哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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今日は体の調子が良いです。
頭はちょっとおかしいですけどね!


第十章戦闘パートその二

「うぉぉぉぉっ!!」

「セッ!」

ズドォッ!

 

攻城戦には敵の三倍の兵力が必要と言われているが、それは所謂「城の強み」が活かされるという前提でのことだ。今回のように到着即開門 では全くと言ってもいいほど当てはまらない。

そもそも、敵衛兵に少なからず我が隊の隊員が紛れ込んでいたため、実は三倍の壁も超えていたのである。

危険視していた五胡格闘術使いも、始めっから掴みかかる気満々、って感じで迫ってくるので迎撃が簡単だ。そんなんで引っかかるわけないだろう。

 

 

 「鑑惺様。馬騰はやはり自室に居るとのことです」

「周囲の守りは?」

「クソみてェに薄ィぞ!やる気あんのかあの馬糞野朗」

「んだらお前ら二人はついて来い!サッと行ってサッと捕るで!」

「御意に」

「行くぜっ!」

 

そして今回の主目的である馬騰の捕獲……いや、保護に走る。

魏ルートの馬騰は毒で自殺を図るはずだ。実際、薬師から"一番強力な毒薬"を受け取ったらしい、という情報も入ってきている。

ここで馬騰を死なせるのは好ましくない。馬騰が生きているのと死んでいるのとでは三国平定後の西涼との関係が大きく違うだろう。それに、華琳にも、捕まえて来いって言われているし。

 

「あそこです!」

「おうよ!」

 

と、そんなことを考えているうちに着いたな。毒飲んで死んでたら嫌だな……。元気だったら元気だったで交戦することになるか……うへぇ。何か前評判からしてクソ強そうなんだが。……いや、そう言えば肺の病気で戦場にも出られないんだったな。よし、これは勝てる。ドア破ってワンパン!ドア破ってワンパン!

 

「ちわーーっす!曹魏屋でーっす!」

バアンッッ!!

 

勢い良くドアをぶち抜く。

って、当に今毒薬飲んでんじゃんコイツ!

 

「コラッ!そんなもの飲んじゃいけません!ペッしなさい、ペッ!」

ズビスッッ

「くっ!」

 

決まった!音速の腕払い!でもちょっと飲んでしまったっぽいな。さて、どうするか。とりあえず医――

 

「しゃっ!?」

 

さっきまで私の頭が有ったところをものっそいスピードで刃が通り過ぎた。避けられたのは、これまでの戦闘経験の賜物だろう。少しマグレも入るが。

ところでさっきから信じられない速さの斬撃の嵐に晒されている件について。

強すぎなんだけど マジ !

誰だ よこいつを 病人って言った 奴 は!

誰だ よこいつを 病人って言った 奴 は出てこいよ!

ぶっころしてやるよ 私 が!

つーえーなまじ 病人病人 とか言ってまじで!

叩きのめされてるだけ じゃね えか!

そういう心構えじゃねえから私!

どうにか隙を突こうにも、両剣がグルングルン回って全然攻め時も無いし、カウンターすら難しい。恐らくだが、氣によって動作を補助しているのだろう。ところどころ物理法則の限界を突破した動きをしているんだもの。

とにかく、この回転コンボを止めるには敢えてむりやりにでも踏み込んで行くしかない。……逃げたらその隙をみて自刃しそうな気がするし。踏み込んだ後の攻め手がイマイチ思いつかないが、とりあえず出る。強いて言うならそのまま押し倒せれば良い。

 

「っラァァッ!」

「ッ!」

 

瞬間。全身に拘束されたような感覚。……五胡格闘術か!間合いを詰めようと踏み込んだ動きを利用して零距離にもっていく戦法。私がよく使うヤツだ。

 

ガッッ

 

そして視界が120度ほど回転した。

 

……でも、残念ながら私の元々の可動域を超えていない。背後に廻っている馬騰をそのまま後ろ手で掴み、

 

「一本ッ!」

「!?」

 

背負い投げの裏版をキめる。寝技には入らずに下がる。筋力の差が大きすぎると、寝技は逆に危険だからだ。

 

「…………」

「…………」

 

動きが止まって、睨み合う。

互いに格闘戦に入る際に武器を捨てている。……いや、私は他にも色々と持っているな。……勝ったでェ……これは。

 

「ゴホッッがハァッっ」

 

唐突に馬騰が膝から崩れ落ちた。

……肺病か!

 

「おい!医者呼んで来い!!」

「お、おう!」

 

六課長が反応する。アイツ足速いから医者も速く来れるかもな……。

って、馬騰さん自刃しようとしてるじゃないですかヤダーー!

 

「お、おちけつ!」

 

止めようと駆け寄ると、それを拒むように小刀を振り回す。だが、それも弱々しい。……ヤバい咳出てるからね。しかたないね。

このままでは死にかねん。とにかく、落ち着かせなければ。

 

「……っ!?ゴホッーーッゲホッ」

 

小刀は押さえ込んでおいて、余った腕を馬騰の背中に廻して抱きしめる。こういう手合いは抱きしめてしまうのが一番だ。背中ぽんぽんできるし。……ただ、甲冑のせいでゴツゴツしているのが難点だが。

 

 ……そうこうしているうちに落ちついてきた。そろそろ医者も来るだろう。今は息も穏やかd――

 

「オボロロロロロロッ」

 

……何か、肩から胸にかけて熱くて臭いものg

 

ブリュリュリュリュリュッ……ッ

 

「……ちょっと、大量の水……あぁ、できればお湯な。あと、デカめの盥持ってきてくれる?」

「了解しました」

 

……馬騰さんなんて毒飲んでんだよ………。




失禁馬超の親を出したならこうするしかないじゃない!
西涼散々すぎですね。
でも、馬騰さんギリギリ生き残ったので許してください。

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