女の子同士のスキンシップは通常の友人でも、
抱きつきあったり、多少激しめなんですが、
キスしてたので間違いないです。
部活帰りっぽかったです。
だからなんだっていう。
「ヤァっ!!」
「踏み込み甘い」
「せっ!!」
「引きにも気ぃつけぇ」
「ハッッ!」
「今のは良え」
「っラアッっ!」
「ガラ空き」
ドボッッ
「ッグぅ……」
恒例になってきた聆との鍛錬。筋トレ、素振り、形ときて、仕上げに行われる数分にも及ぶ打ち合い……打ち合いと言っても、完全にペースを握られて、故意に長引かされていたのだが。その最後。腹に前蹴りがめり込み、敢え無く沈められた。
「うーん。隊長は正攻法にはとことん強いけどちょっとひねた技にはとたんにグラつくなぁ……」
「いや……グラつかせる技なんだから仕方ないだろ?」
長い長い打ち合いの中で、聆は何種類もの流派を使った。真正面から攻めるもの、プレッシャーをかけて動きを制限するもの、攻撃動作即ち回避のような、無敵にすら見えるもの。最後は体術の中に剣術を組み込んだものだ。何度も勝負が付きそうになったけど、その度に聆がわざと甘い手を打って全然終わらせてくれなかった。
「はぁ……。やからってホイホイ殺られたらアカンやろ。……どんな動作にも兆候って有るから、それを見極める訓練が要るなぁ……」
「どんな?」
「ひたすら技受けるんが一番ちゃう?」
「うわぁ……明日が大変そうだぞ……」
筋肉痛が……。って言うより、打撲とか?
「いや、もう今日はええで。結構疲れとるやろ」
「あぁ……。今日は働きっぱなしだったからなぁ……ふぅ」
朝の警邏に始まり、書類整理、昼からは調練。そして夕方からの鍛錬だ。もうすっかり日も落ちてしまって、打ち合いは松明の明かりでやっていた。
「ほれっ」
「ん?」
聆が何か投げて寄越す。……これは……?
「『貸し切り』……?大浴場の貸し切りの札じゃないか。なんでこんなもの……?」
この時代、風呂は大変に貴重なもので、薪代も馬鹿にならない。大浴場の貸し切りなんてそれこそ国の超高官でもないと有り得ない。
「褒美やて」
「褒美?何の?」
「……はぁ。気付いとらんかもしれんけど、結構働いとんやで?」
うーん、そう言われれば、曲がりなりにも軍の指揮したり、警備計画練ったり、実際に警邏に出たりしてるもんな。あれ?俺って意外と働き者じゃん。ただ、それにしても……。
「贅沢過ぎないか?」
「……トップから十の指に入る立場ってこと、忘れとらん?」
「あ、そうか……そう言えば一応指揮官なんだっけ」
「『一応』とか……」
「あ、いや!そうじゃなくて!!」
「良え良え。じゃ、風呂、半刻後に予約してあるから」
「ああ。ありがとな!」
聆は俺の声を背中で受け、ひらひらと手を振って応えた。……聆もちょっと疲れてるのか?向こうから鍛錬を切り上げるなんて初めてだ。
「それにしても、貸し切りか〜。のびのび入れて良さそうだな」
部下の野朗共とわいわい話をしながらってのも良いけど、一人であの広い風呂でゆっくりってのは格別に違いない。
「……ん?女湯?」
札の端に、小さく「女」と書かれていた。
「まあ、貸し切りだし、一緒か」
男湯の都合がつかなかったのか?まあ、実際、文官にしても武官にしても、男性職員の方が意外と多いしな。
―――――――――――――――――――――――――――
「〜っくぅぅぅぁぁ〜〜〜〜」
湯船の縁に頭を乗っけて大の字に全身の力を抜く。疲れと凝りが溶けて和らいでいくのを感じる。やっぱり日本人には風呂が必要だ。こっちの世界じゃ、風呂は毎日入れるようなものじゃない。それを貸し切りにして誰にも気兼ねなく寛げるってのは相当な贅沢なわけで……。
「特にこんなデカい風呂を自由にできるなんて、日本でもそう無いぞ……。あーー、いつまででも入っていたい気分だぁ」
「残念やけどあと一刻で清掃開始や」
んーー、残念だけど、あと一刻もあれば十分すぎるかな。二時間だろ?……………ん?
「えっ?」
「隣、失礼するで」
隣には聆がいて……。気持ち良さそうに目を閉じ、身体を弛緩させている。普段、ほとんど肌が見えないような服を着てるから気付かなかったけど……白くて柔らかそうな……じゃなくて!!
「いつの間に!!?」
「掛湯まできっちりやってから入ったんやけど……隊長、鈍過ぎん?」
え、全然音しなかったぞ?
「やっぱ風呂は良えなぁ……。行水とはエラい違いや」
呟いて、いつもの瓢箪の酒を煽る。美しいラインを描く首筋がコクコクと……じゃなくて!!
「どうして聆がここに?」
「ここ、私の貸し切りやから」
「え?」
「春蘭さんの義眼作った褒美にな。今回入れて十回貸し切りにできるんや」
……俺の働きじゃなかったのか……。おかしいとは思ったんだよ。情けない話だけど。
「……じゃあ、俺はどうしてここに……?」
「隊長もなんぞ最近忙しそうやったし?まぁ、私の貸し切りの風呂に私が誰呼んでも構わんやろ」
「いや、でも俺、男だぞ?」
「うん?そうやな」
何を当たり前のこと言っているんだ?とでも言いたげな様子で返された。それ以上何も言えなくて……。うう、会話しとかないと余計に意識してしまう。
「んぅ〜〜っっ」
知ってか知らずか、聆はぐ〜〜っと大きく伸びをした。女性特有のたおやかな曲線に目が奪われる。だめだ。釘付けになって目を逸らせられない。
「隊長」
「へっ!?」
思わず声が裏返った。
「肩でも揉んでくれや」
「えっ」
いやいやいやいやだめだだめだだめだだめだ。これだけ見せつけられた上に触れてしまったりしたら……!
「た、隊長に肩を揉ませるなんて、な、何を考えているんだっ!」
「何をいまさら……。それに、私って隊長の師匠にあたるわけやん?肩ぐらい揉んでくれてもええんちゃうのん?怪我のせいでちょっと大人しぃしとる内に結構鈍ってもたみたいでなぁ」
「……」
何も言えない。俺が言い返さないのを見て、聆は後ろ髪を前に廻してこっちに背中を向けた。しなやかで無駄なく引き締まり、透き通るような純白。それは聆の躰全体に言えることで、研き抜かれた日本刀のような美しさで……。その分、傷跡が痛々しい。
「何やっとん?早よぉ始めてぇな」
「お、おぉ……」
聆の肩に手を乗せ、指の腹でゆっくりと揉み始める。確かに凝っているけど、それ以上に、滑らかな肌と、女の子らしい柔らかさに理性がグラグラと揺らされてしまう。そして何より……。
「ん……はァ……ッ」
時折背中をのけぞらせ、甘い声をもらす。その度にこっちまでビクリと緊張してしまう。
「隊長……上手…ッ過ぎぃ……」
少しずつ朱が注し始めた躰。肩越しに見える、柔らかそうな膨らみと表情に、思わず身震いする。これ以上は本当にマズい……。
「そ、そろそろ上がったほうがいいんじゃないかな〜、なんて……」
「いーや。まだまだや……」
身体をこっちに預けて、俺の肩に頭を乗せた。甘い香りと感触が心のブレーキをガリガリと削り落としてしまう。
「こんな体勢じゃ、上手く肩、揉めないよ……」
「他のトコ揉んだらええやん」
そう言って、聆は俺の頬に啄むような軽いキスをした。
「自制……出来ないぞ?」
「必要ない」
二回目のキス。今度は口に。俺は熱く甘い衝動の中に理性を手放した。
うわーーーーーーーーーーー
ハズカシーーーーーー
酔わないと書いてられねーーーー