哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

60 / 189
みうもん!GETだぜ!!
たーたたららららーたーたららーたーたーらーらーらー
たーたたららららーたったったらった
たとえ 火の中 水の中 草の中 森の中
土の中 雲の中 あのコのスカートの中(死ねっ)

右足首を傷めました。


第八章拠点フェイズ :【美羽様伝】袁分確保その二

 中庭の四阿へ、渡り廊下を急ぐ。

 

 衣装選択に思ったより時間がかかってしまった。いや、実際は十分もかかってないだろうが。自室に帰っていざクローゼット(?)を開けてみると茶の席に相応しいような服があまり無かったのだ。そして、右腕の怪我のせいで数少ない選択肢から大多数が消えた。いつもは鎧をギプス代わりにしているのだが、まさか篭手を着けて茶を飲むわけにもいくまい。必然的に腕が隠れるものを選ぶことになった。

 結局、軍服……いや、一刀の制服?をアレンジしたようなドレスに決着した。全体的に重厚なイメージに、所々フリルやレースがあしらわれていて、私好みだ。袖が大きく広がっていて腕も隠れる。陳留を離れる際に服屋からプレゼントされたものだった。こちらのデザイナーも捨てたものではない。

 

 角を曲がる。袁術の待つ四阿はすぐそこだ。ここからは走るのをやめて、ゆったりと早足。あくまで優雅に、だ。

ここで袁術に気に入られることが張勲を手に入れることに繋がり、張勲を手に入れることが黄蓋の死を防ぐことに繋がる。媚び売り過ぎぐらいで丁度良い。

 

「お待たせしてしまって申し訳ございません」

「うむ。妾を待たせるなど言語道断じゃ」

 

門での会話と言ってること違うし……。だがツッコミなどせずに耐えねばならない。

 

「服選びに少し手間取ってしまって……」

「ふん、いつも粗雑なものを着ているからそうなるのじゃ」

 

粗雑じゃなくて質実剛健だ。茶会に行くようなヒラヒラふわふわで戦えるか。……ごめんねそんな奴いっぱいいたね。

 

「……じゃが、まぁソレはよく似合っておるではないか」

「ふふ……ありがとうございます。でも、袁術様のお召し物には敵いませんわ」

 

急に褒められて動揺してしまった。口調がマダムみたいに……。

 

「ふふん、とーぜんじゃ♪最高級の服の中から七乃が選んだものじゃからの」

「? その方は……?」

 

知ってるけどな。

 

「七乃……張勲は妾の守役での。あ!忘れておった!留守番を任されておったのじゃ!!」

 

あぁ、張勲が旅費を稼ぎに行っている間に勝手に来たのか。

 

「心配しておられるでしょうか……こちらで遣いの者を出しましょうか?」

「うむ!早よ!早よぅ出してくりゃれ」

「あの……張勲殿の特徴などを……」

 

宿の場所は聞かない。どうせ覚えていないから。

 

「優しくて賢くておっぱいが大きいのじゃ!」

「……こんな感じですか?」

 

予想以上に意味を成さない袁術の言葉を無視し、記憶の中の張勲像を、数枚繋ぎ合わせた竹簡に描き写す。

ショートヘアで……垂れ目気味で……ブレザーみたいな服で……何気におっぱいが大きくて……足下どんなんだったか……まあ、多分ニーソだろ。筋肉痛のせいでところどころ線が震えたが、なかなか良い出来。原画師にでもなろうか。

 

「おおっ♪おぬしなかなかの腕じゃの。じゃが……七乃のおっぱいはもうちぃと大きいぞよ?」

「そんなにですか……?」

 

うーん、 Dカップ寄りのCってイメージなんだが……。

 

「まぁ、だいたいそんな感じでよい。早よ探してたも」

「了解しました。……そこの」

「はっ」

「警備兵にこれを。賓客のお連れ様や。無礼の無いように」

「御意」

 

絵の端に細かい指示を書き込んで近くの女官に手渡した。人海戦術で何とか見つかるだろう。……警戒して逃げられるかもしれんが。

 

 

 「それにしても遅いのー。曹操は」

 

遣いを出してからしばらくして。張勲は未だ見つからず、華琳もまだ来ない。一応、「四半刻も待たせない」との言伝が来たが袁術のテンションは目に見えて下がっている。一応会話(四分の三以上は七乃の話題)は弾んでいたのだが、段々と反応が悪くなってきた。

 

「あと少ししたらいらっしゃるでしょうけど……」

「退屈じゃの〜。何か余興はないのかや?」

「余興……とは少し違いますが。……袁術様は蜂蜜が大層お好きだとか」

「あるのかや!?蜂蜜が!」

「はい。少し、味を見てもらいたいのです」

「少しと言わずいくらでもみてやるのじゃ!」

「では……」

 

袖から小壺を取り出す。中身はもちろん蜂蜜。最近の金欠の原因だ。

実は袁術のために養蜂場の経営を始めた。故郷の村に何度も手紙を書いて頼み込み、巣箱のアイデアと資金をなんとか捻り出して、途中スズメバチの襲撃を受けたりしつつ、やっと収穫まで漕ぎ着けた。

これも袁術に媚びる策の一環だ。いくら利によって雁字搦めにしても、袁術が一言「魏はつまらん」と言ってしまえば張勲も去ってしまう。とりあえず魏にいれば蜂蜜を安定して入手できるようにしようと考えたわけだ。

 

「……ぺろ……ちゅっ……………ぺろ……」

「この度 魏では蜜蜂の家畜化に成功いたしまして……」

「……ちゅ………ぺろ………」

「これにより、かなり安定して蜂蜜を生産することが出来るようになり、価格も低下するだろうと」

「………ンッンッンッ……、ぷはぁっ!……ん?何か言ったかや?」

「ナニモイッテナイデス」

「それにしてもこの蜂蜜はなかなかの美味じゃのぉ……。もっとないのかや?」

「自室にあと少し」

 

このペースで食べられたらちょっと厳しいものがあるな……。養蜂の規模は大きくしていく予定だが、少しは自重してもらうことになりそうだ。

 

「早よう持ってまいr

「お〜〜〜じょ〜〜〜〜ぉ〜〜さ〜〜ま〜〜〜〜!!!!」

「七乃!遅かったの」

「『遅かったの』じゃありませんよもー。留守番しておいてくださいって言ってたじゃないですかー。すっごく心配したんですよ?」

「むぅ……悪かったのじゃ。(それよりも七乃よ)」

「(なんですか美羽様)」

「(おかげで曹操の兵を掠め取る計画が一歩も二歩も前進したのじゃ)」

「(え、お嬢様にそんなことできるんですか)」

「(とーぜんじゃ!曹操との面会の算段も立ったし、それに、見よ!たった一日で、共に茶を飲むほどに籠絡したのじゃ)」

「(お茶会くらい初対面でも社交辞令的に開きますし……。それに何考えてるのか一番分からない人じゃないですかぁ)」

「どうかしましたか?」

 

ヒソヒソ話長すぎだぞ?あと、張勲のおっぱいは生で見ると予想以上に大きい。

 

「なんでもないのじゃ」

「なんでもないですー」

「はぁ、……そうですか。まぁ、曹操様がいらっしゃるまで張勲殿も、いかがですか?」

「あ、はい、いただきます」

「……茶器を一組。茶菓子も追加せい」

「はっ」

「あともう一組用意してくれるかしら?」

「あ、華琳さん」

「遅かったのぉ、曹操」

 

あ、華琳の怒気が増した。

 

「ええ。まさかあの袁術が訪ねて来るなんて思いもしなかったものだから」

「用意の悪いやつじゃ」

 

煽りが酷いなぁ。

 

「……で、用件を聞きましょうか」

「はい。官渡での戦の後、孫策に裏切られたのはご存知ですよね?結果私たちは南陽……呉の地を追われ、現在は戻る家もございません。できるならば、この地であn

「そちを妾の配下に加えてやっても良いぞ」

「は?」

「ちょっ」

「美羽様!?」

 

おい今イケる流れだったろうが!?

 

「七乃の話は長いのじゃ。曹操よ。国の長には良い家柄の者が立つ方が良いであろう。妾も今は兵を欲しておるしの。じゃから妾の軍門に下るが良い」

「………………………」

 

激おこプンプン丸カム着火インフェルノ?

M(マジで) K(首撥ね) 5(五秒前)?

 

「えーと、袁術様はつまるところ、兵が欲しいんですよね?」

「まあ、そういうことになるのぉ」

「ならば、魏国民になられるのはいかがでしょうか?」

「……?」

「魏の兵は魏の民のために鉾を振るいます。魏の臣もまた魏の民のために策を練ります。王は民のためにその二者の手綱を。……最も利のあるのは兵、臣、王、民の誰でしょうか?」

 

実際は税とか兵役とかあるが。バカだから気付くまい。

 

「うむ。妾は魏の民になるぞよ。良いな七乃」

 

よっしゃバカだ。張勲も分を弁えたところに落ち着いてほっとしているようだ。

 

「わかりました。でも、お仕事どうしましょうか」

 

期待するような目でちらっとこちらを見る。好意的だと見たら調子に乗りやがって……。まあ、応えてやるんだが。

 

「華琳さん。張勲殿を軍師に迎えたらどないやろか」

「……聆、ちょっとこっち来なさい」

 

華琳が席をたち、四阿から少し離れたところに私を引っ張る。

 

「(何なの貴女。貴女は袁家の臣下なの!?今までそんなにめかしこんでたことなんて一度も無かったじゃない。少し化粧までしてるし……。それにあの態度は何?袁術の顔色ばかり窺って……!)」

「(袁術に媚びるんは、媚びんかったら機嫌を損ねる器の小さい者やと判断したからや。で、袁術の機嫌を取るんは張勲を手に入れるための策なんや)」

「(張勲?官渡での袁家の失策を見たでしょう?無能だわ)」

「(いや、あれは袁術袁紹の無茶な要求のせいであって、張勲の才を示す結果とちゃう。冷静に、張勲の功績を鑑みた結果、アレはかなりの傑物やった)」

「(……続けて)」

「(まず、袁術の兵数は元々驚くようなものでもなかった。正統やないとはいえ、年長の袁紹の方に袁家の財が流れとったからな。それを、混乱に乗じて南陽入り。孫堅をだまくらかして配下に置いて勢力拡大。孫家の反発が強くなってきたら巧みに配置換えと無理な行軍をさせて勢力を押さえて飼い殺し。あの英傑孫策、宿将黄蓋、軍師周瑜を押さえて、や。春蘭さんが官渡で追撃をやめる、っていう異常がなかったら、孫策は未だに袁術の配下やったやろ。しかも、袁術の話からするに、張勲はその間の軍事、内政、外交の全てを担当しとったらしい。王の代理としての最終確認やのぉて、実際に現場に出とった。……袁術の我儘を最大限叶えて、袁術の世話をしながら)」

「(なにそれ欲しい)」

「(欲しいやろ?そろそろバカやないのんを紹介せな殺されかねん思て本気出したんや。裏切りの心配も低い。張勲には袁術が全てみたいやから、袁術の安全が最優先やろ。私らが強い限り刃向かっては来ん)」

「(一方でバカな袁術を手懐けるのは貴女の役目ってことね)」

「(不本意ながら)」

「……袁術、張勲。貴女たちを魏に招き入れることに決めたわ。張勲は次の軍議で皆に紹介するからそのつもりで。私はこれから住居や報償の調整をしてくるから。しばらく好きにしていてちょうだい」

 

そう言い残して、華琳は嬉しそうに去っていった。

 

「落ち着きのないやつじゃのう」

「鑑惺さん、……目配せしといて なんですけど、どうしてそんなに良くしてくれるんですか?」

「一重に温い世界のために」

「(美羽様、この人ヤバいですよ。悪い意味で)」

「(蜂蜜をくれるから良い奴なのじゃ)」

 

 

 かくして、美羽、七乃が魏の一員となった。張勲の有能さに舞い上がった華琳が美羽のバカさ加減に叩きのめされるのにそう時間はかからなかったが、それはまた別の機会に。




バカと腹黒入荷。
七乃さんは恋姫唯一の真正の悪人らしいですね。
この作品では明るく楽しい馬鹿騒ぎをしてもらいますが、
作者的胸熱(胸糞とも言う)は孫策に見逃してもらえなかった場合のリョナ展開です。
疲れてんな……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。