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短めで出しています。
聆の出番は無いと言ったな。
あれは嘘だ。
「華琳様!地平の向こうに大量の兵が!」
「敵の増援か!?」
「劉備もそれほどまでの余裕は……そんなワケ………」
慌てて城壁の向こうを見れば、確かに地平の辺りに大量の煙が見える。それも百や二百の数じゃない。……もっと大規模な、それこそ蜀軍に匹敵する程の騎馬の群れだ。
「狼狽えるのは止しなさい!……桂花。新たな部隊の旗印を確認なさい」
「旗は……何あれ!?こんな大量の旗って……それに将軍格の旗が幾つも!どこかの連合軍なの!?」
「………まさか西の部族連合か……!?」
「んー……ちがいますねー………」
「あれは………!!」
「旗印は夏侯、郭、典、許、楽、于、李、紺碧の張、群青の華、黄金の文、花の張、そして袁。みんなお味方の旗ですねー」
「え、だって、春蘭たちは明日の朝までかかるって……それに、李って、真桜だよな?なんで向こうに居るんだ!?」
「こっそりと探しに行ってもらったのよ。………まあ、必要なかったみたいだけれど」
「うっしゃ!間に合うたみたいやな!」
「急いだ甲斐が有ったということか……」
「まったくや。おかげで関羽と殺れるでぇ〜!」
「逆に討ち取られぬようにな。気を引き締めて行くぞ」
「なんや淵ちゃんノリ悪いなぁ……。ま、ええわ。この戦いに勝ったら、一杯奢ったる」
「……その台詞は『死亡ふらぐ』と言うらしいぞ」
「季衣!速すぎるよー!」
「何言ってんの流琉?できるだけ急がないと!」
「突出してもダメ!兵がついて来られないよ」
「そっかー……みんな疲れちゃうもんね。じゃ、疲れないように気をつけながら全速前進だ!」
「えぇ〜〜〜!?」
「あ、あの上にいるの、隊長みたいなの!おーい、たいちょー!」
「いや、さすがにこの距離じゃ見えへんやろ。沙和って、伊達メガネで実はめっちゃ目ぇ良えとか?」
「ちがうよぉ!あの桃色な感じはどう見ても隊長です本当にありがとうございました」
「あー、確かに、このいやらしい感じは隊長やな。これだけの距離でこの存在感(性的な意味で)……さすが魏の種馬や。あ、これ、凪やったら城の様子透視できるんちゃう?」
「む、そうだな………。……む、覇気……華琳様はご健在なようだ。この何とも言えない感じは風様……。濁った濃い桃色……桂花様か。そしてそれらを包み込むように隊長の氣が……。ん?狂気……? 聆!きさま!呑んでいるなッ!?」
「聆ちゃん相変わらずなの〜」
「それにしても、こんな早う着くなら、先に言うでくれれば良えのに。みんないけずやで!」
「情報を伏せておけと言うのは、禀様と七乃殿の共通した指示だったのだ」
「もし周りから邪魔が入って遅れたら、華琳様たちの士気に関わるってー」
「ああ、なるほどなぁ。確かにかなりしんどかったもんなぁ……。そんで来ると思うとったのが来んかったらガタガタや」
「ごめんなのー」
「でも、その分すぐに見つかったときはメッチャ嬉しかったで!」
「急げ急げ!劉備の包囲から一刻も早く華琳様を助け出すのだ!!」
「ふん!妾の留守を守る大役を帯びながら劉備の侵入を許すなど、何たる失態!曹魏の王が気いて呆れるのじゃ」
「も〜お嬢様ったら批判だけは超一流なんですから〜」
「ふふん。当然じゃ。妾は超一流なのじゃ」
「蜀もなかなかの大軍だな。つまり武勲が立てやすいということか」
「呂布に関羽に張飛に趙雲!どの首級を取っても大手柄じゃんか!」
「はぁ……。大手柄は良いですけど みなさん、どういう作戦か覚えていますか?」
「バカにするなよ禀。ちゃんと覚えているそ。突進だ!」
「そして突撃だな」
「殲滅だぜ!」
「まぁ、だいたいそれでいいんですけど〜……。春蘭さんと華なんとかさんはそのまま直進で、猪々子さんは霞さん秋蘭さんと一緒に横から殴ってくださいね。それではみなさん、そろそろ所定の位置に」
「言われずとも分かっている!」
「腕が鳴るな」
「全員叩き斬ってやるぜ!」
「妾もそろそろ号令の準備をしなければの……ゴホンゴホン」
「なんで貴女が号令をかける気満々なんですか……」
「そうですよお嬢様。……全員に聞こえるようにしっかりと息を整えないと」
「七乃殿!?止めてくださいよ!」
「おおお……」
夏侯旗を先頭にして、全軍一丸となって猛進する様に、思わず感嘆の声が漏れる。
「ふふ……。これが我が曹魏の実力よ」
「華琳様ー。作戦はどうしますかー?」
「禀と七乃が上手くやってくれるだろうから、それに合わせて動くわ。こちらからも今一度押し返す。桂花」
「はっ。もう既に編成はできております」
「なら、頃合いを見て開門し、突撃の指示を。風は全体の動きを見失わないようになさい」
「わかりましたー。で、聆ちゃんはどうしますかー?鑑惺隊を有効に扱えるのは聆ちゃんだけなのですがー……」
「主無しでも動けるように訓練しているらしいのだけど……。そうね。聆を出しましょう。指揮だけだとよく釘を刺しておいて」
「御意にー」
軽く頷いて、本殿で休んでいる聆に使いを出す。
「……でも大丈夫なのか?聆の怪我」
「正直言ってあり得ないことなのだけれど、身体的には結構余裕みたいなのよ」
「『身体的には』?」
「なんというか……言ってることが良く分からないのよ」
「……聆ってもともとそんな感じじゃなかったっけ?」
むしろ最近が常識人風過ぎなような。
「そうだったかしら?」
「んー、最近は"お守り"していることが多いみたいですからねー。必然的に抑えに回っているのですよー」
「ああ、なるほど」
確かに、誰とは言わないけど、無茶しがちな娘とよく一緒に居る。
「うーん、そう言われればそうなのかしらね」
「程昱様!」
と、さっき使いに出た兵が戻って来た。手には何か木切れを持っている。
「どうされましたかー?」
「あの……鑑惺様の姿は無く、空の酒樽がいくつかと、この書簡が……」
「ふむふむ……『お酒を呑んだら何か大丈夫になりました。愉快な気分になってきたのでせっかくだから出撃します』……だそうですー」
「ちょ、早く下の桂花にこのことを伝えなさ
「開門完了!出撃!!」
…………遅かったか……」
「アハハハハハハハハ/ヽ/ヽ/ヽ/ヽ/ヽ/ヽ!!!」
城門をくぐる兵士たちの雄叫びに、けたたましく恐ろしい笑い声が混ざっていた。
「皆、戦闘準備は出来ているな!」
「おう!待ちくたびれたわ!」
「聞かれるまでもない。真の武人たる者、行住座臥何時如何なるときも万全の態勢であるべきだ」
「我らはこのまま一気に突撃を掛け、蜀軍の背後を叩く!霞、秋蘭、猪々子はその隙を突き、崩れた相手を根こそぎ打ち砕くのだ!」
「そっちは任せたぜ許っちー!」
「猪っちーも頑張ってねー!」
「我らが目指すはただ一つ!」
「蜀軍を打ち払い、我らが主をお救いする事だ!」
「べつに潰してしまっても構わないのでしょう?」
「少し痛い目に遭ってもらいましょうか」
「そうですね〜。死ぬ程痛い目に」
「ならば行くぞよ!総員、突撃なのじゃぁぁぁっ!!」
痛みを紛らわすために呑む
↓
酔っ払う
↓
バーサーカー