哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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相撲を見てるとドキドキしますね。
栃煌山と安美錦が好きです。


第六章一節その三〜戦闘パート〜二節その一

 「汜水関の敵の総大将は華雄という将。こちらの先鋒は公孫賛と劉備。我が軍は戦闘準備して待機しておく流れとなると思われます。また、曹操様は劉備及び公孫賛に恩を売っておくお考えのようで、多くの情報を両陣営へと流すもようです」

「なかなか暇なコトになりそうやな……。で、各課長の見学の感想はどんなもんや」

「はい。まず、袁術陣営ですが、士気の低い袁術臣下連中と練度の高い孫家連中との間で相当の確執が見受けられました。逆に、劉備陣営は、練度はその辺の義勇軍並みでは有るが活気が有り、公孫賛陣営と一つの軍と見ても差し支えが無いほどに連携しているとのこと。袁紹陣営は規模こそ最大なれどそれだけの人数をまとめる将が不足しているように感じられたと。次に、西涼連合ですが……」

「なんや、早よ言え」

「『馬糞の臭いがした。早く滅びちまえ』……と」

「第何課やそれは」

「六課です」

「そいつに『お前サイコーだぜ』って伝えとけ。じゃあ下がれ。ゆっくりしとってええぞ」

「はっ」

 

劉備んとこってそんなに練度低いのか……。まあ、あそこは伝説級の武将が十何人も付くからそのくらいでも構わないのかもしれない。

 

「……なんや聆、あんた怖いなぁ」

「悪の親玉臭がぷんぷんするのー……」

「馬糞臭ぷんぷんの西涼よりマシやん?」

「聆、それを西涼の連中に聞かれたら戦争が起こりかねない……」

「多分勝つから大丈夫」

「うわぁ……」

「……」

「聆は遠いトコロへ行ってしまったようだ……」

「冗談って分かれや」

「于禁様!」

「どうしたのー?」

 

伝令が駆け込んできた。私達の中で最も前方に展開する于禁隊の者だ。……ということは、前線で何かあったのだろう。

 

「袁術陣営が突出して軍を動かしています!」

「先鋒は誰や」

「孫の旗ですので、おそらく孫策かと」

「分かった。凪、お前が華琳さんトコに行ってくれ。一番速いやろ」

「言われなくてもそうするつもりだ」

 

駆け出した凪はすぐに見えなくなった。速すぎるだろ。本当に人間か?いや。乙女武将だ。

それにしても袁術……。可愛いけど上司には絶対に欲しくない。張勲もこういう無茶を止めておけばあるいは袁術も終盤まで良い位置に居られたかもしれないのに。そういえば張勲って袁術と二人で居られたらそれでOKっていうスタンスだったっけ。なら仕方ないね。

 

 

 程無くして孫策が汜水関攻略に失敗したと連絡がきた。今度こそ正式に劉備と公孫賛が攻めるようだ。巨大な壁たる汜水関の足元に、両陣営が助け合うような動きを取りつつ展開していく。実際、この二軍は相性が良い。将が不足している公孫賛に劉備側の英雄共。練度が低く機動力に問題が有る劉備を公孫賛の騎馬がフォローする。あとはかゆうまを引き摺り出してしまえば終了だ。

 

「あれが汜水関かぁ……でかいな」

 

軍議から戻ってきた一刀がひどく暢気なことを言っているがそれも仕方がない。

 

「……始まりましたね。でも……本当に見ているだけでいいのでしょうか?」

「いいんだってさ。指示あるまで戦闘態勢のまま待機ってのが、華琳の命令だしな」

「むしろ勝手に動いたらアカンやろ。私らは指示が有ったらすぐに動けるように備えとけばええ」

「まあ、この関やったらちゃんとウチらが三倍の兵力みたいやし、大丈夫ちゃうの?」

「あれ?砦から兵士がでてきたの……」

 

かゆうま自重しろ。

 

「……聆、こういう時って、守る側は籠城するもんじゃないの?」

「補給は問題無し、援軍も期待できる、出たところで勝ち目無し。籠城せん理由はほぼ無い」

「……敵、出てきたぞ?」

「さっき劉備陣営が何ぞ言いよったし、挑発に乗ったとかちゃう?」

「守備隊の将ってどんだけアホやねん……」

 

本当に、賈駆は何でコイツを守将にしたんだ。

 

「何だかな……。あ、一騎打ちだ。ありゃ、誰だ」

「きれいな黒髪なのー」

「劉備のところの将軍で、関羽というそうだ」

 

いつの間にかやって来ていた秋蘭が答えた。

 

「あれが関羽…………」

 

一刀が感慨深げにつぶやく。そうです。関羽さんです。なぜか一刀さんの正妻面して多方面に嫉妬しまくるけどそういうところが可愛いと有名な関羽さんです。

 

「秋蘭様、どうしてこんな所に?」

「あまりに暇なのでな。伝令役を買って出た」

「華琳さんは何て?」

「汜水関が破られたら、ただちに進撃を開始。劉備達が様子見で退いた隙を突いて、一気に突破する。敵に追撃をかけるぞ」

「ウチは敵の罠って可能s……あ」

 

かゆうまェ……。

 

「……今負けたのが汜水関の総大将だ。挑発に乗り出てきて負けて、そのまま逃げ出すような輩に……そんな器用なことは出来まい」

「うわ、ホントに逃げ出したよ……」

「じゃ、今から突っ込めばええんやな?」

「そうだ。先頭は姉者が務める。お前達もうまく流れに乗るがいい」

「分かった。聆!」

「うぇい。お前らァ!!進軍開始じゃ!!敵が引っ込んで門閉じるまでに雪崩込め!!」

 

    ―――――――――――――――――――――――――

 

 ちょっとばかし迎撃してきた敵も春蘭が蹴散らしてしまい、汜水関戦は門を潜るだけの簡単なお仕事であった。現在は既に虎牢関手前だ。

 

 汜水関後の連合軍議にて、虎牢関攻めの指揮は曹操、追撃は袁紹と決定した。また、サブクエストに張遼の捕獲を定め、北郷隊の役目は張遼の騎馬隊にプレッシャーをかけ、動きを鈍らせること、となった。

 

「……ってぇのが、上からのお達しや。私らは北郷隊の中でも特に『相手の気を逸らせて士気を下げる』ことに専念することになる。いつも通り相手を流して横にずれ込む戦法を取る。騎馬に対しては、攻め手は馬を狙い、守り手は上からの攻撃に備えろ。歩兵にはいつもより慎重に挑め。鑑惺隊は戦いの中心と違ぉて、あくまで相手を削る役割やってことを忘れんな」

「はっ!」

「良し。んだら私は中央に行く。戦闘になったら戻って来るからそれまで各自準備整えとけ」

 

 

 そして再びの猪かゆうまである。

 

「……出てきたわね。汜水関の時と言い、連中は籠城戦を知らないのかしら?」

「旗印は華。……先日の失態を取り戻そうと、華雄が独走したのではないかと」

「うわぁ……。これァヒドい。春蘭さんでもせんわこんなん」

「おい聆なぜそこでわたしを引き合いに出す」

「デコに手ぇ当てて考え」

「…………うーん、分からんっ」

「おい、後続の部隊も出て来たぞ。旗は呂と張だってさ!」

「気の毒なことね。一刀は全体に通達の指示。本作戦は、敵が関を出て来た場合の対応で行う!」

「分かった!四人とも、行くぞ!」

「はっ!」

「分かった!」

「はーい」

「ウェーイ」

 

 持ち場について華琳の号令がかかるのを待つ。この戦い、私にとっては、張遼隊の直進と鑑惺隊の受け流しの速さ勝負になるだろう。我が隊の中心を正面に捉えられれば踏み潰されてしまう。最悪、それでも二隊に別れただけと考えて戦うが、正直、呂布の居る戦場で完全に隔離されて別行動になるのは避けたい。『分離したまま半分消えました』とか笑えない。

 

「聞け!曹の旗に集いし勇者たちよ!」

 

口上が始まった。ちなみに、その旗デザインしたの私だぜ?

 

「この一戦こそ、今まで築いた我ら全ての風評が真実であることを証明する戦い!」

 

曹魏はその風評に振り回される羽目になるんだがな。

 

「黄巾を討ったその実力が本物であることを、天下に知らしめてやりなさい!」

 

禿同。

 

「総員突撃!敵軍全てを飲み干してしまえ!」

 

 

 最前線にて夏侯惇隊とかゆうまがぶつかり合う。とはいえ夏侯淵隊の掩護によりこちらが遥かに優勢だ。呂布と張遼が迫る。と、それらの隊は戦ういうより、何とかかゆうまを引き戻そうとしているようで、ひどく消極的だ。結局、受け流しとかそんなものは無く、前を掠める馬を倒かすだけのお仕事となった。

やっとかゆうまが撤退の動きをを見せ始めた頃には既に劉備軍と袁紹軍が回り込み、少し遅れて孫家が関の目前まで迫って……アカン……。呂布が……。顔良、文醜、関羽、張飛、孫策の五人を蹴散らした。張遼、人型の猪もそれに続いて虎牢関に引っ込む。城壁の上から、おそらくチンQの指揮で矢の雨が降り注ぎ、迫っていた軍は退かざるを得なかった。かくして虎牢関の戦いは振り出しに戻ったのである。そういえばそんなエピソードだったな。

 

     ―――――――――――――――――――――――

 

 「虎牢関が、無人?」

 

翌日の軍議に提出された情報は驚くべき物だった。私は驚かなかったがな。

 

「はい。袁紹が偵察を放ったところ、中は呂布どころかネコの子一匹いなかったそうで」

「何の罠かしら」

「分かりません。呂布も張遼も健在な現状、虎牢関を捨てる価値はどこにもありませんし」

「マジで誰もおらんかったん?どっか隠れるとこがあるとか、ちょっと離れたとこで突撃準備しとるとかは無いん?」

 

無いのは知ってるけどね!

 

「その辺りは顔良が念を入れて調べたようよ」

「んー……都に立てこもって、本土決戦したいんじゃないの?」

「まだ攻略が始まったばかりのこの段階で虎牢関から離れる意味が分からないわ。地形的にも、状況的にも、谷に作られた巨大な城壁であり、気を配らなければならない民が居ない虎牢関の方が、絶対に護りやすいもの」

「他所から挙兵があったとは考えられませんか?」

「この連合以外に、虎牢関の全勢力を充てなければならない程の勢力なんて無いわ」

「……だよなぁ。小規模な敵なら、せいぜい将一人くらい持っていけば済む話か……」

 

確かに何で下がったんだろうか。十常侍が董卓に手を出そうとしてどうのこうのだったと思うが、それこそ近衛のモブで片がつく話だ。『月の危険が危ない!(錯乱)』とか、賈駆がトチ狂ったのか?

 

「身内に不幸が有ったとかちゃうん?もーそれで良えやん。それよりお風呂入りたい。せめて水浴びしたい」

「おいおい、適当なこと言うなよ」

「考えてもしゃーないやん」

「いっそのこと、どこかの馬鹿が功を焦って関を抜けに行ってくれれば良いのですが……」

「さすがにそんな馬鹿はいないでしょう。ねぇ、聆?」

「……春蘭さんでもせんわそんなん」

「おい聆なぜそこでわたしを引き合いに出す。……って、華琳様も言わせないで下さい!」

「華琳様ー。いま連絡があって、袁紹さんの軍が虎牢関を抜けに行ったみたいなのー」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

馬 鹿 万 歳

 

「やれやれ。汜水関の時は散々言ったクセに、今度は自分が抜け駆けとはね」

「まあ、袁紹が無事に抜けられたら、罠は無いって事でいいんじゃないか?」

「せいぜい石橋叩きまくってもらおぅや」

「そうね。たまには馬鹿に感謝しましょうか。……袁紹が無事に関を抜け次第、私たちも移動を開始するわよ」

 

 

 結局、虎牢関には何の罠も無く、連合は洛陽へと着々と駒を進めた。

地獄(相手にとって)の決戦地、洛陽へと。




恋姫二次では恐らく初の、
汜水関&虎牢関=ヌルゲー。

洛陽決戦こそは聆に戦ってもらいます。

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