなかったよな?
そろそろ呉攻めということで、呉勢のキャラを確認するために久々に呉ルートをプレイしてみましたが、全編通してお葬式ムードでワロタ。
初期は孫堅さん、次は孫策、最後は周瑜。
英雄譚では死なないことを切に願います。
英雄譚で思い出しましたが、この作品では基本的に英雄譚の設定は無視で行きます。死亡時期とか性別とかが違うっぽいので。
実際にプレイしてみて、使えそうな設定が有ったら使いますが、望み薄ですね。