哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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うわわ、コメント返信で誤字やってしまった。

はわわ軍師ならぬうわわ作者にジョブチェンジしましょうかね。


第五章二節その二

 将軍格は張三姉妹の扱いについての会議を行っている。ちなみに意外かもしれないが、一刀も将軍だ。そろそろ数え役満姉妹構想が決定している頃だろう。そして私は張三姉妹を華琳に引き渡した後、事後処理をしていた。この事後処理が面倒なのだ。特に、失った物品や糧食、兵の数を記録しなければならない。報告書は後でもいいんだが、記録はさっさとつけておかないとドンドンアバウトなものになってしまう。こういうとこでマメにやっておくのが信用に繋がると思う。

 我が隊では突撃に参加した兵が幾らか死んでいた。班長の被害は二人。やはり新しく選んだ奴だった。非常に残念だ。十人程度まとめられる奴は結構居る、と言っても、実際見つけて戦場に慣れさせるのは大変なのだ。……悲しみより先に戦力とか面倒とかの心配をする辺り、私も相当染まっているのかもしれない。あと、ため息が出るような事としては、変装して黄巾に成りすましていた隊員が曹操軍に幾らかぬっ殺されていた、というものがある。本当に笑えない。何か潜入兵が曹操軍だと示す手立てを考えなければ。

 ……さて、こんなものか。真桜とかと駄弁りに行こう。

 

    ――――――――――――――――――――――――

 

 「あ、聆!記録終わったん?」

「おー。そっちも終わったみたいやな。どんなモンや?」

「混乱しとる言うても殆ど同じくらいの数の敵やったからなぁ。被害は、まあ小さないで。……それよりも、張三姉妹捕まえたん聆らしいやん!大手柄やな!」

「その代わり私の隊は突撃がイマイチやし。そう言えば左翼は凪が大活躍やったんやろ?」

「せやで〜。黄巾党吹っ飛ばして前進しとったからな〜」

「そうだよー。凪ちゃんすごかったのー!右翼からでも見えてたんだよー」

「お、沙和。と隊長」

「よっ」

「ちゃんと記録済ませたんやろな?」

「聆ちゃん、あんまり沙和を見くびらない方がいいよー?ちゃんとやってるの!」

「俺が言わなきゃ忘れてたけどな」

「あわ!?隊長、それは内緒の約束なの」

 

沙和が頬をふくらませて抗議し、一刀はそれを笑ってあしらう。沙和と一刀の距離は目に見えて小さくなっているな。良いことだ。

 

「あ、そうそう。張三姉妹の処遇が決定したんだった」

「なんて?」

「華琳の領内では自由に歌っても良い。けど徴兵に協力するように。って」

「はぁ〜。なかなか破格やね」

「良かった良かった。捕まえてから引き渡すまでしばらく一緒におったけど、ホンマに普通の娘って感じやったし」

「なんにせよ上手くいってよかったよ。……ところで凪は?」

「さー。わかんないのー」

「まだ記録つけとんちゃう?なんやかんや言うてもあんだけ激しく突撃したら被害デカそうやし」

「あー、それ私居場所知っとるで」

「聆はなんで知ってるんだ?楽進隊と鑑惺隊の集合場所ってかなり離れてただろ?」

「離れとっても下が教えてくれるやん」

「……なんか怖いなそれ。いつも色々探ってるのか?」

「いや、ほんのお願い程度に頼んどいて、何か有ったら聞くって感じ。秘密とかは探っとらんやろ。多分。……何?探られたらアカンことでも有るん?」

「うわ、これって地雷踏んだ?」

「あーー、隊長ってやっぱりウチらにはとうてい言えへんようなことをしとんやー?」

「幼女誘拐事件の犯人は警備隊隊長だった!!……これは、世も末すぎるの……」

「隊長、改心して自首してくれんか……?」

「っだーー!!なんで勝手にやったことになってんだ!!その話は終わり!!凪のとこ行くぞ!」

 

そう言って一刀は走り出す。

 

「隊長ー!そっちちゃうでーー!」

 

     ――――――――――――――――――――――

 

 凪はしばらく歩いたところにいた。

 

「お疲れさま、凪」

 

一刀は、猫なで声でもないが、とても優しい声で凪を労う。こういう声一つ取ってもモテる要因なんだろうな。

 

「ああ、隊長、みんな……」

「凪ちゃん、今回は大活躍だったねー」

「華琳もすごく褒めてたぞ」

「そうですか」

「ん?あんまり、嬉しくなさそうだな……」

「そんな事ないよなー。凪、めっちゃ喜んでんねんで!」

「そうなの?」

 

一刀は凪の顔を不思議そうに眺める。ちなみに私には凪の感情の起伏は真桜ほどは分からない。本当は長い付き合いではないからだ。

 

「……はい。これで大陸も平和になると」

「そっか……。そうだよな。四人とも、そのために華琳の部下になったんだもんな」

「そうなの」

「……って事は、これからは……?」

「まだまだ曹操の部下として働くつもりや。黄巾は倒れても、まだ根本は解決しとらんからな。さっさと華琳さんに正してもらわんと」

 

正確には華琳と桃香と一刀、だが。

 

「なら良かった。いきなり故郷に帰るとか言われたら寂しくなるなー……って思ってさ」

「そうですか……」

 

ちょっと凪さっきから会話出来てなさ過ぎじゃないか?

 

「ほらー。凪ちゃん、もっと笑顔になるのー!ほらほら、むにむにー♪」

 

沙和が凪の後ろから頬を摘んで引っ張る。良し!戦勝ムードに水を指すムッツリに鉄槌を下してやれ!

 

「こ、こら、沙和……やへふぇ、やめふぇっへ!」

「こっちもうちょっと、引っ張った方がええんちゃうか?」

「沙和ェもっと上に引き上げるんや!」

「ひゃへー!ひゃへろ、たいひょたひゅけへ!」

「んー?凪はもっと笑ってたほうが可愛いって。なあ、みんな」

 

可愛いとかさらっと言う奴。

 

「そうなの。凪ちゃんにはきっと笑顔が似合うの!」

「ほら、笑ってみぃって。こうやって。

 アハハハハハハハハハ/ヽ/ヽ/ヽ/ヽ/ヽ/ヽ」

「アカン……ソレは人を不安にさせる笑いや……」

「いい感じに盛り上がってきたな。じゃあ、城に帰ったら宴会でもするか!褒賞も出たし、軍議も次の日だ。急ぎの荷解きだけ済ませたら、後は明日にしちまおう」

「おー!薄い酒やろうけど空気で酔えそうな気がするで」

「軍議も後回しか!さすが大将、話が分かる!」

「わ、わひゃひは……っ」

「断る理由なんてあるのー?」

「凪がこないんじゃ、意味ないだろ。三人共、絶対に凪を逃がすんじゃないぞ。隊長命令だからな!」

「まかせときぃ!」

「ぜーったいに、にがさないの♪」

「私は捕縛率十割やからなァ……逃さんでェ〜〜」

「れひ!!ひゃめひょ!!まひひゅくな!!」

 

    ―――――――――――――――――――――――

 

 帰還前に宴会のことを話すとそれが叶わない確率九割。

 

「……ええっと、だな」

 

一刀が気まずそうに口を開く。私たちは荷解きもする暇無く広間に集合をかけられていた。真桜や沙和は勿論のこと、皆不満そうな表情をしている。華琳など今にも誰かしら斬りつけそうだ。なんでも、何進将軍の名代が来たそうな。

 

「華琳、今日は会議はしないんじゃなかったのか?」

「私だってする気はなかったわよ。あなた達は宴会をするつもりだったのでしょう?」

「宴会……ダメなん?」

 

真桜が心底不安そうに華琳を見つめる。そんなに楽しみか宴会。

 

「馬鹿を言いなさい。そのためにあなた達には褒賞をあげたのよ?」

 

宴会のためだけの金だったのか……。

 

「……私だって春蘭や秋蘭とゆっくり楽しむつもりだったわよ」

 

華琳さんイライラし過ぎでモラルがブレイクしてるな。

 

「おいおい、そういうことは……」

「……聆、貴女随分機嫌が良さそうじゃない」

 

一刀のツッコミを無視して。イライラっぷりにニヤニヤしていた私に矛先が向けられた。

 

「いや~、別にそんなカッカせんでも。ほんのちょ〜っと遅れるだけで、宴会が無ぉなるわけとちゃうんやし、ちょっと遅れたぐらいで酒は逃げんって。大丈夫、大丈夫。何も問題は無い」

「……聆、ごめんなさいね」

「アカン……コレも人を不安にさせる笑いや……」

「お酒が遠のいて、相当キてるの……」

「聆、落ち着けよ?宴会はちゃんと開くからな」

「アッハッハ。落ち着いとるって〜。全然キとらんし。むしろ、名代の顔見るんが楽しみなくらいや」

(アカン……ハンパなヤツやったら死ぬ……)

(完全に人殺しの笑顔なの)

(この曹孟徳が……怖れている……っ!?)

(お巡りさんコイツです。……ってお巡りさんのボスが俺じゃないか!……これは詰んだ)

 

皆不安そうな表情をしているが、本当に私は大丈夫だ。別に怒りが振り切れて穏やかな笑顔になっているわけではない。呂布を見るのは楽しみだし、そもそも帰還する前から名代が来ることは知っていた。前世の記憶とかではなく、伝令の情報を最速で素破抜いたからだ。

華琳のもとへ情報が伝わるには幾つかの手順が必要だが、私には完全に口伝えで回って来る。「名代がやって来るようだ」なんてことは、ちょっと「どうしたんだ?」くらいのことを言われればさらっと答えるものだ。極秘情報なんかは手に入らないし、間違った情報も偶にあるが、"知っとくと便利"程度の情報に於いては、私の情報網は最速且つ最大だろう。

 

「……すまんな。みんな疲れとるのに集めたりして。すぐ済ますから、堪忍してな」

「……貴女が何進将軍の名代?」

「や、ウチやない。ウチは名代の副官や」

「なんで来たんだ?」

 

春蘭何言ってんだ。……私の方をチラチラ見るんじゃない!

 

「え!?いや、そんな急いでるん?多分もう直ぐ来るから」

 

「呂布様のおなりですぞー!」(♪呂布のテーマ)

「…………」

 

りょ、りょ、りょ、呂布だァァァァァぃァァァァ!!!!!

 

 

「曹操殿、こちらへ」

 

ちんQちっさ!!

 

「はっ」

「……………………」

 

そして呂布は安定の沈黙である。

 

「えーっと、呂布殿は、此度の黄巾党の討伐、大儀であった!と仰せなのです!」

「……は」

「…………………」

「して、張角の首級は?と仰せなのです!」

 

名代に呂布任命したの誰だ?絶対に喧嘩売ってるだろ。

 

「張角は首級を奪われることを怖れ、炎の中に消えました。もはや生きてはおりますまい」

「……………………」

「ぐむぅ……首級がないとは片手落ちだな、曹操殿。と仰せなのです!」

「……申し訳ありません」

 

一刀が何やら周りにひそひそ言い始めた。学校の集会とかでもやってたんだろうな。で、先生に「なんだ北郷、話したい事があるんなら前に出て皆に教えてやってくれ」とか言われるんだ。想像が余裕過ぎて笑える。……何人かが私の方を見てギョッとしたんだが……。私は笑ってはいけない武将24時か?あ、何かツボってしまった。笑いを堪えるのがキツい。

 

「……………………」

「今日は貴公の此度の功績を称え、西園八校尉が一人に任命するという陛下のお達しを伝えに来た。と仰せなのです!」

「は、謹んでお受けいたします」

「……………………」

「これからも陛下のために働くように。では、用件だけではあるが、これで失礼させてもらう。と仰せなのです!」

「…………………ねむい」

 

キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!

 

「ささ、恋殿!こちらへ!」

 

「………ま、そゆわけや。堅苦しい形式で時間取らせてすまんかったな。あとは宴会でも何でも、ゆっくり楽しんだらええよ」

「解散!」

 

名代の副官って言うかぶっちゃけ霞が広間から出るか出ないかの内に、華琳が解散を宣言した。そしてソッコーで私の手元に酒が用意される。

いや、そんなに酒呑みたかったら自前のヤツ飲むって。




蜀ルートの精神的メインヒロインは恋だと思います。
一刀さんガチ惚れじゃないですか。
あと、なんだかんだで白蓮とは通算で一番長い時間一緒に居そう。

ちんQはトップクラスに小さい上に、画面の向かって左側に立つことが多いので、ウィンドウが高確率で顔にかかるという……。
(psp版)

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