哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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正月なので第九です。
いやぁ、間に合って良かった!
初日の出を待ちながら書きました。


第九章一節その一

 最近華琳さんのようすがちょっとおかしいんだが。

というのも、どうも積極的に主城の守りを緩くしている……っていうか、ガバガバにしている。秋蘭、美羽、七乃、凪を袁家に縁のある豪族連中との折衝に出し、かゆうま、猪々子、沙和は北方の騎馬民族の牽制。季衣流琉と私はそれぞれ盗賊討伐にあっちへこっちへ。春蘭も南方……呉との国境辺りで妙な動きが有るとかなんとかで城を空けている。今城に居るのは……華琳、一刀、桂花、真桜と………えっと……禀、風、霞か。

 どう見ても誘ってます本当にありがとうございました。

まず第一に、これを全部同時期にやるのはおかしい。

メンバーも不安だらけである。

袁家関連の人選はまぁ分かる。戦力と知力と家名と抑えが効いたバランスの良いメンバーだ。

しかし、北方メンバーは明らかにおかしい。猪×2に、あまり接点の無い沙和。バランスが糞で、人間関係も沙和の孤立が明らかな糞塗れ隊だ。せめて沙和と私がチェンジだろう。

そして賊討伐に将軍格三人とか、過剰にも程が有る。よっぽど暇ならべつに構わないが、その辺の賊なら副将を遣いに出しても十二分に殲滅できるだろう。

南方にしてもそうだ。「何か妙な動きが有る」→「行け春蘭」は軽率なはずだ。もっと、敵の兵数はいくらかとか、南方のどの辺なのか、何が狙いかとか、具体的なものをある程度探ってからでないと、つまらない策に嵌められかねない。

 これでワザと空けているんじゃなかったら、魏の軍師ーズの頭の中には脳味噌じゃなくて甜麺醤が詰まっているに違いない。ワザと空けるにしても空けすぎだが。

そして確信した。今は嘗めプし過ぎて死にかけるイベントが起きる時期だろうと。もしそうなら……

 

「昨日、張遼隊が郭嘉様を伴い、西方の豪族の牽制に向かったとの情報が入ってまいりました」

 

やっぱりな……。これで城に残るのは華琳、一刀、桂花、真桜、風だけか……。前線で戦えるのは華琳真桜の二人。しかも真桜はそんなに強くないときた。

 

「KYOOOOOOOOOOOONG!!!!!」

「「KYOOOOOOOOOOOOONG!!!!!」」

「「「KYOOOOOOOOOOOOONG!!!!!」」」

ザッッ

 

私の声に反応して全軍が歩みを止める。

 

「一から六課はこの場で待機!主城の守りが薄くなっとる。有事にはいつでも支援できるように装備と心の準備しとけ。各方面の情報収集も強化せぇ。七課以降はこのまま賊の討伐に向かえ!あくまでも慎重に。被害が九割超えそうなとこには行かんで良え。……七課以降進軍再開!!」

「「FOOOOOOOOO!!!」」

「「「FOOOOOOOOO!!!」」」

ザッザッッザッザッッ

 

うーん、一応、蜀が攻めてこなかった場合の保険でいくらか討伐に向かわせたが、待機組に八課辺りまで入れといた方が良かったか……?

原作より魏の将が多い分、一隊当りの兵は少なくなる。つまり守りの兵が原作より少ないということだ。かなりギリギリの戦いだったはずだから、ほっとくともしかしたら死ぬかもしれない。誇りにかけてとかなんとかで、兵数に関係なく野戦を挑むイベントだったはずだ。

つまり、結構気合入れて守らなければならない。援軍が来るまで持ち堪えられればいいのだが……。

情報を掴み次第他の隊にも伝令を出すか……、いや、それはやり過ぎだろうか……楽勝してもダメだからな……。

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 「―――そう。曹操さんは近くの出城に移ったんだね」

「はい。そちらに手持ちの戦力を集中させているようです」

 

その知らせを聞いて、劉備はほっと胸をなでおろす。

 

「良かった……さすが曹操さん。これで街に住んでる人は籠城戦に巻き込まれずに済むね」

 

この少女にとってすれば、敵国の民も自国の民と変わらず大切なものだった。この度のいくさを、「攻城戦」ではなく「籠城戦」と表現したのにも、あるいはそれが現れているのかもしれない。

 

「あの曹操がそこまで考えているのかどうか……。単に少ない戦力を有効に使えるよう、場所を変えただけではないでしょうか?」

 

関羽は言葉の至るところにトゲを含ませてぼやく。彼女にしては珍しいほど後ろ向きな態度だ。

 

「もぅ〜。愛紗ちゃん、曹操さんのこと悪く言いすぎだよー」

「そうでしょうか?」

 

関羽としてはそうは思わない。初めてアレ(……)と出会ったときの、値踏みするような――それも性的な意味を多分に含んだ――目つきが頭から離れないせいだ。実際、見栄えのいい女を女官に取り立てては寝所に呼び……を繰り返しているとも聞く。

 

「けど、朱里ちゃん。本当に曹操さんと戦わなくちゃいけないの……?」

「曹操さんはこちらを攻めると既に予告していますから。現状、曹操さんに万全の状態で攻め込まれては、私たちの戦力では一分の勝ち目もありません」

「それに、向こうから隙を見せたら噛みついてこいと言われているのです」

 

諸葛亮の説明に、趙雲も加わる。張飛ならまだしも、普段は冷静な武将二人がこうも好戦的なのはもう一つの理由が有った。曹操配下にして、乱世の行く末に、自分たちと同じく新しい時代を望む盟友、聆……鑑惺のことだ。

その噂を耳にしたのは、蜀をたててすぐの時期だった。「鑑惺が、劉備との関係を疑われて、曹操によって過酷な拷問を受けた」と。聞けば、以前から逆さ吊りや、絶望的な戦場への派遣などの、虐待とも言えることが度々行われているという。他にも、望まぬ一騎討ちや、謹慎など、数え上げればキリがない。もちろん、噂でのことであり、デマや誇張が殆どなのは分かっているが、実際確認が取れたものも幾つも有った。そして、その殆どに共通の動機が挙げられている。

鑑惺の求心力への嫉妬と恐れ。

それはもちろん、蜀の将との関わりも含まれるのだろう。蜀の武将たちは、自分たちの行いによって彼女の立場が危うくなったことへの後悔と共に、卑猥で鬼畜で背も胸も器も小さい暗君から助け出さねばならないという使命感を持つに至った。

 

「その相手がわざわざ首筋を見せてくれているのですから、ここは誘いに乗ってやるべきかと」

「それって罠じゃないのかー?」

 

いつもとは逆に、情報に無頓着な張飛の方が消極的だったりする。

 

「少なくとも、主力の将が城を空けているのは間違いない。聆がこちらの動きに気付いて引き返しているようだが……。それでも相手の戦力はこちらの二割にも満たない」

「ふむ……さすが聆殿は早い……。ただ、他の将は、伝令が出たとしても、今からだと到着するのは何日も後になるでしょうな」

「虎の穴に入らなければ虎の子は手に入りません。けれど、そこを乗り越える事が出来れば、得られるものはとても大きいはずです」

「うん……」

 

戦いに幾何かの躊躇いを残しつつも、劉備は頷いた。

 

「呂布、お主も良いな?」

「…………?」

 

呂布は答えない。否定的な考えが有るからとか、含みのある性格だからとかではない。ぼーっとしていたからだ。

 

「劉備殿!あなたが天下を取った暁には、恋殿との約束も守っていただけるのでしょうな!」

 

沈黙する呂布に代わり、陳宮がやかましく騒ぐ。足して割るべき。

 

「うん。戦で飼い主の居なくなった動物の国を作るんだよね?でも……森に近い城を一つ欲しいって……本当にそれだけでいいの?」

「…………あと、ごはん」

「そのくらいの食料を買うお金なら、呂布さんにお支払いする給金でどうとでもなるはずですよ」

「…………」

「ならばねね達もこの戦に力を貸すのです!」

 

呂布は納得してコクンと頷いた。それに陳宮もつづく。

しかし、諸葛亮は知らなかったのだ。

呂布本人の食費が国家予算を傾けかねないほど莫大であることを。




何か怖いかって、情報操作が怖いです。
情報操作が怖いです。
大切なことなので二度言いました。

頑張れ負けるな華琳さん。
修造動画でも見て元気出してください。

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