「んー、今日も街は平和だなぁ〜」
「平和すぎてウチには退屈やわぁ〜」
「いざという時はお役に立つでありますの!」
「審判ですの!」
「どうした?聆」
「ちょっとした気の迷いや。気にすんな」
「……まあ、何かあったときは頼りにするけど。あまり目立ちすぎないように注意してくれよ?」
「はいでありますの」
「任せろ」
本当に分かってるのかどうか少し不安だけど……っていうか、聆は現在進行形で目立ちまくってるけど、そう言う努力ってことで、部下は信じてやらないと。
「なんやこう……面白いことあれへんかなぁ」
「面白いって例えばどんな?」
「ならず者が隊長を知らずに『おうおうおう、お兄ちゃん、俺に肩ぶつけといて挨拶もなしかよ』みたいな〜」
「うん?ならず者は俺っ娘妹キャラなのか?」
「……」
「……」
「……」
「さすがやでぇ」
あ、何かやっちゃった?
「おい、どうした?」
「隊長が何を言っているのかは分かりませんが、何か邪悪なものを感じました」
「なんやウチ、ゾワッてしたわぁ」
「沙和の中で描かれてた熱血青春活劇がなぜか一瞬で三文官能小説に塗り替えられちゃったの……」
「いやらしい!さすが変態長いやらしい!!」
「いや、何も悪いこと言ってないだろ!そもそも沙和はどういうのを想像してたんだ?」
「がたいの良い若い男が絡んでくるの」
「絡まれても困るんだけど。で、その時はどうするんだ?」
「決まってるの。徹底的に自分が虫以下の存在だってことを分からせた上に、くっくっくっなの♪」
「『アッーーーーーー♂』?」
「聆やめろ!やめてくれァ!!」
ホモキャラまで付加されたら俺どうなっちまうんだ!?
「え?絡まれた代わりに変態長も(性的な意味で)絡み返すんとちゃうのん?」
「違うのー!新入隊員の勧誘なのーー!!」
助かった……沙和が否定してくれた。けど……。
「いや、俺が絡まれるところから始まる勧誘はどうかと思うぞ。凪、お前もどうにか言ってくれ」
「た……隊長は………そういうのもイケるのですか…………?」
「ちょ、そんなわけないだろっ!?おい!聆が余計なこと言うから……っ!」
「でも同性イケるようになればな?可愛い男の娘が現れても躊躇なく(性的な意味で)喰えるやん?……そこんとこ、感謝☆」
「だーかーらー!!そういうんじやなくて、熱血な勧誘なの!よおし、意地でもガラの悪そうな奴を隊長にぶつけさせて流れるように勧誘に持ち込んでやるの!」
「なんや今日は随分とトバしよるなー。で、止めなくてええのん?」
「あ、まずいな」
慌てて沙和の方を見ると、走り出そうとする沙和を既に凪が首根っこをひっつかんで止めていた。
「ナイス凪!」
「隊長、それはどういう意味ですか?」
「ナイスってのは天の言葉で、男の同性愛を好む女のことやで?」
「な……っ!?隊長、さっきのは決して期待とかそういうのではなく、純粋な疑問としてですね、あの……」
「分かってるさ!聆、デタラメを言うんじゃない!凪、ナイスってのはやるじゃないか、って意味だよ」
「……よかった」
「凪ちゃん、はーなーしーてーなーのー!」
「……だめだ」
「やーぁのー、さーがーすーのー!」
「やめとけ。そのノリでいったら確実に面倒起こすやろが」
「沙和、募集は定期的にやってるだろ。今は巡回中なんだからまた今度にしようぜ」
「ふぇーいなの……」
沙和も諦めたのか、おとなしくなる。それを見て、凪も沙和を地面に下ろした。
「それにしても、ほんま暇やなぁ……」
「年頃の女の子としては、やっぱり刺激が欲しいの〜」
「夜中に隊長の部屋に突撃でもしたら十分に刺激貰えるやろ」
「そういうのじゃないの〜」
「あーあ、こんだけ平和やったら、巡回の必要無いんちゃう?ウチはこの時間を発明に回したいんやけどなぁ」
「私も色々とやりたいこと有るわぁ」
「あれ、聆は巡回に乗り気みたいなこと言ってなかった?」
「本音と建前」
「あのなぁ、街が平和なのは、俺達がこうして目を光らせてるからなんだぞ」
「ま、分からんでもないんやけどな。それにしても暇やなぁ……」
「そんな、毎日刺激的なことがあったら疲れるよ」
「そうかなぁ。沙和は楽しいと思うけどなー」
そんなことを言いながら、いつものように街を歩いていく。活気のある街並みはいつ見ても楽しい。こうして歩いていることは、確かに無駄なところもあるのかもしれないけど、日々の積み重ねってやっぱり大切だと思うしね。
この拠点フェイズは短いと思っていたのですが、
色々と付け足しているうちにドンドン長くなってしまったのです。