哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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霞姉の扱いが難しいです。
悪・即・斬な性格なので、主人公との相性ががががが……。

あと今回は誤字多そう怖い。
一旦寝てから見直します。


第八章一節その一

 「袁術が劉備を攻めて徐州を総取りすることを嫌った袁紹が自らも徐州攻めを敢行。当初の予定とはずれ、対応としては後の大戦に向けた国力、軍事力の強化が決定されました。具体的な方策は明日の朝議にて決定されるようです」

 

私が逆さ吊りにされている間に開かれた軍師中心の軍議の内容を、天井に跪いた三課長が伝える。ちなみに床は夕焼け空。もう三刻ほど吊るされている。

 

「ふん。富国強兵としたところで、鑑惺隊に出来ることは特に無いし、変わったこと命令されることもないやろ。せいぜい、調練と討伐に気合入れるように言われる程度やろな……。下がって良し」

「冷静なんですね……吊るされていても……」

「騒いだってしゃーないしなぁ。頭に血ぃ上らん体質みたいやし」

 

強いて言えば、長袖系の服を剥ぎ取られたので少し肌寒い。始めの方は縄が喰い込んで痒かったが、それも慣れた。

 

「それとも何や?顔真っ赤にしてハァハァ言っといて欲しかったか?」

「い、いえ!そういうわけではっ!」

 

焦ったように否定する三課長の鼻からツツッと赤い雫がこぼれた。

 

「お前が頭に血ぃ上らせてどないすんじゃい」

「し、失礼します」

 

三課長は走って去っていく。洗い場ではなく、厠の方へ。初めは不気味な奴かと思っていたが、どうやらそれだけではなく、変態でもあるらしい。他の課長からのタレコミによれば、私をおかずにしているとのこと。

三課長の失脚を狙った陰謀かと思ったが、報告の間、頬を染めてモジモジしていたことと、その前から吊るされている私を物陰から凝視していたことからして、本当のことらしい。好かれるのは構わないが変態は勘弁だ。これからも全力でスルーしていく所存である。

 

「でも有能なんは有能なんよなぁ……」

 

呟いて、欠伸を一つ。

 

「……あまり反省できていないようね」

「元気だなぁ……」

 

本殿から華琳と一刀がやってきた。

 

「ムシャクシャしてやった。誰でも良かった。反省はしている。後悔はしていない」

「それは反省してないのと同じじゃないか?」

「えー、でも素直に謝るなんかはなっから期待しとらんやろ?」

「はぁ……ホント、仕方のない娘ね……。いいわ。一刀、縄を解いてあげなさい」

「おう。じゃあ、解くぞ」

「おー、任せたー」

 

本来なら関節外しで自力脱出できるが、それをすると華琳の神経に追い打ちかけそうなので大人しく一刀のお世話になる。

まず手の縄が外され、倒立のような形で地面に手をつく。次に足を外して終了だ。反動を使ってすくっと立ち上がったものの……

 

「あれっ?うわっ」

「ちょ、聆!?」

 

足首が痺れて力が入らずに、そのまま倒れそうになる。それを一刀が支えてくれた。さすが女の子のピンチとなると行動が素早い。そしてラッキースケべも欠かさない。

 

「大丈夫か?」

「ちょっと足痺れたっぽい」

「あぁ、衰弱してたとかじゃないんだな」

「あと……支えてくれたんは嬉しいけど……そう鷲掴みにされたらちょい痛いかな……」

「え!?ご、ごめん!!」

 

一刀は慌てて、多分、恐らく無意識且つ事故的に掴んでいた胸から手を離す。

 

「ごめん!気がつかなくて……!」

「くくっ……そんなおっぱい好きなんやったら頼んだら触らせたるのに。あ、でも優しくやで?」

「ちょ、何言ってんだ聆!それは本当かっ!?いや、違う そうじゃなくてえっと……っ」

 

予想以上にテンパっている。軽く流してくれると思ったんだが……。元々ちょっと動転してるとこだったからか?

 

「……一刀、これから忙しいのだからさっさと持ち場に戻りなさい。聆は桂花から今回の軍議の説明を受けて来て」

「うぇい」

「分かったけど……急にどうしたんだ?」

「どうもしないわよ」

 

華琳はツンとそっぽを向いて行ってしまった。

おっぱい嫉妬ネタごちそうさまでーっす!

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 それから数日後の夜中。

いつも通り酒を呑みつつ勉強に励んでいる私の所に、劉備陣営より使者有り、との報告が入った。そして、少し遅れて集合命令がかかる。関羽来たか……。つまりこの後、華琳による第一回劉備ぶっ叩き大会及び舐めプの魏ルート黄金パターンが展開されるということだ。

正直やる事ないし、見ていて気持ちいいイベントでもない。

八方塞がりの劉備を言葉攻めするのがメインなんだもの。私はソフトSなのでガチで相手の精神抉る系はちょっとNGなのだ。それに完全に敵ならまだしも、劉備は最終的に必要となる。ザマァwwwと、笑えることでもない。

よし。酔っていたことにして無視しよう。何もできないし、私が行くと変に頼られるかもしれない。

そう思って本に再び目を落としたとき、扉が叩かれ、伝令が大声で至急玉座の間に向かうよう催促した。部屋に入ろうとする気配も有る。

 

「はいはい……。行きますよっと……」

 

重い腰を上げ、のそのそと鎧を着込んだ。

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 「聆にしては遅かったわね」

「ごめんな。酒入って寝とったんや」

 

私がついた頃には大体の重役がそれぞれの持ち場へついていた。逆に言えばついていない奴もまだいたので私が特別足を引っ張ったわけではない。

しばらくして、ようやく全ての居るべき人物が居るべき所に落ち着いた。

 

「……全員揃ったようね。急に集まってもらったのは、他でもないわ。秋蘭」

「先程、早馬で徐州から国境を越える許可を受けに来た輩がいる」

「……何やて?」

「入りなさい」

「……は」

「な………」

「何やて……!」

「関羽……!?」

 

関羽の登場に、一同がそれぞれ驚きの声を漏らす。

 

「見覚えのある者もいるでしょうけど、一応、名を名乗ってもらいましょうか」

「我が名は関雲長。徐州を治める劉玄徳が一の家臣にして、その大業を支える者」

「へぇ。劉備さんは徐州を離れると……?」

 

議論のショートカットのために無理のない範囲で誘導する。

 

「そうだ。袁紹、袁術から逃れる為、曹操殿の領の通行許可をいただければと。益州へと向かう所存だ」

 

私の質問を受け、愛紗は全体に状況の大枠を説明した。

 

「なんと無謀な……」

「けど、袁紹や袁術と正面からぶつかるよりは、ウチはマシやと思うで」

「虫の良いことを言うヤツだ。別にこちらは劉備と同盟を組んでなどいないだろう」

「かゆうまェ……意外と辛辣やな」

「まあ、シャクだけど華雄の言う通りだわ。それに正直、関羽もこの案は納得していないようでね……そんな相手に返事をする気にはなれないのよ」

「…………」

 

沈黙は肯定。乗り気じゃないのは、魏ルートでの関羽の曹操への好感度はどういう訳かはじめから最低ランクだからだろうか。

 

「ほんならなんで、こんな決死の使いを買って出たんや?」

「我が主、桃香様の願いを叶えられるのが、私だけだったからだ。それに我々が生き残る可能性としては、これが最も高い選択でもあった」

「……主のためやて。どっかの誰かさんみたいなこと言うやん」

 

霞が春蘭を見やりながらニヤニヤとした。

 

「ま、待て!お前たち皆だいたいそんなものだろう!」

「納得してなくても主ためなら、って言うとこが春蘭さんっぽいわ」

「私はこんなに愚直ではないぞ!」

「…………」

「…………」

「…………」

「………?」

「誰か何とか言えよ!聆、その『は?』って表情やめろ!」

「春蘭、静かになさい」

「うぅ……、華琳様………」

 

しゅんと大人しくなる。愚直の塊じゃないか。

 

「フフ……。まあ、だからこの件について劉備の元へ向かおうと思うのだけれど……。誰か、付いてきてくれる娘はいるかしら?」

 

次々と手が挙がり、結局皆行く事になった。私もさすがに一人で残る気にはなれなかった。

ついに説教パートか……気が重いなぁ………。




ここを……ここを抜ければ美羽様が!!!!

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